2015/06/24 - 21:58~05:09 のログ
ご案内:「第二演習場」に遠条寺菖蒲さんが現れました。<補足:半袖シャツにハーフパンツの運動着姿のポニテで蒼い瞳の少女>
遠条寺菖蒲 > 日が沈み始めた頃に一人でここへと訪れる。
ここ最近になって自分の無力さは痛い程に理解したので空いた時間で基礎訓練をしようと言う心算であった。
自身の戦い方は多対一を想定していいないし、相手の優位な領域での戦いにも適していない。
一対一であり、対当の条件か。昔の経験上、獣の類の方が戦い慣れているとも言える。
で、あればこれまである程度で満足していた魔術の訓練もするべきである。

「よし……」

スニーカーや自身の格好、準備を確認して演習場を見る。
どうやら今のところ誰も居ないようだ。

遠条寺菖蒲 > ――特殊短縮詠唱法・條島式。
菖蒲の使用する魔術の詠唱法の名前である。
短い詠唱と明確なイメージをもって術式を構築し魔術とすると言う言ってしまえば一見単純に思えるそれ。

けれど、実のところは非常に厄介なものである。
一瞬とはいえ、言葉とイメージを術式化する為に集中する必要があり気を乱されれば術式は組み上がらない。
が、そこに込められる強い意志によってあらゆる等級の魔術を本人の素質次第だが構築するという一種の魔法じみたソレは使えれば確かに有用なのである。
長い詠唱を必要とせず、僅かな集中のみで魔術を構築する。
無詠唱等を扱えるものにとっては無用である。
しかし、この学園に来るまで魔術を知らなかった菖蒲にとって最初に習わされた魔術の行使方法がこれであり、すっかりと当たり前となっていたが、あまり使う機会はなく最近まですっかりと埃を被ったように記憶の底に埋まっていた。

「魔術は言葉と意志を介して顕現する、《我を強化せよ》」

静かにそのすっかり基本として覚えさせられた魔術を唱える。
淡く全身を魔術の輝きが包む。

遠条寺菖蒲 > (対多を想定した場合の魔術……)

そう言って思い浮かべたのは以前にここではないが訓練場で遭遇した女の子。
蒼穹という名前の少女が使っていた魔術か。
あれは命中精度は悪かったが多数の敵を想定した場合には有効に思える。
ただ、威力は恐ろしいような気もするが。

(威力はほどほどでいいし、牽制の意味を込めた散弾……)

魔術を作り出す時は、明確なイメージを一度決めておく必要がある。
以前、使った《包み込む炎》はその名の通りに対象を包み込み炎の抱擁にて焼き尽くすと言うイメージのものだ。
言葉は単純でもいい。
大切なのは、術者が明確にイメージ出来るということだ。

「うーん……考えようと思うと難しいか」

ご案内:「第二演習場」に霜月 零さんが現れました。<補足:いつも気だるげな青年剣士。一年。太刀一本、小太刀二本の三本の刀を持つ。>
ご案内:「第二演習場」に蒼穹さんが現れました。<補足:PCNo:53/気紛れな邪神様。>
霜月 零 > 訓練場に顔を出すのも慣れたものだが、その時比較的見慣れない顔を目にした。

「あー、アイツぁ……」

以前カフェで会った相手。そして、その時に説教をしてくれた相手だ。

「後で礼でも言うかね……」

などと言いつつ、少し距離を置いて訓練しているところを見学する。
あの魔術、いささか興味深い。

遠条寺菖蒲 > 新しい魔術を構築するために悩んでいると演習場に一人、いや二人?
気配が増えたのを察知する。
一人はどうやら以前あった霜月のようだが、遠目に見ても前ほど疲れ果てている様子ではないのでよしとしよう。

(別に一緒に訓練するという話をした訳でもないし、それに今の彼には声をかける必要はないかな)

と考え集中することにする。
以前のままであれば一つや二つ言ってやるところだったろうがそうでないなら菖蒲から声をかける必要性を感じなかった。

霜月 零 > 「(あ、バレた)」

なんとなく意識が一瞬こちらに来たのを察し、イカンと額を抑える。

特段気配を消していたわけでもないが、あっさりバレるってどうなんだ剣士として。

だがまあ、それは相手の気配察知が優れているんだ……と雑に脳内で補完し、取り敢えず今は集中の邪魔にならないように見学する。
話しかけるのは、ひと段落してからでいいだろう。

蒼穹 > (人の世には、こんな言葉があるらしい。「噂をすれば影が差す。」といっても、それが偶然か必然は神のみぞ…否、神も知らない。少なくとも、ここでぼんやり野次馬してる彼女は。)

(じーっと、演習場にて毎度の如く野次馬をする。何処かで見た子のある眩く可憐な白い光。)
…まさか。
(そのまさかであったのは、言うまでもないだろう。誰であると言えば、己が遊びを挑んで以前敗北したかの退魔師。)
…と。
(気付けば、もう一人。己が妹に頼まれて遊んだ剣士。)
えっと、どうしよっか。
(訓練中、の様だけれど。彼の方は己と同じく見学と言ったところで。本当ならばこのままリベンジマッチでもしたいところなのだが、邪魔になってしまうのも良くないだろう。休憩し始めるまで、見守ろうか。でも…退屈になったら、横槍を入れよう。退屈しそうにないが。)

霜月 零 > 「あー、よぅ」

小声で蒼穹に軽く手を挙げる。確か、復讐を止めにするって言ってなかったような。
それは後でいいか。

「お前さんは、また見学か?」

蒼穹 > お?やっほ。おにーさん。
(同じく、手を上げて、揺らしてそちらに向き直った。)
そーそ。野次馬だよ。おにーさんもかな?
(すぐに、今野次馬真最中の彼女の方へと向き直るが。)

遠条寺菖蒲 > さり気なく伺うような気配二つ。

そんなつもりはないのだろうが、探られるようで面倒だ。
始めたばかりだが、少し小休止といこう。

大きく息を吐いて、いつの間にか会話を始めようとしている二人を確認する。

(もうひとりは蒼穹さんだったのね)

身体強化の魔術を解除して近くに置いていた小太刀を確認する。

霜月 零 > 「まーな。自主トレのつもりだったが、面白いモンが見れそうだ。アイツには言いたいこともあるしな」

興味深い、と言った表情で菖蒲を見る。が、止められてしまって「やってしまったか」と気まずい表情に。

「あー……悪い、邪魔だったか?」

頭を掻きながら菖蒲に問い掛ける。

蒼穹 > おっと、アヤメもやっほ。
(ひと段落ついたようなのでようやっと声をかけられる。)
…同じく、御邪魔だったかな?
(と、彼に続くように言葉を述べれば彼女の表情を伺い。)

ふーん、自主トレ。
あっはは。まだ何かやってんの?
…吹っ切れたみたいだけど。
(復讐、憎悪の念とは、思いの外大きいものだ。言わずとも、何となく察したのかもしれない。この間のような切羽詰まった様子が見えないのは、気の所為ではないのだろう。)

遠条寺菖蒲 > 二人の声を受けて
挨拶を返す。愛想笑いだが笑顔ではある。

「お二人とも先日の橘以来です」

邪魔だったかと言われると素直に、

「そう言われるとそうなりますが……
余り人の技を無言で見ようとするのは感心しません」

と愚痴を漏らす。
だが、堂々と言えばいいという訳でもない。
型に沿った訓練なら菖蒲も別にいいかと思うかもしれないが、出来るかもわからない魔術の構築を見られても少し困るというところであった。

霜月 零 > 「ああ、悪かった。秘奥の類だったか」

これは失礼をした、と素直に頭を下げる。武門にとって、流派の秘奥とは何があろうと隠し続けるもの。
かの天真正伝香取神道流など、道場を昼でも暗い場所に作り、窓も小さくすることで流儀が覗き見られる事を防いだという。

まあ実際少しズレた理解なのだが、武門的にはそういう解釈になったようだ。

蒼穹 > あ、そういえばそうだったね。
いやー、あの後大変だったんだよ。お金も持ち込まず入ったもんだから店員さんの視線が痛い痛い。
(等と、こちらは割かし自然な笑みと共に先日の事を話しつつ。)

ああー…そういう事拘っちゃうのね…。
では見せてくださいと宣言しようかなっ。
あ、それとも代わりに私の技を見せたりしたらいいのかな、そういう場合。
(無論、堂々と言えば良いと言うわけない。だが、知っての上か、知らずの上か。)
はいごめんなさい。
(素直に、幽かながら頭を下げる次第だった。)

遠条寺菖蒲 > 「秘奥とは言いませんが、下手に魔術やそれに付随するものに手を出した後には何の役にも立たないと言われる魔術の新しい術を作ろうと考えていただけですよ」

城島式の魔術は他の理に染まっていないからこそ有効でもある。
故に、魔術やそれに近しい法則に手を出していれば扱いにくいものとなる。そういう特殊さもあるものだ。
そこであの時の散弾を思い出して蒼穹の顔を少し見る。

「蒼穹さんとはいずれリベンジマッチということですし見せるなら稽古相手になってもらうほうが楽ではありますが……」

それは自分で明確に魔術のイメージを掴むためにあの時のような技をしっかりと見れたら見ようという下心もあるが、場所としては悪くはない。

霜月 零 > 「なんだそりゃ、亜流の古流魔導か何かか?」

どうにも「下手に魔術やそれに付随するものに手を出した後には何の役にも立たないと言われる魔術」がピンと来ていないようだ。

首を傾げつつ、技を見せる、と言う話になれば頭を掻く。

「俺が見せれるっつったら剣術か、巫術か……得意は剣術なんだがなあ」

巫術も使いはするが、メインは剣術。故に、何か見せてみろと言われればおおよそ剣術になるのだ。

蒼穹 > …はっ。そーだそーだ、リベンジマッチだよリベンジマッチ!!
言っとくけどあれ私の本気じゃなかったんだからねっ。
(等と負け惜しみをしつつ。)
って…いやまぁそれくらい分かるか。
何のお稽古の相手すればいいの?剣か魔術か…。
(すっかり乗り気なようでにんまりと笑みつつ、腕を一振り、本人なりの準備運動らしい。何となく、魔術を開発しているだろうことは察したが、それはさておき。雪辱できるなら何より。)

遠条寺菖蒲 > 「提唱者曰く、この世界で最も魔術らしくなく魔法のような魔術を目指した――だそうですよ」

この学園の上層部の極一部のみが知る評価されずに埋もれた魔術の詠唱法。
そのレポートと言う名の魔導書にも似たそれを菖蒲は何度か目にしているので内容を把握している。
ハッキリ言えば魔術を嗜むものにとってそれは「子供の夢物語のようなもの」である。にも関わらず、ここにその使い手は存在する。

「流石に三人同時にどうこうっていうのは無理でしょうし、蒼穹さんは前からの約束でもありますからね」

ここには竹刀も木刀もないし使うとすれば小太刀となるかと刀袋から霧切を取り出す。

霜月 零 > 「魔術と魔法は別物、っつー理論の上で、魔術から乖離した方法論で魔法を目指した……っつーわけなのか?」

ううむ、と首を傾げつつ、二人が模擬戦をするのならばそれを見学しようとする。

ついでにこっそり、何か使える技術が見取れればいいのだが。

蒼穹 > …あっはは。御相手してくれるなら何よりさ。
武器も、前と比べてそれっぽい。
(抜かれた刀。小刀といって間違いない長さ。現実的な退魔師の女の子の持ち物と言って間違いなかろう。)
…そうだね、おにーさんには悪いけど。
さて、剣術での御稽古が御望みって事かな。
(取り出されたものを指差して、首傾げつつ。)

遠条寺菖蒲 > 「その真意は提唱者でないとわからないでしょうが、今思うと随分とふざけた人だと思います」

そんな夢物語のような魔術で『お前たちが作り上げた魔術と同じ事をやろうと思えば出来る』と嘲笑うかのような魔術だ。趣味が悪い。
だが、そもそも敷居が無駄に高いというのが欠点である。


「いえ、前回と同じでも構わないでしょう?
条件は同じ方が蒼穹さんもその方が勝った時にスッキリするでしょうし」

リベンジマッチならば同条件で、菖蒲はそう言う。
制限された訓練は確かに特殊条件下では役に立つかもしれないが、そうでない場合は打ち合い稽古と変わりはしない可能性すらあると考えた。

蒼穹 > んー…つまり、アヤメが剣で、私は魔術って事でいいのかな?
ま…リベンジの意味合い的には確かに、それはあるけどー。
剣と剣でやり合うのも面白いって思っただけ。
そっちの方が良いならそうしよっかな。
(結局、前と同じ条件なら、こちらは手ぶらで避けつつ攻撃と言う事になる。ただ、一つ前と違う条件があるとすれば…それは、紛れもない"刃"であるという事だ。それも、退魔師の。)
…敢えて聞いとくけど。邪神に特効とかないよね、その小刀。
(普通に痛そうである。)

霜月 零 > 「しかしまあ、そういう奴が新しいモンを作るんじゃねぇの?」

『世界を先に進めるのは、現状に満足できぬ愚者だ』と言う言葉を聞いたことがある。
今ある物に従い、それを進める事も大事だ。
だが、その秩序、既存の流儀に反逆し、オリジナルを組み上げようとする愚か者こそが、時として世界を進める一歩を刻むのである。

遠条寺菖蒲 > 「どうでしょう?魔と断つ刃の一つとは聞いていますが
この刃を見て嫌悪感などを抱かなければ特にないのではないでしょうか?」

そう言って霧切を鞘から抜き放つと霊気が漏れ出す。
以前にも増して菖蒲の霊力と同調したためかその刀から漏れる霊気は斬魔の理を内包し神気にも近しくなりつつある。菖蒲の霊力と完全に同調しているのを見て感じ取れるならばまるで菖蒲の手足のようにも見えるだろう。

「神さえも斬り殺すと曰くつきのものは別なのできっと大丈夫ではないですか?」

と言うと一度鞘に仕舞い。持ち込んでいたのか簡易的な帯を腰に巻き付け小太刀を挿す。


「きっとそうなのでしょうが、提唱者は先達者に礼を欠く人物だろうと思うので個人的には好ましくありません」

と霜月の言葉には自分の感じた通りに答える。

霜月 零 > 「はっは、お前はそういうタイプか」

くつくつと笑う。伝統を重んじ、先人に敬意を払う。物事を学び極めるならば、守破離の段階をしっかりなぞることを良しとする。そういうタイプなのだろう。

武門的な価値観を持つ零としても、好ましいタイプだった。

「そんじゃま、頑張れよ。俺はのんびり見させてもらうぜ」

くつくつ笑いながら、見学の構えだ。

蒼穹 > ああああー…。なんっだこれ…珍しいもの持ってるね。魔剣か何かみたいな…。
(何となく、彼女の持つ刀からも、彼女自身からも何らかの"気"は感じ取った。以前は"覇気"と思っていたが、それは、神性に近いものだったのは、知る由もない。といっても、それは恐らく己とは全く別世界の神性なのだが。)
…ならいいか。
おっけ。じゃー、前のノリで行こうか。
所定の位置について、間合いを決めようね。
…あ、魔術は一応全部術式使ってもおっけーだよね?
もしかして、前の"アレ"だけで遊んだ方が良い…?
(すたすた、と足早に演習場の一角へと歩きつつ、振り返っては問い掛けて。)

遠条寺菖蒲 > どうやら平気なようだ。
流石に訓練で『正装』を使うわけにも行かない。
変わったのは私の武器が前の竹刀よりリーチの短い小太刀であることだ。
だが、竹刀よりも手に馴染んだこれがハンデになることはない。

「問題ないようなら何よりです。
いえ、使えるものは全て平気としましょう。以前は私の訓練としては十分でしたが
蒼穹さんの訓練としては不十分というような感じでしたのでしょう?」

どんな手を持っているのかは知り得ないが、この少女は普通では無いのだから油断はできない。
対するように菖蒲も動きながら答えた。

蒼穹 > うん、お気遣いどうも。でもそれは
―――将来的には、ちょっと厄介かもね。…なーんて。
(何にしたって、神性がある武器である以上。油断はならない。それが、彼女の手足であるというのであれば、今後、何らかの形で所謂"成長"の様な変異でもするかもしれない。)
ほう、全部おっけーなんだ。
って事は、…文字通り、総合演習って感じだね?流石に剣を抜くのはダメっぽいけど。
あっはは。そうだね…ちょっと中途半端だったかも。
お気遣いありがとうね。
(さて、持ち場と思ったところで足を止めて、くる、と180度回転。)
準備おっけーかな?
(距離は、どれくらいだろうか。少なくとも、この距離でも遠目に易々と黒い髪を見遣ることが出来る。)

遠条寺菖蒲 > 呼吸を整える。
大きく一度呼吸をして――乱れを消す。

「ええ、構いませんよ」

さて、今回は何を見せてくれるのか。
前回のあれは驚いた。あの魔術が完成していれば負けていたのは私の方だっただろう。
刀をゆっくりと抜き放つ。
その動きは全て脳内で思い描いた動き、無駄のない訓練されたそのものである。
蒼穹が以前見たそれよりも寸分の狂いのない芸術的な動作に見えることだろう。

蒼穹 > そっか、よっし…。それじゃ、よろしくお願いしまーす。
(ふぅ、と息を吐く。彼女のそれと比べれば、幾分か短い息を、一つ。一応、礼儀として手合せ前に一礼すると良いらしい。)
射程は無限。威力も無限。破壊魔法の脅威性、存分に見せたげるっ。
…命中率は御察しだけどね。

へぇ。
(相変わらず、洗練された動きだった。彼女とて、腕を上げたのに間違いはないのだろうと、楽し気で。生憎互いに女性であるが故、そこまでではないけれど、多少とも目が釘付けになりそうな、彼女が前に言っていた舞踏の様な振る舞い。けれど、それを形容する言葉は持ち合わせておらず。また、この場においては形容する必要もない。故に、感嘆めいた事を短く一つ漏らした。)

それじゃ、まずは一発目。
破壊魔法・第一術式「滅の矢」
(標的は、目視できる。ならば既に射程範囲で、射線の上にも乗せられる。あとは、当たるかどうかだ。彼女の方を片目で見据えながら、魔力を少々収束させて、狙い、撃ち放つ。真っ黒な矢が、ライナーの様に飛んでいくだろう。―――きっと、当たらない。彼女は前も避けられた。これよりも近い距離で、そして、今よりも幾許か劣っていた実力で。なら、今避けることもきっと難しくなんてない。そんな事はきっと、御互い分かっている。避ける前に何をするか、どう避けるか、避けてからどうするか。それが、見るべき点。一体、強くなった彼女はどれほどのものか、探りを入れにかかった。この一撃のみでそれが分かるかと言えば難しいが。)

遠条寺菖蒲 > 「では行きましょう」

蒼穹の言葉に答えると彼女の魔術が紡がれると同時に動き出す。
身体強化の魔術はまだない。
まるで矢へと当たりに行くが如く、こう言う視認しやすく確かめやすい魔術で試してみたいと思っていたことがあった。

矢へと向かうように疾走して菖蒲は、唄う。

「此の手に持つ――之は“多賀宮ノ杖ナリ”!」

小太刀霧切の霊気が――変質する。
より攻撃的でより強烈に。
本来ならば正装・『オホナオミ』を装備して最大の効力を発揮する神楽唄であるが、
何も装備せずして使えない訳ではない。

唄は神へと捧げる唄であり、そして世界にそれを顕現させるものである。
今、霧切には僅かながらに神力を持ち、その刃は。

「――破っ!!」

舞うかのように身体を捻り、尻尾のように黒い髪の毛は踊る。
白い閃光と化した刃は、
切り払うかのようにして、矢の中心に刃を当たる!

蒼穹 > えっ…ちょ…えっ。えっ…?!
(彼女のとった動きそれは、避けないで向かっていくという行動だった。避けない?何故避けない。あの破壊力は知っているはずだ。万物を砕く破壊魔法。例え第一術式と言えども、その威力は強大。それに、どうして向かっていくのか。)

えっ…お…おいおい。…ありゃー破壊魔法だよ。
(信じられない。その光景を目にした。破壊魔法―――純粋な破壊のみを取り出した、ありとあらゆる防御を非とする魔術―――を、その刃で受け止める?不可能だ。―――普通は。)

まさか?…いっ…いや、そんな事は。
(だが、如何に邪神の魔術とは言え、魔術は魔術。それが魔力の塊であることは言うまでもない。黒と白の境界に何色とも言えぬ万色の力が弾け出すことだろうか。先程感じ取った様な彼女の幽かな神力が、己の邪神の力の一端に食い込む。これは、驚いた。多少とも拮抗はするだろうけれど、或いは切り伏せられてしまうやもしれない。矢は矢で今当たっている刃をぶち壊さんと必死だが。破壊魔法が、敗れる?敗れたとしても…きっと、それは、他でもない、神力に敗れたのだろうと自己の中で完結させておくが。)

…あっ…ははっ、凄いね。びっくりしたよ。
(普通の人間で間違いないだろう。けれど、切り伏せられなくとも、受け止められただけで大したものだ。久々にゾクリとする感覚。頭の後ろ側、冷や汗が垂れた気がした。)

遠条寺菖蒲 > 手に鈍い痺れを感じながら、若干の後悔は先に身体強化の魔術を行使しておくべきだったということか。

(なるほど。破壊――分かりやすく単純な衝動ですが故に強烈ですね)

荒御魂の加護による“多賀宮ノ杖ナリ”がなければ霧切が砕かれていた可能性もある。
しかし、純粋な破壊を受け続けるのは愚策、であれば。流すしかない。
刀を滑らせて自身は矢の横を滑るように移動する。

(正装による加護があれば斬り伏せる事も可能だったかもしれないが、現状ではこれが全力といったところでしょう)

腕に来た衝撃によるダメージを考える。

「私もここまでの威力のものとは驚きました。
前回、竹刀で受けなかったのは幸いということでしょうね」

思い返すとゾッとする話だが、直感に任せたのが正解だったようだ。
切り払いにしても今日はもうなるべくしようにしようと考える。

霜月 零 > 「(あれに正面から挑んで、打ち合ってから流すかい)」

力を流すには、とにもかくにも正面から打ち合わないのが基本。一度真正面から打ち合ってしまえば、威力に圧されてしまい、流すために軸をずらす事すら出来なくなる場合があるからだ。

そして、あの矢は間違いなくそのレベルの威力、圧力を持っている。それに対して真正面から打ち合うのは下策……と見たが、打ち破るまでは行かずとも流してしかも自分は前進するという挙動に成功している。

「(剣は素人……と言う判断は、誤りだったかね)」

己の武器に大した興味を持たない……その姿勢は、あまり剣術の気配を感じさせないものだった。

だが、その認識は誤りだったのだろう。あの流し一つで、一定水準以上の技量が伺えたのだから。

勿論霊刀のスペックや魔術による補助もあるだろうが……それにしても、見事なものだと感心する。

「(が、相手も埒外。どうするかね)」

とは言え、相手の蒼穹もまた、「多少の技術は恵まれたパワーで圧殺する」と言う戦術を実行に移せる埒外の存在。さて、どうなるか。

蒼穹 > (彼女が刃を振るう前に詠んだ、その言葉。魔術か、それとも。)
(刀から解放された矢は小さく、そして速度も衰えた。直線軌道なのに、まるでゆらりとした様な遅い動きで、壁に激突する事だろう。)
ほっ。
(正直、凄く驚いた。神か何かでもなければあんなもの切り伏せるどころか、受け止めること自体難しい。何より、絶対に回避という選択をすると思っていた。)

あっはは。伊達に破壊魔法の修練積んでないからね。
でも、私こそ驚いた。…アヤメって人間…だよね?
(最初と比べれば―――距離的な意味でも、存在感という意味でも―――少しばかり大きく見える彼女を見据えながら、そんな問いを投げつつ。)

遠条寺菖蒲 > 笑い尋ねる蒼穹に笑い返しつつ答える。
以前の菖蒲であれば答えずに特攻していたであろうが。

「人間ですよ――ただ、力を借りているのは破魔やそれに関する神々というくらいです」

借りている。
借りているのだ。その神の持つ力の一端を人の身でありながらも唄い祈る事で与えられ行使する。

「正直、私の方もゾッとしているくらいなのですが……蒼穹さんって異世界の方とはお察ししてますが……人間ではないですよね?」

そう問いかけつつも小太刀の様子を確認し、
一部加護が砕かれあと少し判断が遅ければ刃が大変なことになっていただろうと予測できた。

霜月 零 > 「(ああ、そう言う。成程ねぇ)」

巫術も、広義で言えば神霊の力を借りる法だ。とはいっても上位の存在ではなく、この世遍く存在する自然に宿る神の力ではあるが。

だが、その奥義の類には、本当の神霊を宿す法も存在する。

「(ウチでいう所の魂依之法……に、近いもんかね。道理で、出力がヤバいと思った)」

実際のところ、大きすぎる力を外注するのは、負荷が相応にかかる場合が多い。
彼女の術がそういうタイプなのかは知らないが、そうであるのならば、彼女自身の「依代としての器」も見事と言ったところだろう。

「(思わぬ神話級の戦い……ヤベェ、俺場違い過ぎねぇか?)」

根源、と言う下手な神なら軽く超越する物へ接続する異能を持つ零だが、本人にその異能の自覚はない。

ただただ目の前の戦いに、困ったような興味深いような、複雑な表情を浮かべて見守っている。

蒼穹 > …へぇ、人間なんだ。
あ、因みに地球の人間なのかな?神々って言うのもその…地球の神々だよね。
(人間、と言っても、異能や魔術が横行するこの世で、それは強さの指標には一切ならない。実際、今見た通り、壊せないものが無いと謳われた己の魔術を、多少なりとも耐えて見せる者がいるのだから。答えてくれるのなら、気をよくしてか、次いで質問を連ねる。)

そう、御明察だねっ、私は異世界の者。それで、人間でもないんだ。
異世界っていってもちょっとワケあってあっちこっち色んな世界を移り住んできたの。
(こくんと、頷きながら。それを語る様相は何時もより何処か得々としていた。)

…さて、次は如何しよっか。矢だけじゃつまんないよね。
あ、強化魔法とか使っちゃうなら今どうぞ。そのままこっちに来ても良いけどね。
(右手人差し指をくるくると回しながら、考える。雪辱戦と言えど、訓練故、喋ったり考えたりする余裕はあるし、相手もこうしてそれにつきあってくれるのだから、存分に言葉を並べて。)

遠条寺菖蒲 > 「人を化け物みたいに言うのは少し感心しませんが、
質問の答えとしてはその通りですね」

彼女の中の化け物定義は肉の塊の化け物であったり蟲の化け物であったりする訳で、
自分もそこには含まれたくはないと考える。

「全く……それならそうと最初から言って欲しいものでしたが……」

ほんとにゾッとしてくるのは前回の事を考えると、だ。
防具も神楽唄もあの時は小太刀すら使わずによくやったものだ。
魔術を使う機会をくれるというなら、使わせてもらおう。

「では、失礼しましょう。
魔術は言葉と意志を介して顕現する《我を強化せよ》!」

足元から全身を覆うように魔力が菖蒲の全身を駆け巡る。
血のように走るその魔術はよく出来ている。
世にある代表的な身体強化魔術のいいところばかりを組み合わせ構築されている非常に効率のいい魔術と言える。

蒼穹 > ごめんごめん。いやぁ、でも実際結構化けてると思うよ…。
…いや、その、モンスターという意味ではないんだよ?!
(思い出した。彼女、何だかんだ言って御嬢様で凄く真面目な人物だった。受信機と発信機の問題。己が思っていることが相手にそのまま伝わるとは限らない事をひしひしと痛感。)

あっはは。それもごめんってば。アヤメ程の使い手なら…私を見たらすぐ分かるって思ってたのさ。
退魔師として、昔は悪霊退散してきたんでしょ、ね?

おや、これは。
(前に見た、淡くも眩い光。魔力の流れを見るまでもなく、魔力の流れを見たのなら尚更、ここから、一気に能力が跳ね上がることは、火を見るよりも明らかで。ただでさえあの矢を受け止めるだけの能力があったのだし、それは随分と強いのだろう。さて、その強化を暫しの間見遣りつつ、待ってみる。こちらも、次の手は決まった。)

さて、矢を射る時間はお終いだよ。
かっとばしていこうか―――ッ!破壊魔法・第四術式「滅光」
(回すのも右手人差し指、向けるのも右手人差し指。最も、指を向ける必要はないのだが、そちらの方が格好いいし、魔法っぽいという本人のこだわりなのだが。)

(指先に魔方陣が描かれる。そこから飛び出すは、ペットボトル大の太さの、円柱型の真っ黒な一閃。簡単に言えば、レーザービームと言うのが近いか。狙いは、丁度彼女の足元の、真横。焦らすように、床を抉りながら彼女の方へと近づけて行く。彼女と己との間を埋める様な黒い一閃、後退による回避は容易だが、前進による回避は、厳しそうだと思わせられようか?強化魔法を使ったとて、近づけなければ、小刀は当たらないのだから…。)

(放射できる時間こそないが、これを防ぐことは、今度こそ出来るまい。矢と違ってエネルギーは連続的なのだから。もっとも、次こそ彼女は回避と言う選択をする…とは思うのだけれど、何か、彼女は先程の様に面白い事を見せてくれるのではなかろうか、と仄かな期待も馳せつつ。)

霜月 零 > 「(避け一択だ)」

見ていて、零は瞬間的にそう判断した。

そもそも、継続的に負荷が掛かり続けるタイプの攻撃は、受けるという防御に強い。雨垂れ石をも穿つ。どれだけ攻撃の威力が低かろうと、どれだけ防御が硬かろうと、時間経過で防御はいつか抜かれてしまうからだ。

ましてや、この一撃も当然威力は十分。照射時間が短くとも、瞬間的とは言え連続してかかる負荷を素直に受けれるとは思えない。

ならば、流すか避けるか。流す行為ですら触れる際に危険があるとあれば、当然回避。

そう言う選択を零の戦闘論理は弾きだした。

さて、だが菖蒲はどうするのか。

それをただ見守る。

遠条寺菖蒲 > 「それなら、蒼穹さんは破壊の化け物というところでしょうかね」

自身ほどの退魔師と言われても菖蒲に個別の個体に関する知識はないし、
昔はそれこそただ効率よく全力で敵を滅殺し斬殺しその存在を消滅させてきただけであった。
そこに相手がどんなものであったかは深く関与していなかった。

動き出そうとすると彼女の次なる術が目の前を走る。

――光線。

また厄介なものだ。
踊らされるようで少し癪だと感じたが、ここは少し後退するしかない。
だが、そのままというのも味気ない。

「魔術は言葉と意志を介して顕現する《灼熱の弾丸》!」

コイン程度の火弾を生み出す魔術。
狙いは蒼穹の胴体と大雑把ではあるが下手に急所を狙うよりは確実と魔術を紡ぐ。

蒼穹 > あっはは。惜しいね。化け物じゃないんだ、一応ね…破壊の神様…邪神って言うのをやってます。
ま、見方変えれば化け物なんだろうけどさ。
信じるか信じないかはさておきね。
(一応自覚はあるらしい。だけれど、やっぱり同じく、化け物と言われてしまうのは何だか…悲しい。確かに、能力的には化け物と言われて間違いはないのだろうけれど。)

(後退するのが見えた。概ね、予想通りだ。だが…。)

…あー、普通に使えるんだ、攻撃魔術。失念してたなぁ…。
(撃ち放っていた光線の放射は、地面に一つ、穴を残して止まった。腹部に、何やら外部からの魔力の干渉がある。)

(熱のような物を感じる魔術。そのサイズは小さいといって、間違いではないだろう。初級の火炎魔法だろうか。)
あっ…あっのねぇ、火属性魔法ってーのは女の子に使うんじゃないよ?!
特に男の子が居る前ではぜーったいに駄目だからね。火の魔法ってかなり危険なんだからね。
(等と悪態をつきつつ。服が焼ける。或いは、皮膚も多少、焼けるか。さっさと消火せんと、両手をやけたポイントへ、躊躇いもなくすぐに重ねる。魔力でできたものは魔力で壊せばいい。炎でも、何でも。手から魔力を流し込み、鎮火を始める。だが、己に少しの間、攻撃のない―――所謂、隙と言って間違いのないものが出来た。)
…こっちも火魔法使えって事なのかな、服が焼けたんだけど…って言ってファッションには大して拘らないんだけど。
(両手は相変わらず消火活動にいそしみながら、若干ぐぬぬ顔を向け。)

遠条寺菖蒲 > 邪神と聞いても割りとピンと来ない菖蒲である。
神は神であり、そこに多少の善性や悪性はあれど結局は神であるという認識を持つ菖蒲にはよく分からない部分であった。

「同じような詠唱で色々な魔術を可能としているのが、この詠唱法らしいですからね」

そう言って生まれた隙に漬け込むべく走るとしよう。
先程の閃光の――滅光は今の装備ではどうしようもない。
何か手はあるのかもしれないが行かないという選択肢はない。
火を使うなという怒声に対しては。

「次からは気をつけましょう!」と軽く受け流す。

そう言いながら突進する。
以前のように足に魔力を集中して最高速で駆ける。
小太刀は――鞘に仕舞われて。

霜月 零 > 「(余裕なこって)」

邪神と言う埒外の存在とは言え、攻撃を喰らう場面で「男性の目があるから火はやめてくれ」とは。
つまりは、攻撃を喰らう事より服が焼ける事の方が問題と言う事。随分な余裕である。

「(まあ、それが成立する存在っつーのも、確かか)」

的確に避け、そして継いでの反撃。菖蒲の手筋は合理的だ。

だが、その一手を「服が焼ける」程度の問題で済ませてしまう。
そして、平気で隙を見せてしまう。

武人としては論外、戦術性の欠片もない行動基準。

そして、それを成立させる圧倒的なエネルギー。

そこにあるだけで「努力」と言うものを踏み躙るレベルの圧倒的な力。

「(大したもんだ)」

呆れ半分に内心ごちる。だが、そこには一つの思いもあった。

「(……努力の果てに、俺は何を得るんだろうな)」

努力してもどうしようもない存在がいる。ならば努力は無駄なのか。
そうでないならば、その果てに何があるのか。

圧倒的なパワーの差を前に、部外者と言う立場から一つの絶望を抱きつつあった。

蒼穹 > (―――踏み込んでからの居合?それとも、何らかの魔術?炎を消し終わった頃には、肉薄といって差支えない状況にまで踏み入られている事だろう。そして、以前と違ってそれを迎撃する事も出来ない。手ぶらで戦ったのはまずかったか。)
ちょっ、えっ、それだけっ?!
(己の丹精込めたお説教は軽く、かるーく流されたのだった。)

―――。
(遠から近、一気に視界に映る彼女の姿は大きくなっていく。また、彼女の駆ける音もどんどん大きくなっていく。ごくり、と何かを飲み込む。小刀故、もう少しくらい隙があるかもしれないけれど、この速度だ。目前と言って良い距離まで迫っているし、次の一手で彼女が切り込んだとして全くおかしくない。そんな状況。幸い両手は使えるようになったし、消火も終わったけれど…遅かっただろうか?)

遠条寺菖蒲 > 罠かと疑ったが、ならば後もう半歩前へ出てもいいかもしれない。
それこそが罠だとしたらこれは賭けであると僅かに笑って。
手を刀に添えて霊気を集中する。
稲妻のように鞘から溢れる霊気の流れは本物で小太刀とは言え、相手が魑魅魍魎であれば必殺の一撃となることは間違いない。
日々鍛え上げてきた退魔の霊力が無理矢理圧縮され暴発しそうなのを寸での所で制御しきっている。
そして、

「寸止め――“禊祓”」

なんとかギリギリの射程からの一撃、
この機会を逃さんと抜刀されるだろう。

蒼穹 > (集められていくその霊気。今更術式を編むにしても、遅い。しかし、この一撃、何だか手加減の色が見えないのだが、ひょっとして彼女…本気で斬り伏せようとしているのだろうか。小さな刀に、溢れんばかりの"気"を込められた、そんな一撃。ここは、一手貰おうか…下手したら、かなりやばそうだが。)

(術式を編む暇がないなら、魔力をかき集めればいい。無論、強化魔法を使うことに比べて見劣りはするけれど、多少とも身体強化の効果は得られるだろう。その魔力が大きければ、大きいほどにであることは言うまでもない。その刀が振るわれるまでのごく短い間に、なるべく多くの魔力を己の内に集める。無尽蔵たる魔力の流れが、滝の如き音をその刹那にだけ、演習場に響き渡らせる。)

――――っっっ?!!
(炎の時と同じく、両手を躊躇いもなく、その刀の己を裂かんとする切っ先の辺りに向けて、叶うなら、それを掴もうとする。つかめようが、掴めまいが右手の掌が斬られ、人間の如く、鮮血が滴るだろう、肉に食い込むやもしれないが、それ以上は魔力で受け止められるだろうか?何か、嫌な感覚を覚える。これは、普通の刃で斬られたダメージではない、と。一瞬だけ顔を顰めた。)

遠条寺菖蒲 > ――白光。

白光(ひかり)が一瞬視界を奪う。
それは小太刀から放たれた刃の光か。
それは蒼穹の集めた魔力による光か。

白光が消え去ると小太刀は、その手のひらが掴む一瞬手前の位置で止まって。
霊力の過ぎ去る風だけが蒼穹を撫でる。

「――寸止めって言ったじゃないですか」

そう言って刀を下げる。
あの速度で抜刀した刀を予定よりも早く寸止めしたことにより腕の筋肉は悲鳴を上げているし、その無茶は肩から背中までに響いている。
次の一撃は放てないだろう。

蒼穹 > (眩い光が煌めく。一切の色を含まない、真っ白な。目を閉じはしないけれど、光は同じく、己の目で見る世界を遮断する。どちらが作り出した光か、それは、恐らく御互いに知り得ない事だろうけれど。)
―――あれ、「寸止め」って言うのまで含めて技の名前じゃないの?
(緩く蒼い髪が揺れて、そこからは「きょとん。」と言うべき、そんな表情。少しばかり、悍ましく目に映った斬撃だったけれど、来るなら受け止めようと思ったのだが…。何にしても、その手のひらが刀を掴むことは無く、空を切った。)

え、ええなに…もしかして手加減ってヤツ?
ええっと…それで、…お、おしまい…かな?
(下がって行く刀。それを見る目は非常に名残惜しそうで。おずおずと言った様子で彼女に問を投げる。表情は、遊ぶのを止めさせられる子供宛らだった。)

霜月 零 > 「あのなあ……寸止めってのは、寸……つまり小さな距離を残して止めるっつー意味だっての」

呆れたように蒼穹に声をかける。
まあ、自分から手加減することはあっても加減されることはなかったであろうし、そう言った認識に乏しいのかもしれないが、と思いつつ、それでも知っておけよと言う思いもある。

蒼穹 > いやその、そういう事じゃなくって!
寸止めの意味、それは知ってるんだけどね?!
…この、パワーだよ。小刀に入れたその気を「寸止め」にしていたんだと思ったんだ。
(ここでいう、「気」とは、彼女の刀の「霊力」の事である。何だか言い訳染みた様相で彼の言葉に応えつつ。)

遠条寺菖蒲 > 「手加減というか、真剣でも模造刀でも居合で人に当てたら相手の骨が折れたりとか真剣なら手なんて吹き飛びますよ?」

困ったように笑って剣を鞘に収める。

「それとちょっと無茶して刀を止めたので少しはまともに腕動かせそうにないですよ。幸い身体強化魔術がありますから普通よりは回復早いでしょうけど……」

刀を持っていた腕を軽くフラフラと振って答える。

「一応、油断による私の勝ちってことでいいですか?ね?」

と最早戦いの顔ではなく親しげにそう言う。

霜月 零 > 「霊力をしっかり込めたからこそ、当てなかったんじゃねぇの?」

そもそも気の寸止めってなんだ。相手の耐久を読み切ってそれにちょっと届かない分を込めるのか?難易度高すぎるだろう。
そう思い、尚も呆れたように口にする。

遠条寺菖蒲 > 「寸止めは文字通りの意味合いで当てる気がなかったということですよ。実戦みたいな訓練なら込める霊力は本気じゃないと失礼でしょう?それに正しく唄ってはいないので霊力のままでしたし…もしかすると少し張り手されるくらいの衝撃にはなったかもしれませんけど……」

笑いながら言い訳のように言う。
まるでパワーだとか気の寸止めくらい、鍛錬してるんだから普通でしょ?とでも言いたげでもある。

霜月 零 > 溜息を吐く。もうなんか、話の次元が違う気がする。

「なんつーか、流石っつーか、寧ろ呆れるっつーか。そんな感想しか出ねぇよ」

自称才能のない出涸らしとしては、基本的に巫術は一定以上の力量相手には状況の許す最大量を使う事にしてきた。

相手の耐久を見切って、と言うのは、中々難しかったのだ。

こりゃあもう敵わん、と額を抑える他なかった。

蒼穹 > あっはは。あれくらいなら受け止められると思うんだけどな。
あー、別に筋力とかじゃなくて魔力の賜物だけど。
(結構、負け惜しみである。残念ながら、これにて閉幕なようだが、無い物ねだりの視線を向けつつ。)

ん、そう…。お疲れ様。
疲労困憊満身創痍ってやつかな。…ん、ちょっとこっちへいらっしゃい。
(折角遊んでくれたのだし、二度目だし。己の損傷と言えば服の焦げ痕くらいなもの。対して彼女は、命中打こそなかったものの、相当疲れている気がする。ので、良かったら癒せれば、等と考えつつ、手招き。)

にゃ、にゃああああッ!…こ、この私とあろう者が…!
ゆ、油断していたとはいえ…に、二度も同じ相手に遅れをとるだなんてぇ…ッ!
(相手は質問口調だったが、勝手に蒼穹自身の中では答える前から既に負けたことになってるらしい。)
…ええと、次は負けないから。ほんっと次は負けないから。
(ただ、その悔しそうな表情の中にも、何処か楽しそうな様相が浮かぶのは、言うまでもなく。同じく、戦いが終わった後の、緩い雰囲気を纏いながら、そう宣言。)
もうね、次はこっちも剣つかうから、剣。あと炎も。…くぅ…、私は魑魅魍魎じゃないんだよ…っ。
(次こそは。果たして、彼女が雪辱できるのはいつの日か。)


当たっても大丈夫だったんだってー。
…って、アヤメも確かにそこまで考えてないか。現に寸止めだったし。
(何となく、彼の視線が痛い。敗者に太陽が微笑むことは無いのだ。)

霜月 零 > 「ま、この試合形式で言えばアンタの負けだろーよ。つーかもう少しごり押しすりゃ何とかなったんじゃねぇか?」

蒼穹に言いながら、自分との戦いを思い出す。

あの時は圧倒的なパワーの前に技術が踏み潰されて大層困ったものだ。
燕返しをエサにしての絶妙剣をせっかく当てても、大してダメージにならなかったのだからどうしたものかと思ったものである。

遠条寺菖蒲 > 「え、でも真剣だよ…?当たったら痛いじゃすまないだろうしさっき女の子の身体にとか言ってたから痣になっても怒るかなって思ってね……?」

少し悩むようにして蒼穹の言葉に反応した。
寸止めだったのもそこを意識してだった。
その後の手招きには疑うことなく応じる。
やはり、全力で動くのは大切だと思う。


「次辺りは本気でやり合えるのかと思うと少し楽しみかな?
だって、今回もだけど私の訓練であって蒼穹さんの訓練には余りなってないもの」

そう、結局今回も油断を突いたが万全の蒼穹相手にはどうなっていたか想像ができない菖蒲である。

霜月 零 > 菖蒲の言葉を聞きながら、ぼんやりと思う。

「(……コイツの「本気」とやり合えるヤツなんて、いるんかね)」

埒外のパワーを持つ邪神。圧倒的なパワーで技量をねじ伏せてしまえる、超常と言ってもいい存在。

頂点とは孤独を意味する言葉、と言う人もいる。

ここまでの力で更に加減や油断をしている以上、本気を出されたら、自分などは即消滅だろう。

それほどの存在の「訓練」になれる相手、それほどの存在の「本気」とやり合える相手がどれだけいるのだろうか。

それは強さを求める剣士としては一種の憧れを抱くものではあるが……とても、孤独なものにも思えた。

数代前の当主は「神を斬った」とされているが……なら、その当主はこのレベルの怪物だったのだろうか。

自分がそれくらいの力を持っていれば、あるいは訓練程度なら出来たのかもしれないが。と益体のない事を考え、そっと溜息を漏らす。

自分はそれほどの才能はない。無い物ねだりをしても、虚しいだけだ。

蒼穹 > あっはは。でも、あんまり力加減し無さ過ぎたらそれはそれで…ね。
(軽く、握り拳を作りながらそれを見遣る。ふと、思い起こす、邪神であるが故に、想像を絶する力を持ち、それが故に忌避された記憶。だから、こう言った訓練戦…殊に、あくまでも、互いに友好的であるからこその戦闘においては必要以上に手加減…若しくは、油断しているのは、否めない。力加減は、分からない。)


…ああー…その辺は気にしなくって良いよ。服はどうしようもないけど。
ダメージを壊す様な強引な破壊魔法も持ってるし…。っていっても、何だかんだ言って優しいね、アヤメはさ。
(緩く、笑みを浮かべながら。そうして、己の方へとやってきた彼女の腕をなでなでしてみようと手を伸ばす。人間にとっては、かなり負担なのだろうか。彼女の腕の疲れを壊す―――ここでは、癒すと言った方が良いか―――様な心づもりで。)

え、私本気出したら…凄い危ないよ?それくらい、分かると思うけど。
(おずおずと言った口調だった。己の中の感情は、零が思う通り、ある種の孤独の様なもの。それは、人に幸を齎すものではなく、人に災いをもらす様な力。故に嫌悪され、忌避され、疎まれる。)
でも…最初の一撃…私の矢を受け止めたのは、忘れないよ。凄いよね、あれ。
もしかしたら、私の本気も、受け止めてくれたりするのかな?…なーんてね。
(少しばかり、シリアスになってしまったけれど、こういうのは私には合わないなぁ、と一笑を馳せて、くるっと回って見せた。意味はない。ないが、それで、ほのぼのとした雰囲気になったらいいな、という意図のもとに。)

霜月 零 > 「ああ、アレは見事だったな。てっきり回避行動を取ると思ったんだが」

蒼穹の最後の言葉に同意する。

あの矢は、受けるよりは明らかに避けるべきもの。それに対し突っ込んだことには驚いたが、それ以上に流してしまったことに驚いた。
並の技量では、出来ない事だ。

その感心を隠さず、素直に称賛する。

遠条寺菖蒲 > 「やっぱり蒼穹さんは凄いね」

純粋に、そう純粋に。
やれることが多い。それは魅力的に映る。
先ほどまでそこに宿っていた神性の意志かは分からないが一瞬だけ静電気のようにパチンを反応するが次にはなくなる。

「不用意に本気を出せないって言うと少し似てるかもね。私も余計な本気は出すなって言われてるからね」

恐らく、魔術だけでは勝てないだろうから『唄』も使った。
異能や正装は使ったらなにを後で言われるか分からないから制限して。
いつか全ての手札を切ってみたくはあるな、なんて考えつつ。

「あれはちょっと賭けだったんだけど、上手くいってよかったわ」

一度見ていたからこそある程度予測していけるかと踏んだ行為であった。
目を閉じて思い出して言う。
あれもまあ、ぞっとした思い出だが今は笑えるというものだ。

霜月 零 > 「本気を出すな、ねぇ……」

またしても溜息。自分は、常に持てる手札で最良の手を切りながら戦っているつもりだ。

つまり、常に全力。本気を出しに出して、どうにか食らいついている。

それに比べこの二人は、アレだけの戦いをしていながら本気をまるで出していないという。この格差は何なのだろうか。

それを思うと気が沈むが……それを見せる事こそ恥。

溜息に留め、努めてただ呆れたように、二人を称賛する。

「それでまだまだ本気を出してねぇとか、本気出したらどうなるんだか。
ホント、大したもんだよ」

内に秘める悲哀を、出来る限り外に出さないように。

それが、彼の最後の意地だった。

蒼穹 > ………あっはは。
("凄い"。そう言ってくれる彼女は、どういう意図を込めてくれているのだろうか。柄になく、感傷的になってしまった故、いつもの調子で口が回らず、笑い声だけが漏れた。喜んでおけば、良いのだろうか。)

はぁ、そうなんだ。…何だろう。
もし良かったら、今度さ…誰にも人目につかない所で、本気の合戦、やってみる?…とか、ね。
(短い間で知った彼女の性格の一つとして、他の者に技を見られるのを嫌うと言う事を知っている。それは、いざという時の為にとっておいているから、という理由で。だから、本気を出すことを避けるのだろう。実際、彼女も同じように、本気ではなかったのだろう。己もまた、本気を出すのを潔しとしない。理由は、畏れられるのではないか、嫌われるのではないかと言う、きっと誰も知らない懸念。けれど、彼女なら…どうなのだろうか。)

純粋にびっくりしたよ。
…何であれに向かって行ったのかって目を疑ったね。その次の光景にはもっと目を疑ったけど。
(単品と言えどあの矢を…。そんな光景、嘗て見たことがなかった。そして、あの時、とてもドキドキしていた。本気の彼女なら、きっとあれを斬り伏せることも出来よう。そう思うと、楽しさが沸き起こる。)

あっはは。どうもどうもっ。
おにーさんは…。
(ちら、と横目に映った彼の賞賛の裏に映った思いと、言葉。彼は、「良い兄」としてあることに全身全霊をかけていたことを思い起こす。否、正確には己が勝手に思っているだけなのだが、そうであることに違いがないだろう。肉親を穢されて全力になれない者が何処に居よう。)
…そう、だったね。
(俯いて、地面に溢した。きっと、誰にも聞こえないくらい小さく。その悲愴な感情を察してかどうかは分からないけれど。)

霜月 零 > 「はっ、才能のない出涸らしは気にすんな。
何、アンタらほどの力はなくとも、最低限ゴロツキ相手に後れを取らねぇ程度には鍛えてるつもりだ。そうそう無様に死んだり負けたりはしねぇよ」

肩を竦めて、蒼穹の視線を笑い飛ばす。

目の前に繰り広げられた、絶望的な戦い。頂きは遠く、そこに手が届く可能性は限りなく低い。

だが、それでもそれは、努力を止める理由にはならない。

最低限妹は守れるように……凡人ならば凡人なりの最大限を、追求する義務が兄にはあるのだから。

だから……憐れんでくれるな。もし憐れんでくれているのであれば、その優しさが何より胸を穿つ。

そう口にはしないが、それを表すように、笑い飛ばす。

遠条寺菖蒲 > 「私の場合は少し、無理かもね。『色々』と監視の目があるみたいだから」

そう色々と。地味に今も此の場を遠く離れた誰かが見ているかも知れない。
前に比べてその気配は小さくなったけれど、消えたわけではない。

「一段落したら、そうできたらいいな」

そう一段落つけたらいいかもしれない。



霜月の言葉に思うことがあった。

「そういうのはダメだよ。
口に出す言葉っていうのは自分を縛るものだから、自分を才能のない出涸らしと言うのは負けて死ぬ時にしなさい。
言葉はチカラ。チカラは言葉。
あなたを抑えつけてるのはそんなあなた自身の言葉ね、きっと」

言うべきことはそれだけで、他に言うべきことはない。
自分を見限る者に道など拓けるはずがないのだから。


「……さてと、治癒して貰ったとはいえ疲れたわ。悪いけど、私はここまでにさせてもらうわ」

このまま第二戦だとかそういう元気は流石に残っては居なかった。

霜月 零 > 「……ち、そう言えばそうだったな」

額を押さえる。過去にも「自分を見限る言葉を言うな」と言われて、意識してきたつもりだったのだが。どうにもまだ、修行が足りないようだ。

「テメェでテメェを限定してちゃ世話ねぇな。ったく、今のは忘れてくれ」

ガシガシと頭を掻きながら口にする。

「で、まあ……流石にワンモアって体力はそりゃねーだろうな……と、そうだ。アンタに言う事があったんだ」

その言葉は、菖蒲に向けて。

蒼穹 > …そう、ならいいさ。
必要以上に力を持つことなんてない。何かに全力になれるなら、それが一番良いさ。
きっかけは最悪だったかもしれない、けど、楽しいでしょ?兄妹で、そうやってお互い全力になってるのって。
だから、あんまり自分を卑下せず、楽しくやりなよ。
(そちらに、視線を向けることもなく、演習場の地面に視線を落としながら、小さく続ける。彼が何を思うかは、分からない。けれど、その態度からは、何となく哀愁めいたものが感じられた。結局、「楽しければ良い」何かに必死になって、それを掴むことが出来たなら。過程はどうあっても、楽しいに違いはない。或いは―――)


はぁ、何か大変だねー…。つくづくこの学園って物騒だと思うよ。
あっはは。…そう、ひと段落したらね。
…楽しみにしてる。
(うん、と頷いて。)

そう、んじゃ、私もこの辺で失礼しよっかな。
…時間も時間だしね。それじゃ、二人とも。今日はありがとう。
と、二人はつもる話がある様だし、私はお先に、これにて失礼するね。
(くるん、と演習場の出口に方向を転換する。さっと手を上げて揺らして。それから、ゆったりとした足取りで帰って行った。)

ご案内:「第二演習場」から蒼穹さんが去りました。<補足:PCNo:53/気紛れな邪神様。>
遠条寺菖蒲 > 去りゆく蒼穹に手を振りつつ、

「蒼穹さんもまた今度ね」

と答えた。


霜月の方を向いて、

「それで言いたいことって何かしら?」

と首を傾げて問う。

霜月 零 > 「ああ、じゃあな。
……なに、妹の弓にブチ抜かれる事がない程度には頑張るさ」

今度は冗談めかして。そう、あの妹は自分に向かって弓をぶっ放してくるのだ。それを対処する程度には強くならないと、どうなるかわかったものではない。

くつくつと笑って、蒼穹を見送った。

霜月 零 > 「……あの時は、助かった。
あの後妹と話したよ……復讐なんて、やめてくれとさ。
だから……俺は、復讐を諦める。復讐なんかより、アイツを守る兄であることにする。
ここに至れたのは、アンタがカフェで色々と言ってくれたおかげだ。
……ありがとう」

その言葉は、卑屈も何もなく真摯に。
ただ深々と、頭を下げた。

遠条寺菖蒲 > 「そう、良かったじゃないですか。
言ったのは確かに私だけど、感謝と道を間違えなかったことは芙蓉さんに感謝すべきです。
選んだのは彼女で受け入れたのはあなたなのだから。
ですから、必要以上の感謝はいらないんですよ」

言われるまでもなく、今日現れた時の姿を見ればなんとなくそんなことは分かっていた。
だから、そういうと頭下げる霜月を置いて先に演習場を後にする。

ご案内:「第二演習場」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:半袖シャツにハーフパンツの運動着姿のポニテで蒼い瞳の少女>
霜月 零 > 「……アイツに感謝、なぁ」

なんだかこう、とても気恥ずかしいものがある。そもそもそれを補って余りある被害を受けているし。

ただ、まあたまには、素直になってやるのもいいかなあ、などと思いつつ、一人残って少し考える。

「……ちーと、やっとくかね」

正直、見てただけで若干不完全燃焼だ。体を動かしたい。

その場で刀を抜き放ち、素振りを始めた。

霜月 零 > 「……出力、なあ」

素振りをしながら考える。どうも自分は技術偏重になっている気がする。

それを言ったら全ての剣術がお終いなのだが、刀で斬れない相手には本当にどうしようもない。

基礎こそが奥義……とはいえ、もう少し威力のある大技を会得してもいいのかもしれない。

霜月 零 > そこで思い出したのは……数代前の当主が編み出し、術式だけ受け継がれてきたある魔術。

「……いや、駄目だろ」

しかし、それを一蹴する。……威力が高すぎる上に、範囲が広すぎて市街戦に向かないのだ。

「なんか考えるしかねぇか……」

ボヤきながら思考を巡らせる。幸い参考になる相手は多いこの学園だ、そう言った技を開発するのを目標としてもいいかもしれない。

霜月 零 > 「ま、おいおい考えるか」

こういうことは焦っても仕方がない。ひとしきり素振りをした後、軽く掃除をしてその場を後にする。

……心には、小さな棘が刺さったままだった。

ご案内:「第二演習場」から霜月 零さんが去りました。<補足:いつも気だるげな青年剣士。一年。太刀一本、小太刀二本の三本の刀を持つ。>