2015/06/23 - 03:04~02:59 のログ
ご案内:「落第街 酩酊通り」に鳴鳴さんが現れました。<補足:道服の童女、邪仙/元ロストサイン>
鳴鳴 > 暗澹たる落第街の一角。酩酊通りと呼ばれる通り。
そこは普段酩酊者がよくふらついていたり倒れていたりすることから名づけられた場所であった。
近くには非公認の酒場などが並んでおり、そこで質の悪い酒に酔った者たちがここにたどり着くというわけである。
酩酊者の集まるところ故に喧嘩なども起こりやすい場所だが、今回は妙に静かだった。
その人気のない酩酊通りを、一人の童女が歩いていた。
黒に近い紫色の道服を着た、褐色の童女。赤い瞳。胸元には赤い五芒星のような刻印が刻まれている。
「待ってくれないか。僕は別に君を取って食おうというわけじゃあないんだ」
邪悪な笑みを浮かべながら、悠然とした態度で童女は何かを追っていた。
彼女の視線の先には、一人の少女がいた。違反学生であろうか。二級学生であろうか。
兎に角、童女から逃げているのは間違いない様子だった。
鳴鳴 > 「ただ、僕の享楽の相手になってほしいんだ。勘違いしないでほしいな。
僕の享楽は殺戮や暴力だけとは限らないよ。僕の気分次第。
こうやって人払いもしてあげたんだ――きっと今頃、彼らも楽しんでいるよ」
赤い目を光らせながら、少女を追う。少女は一種の幻術にでもかかっているのか、同じ場所を何度もぐるりぐるりと回り続けていた。
酩酊通りに人がいないのは当然であった。童女が消したからである。
といっても、殺したわけではない。何かしらの術を用いて狂気の夢の中に落とし込んだのである。
彼らは路地裏に消え、狂気に怯えおののいているだろう。
「まあでも、これもそろそろ飽きちゃったな。
君もずっと叫んでばかりだし、面白くないね」
そういうと、少女の方に向けて軽く指を振るう。
すると、童女の背後の空間が突如避け、奇怪な触腕めいたものが出現し、少女に伸びていく。
「ほら、捕まえた」
少女の胴体にそれは巻き付いていく。
鳴鳴 > 「僕は君達に教えてあげたいんだ。享楽を。
僕は君達に教えてあげたいんだ。あらゆるものは無意味で無価値だと。
本当に大きなものの前では、何も意味をなさないんだ。
善も悪も、生も死も、全部同じだよ。
荘子も言ってるじゃないか。万物斉同、絶対無差別って」
けらけらと嗤いながら言葉を紡ぐ。だがもちろん少女にそんな言葉を聞いている余裕などない。
泣き叫ぶだけである。
「面白くない……面白くないな、君は。
僕は見たいんだよ。僕の予想を超えたような、理解を越えたようなものが。
君の反応は普通じゃないか。面白くない面白くない面白くない……。
……僕をアッと言わせてみてよ?」
胸元の赤い刻印が光る。
触腕は徐々に引き寄せられ、少女を童女の方へと引きずっていく。
「僕の言葉を否定してよ。
僕の言葉は間違っているといってくれよ。
ねえ、ねえ――」
鳴鳴 > 少女は答えない。気が狂ったように泣き叫ぶだけだ。
「もう「門」もこの街にあるんだよ。“彼ら”が帰ってくる時もそう遠くない。
門の果てから踊り狂う彼らがやってくるんだ。そうなる前に、享楽を知っていた方が幸せだよ。
でも、僕はそれでも抗う君達が見たいんだ。
だから、さあ、僕を否定してくれ。
僕を殺してくれ。
腐った条理を吹きとばしてよ。
ねえ、ねえ、ねえ――」
少女の胴体を、名状し難い触腕が強く締め付ける。苦しみの声が上がった。
このような状況で、童女の事を否定できるはずもない。抵抗できるはずもない。
だかそれでも、童女はそれを強いていた。求めていた。
「……そっか。じゃあ、さよなら。
どの道そんな様子じゃ、ここから一生抜け出せないだろうしね。
僕が尸解を手伝ってあげるよ」
鳴鳴 > 「君も、死んでいい仙人になれればいいね」
そう少女に囁く。
すると、触腕がわななき、一気に童女の後ろに空いた穴へと引きずられていく。
その際に、少女はこの世の終わりのような声を上げた。
見てはならないもの。見るべきではないもの。そう言ったものを見てしまった。
「彼らの良い餌になれて、しかも尸解もできて。
とても、よかったじゃないか。
どの道、こんな街にいるくらいなら、そうしたほうがずっとよかったよ。
……ああ、つまらないな」
絶叫と共に、少女は窖の中へと引きずられて行った。
残されたのは、童女のみ。
ご案内:「落第街 酩酊通り」にクラスカさんが現れました。<補足:目立つ赤色のカーディガンで銀色の前髪が眼にかかっている男子生徒>
クラスカ > (「ああ、遅かったか」)
(眼前に広がる残酷な現実に手を伸ばすには、あまりにも距離が遠すぎた)
(どこから見てもスーパーマンには見えない男子生徒は)
(危機一髪も救えないし、ご期待通りに現れることもできないのだ)
(どうするべきか、と悩む前に逃げの一手を打つべきかと考える)
(―見逃してくれるのならば)
鳴鳴 > 「僕に敵意を見せるなり、抵抗するなり。或いは服従するなり。
いくらでもできたじゃないか。なのに、泣くばかりなんて。
……そうしていれば、助けてあげたのに。莫迦な子だ」
暗い窖の中で、少女がどうなったのかは定かではない。
ただ、歪んだ曲線の支配する世界で、狂気に囚われつづけたのは確かであろう。
「――君もそう思わないかな?」
ぐるり、と童女の体が踵を軸にして後ろに回る。
赤い目が輝き、口元が歪む。
「僕は詰まらないものが嫌いなんだ。
僕は自分の享楽を満たしてくれないものが嫌いなんだ。
僕は自分の享楽を否定してくれるものが好きなんだ。
――ねえ、どうして間に合ってくれなかったの?
どうして、どうして、どうして?
君が僕の邪魔をしてくれていれば! 僕は楽しめたのかもしれないのに!」
闇色の身で風を切りながら、遠くにいた赤色のカーディガンの少年に言う。
「いいよ。許してあげる。
君が僕の享楽を満たしてくれるなら」
そう言うと、闇の中に手を突っ込む。
そこから何かが抜き出されていく。
それは刀だった。柄の部分に九つの灯籠めいたものが結びついている。
クラスカ > (生活委員会を辞める人間が増えた理由は、現実を離れた事象に遭遇する可能性が極めて高いことにある)
(常世学園に在学している以上奇奇怪怪への耐性は持って然るべきなのだが)
(今回の例などは、心に亀裂を作るには容易だろう)
(そもそも、最初にして最終的に帰結する問題は「あの童女が何者か」という一点だ)
(無数の異邦人が混在する常世島では、外見の年齢は正体を定義する指標にはならない)
(齢100歳を越える幼女もいる。一見50歳を過ぎたようで実際ただの壮年男性もいる)
(遭遇から一分にも満たない短い時間で得られた至極単純な答えは)
(『人の形を取っているだけの、人間とは異なる何か』)
(と仮定するに至った)
(童女の赤い瞳で連想したものは動物の兎)
(眼の前の童女も兎だったら、可愛げも感じられるのだろうか)
(ふう、と下らない思考を抑える。腕を横に開き、両の掌を広げ)
そうですか。
(唇の端を釣り上げて、ただ、哂う)
(喜劇の舞台に立った役者、綱渡りをする道化師として)
生憎僕は、ただ毎日に流されるだけの、矮小な等身大の生徒です。
あなたが求める運命も。
あなたが求める必然も。
あなたが求める享楽も。
何一つ持ち合わせていない、ね。
そして僕は、あなたの空っぽの杯を満たすための道具になり下がるつもりも、
ゼロです、この野郎。
(一歩、足を後退させる)
(挑発したはいいが、逃走の手段を勘定に入れていなかったのだ)
鳴鳴 > 「なるほど」
少年の言葉を聞いた。
嬉しそうに童女の笑みが深まる。
「そうだ。それだよ。
僕が求めているのはそれなんだ。
僕を否定して僕を愚かだと笑って僕を虚ろという。
それだ、それなんだ! 君達がどんな存在でも構わない!
そんなもの、「道」の前では何の意味もなさないのだから!
全ては相対的な差別に過ぎないんだ。絶対的な価値なんて何もない。
だから僕もしたいことをする。君もしたいことをする。
それでいいんだ。ありがとう。
僕を否定してくれて……!」
瘴気があふれ出る。けたたましい笑い声が響き渡る。
赤い目が映すのは混沌の宇宙のような狂気の輝き。
「ならば抵抗してくれ。
ならば僕を殺してくれ。
君は今その資格を持ったんだ。この僕を否定したのだから。
さあ、したいことをしよう。僕と君の享楽のために!
僕を裏切ってくれ!」
高らかに笑うと、一気に童女は駆けだした。
挑発に乗るように。その刀を携えて。
「僕は“腐条理”の鳴鳴――君には、特別に名前を教えてあげる。
君がどうしてくれるのか、とても楽しみだ!」
鈴の音が鳴るように響く刀。その切っ先を少年に向けて突っ込んでいく。
クラスカ > (笑みを強くする童女の様子に、自分の軽薄な行動を後悔する)
(ああそうか)
(人間でないなら、人間の道理からは外れているのだった)
(嘲笑も、挑発も、蔑みも)
(何一つ交渉の材料にも賭けの上乗せにも、なりはしない)
(まだ隻眼の戦闘狂の男の方が人間味があったよ、だから助けて下さいとヘルプのサインを送りたかったが)
(そんな都合のいい話は絵空事だと身に染みている)
(戦えば死ぬ)
(あるいは言葉にすることも憚られる、今しがた存在を消された少女と同じ末路を辿るか)
(どんな結果が待つにせよ、すべての選択肢が死と同義だ)
(まともでない相手と組み合うには、盤外の戦術に頼るに限る)
(すなわち逃げる)
(絶体絶命の状況下でも、極めて合理的で冷静な思考だけは可能な自分に感謝する)
(空間転移? 瞬間移動?)
(そんな都合のいい手段が用いれたら、すぐに立ち去っていた)
いやあ、アドリブって苦手なんですよね。
(困ったように頭を掻く)
(どんな態度を見せても、童女の姿をした混沌の塊は嬉々として反応してくるのだろう)
(ならば、舞台から降りてやれば興味を失って溜飲を下げてくれるのではないか?)
(童女の構える殺意の篭る武器に対して、ポケットから取り出すのは、一枚のカード)
(黒い霞の描かれた、ごくありふれた唯の一枚の薄い紙を破れば)
(周囲に漂う闇の気配の濃さが深まる)
(闇は男を覆い、一帯を飲み込んで、鳴鳴の視界をも奪い去る)
鳴鳴 > 「おや、逃げるのかな。それも当然だ。
渾沌の話を知っているかな?
昔、渾沌という帝王がいた。そして儵と忽という帝王がいた。
渾沌は彼らと出会い、彼らをもてなした。二人は非常に感謝した。
二人はとても喜んだけれど、渾沌には目も耳も口も鼻もなかった。
だからお礼にと言って、彼らは穴をあけてあげたんだ。渾沌の顔にね。
そうすればどうなったと思う? 渾沌はもう死んでいたんだ。
余計な事をしたからそうなるわけだ。余計な事をしたから大事なものも失う。
偉大なる渾沌は人間の小さな知恵によって死んでしまった。
だから、君は正しいのかもしれないね。君はあの子を助けられなかったんだ。
だからこそ、だからこそ、君は何も失わずに済んだ。
君は素晴らしい。君は己の好きなままに生きる真人だ! 僕と同じだね!
そして逃げている。そう、それもまた一つの手だ。大いなるものの前に、君達はそうすることしかできない。
だけどどうかな? 逃げられるかな? 僕から」
げらげらと笑いながら、畳みかけるように渾沌の逸話を口走っていく。
相手を嘲笑うように。相手をほめたたえるように。
児戯のようにところどころステップなど踏んで跳躍しながら、男に迫った。
その時である。
「おや――」
彼が取り出したるは一枚のカード。それを破れば闇の気配が深まっていく。
視界が奪い去られた。故に剣の一撃は届かない。
「面白い! 僕を前にして敢えて闇を用いるなんて!
どこだろう。君は、どこだろう。探してあげる」
闇の中で目を光らせる。
クラスカ > 生憎、僕は思想家ではないので。
そんな格言のようなお話より、明日の天気が気になりますね。
(『“腐条理”の鳴鳴』。今後のために名前だけは心に刻む)
(名前を聞いたお返しに、とこちらの個人情報を流してやるつもりはもちろんゼロ)
(下手に刺激して粘着をされたら、危険は学友や生活委員会の仲間にも及ぶ)
(どうか忘れろ忘れろと念じながら、童女との距離を測る)
(右から左へ聞き流そうと努めていた鳴鳴の言葉が耳に纏わりついて離れない)
(『僕と同じ』ときたか)
(そうか、そうなんだな)
(僕もお前と同じ、ただ享楽に溺れて道を誤りそうになった、真人の皮を被った愚者だった)
(だから不可視の引力に導かれ、出会ってしまった)
(他者は自分を映す鏡としたら、鳴鳴は確かに自分だ)
(そうなるかもしれなかった、別の未来の姿)
(「僕はお前とは違う」)
(無言の反発を飲み下し、身体を闇に溶け込ませる)
(息を止め、生命の気配を薄く、どこまでも静かに)
「言ったでしょう。僕は矮小な等身大の生徒」
「すいませんが、どうにも恐ろしくて堪らないので」
「身を隠すのもまた勇気、ってことで」
(方々から響く男の声。闇の中で、人の気配が増す)
(一つ、二つ、三つ。徐々に闇の中でも存在が察知できるほど、人影は鮮明になる)
(そのうちの一つが、鳴鳴の傍に出現した)
鳴鳴 > 「君の事を教えてよ。君の事を教えてよ。
僕はね僕はね、退屈だったんだ。そこに君が来てくれた!
君は自分の意志で動いている。君は自分の意志で逃げている。
それでいいんだ。君は君のしたいことをしている。そこに善悪なんてないんだ。
そうだろう。君は何も悪い事なんてしていないんだ。君は何も良い事なんてしていないんだ。
そこに君の行為があるだけ。僕も君も、みんな同じだ。
ただ皆、したいことをしているだけなんだ。
アハ、アハ、アハハハハアハアハアハ!!
そうできる存在が、僕は大好きだよ。愛してるんだ。
僕を殺してほしい。僕を嬲ってほしい。言葉でも刃でも、なんでもいいんだ!」
相手の言葉を誘おうとしているのだろうか。けらけらと嗤いながら早口に言葉をまくし立てる。
闇の中で、闇が溢れる。童女の顔の半分は奇妙にも崩れおち、歪み、何かが溢れていた。
渾沌。善も悪も何もかもをも含んだそれが溢れている。
名状し難い渾沌。這い寄る何か。哄笑の響き。
「なら、僕が見つけてあげる。かくれんぼだ! 僕が見つけたら、君は僕の玩具だ!
ハハ、ハハハハ! そこか、なあっ!!」
顔をゆがませながら、気配を探る。力を使おうとするとき、胸元の赤い五芒星が輝く。
童女はどこか悲鳴にも似た声を上げつつ、嗤い続け、刀を構える。
「九蓮宝刀! 僕の宝貝だ! それで君をしっかり射止めてから、遊ぼうね!」
徐々に人影が鮮明になっていく。そして、その内の一つが傍ら現れると見るや、勢いよくその影に向けて剣を振るう。
剣からも渾沌が溢れ出していた。
クラスカ > (成程、こんな手合にでも、やはり無反応は効果が高いと伺える)
(今後の糧として観察が継続できればと考える自分がまた愚かに思えて、平手打ちをする)
(隙は十分に作れた)
(後は道化師は道化師らしく、舞台から退くだけでいい)
(闇越しに、確かにクラスカは見た)
(胸に五芒星を宿す人の形をした何かが、指定された枠をも外れて満ち足りようとする様を)
(狂気と呼ぶすら生ぬるい、黒い恐ろしいもの)
(生と死をも超越した冒涜的な叙事物語の一片が具象化した混沌の渦は、神か、悪魔か)
いいえ、もう幕引きですよ。
(人を当然に容易く殺す漆黒の凶器が人型に刺し込まれ)
(当たり前に鮮血が地面に滴る)
(柔らかな皮膚から内蔵を連想させる感触が鳴鳴の刃から手、肩を駆け昇ると、闇が晴れ、人影の正体が顕わになる)
(人間等身大のそれは、遠目に見ればただの人間とさほど変わらない)
(肌色で、四肢があり、髪が伸び、目と鼻と口のパーツを持つ)
(ただ一つ異なる点は、あまりにも作りが雑で、人間の姿を真似た偽物であると自己主張をしすぎること)
(べちゃり。人間に似た、人間でない何かが、臓物を垂れ流しに崩れ落ちる)
(クラスカの姿は、既にない)
鳴鳴 > 「アハ、アハハ、アハハハハハハ!!
痛いかな、痛いかな痛いかな。でもそんな痛みに意味はないんだ。
僕と君がこの星辰の下でであったことこそ、運命。
世界は享楽のためにある! さあ、君の力を見せて。
魔術でも異能でも、何もなくてもいい。そんなことをしなくても、僕を殺せる!
この混沌たる僕を! 這い寄るものを! 宇宙の深淵で踊り狂う僕を!
否定してほしい、凌辱してほしい、僕を驚かせてくれ!
君なら、君なら君になら、きっとできる! 僕の舞台の上に立ってくれ!
「門」は既にあるんだ! 彼らは来てしまう! だからその前に――」
「――あれ?」
彼の声が響く中、自身の狂った笑いの中、刀を突き刺す。
鮮血が溢れる。皮膚を裂く感触があった。
闇は晴れ、人影の真実の姿が露わになる。
それは人だった。その形は人であった。
だけど人ではない。偽物だった。あまりに粗雑な、人間の真似をしたもの。
「……ああ」
刀を勢いよく振るう。血が飛び散り、落第街の地面を濡らす。
刀は闇に溶けていき、鳴鳴の手中から消えていく。
「――逃げられちゃった?
……面白い! 面白い面白い面白い面白い面白い!!
賞賛してあげる! 君は僕を裏切った。僕の享楽を台無しにした!
故にこそ!」
混沌が嗤う。顔のほとんどから闇が溢れていた。赤い目が輝き、額には燃える瞳が開眼する。
パチン、と手を叩く。
「僕は君を逃がしてあげない――」
残った童女の顔で、嗤う。
笑いながら。泣きながら。怒りながら。悲しみながら。
あらゆる全てを嘲弄し、あらゆる全てを慈しみ。
あらゆる全てを愛しながら、童女は嗤った。
「……いつかまた会おう。僕の舞台の上から勝手に逃げるような悪い子は、お仕置きしてあげなくちゃね」
頭を押さえて笑い転げながら、童女は落第街を歩いていく。
上機嫌の彼女に絡んで、悲劇を見舞ったごろつきたちが何人かいた。
今まさに、鳴鳴は享楽を楽しんでいたのだった。
そして、深い闇の中に消えて行った。
クラスカ > (結果的に、鳴鳴の烈火の怒りを買うことになって)
(今日の不幸な出会いを回避できたか、と省みたとしても)
(結局は「仕方がない」と割り切るだけに留まる)
(できれば二度と遭遇することは御免だ、と祈っても)
(神が振る賽の目は、決まっていつも―)
ご案内:「落第街 酩酊通り」からクラスカさんが去りました。<補足:目立つ赤色のカーディガンで銀色の前髪が眼にかかっている男子生徒>
ご案内:「落第街 酩酊通り」から鳴鳴さんが去りました。<補足:【乱入歓迎】 道服の童女、邪仙/元ロストサイン>
ご案内:「落第街@ホテル路地裏」にアリエンティアさんが現れました。<補足:ドイツ幼女。黒と白の混じった腰ぐらいの髪に普通の制服。赤い目が特徴>
ご案内:「落第街/とあるホテルの屋上」に薄野ツヅラさんが現れました。<補足:赤いジャージにヘッドフォンの小柄な少女。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。>
薄野ツヅラ > ギイ、と音を立てて赤く錆びついた安全柵にもたれかかる。
目下広がるのは最近ではもう慣れきってしまった乱闘騒ぎ。
ぼう、とタブレットを構えて其の一部始終を撮影する。
自身の運営する『とこニュ~』のネタ集め兼、公安としての仕事。
最初は文句続きだった筈の公安委員会にもすっかり感化されてしまっている。
見える姿は、自らの直接の上司と自らの右手の杖の原因になった人物。
そして怪しげに蠢く影に、其れから見覚えのない人間。
薄野ツヅラ > (───、随分と賑やかなものねェ)
ぼんやりと思案する其の左腕には先刻巻かれていた腕章はない。
あくまで『薄野ツヅラ』としての活動の際はあの便利な腕章には頼らない。
廿楽の数多い「自分ルール」のうちの一つだった。
ヘッドフォンを外して能力を抑えるものは何一つ無い。
廿楽の遠隔感応は、落第街を丸ごと呑みこんだ。
(相も変わらずホントに難儀な能力だわぁ──……)
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、不敵に笑う。
街全体の声を、全て脳内に流し込む。
処理の限界まで脳に情報を満たして、ぼんやりと意識を目下に向ける。
幸いにも空は白み始めていた。
故に、起きている人間の声が少なければ聞こえる絶対数も減る。
制御しにくい能力も場所と時間さえ考えればなかなか便利に使える。
路地裏の一部始終の情報を、頭の中に叩き込む。
ご案内:「落第街/とあるホテルの屋上」に能見さゆりさんが現れました。<補足:優等生の風紀委員……?>
薄野ツヅラ > 蠢く異能と、振り翳す暴力の応酬。
現場に自分が飛び込めばいいとこ大怪我、下手すれば即死も免れないような戦場。
静かだった筈の落第街も、先日の『炎の巨人』事件以来随分と騒がしくなってしまった。
住居を構える落第街のホテルの最上階にも、
しばしば銃声と悲鳴が飛び込んでくるもので若干辟易しながら生活していた。
(原因はいったい何なのやら)
ロストサインの名前が一瞬頭を過ぎる。
其れだけではない。公安の体制が一時的に揺らいだことと、
化物のような人間が一気に流れ込んできたからだろう。
階下の戦争も同じように、少なくとも其の化物と同等の其れ。
戦えない廿楽は、ひたすらにその場を記録し続ける。
広報部が表向きな情報を記録するなら、廿楽は表沙汰に出来ない情報を記録する。
能見さゆり > 【落第街の騒ぎ。乱闘。
あの中に入って行くことは出来ない。
アレはクロノスの闘争だ。友人だからこそ安易に立ち入るべきではない。
立ち入るべきではないから周囲から静観しようとすれば……面白い反応を見つけた。
故に、壁を駆け上がりそちらへ向かう】
……あら、こちらで見学ですか?
【明らかに偶然通りがかった、というわけではないような場所でもかかわらず、突然後方に現れた。
まあこの間の動きを見ればわからなくはないと思えるかもしれないが。
それにしても屋上だとビビるかもしれない】
薄野ツヅラ > 「………やァ、能見さん」
階段の音はしなかった筈だ。
ちらと見遣れば、もう慣れたと云わんばかりに苦笑いを浮かべる。
見学か、と問われれば「えェそうよ」とやる気のなさげに呟く。
「如何考えても貴女はあそこに混じれる余裕がありそうだけど」
皮肉気に、ひとつ。
口に入れたままのチュッパチャップスを弄びながら、ぼんやり階下に視線を戻す。
能見さゆり > ……くすくす、せっかくの遊び場を邪魔しちゃ悪いじゃないですか。
しかも今話題の公安と、西園寺と黒い噂のある風紀委員が共闘だなんて、出来過ぎでしょう?
特に今回はクロノスさんのほうが正しい、治安維持活動なのですから
ふふ、そう言う貴女は随分と公安委員らしくなりましたか?
【にこやかに笑みを浮かべつつ、髪をかきあげながら横に並ぶ。】
薄野ツヅラ > 「あっは、自分でも驚くくらいにねェ───
クロノスお嬢さんの審美眼は正しかったみたいよぉ?」
特徴的な笑い声を溢しながら横に並ぶ能見を見遣る。
そこの鉄柵、寄りかかったら抜けるから気を付けて、とひとつ。
「ええ、今のクロノスお嬢さんはとってもイキイキしてるから眺めるに限るわぁ──……
珍しく何の非もない正しい公安の姿だものねェ」
能見さゆり > ふふ、ありがとう。
ええ、そういうこと。
もしかしたら……今までだって正しい公安の姿かもしれないわ?
【問題のないあたりに体重をかけつつ見守る
本来ならやって当然の戦闘なのだが、今みたいな立場でおこなうことはすごく実入りがあることだ
一見、今までだいぶ強圧的で強引な手法に出ていたことは何らかの意味があるのかもしれない
という見方も出来るよね?
という会話だ。】
薄野ツヅラ > 「理由なく暴力を、力を振り翳す人なんていないわぁ───
そうねェ、お嬢さんの中の公安の図は其れで正しいのかもしれないしぃ」
あくまで主観的なものだからなんともだけど、と困ったように笑う。
放火魔とまで呼ばれた──勿論自分も散々云っているのだが──公安委員が今は学園に仇為すモノと戦っている。
此れは随分と公安のイメージアップ戦略に有用だ。
何時間かすれば正義の公安、なんて話題でネット上を騒がせるかもしれない。
「勿論何も考えずにお嬢さんが暴れていたとは思わないわぁ」
安心して、と悪戯気に笑った。
能見さゆり > 【随分クロノスに心酔しているといったようだ
ただ、もしかすると少し盲信や狂信が入っている可能性がないとはいえない
そんな雰囲気
もう少しつついてみよう】
もっとも、普段は独善のようですから、弾圧といえなくもありません
処罰でも厳罰でもなく、単なる圧制ですからね
不法入島であっても、難民キャンプを焼き払うというのは通常、明らかにおかしな行為でしょう?
人権がない連中がどうなろうと知ったことではありませんが、危険動物の殺処分でさえクレームが出るご時世です
その対象が人間となれば、人間がどういう対応をするかは容易に想像がつきますから
薄野ツヅラ > 「ええ、可笑しな行為よぉ
────其れが正しいとは思わないけどぉ、其れを否定する権利はないわぁ」
ぼんやりと薄ら笑みを湛えながら、能見の目を覗き込む。
前代理にせよクロノスにせよ、長身の凄みがあったからこそ威圧感を醸し出していたが、
其の二人よりも明らかに小柄な廿楽が同じ所作をしたところで精々上目遣いにしかならない。
妄信とも狂信とも、其れは異なるものだった。
云うならば是認。一つの正義としての肯定だろう。
「まァ納得は行ってないわよぉ、と云うか行ってたまるか、ってトコねェ───…
生憎馴染みの武器商店を潰されて好きな人も叩き斬られてる訳だしぃ
其れでも、ボクの掲げる理想と大して変わらないわねェ、って。
ただお嬢さんの理想が其れなだけで」
ふああ、と欠伸をひとつしながらぼんやりとクロノスを目で追う。
能見さゆり > 【ああ、なるほど。これは感情的に壊れているのに近い。
それなら納得は行く。
要は、純粋すぎてひび割れてしまっているのだ、きっと。
そして……この手の人間は、だいたい可愛らしいと知っている
だって、ひび割れているのに、純粋でいようとするからいつも繋ぎとめようと必死なのだから。
だからこその心酔なのだろう
彼女らは機械の自分でもわかる世の中の論理が受け入れられないのだ
それは愛おしい、機械の自分では行わない考えだから観察がしたくなる】
なるほど……悲しいんですか?それとも切ないんですか?
不思議なことに、口調ほどには嬉しそうにも正しそうにも明るくも聞こえないのですが。
いうなれば心配だから口にする、といったふうに見受けられますが、どうでしょう?
【ツヅラの方を向き、少し距離を詰める】
薄野ツヅラ > 「ンッンー──……
悲しくも切なくも。ただ"そう云う物"ってだけじゃあないかしらぁ?
別に関心がある、ってだけで他には特に。
大体は能見さんの云っているので正解よぉ、心配はするってだけ」
だって上司の心配をしない部下はいないでしょう?と付け足す。
こてり、と首を傾げて能見を見遣る。
紅の双眸がじっと能見の双眸を捉える。
「生憎ボクは自分よりも大事なものがあってねェ、
公安にいるのも能力を使うのも息をするのも全部その人の為だしぃ」
常識はあれど倫理はない、とは誰が彼女を評した言葉だったか。
えらく的確な其れは、間違いなかったと云えるであろう。
距離を詰められれば、気にすることなく目下に視線を再び落とした。
能見さゆり > 【物事が色あせて見えたり無価値に思うというやつだろうか
自身を大事にするよりも大切なモノがある場合、価値観が壊れていることは往々にしてある
そう言う意味ではマスターもそうだったし、自身も人間に照らし合わせると確実に違う価値観だといえる
ただ、似たものを感じる部分もある
自身はこういった感情や考えは持ち得ないだろうが、だというのに似ているという部分での偶然性
そういった部分は少し興味がある
愛しいという言葉を選択するのはそういった近似性からくる選択なのだろうと思う
もちろん実際には愛おしいという感情はないから、似て非なるものなのだが、その情報も興味深い
だから……】
じゃあ、もし、私が
「クロノスさんのためにその人を壊す」
と言ったらどうしますか?
【意地悪い質問を投げてみたくなった
笑顔でツヅラの顔を見、優しく微笑む。
見ているようで見ていない、いやもしかしたらもっと奥を見ているような見ていないような
作り物の瞳は、自身の感情よりも相手の感情を反射して映す】
薄野ツヅラ > 「あァ?」
ただただ笑顔で、能見を見返した。
チッ、と不快感を隠すことなく舌を打つ。
暫しの沈黙の後、逡巡することなく口を開く。
「此処でアンタを殺すわぁ、脳天に何度も銃弾押し込めば流石に死ぬでしょう」
濁った白銀の拳銃を突き付ける。
笑顔で、何の躊躇いもなくポシェットから引き抜いた其れを目前の能見に向ける。
勝てるとは1厘も思っていないが、其れでも抜かざるを得なかった。
────本能的に身体が動いた、とも。
「勝てる訳はないのを解ってるしぃ、出来れば云われないように善処するわぁ」
ふんわりと笑みを浮かべて、手に握った其れを仕舞いこむ。
代わりにチュッパチャップスを取り出し、口に放る。
能見さゆり > ……なるほど。
【先に抜けば敵対行為、十分に正当防衛
故に、何の躊躇もなく構えきる前に腕をつかむと、後ろ手に捻り上げ床に組み伏せようとする
もちろん、コレが殺意を伴っていないことも訓練された動きでないこともわかる
わかるが、それを実行に移すことは別だ
それを教えなければならない】
……だいたいのことは把握しました、いい人ですね、ツヅラさん。
【相変わらずの笑顔は、むしろ恐怖さえ煽るかもしれない】
薄野ツヅラ > 「知ってるわぁ、だからこそボクは戦闘向きじゃあない訳だし───」
当然、と云ったように其のまま伏せられる。
片腕を杖で固定して使える腕は1本のみ。
組み伏せるのは赤子の手を捻るより容易いだろう。
「だからボクは向いてないって云ってるんだゾ──……☆
戦闘向きの異能でもなければ体術に優れる訳もなく。
明らかに狩られる側の人間よぉ」
はあ、と深く溜息を吐きながらそのまま笑う。
崩れない笑顔を見遣れば、何処か安心したかのように口元を吊り上げる。
「───アンタ、人間じゃあないでしょう。
全く『読めない』のよねェ──……この距離でボクの能力は狂わない。
アンタは『誰』かしらぁ?」
組み伏されたまま、不敵に笑う。
『人間の脳』に対して発動する彼女の異能は、能見さゆりを捉えなかった。
ご案内:「落第街/とあるホテルの屋上」から薄野ツヅラさんが去りました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。>
ご案内:「落第街/とあるホテルの屋上」に薄野ツヅラさんが現れました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。>
能見さゆり > 【床に組み伏せたまま、笑顔で耳元に顔を寄せ、ささやく】
ふふ、何か勘違いなさっていませんか?
戦闘向きでなく、狩られる側といいながら自身より大切なモノがあると言いながら銃を向ける
自らの感情のために何されてもいいというような自暴自棄ではないのですか、それは?
それがあなたの大切なもののために向ける覚悟だというのなら別に構わないのですが
ああ、そう言う異能ですか?
……そうですね、異能に限らず過信しすぎないことです
能力は能力分しか発揮しませんから
それに、読む異能が通じない=人間ではない、という思考の固定化もあまり褒められません
確かに可能性は高いのでしょうが、単にあなたより強力という可能性だってある
【その顎を指で寄せるようにこちらへ向かせる】
私もね、心配なんですよ
あなたがこうやって、意味のない危険を犯してしまうことが
クロノスさんを悲しませたくない
アレでいて彼女は他人想いすぎますから、あなたがひどい状態になることを望んでいない
……公安という立場に浮かれすぎていませんか?
【そして、優しく、その顔をこちらに向かせると、触れるだけの口づけ
親愛の情を伝えるためだけの、それ】
あなたはもっと……誰か大切なもののために自身をご自愛ください
そのためにあなたはあなた自身を大切にする必要があると思います
薄野ツヅラ > 「自暴自棄にはまだ少しだけ早いわぁ……?
だから、これは覚悟。トバリのためなら死んだって構わない覚悟。
神を殺す剣でも、万物を引き裂く大鎌を向けられたとしてもボクはこの何の力もない銃を抜く。
それがボクの覚悟であり誓いであり生きる理由であり───」
生まれた理由よぉ、と。
不敵な笑みを湛えたまま、能見の言葉に続けた。
「そうねェ、正直あなたのデータを知らなさ過ぎる。
それなのにここで銃を抜いたのは愚策としか云いようがない。
───それでも。
……どうだか、口の上手い相手にはボクは有利を取れないし云うだけならタダ。
やっぱりアンタの正体は解らない」
クツクツと喉を鳴らす。
笑うことが最後の自尊心だとでも云うように、笑うことだけは辞めない。
「ご忠告ドーモ。
アンタも十分狂ってるみたいで何よりよぉ───…☆
お嬢さんはボクよりずっと大事なものがあると思うけどねェ
いつクビになるかは解らないんだ、使えるうちに使うのが人間の性じゃあないかしらァ?」
不意に口付けを落とされれば、暫しの沈黙の後おもむろに舌を打つ。
「───アンタもそう云う趣味な訳ねェ、覚えとく。
その忠告は気が向いたら聞いとくわぁ。
自分にそれだけの価値が見いだせたらきっとそれは叶うんでしょうけどぉ」
じわり、笑いを滲ませた。
能見さゆり > 自分に価値が見いだせる見いだせないではなく、大切なもののために自分があるなら
あなたはその大切なもののためのリソースです
もし大切な人にプレゼントを贈るなら、可能な限り良い物にすると思うのですがどうでしょう?
そのプレゼントの中身が自分なら、安易に傷つけるべきではないし、価値を落とすべきでもないという話です
【優しく助け起こし、ホコリを払う。
恭しく臣下の礼を取るように片膝を付き、その手のひらに口付け】
あなたが自分をどう思うのであれ、あなたの価値は大切なものの運命を決める可能性がありますから
そこまで言うならあなたは自身の価値を上げる義務があります
基本的に私とあなたは大事なものが違うだけで、立場としてはあまり変わらないようなので
あなたにとって私が入り用なときには、相応に手伝わさせていただきます
クロノスさんの迷惑のかからない範囲で、ですが
ああ、それと人間でないというのは正確ですよ
機械人形であることは晒しておきます
手荒な真似をした代わりと思っていただければ。
【そして笑顔で見上げる
この人形、ここまで見越した上でこの一連を演出したのだろうか
それはわからなかった】
薄野ツヅラ > 「あッは───」
特徴的な笑い声を洩らして、紅い双眸に涙を湛えながら笑う。
声は震えて、その目は能見を見ることが出来ない。
ふい、と視線を逸らす。
「プレゼントにするならボクよりもっと便利で使い勝手のいいものを贈るわぁ
───……
こんなに使い勝手の悪い、研いでも研いでも切れない鋏なんかを贈らない」
そんなの誰が必要とする訳ェ、と。
「───でも、義務があるならボクは自分に価値を付ける。
例え情だったとしてもそばに置いておきたいと思わせられるくらいに有能になってやる。
どんな組織でも引く手が数多になるほど、便利で切れる鋏になってやる。」
手を取られたまま───目を合わせることはなかったが───きっぱりと言い放った。
無責任で無価値で無意味な言葉に、何かを見出すかのように。
「そりゃドーモ、荒事がまた楽になるわぁ───……
……アンタにとってその大事な人はお嬢さんってことなのねェ」
ホラ、やっぱり合ってるじゃない、と。
目を合わせて、幼い子供のような純朴な笑顔を浮かべた。
能見さゆり > 自身のことでわからなくなった時は、私ならどうするかで考えてもらえると参考にはなるかと
少なくとも私みたいな存在は、可能な限り都合のいいように状況を揃えたり立場を整えていくだけです
スペアがあるからといい気になったりすれば、それは明らかに自身にとっても大事なものにとってもマイナスですから
【改めて優しく微笑むと、立ち上がり、そっと抱き寄せ、涙を舌で拭う】
……そういうことです
大事なもののために自身があるとするなら、相手に必要とされなくても役に立つことを優先すべきだと思います
たとえウザい、余計と思われたとしても、そのことも含めて役に立っていくべきと私は考えます
それに……研いでも研いでも切れないハサミなら、その特殊性は売りになるかもしれませんよ?
使い勝手が悪いことも、もしかすると別の用途に有用かもしれません
私ならそう考えます
【頭を撫で、胸に抱いて好きなようにさせる。
離れたければ離れてもいい】
私の大事な人はクロノスさんではないです
が、彼女は大事な友人であり、かけがえのない人と考えています
友人なら、心配するのは当然だと思いませんか?
薄野ツヅラ > 「………具体的な例をどうも。」
ず、と鼻をすすりながら憎まれ口を一言、二言。
舌が頬に触れたのに気づけば、びくりと身体を震わせる。
一気に顔を赤くして、ふいと目を逸らす。
「少なくともボクがいい、って。言わせてみせる」
胸に抱寄せられれば、抵抗することなく素直に受け入れる。
気恥ずかしさが勝るものの、不思議な安心感があった。
「かけがえのない人が沢山いるのは解らないけれど、まァ、
あるんでしょうねェ───……
機械なのに心配、か。」
変なの、と。照れ隠しに皮肉をひとつ
能見さゆり > はい、機械なのに心配、です。
友達ですからね。
……ああ、友達なのはツヅラも、ですよ?
【顔を赤くする様子に微笑ましく見守るように、優しく撫でてやりつつ、胸に抱いてやる
機械だというのに、人間以上に温かい気がするかもしれない
心臓の鼓動や柔らかい息遣いまで感じる
これも安心するようにするための機械の見せかけなのだろうか
そうは思えないほど落ち着くかもしれない】
それと一応……私が機械人形だっていうことは、内緒ですよ?
これでも一応秘密にしていますから
【くすくすと苦笑しつつ言葉を紡いだ】
……向こうも終わったようですね
薄野ツヅラ > 「………どうも」
それ以上に言葉は出てこなかった。
普段の饒舌さは何処へやら、ポツリ、ポツリと、言葉を漏らすだけだった。
「そりゃあこんなに人間らし───人間そのものだったらバレないでしょうけどねェ
云わないでおくわぁ、だから」
ボクが泣いてたのは誰にも言わないで、と。
小さく制服の裾を引いた。
「あァ、あの調子じゃあお嬢さんの勝ちみたいねェ」
ぼんやりと空を眺めた。
能見さゆり > 昔は命令をよく理解できずにずいぶん怒られましたからね
だいぶ頑張ったんですよ?
【甘えるままに優しく撫でてやる
捨てられた子犬がやっと心を晒したかのような振る舞いに
保護のような仕草でありながら、したいままにさせてやる】
ありがとうございます
では、お互い……秘密ということで
【笑みを浮かべながら耳元で、そっと囁いた
ぞくっとするぐらいに甘く優しかった】
……はい、クロノスさんが決めました
もっとも、建物が多少吹っ飛んだようですが、あれはきっと怪物の仕業なんでしょう
薄野ツヅラ > 「いい加減人の根城吹っ飛ばさないで欲しいわァ……
能見さんの方から言ってもらえると有難いのだけどぉ」
ごしごしと目を擦る。
赤くなっていたがお構いなしにぐりぐりと目を擦った。
耳元でそっと囁かれれば再びびくりと身体を震わせる。
「じゃあもうここに居る理由は無いわねェ───……
……映像ちゃんと撮れてるかしらぁ」
ふ、と離れて杖を手に取る。
かつり、杖を鳴らして立ち上がればおもむろに階下を眺めた。
「……怪物、ねェ
───ネタにはいいかもしれないけどぉ」
能見さゆり > くすくす、それくらいの事態だったのでしょう
ああ見えて見た目よりだいぶ優しいですからね、彼女は
【立ち直るまで見守ってやる
時間と準備が必要なのだろう、私が笑顔の仮面を脱がせてしまったから
もっとも、仮面をつけるにしてもツヅラはそろそろ新しい仮面をつける時期だとも思う
自分を貶めるために化粧をするのは、良くない】
どこまで広報に情報を許すかはお任せしますよ
私は風紀での報告をします
もし必要なら私の映像を流しますし
【離れれば無理に追ったりはしない】
薄野ツヅラ > 「ン、広報に情報は売らないわぁ」
にやり、口元を吊り上げて普段通りの不敵な笑みを浮かべる。
「あくまでボクの趣味の範囲内。
噂好きの一般生徒が楽しめるような読み物を用意するだけよぉ」
目を細めて笑う。
それは楽しげに、くつくつと喉を鳴らす。
「じゃあボクは部屋に戻るわぁ───
少しだけ疲れたしぃ」
かつり、杖を鳴らして踵を返す。
ホテルの屋上から階下に降りる階段へ向かって、ゆっくりゆっくりと歩き去る。
去り際に小さく「アリガト」、と呟いたのは果たして能見に聞こえていたやら、聞こえていなかったやら。
能見さゆり > 情報の制御は大事な仕事ですからね
……制御しきれないのが面白いところなのですが
【さっきまでの厭世的な、自分をごまかすような笑いじゃなくなったのを確認し
見守るように微笑む
彼女にはこういうほうが似合うと思う】
ココの所色々ありましたからね
ゆっくり休んでください……明日からもまだ長いですかrね
【読む能力ということは……世界の窮屈さにつかれているのだ、きっと
休まる暇もないのだろうことは想像に難くない】
はい、お気をつけて
【その姿を見送る。それ以上のことは敢えて言わない
小さな感謝は聞こえているかどうか分からなかったが
音でなくても伝わっているようだった】
ご案内:「落第街/とあるホテルの屋上」から薄野ツヅラさんが去りました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。>
ご案内:「落第街/とあるホテルの屋上」から能見さゆりさんが去りました。<補足:優等生の風紀委員……?>