2015/06/26 - 03:35~03:24 のログ
ラヴィニア > 菖蒲の視線移動に気づいたラヴィニアの口が開く。

「ああ、鎮魂させていただいているのですわ。ええと、なんと仰ったかしら……風紀委員の、タケル・シキジョウ様」

響く鐘は、時刻を告げる鐘ではなかった。
それは弔鐘だ。

確かに落第街周辺において主に違法入島者の命が紙のように軽いという事実はある。
それでも正規学生の死亡はやはり頻繁なものではない。

「商店街の方で……色々ございましたようで」

その曖昧な言い方は菖蒲が知っているのかどうかを確認するようでもあった。

遠条寺菖蒲 > 「鎮魂……」

風紀員で色々と言うことは、
殉職ということだろう。

となると2日くらい前にみた報告書の名前だろう。
タケル・シキジョウ。
式状 猛。

「黒い鎧騎士の被害者の……」

理解するとそう、呟いていた。
全く知らない相手ではあるが、誰かを助けようとしたのかもしれない。
最近は色々と起き過ぎている。
学園の中心部でもそういうことが起きているのだから色々と問題だ。

ラヴィニア > 呟く菖蒲にかぶせるように、ラヴィニアは言葉を続ける。

「ザデルハイメスと言う名前だそうで……わたくしとお姉さまが初めて出逢った日に遭遇した、アレの……呪術師、本体です」

ゆっくりと、噛んで含めるように。
菖蒲がラヴィニアの顔を真っ直ぐ観察するとすれば、わかるかもしれない。
その表情は弔鐘に向けて悼むそれではない。
言葉を放ちながら、菖蒲の方を観察している。

遠条寺菖蒲 > ラヴィニアの言葉に思わず彼女を見る。

「“失落園(フォールアウト)”の……」

そこまでは菖蒲の元に来た報告書には記されていなかった。
最も菖蒲が目を通したのは風紀委員会から現場検証やらの途中経過の報告書であったのだが。
偶然、そう偶然というのかもしれないが名前を聞いて反応した菖蒲はラヴィニアのその顔を見る。

――悔しそう?

なんとなくそれに類する後悔だとか――憎しみだとか?
それは下水で害来腫を前にした時の自分を思い出すようなものに近しいような気がした。
だからか、見つめた。
この後輩の子が何を思っているのか少し知りたくて。

ラヴィニア > 悔しさ、がどういう大本から来ているのか。
それは菖蒲には、多分理解しにくいものではあるだろうが。
明るい橙の中心にある黒いものを。
しかしその表情はすぐに融けて、八の字にした眉で、先にラヴィニアが眼を逸らした。

「お姉さまもお気をつけくださいね……?」

覆いがある。
初めて出逢った時におろしていた、黒いヴェールのように。

遠条寺菖蒲 > もしかすると余り踏み込んでほしくない部分なのかな、と菖蒲も瞬きと共に数秒視線をずらす。
いくつかのもしかして、という勝手な想像をしたが打ち消し勝手にそう云うのを考えて心配して喜ぶような子でもないだろうと考える。

「ええ、私だって命は惜しいもの。危なかったら逃げるわ」

逃げれれば。なんて言う悲観的な事は言わないが、式状猛と言う青年は一瞬で突然倒れたという報告だった。
であれば、そんな楽観は出来やしないのだろうと考えるが言葉にするのは軽口くらいが程よいような気がして。

「ラヴィニアさんとこうして話したりしたいから私はちゃんと気をつけるわ」

なんて少し茶化すように言う。

ラヴィニア > 話したいから、と言われるとやや眼を細めて笑みを作る。

「あら、それは非常に嬉しく思いますわ。
わたくしもお姉さまとお話するのは楽しみにしておりますから」

言って、あわせた両手で口元を隠すようにする。
恥ずかしがるポーズのようでもあるが、表情に一切照れはない。
そのまま笑みを深くして

「でも」

続ける。

「お姉さま。『逃げるわ』なんて、気のないことはおっしゃられるものではありませんわ」

軽口に軽口で返す。
その笑顔は微笑みというには艶やかすぎる。

遠条寺菖蒲 > 「そう言ってもらえると嬉しいわ
楽しみは共有したいからね」

と軽くウィンクをして答える。

「そうかしら?
私だって死ぬのは怖いし、きっとちゃんと逃げると思うのだけど」

どうしてか上手く視線を合わせられないと思った。
図星、と言えば図星だからかもしれない。

「英雄と蛮勇は違うと理解しているから……大丈夫」

とは口では言っているが、
問い詰められると「はい」とは言えない気もする。
問われたくないからか、逃げようと思って逆に問いかける。

「ラヴィニアさんはどうしてそう思うの?」

ラヴィニア > 「あまり掘り返す話でもございませんが」

そう前置きして、両眼を伏せた。

「お姉さまと初めてお逢いした日のこと、忘れておりませんし」

それで、遠条寺菖蒲という存在の、どうしても残る芯の影の端を見たと。
理解や、理屈や、理といったものから離れたところにあるそれ。

「これで、案外よく見させて頂いているつもりですから」

開き直した瞳が、下から上へと菖蒲の全身を見た。

遠条寺菖蒲 > そう言われて、少し言い返せないと思ってしまう。

「だって、あれは……『助けて』って聞こえたから。
聞こえたから放っては、おけないでしょ?」

そう、聞こえてしまったから。
その悲痛な声を。
知ってしまって放置するなんて言うのは、どうにも菖蒲としてはよろしくないことだった。

ラヴィニアの瞳に見つめられて少しだけ気恥ずかしくなる。

「なんだか出来の悪い先輩を見せてる気になってきますね……」

反面教師という言葉があるが自分がそういう存在になってしまっているのではないだろうかと少し考えて恥ずかしくなる。

「ら、ラヴィニアさんも気をつけてね?」

見つめられるのは恥ずかしくて、そう返すように言う。

ラヴィニア > 「そうですわね」

一瞬言葉を詰めた菖蒲に、問い詰めるつもりはないという風に頷く。

「助けてと聞こえて、だから助けようとすることは、わたくしも善いことだと思います。
隣人は、愛さなければ。
ちゃんと逃げるという言葉とは、食い違ってしまいますけどね?」

最後、茶化すように語尾をあげ、

「ですから、お姉さまはそのまま、居てくださって欲しいと僭越ながら思っておりますので……」

否定をするものではないと。
悪い先輩だとは思っていないと、その上で

「――――だからお姉さまも、『助けて』と言ってくださって構いませんから」

遠条寺菖蒲 > 「……」

一瞬、ラヴィニアの言葉に呆けてしまう。
しかし、それはほんの一瞬ですぐに言葉を取り戻す。

「ふふ、私はちゃんと言える子ですから大丈夫です」

笑って、少しだけ声を大きくしてそう言う。
私だってそれくらいは、言える。
言えると主張する。

「それと逃げるとは言っても目の前にいるひとを見捨てるとは言ってないもの。
助けられるかもしれない。手を伸ばせば届くかもしれない。
何もしないで見捨てたらきっと後悔するから……そういうのは嫌じゃない。
だから、戦うとしてもそれは助ける為の戦いだから。
逃げる為に戦うんだよ」

と言ってから少し考えるようにして、

「……でも、戦ったらヤバイ相手なんだから戦ったらダメよね」

と言って自分の言葉に笑う。
確かに矛盾してるし食い違ってるね、と。

ラヴィニア > ムキになった、というとまた語弊があるのだろうが。
言葉を強くした菖蒲を、見上げる微笑に熱が交じる。
その強い視線を受け止めることが愉しくてしかたないということを、どれだけ隠せているのだろうか。
目を細めて、惚けるように、

「はい。差し出がましいことを申し上げてしまったかもしれませんね。
こちらに来てようやく出来た先輩ですから、何かあっては、心配で」

ああ、でも間違いなくあるのだと、それは言葉にならず、
そして頷いた。

「危ない相手となら、共に逃げますから、
……では、どうでしょうか、お食事は済ませられましたか。共に参りませんか」

言って、菖蒲の手に手を伸ばした。

遠条寺菖蒲 > 「昔の人の言葉らしいけど『命あっての物種』とか『命に過ぎたる宝なし』とかあるからね」

その時は一緒に逃げようね、と笑って合わせるように頷く。
ご飯は、と言われて
少しだけ悩むようにしてから

「折角だし、一緒に食べましょうか」

応えてその手を取る。
いい後輩に恵まれたものだと嬉しくて自然と笑みをこぼした。

ラヴィニア > 「はい❤
そういえば、この間カフェで抹茶ラテを頂きまして……」

そうして、指を絡めて菖蒲の手を引いていった。

ご案内:「学園地区教会前」からラヴィニアさんが去りました。<補足:水泳部の14歳。イタリアから留学してきた元修道女。今は制服>
ご案内:「学園地区教会前」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。生徒会幹部候補生>