2015/06/30 - 21:22~22:51 のログ
ご案内:「教室」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入歓迎)>
桜井 雄二 > 桜井は教室で勉強をしている。
テストが近い。テストが近いということは、勉強せざるを得ない。
生活委員会の活動だけで単位を全部賄った、なんて人は聞いたことがない。
結局のところ、学生の本分は勉強なのである。

「………う」
誰もいない教室で小さく呻き声を上げる。
本当はカフェか図書館で勉強がしたいが、今の時期人で混雑していてそれどころではないだろう。

桜井 雄二 > 現在勉強している授業は熱操作概論。
炎熱系能力者、氷雪系能力者。どちらも異能と魔術を含む。
そんなポピュラーな能力者たちに人気のある授業だ。
テスト範囲は比較的広範であり、桜井得意の『全部暗記すればどこか出る』作戦が通用しづらい。
だが熱操作系能力者がこの単位を落とすのはなんだか気恥ずかしかった。

桜井 雄二 > 「ダメだ……グァバジュースが飲みたい…」
心が折れる10秒前な言葉が誰もいない教室に響く。
ここがカフェであるなら頼んで4分以内に届くものを。
紙パックのグァバジュースくらい用意しておくべきだった。

だがもう遅い。

ご案内:「教室」に『車掌』さんが現れました。<補足:本名ヴァージニア・ヴァンダービルト。鉄道委員。金髪で帽子を被っている。>
『車掌』 > 空き教室にふらりと入る。
鉄道委員会も今はテスト期間中だ。交代で勉強をしている。
ヴァージニアもぐっと我慢して勉強中だ。
はっきり言って成績は悪い。
理数系、それに工学系は良いのだが、基礎的な国語、歴史などが壊滅的なのである。
そこで赤点が心配される古典の自主勉強に来たのだが――

「おっと、先客か?」

桜井 雄二 > 頬を掻いて椅子に座ったまま足をぶらつかせていると、教室に入ってくる女性の姿。
「あー……先に勉強させてもらっている」
とりあえず相手が勉強に集中し始めたら話しかける機会も失われるか、と思い。
「あなたも勉強のためにここに? というか…多分先輩ですよね?」
「俺は二年、桜井雄二。生活委員会の……あと怪異対策室三課です」
そう話しかけてみた。

『車掌』 > 「へぇ、生活委員会か」

遠慮なく教室へ入り、鉄道委員会制服の上着をそのへんに置く。
委員会の誇りでもある制服だが、ぶっちゃけ暑い。

「鉄道委員会のヴァージニア・ヴァンダービルドだ。呼びにくかったら『車掌』とでも呼んでくれ」

ふらりと桜井の近くに座る。
勉強の準備をしながら。

「そ、あたしも勉強さ。
こんな事より、列車に乗っていたいんだけどねぇ」

ヴァージニアは教科書と一緒にオレンジ・桃・グァバ・スターフルーツの紙パックジュースを机に並べた。
鉄道委員は長時間鉄道に乗る為に常に何本か飲み物を携帯している。特にこの季節は脱水症状が怖い。結局多量のジュースを持ち歩く事になるのだ。

桜井 雄二 > 「はい、生活委員会です。街の『便利』を守ってます」
上着を脱いで近くに座る彼女を無表情に見る。
「ああ、鉄道委員会の……ヴァージニア先輩……いや、『車掌』先輩と呼ばせてもらいます」

「そうですか、仕事熱心なんですね」
はぁ、とため息をついて。
「俺は完全にエネルギー切れです、勉強範囲が広くて…熱操作概論なんですが」

その時、彼女が机に並べたジュースの中に大好物を見つける。
「あ、あああ………」
息を呑んで、素早く財布から硬貨を取り出した。
「そのグァバジュース、売ってください……喉が渇いてるんです……」
渇望の視線、もう無表情ではいられない。

『車掌』 > 「あぁ、生活委員会には色々助けてもらってるよ、有難うな」

頷きながらこちらもげんなりする。
古典、あぁ、面倒な――

「ん、熱操作概論?
簡単なのならあたしでも……」

と、そこまで言って。

「ん、なんだ、欲しいのか?
いいよ、やるよ。金なんていらねぇ。こんだけあっても飲みきれないしな」

ほらよっと桜井の目の前にグァバジュースを置いてやる。

桜井 雄二 > 「こちらこそ、鉄道委員会がいないと常世は回りません」

簡素に感謝の言葉を述べてから、相手の言葉に目を見開く。
「なんて……いう…グァバジュースを、くれるだなんて………っ」
目の前の女性が女神に見えた。
「ありがとうございます、ありがとうございます…!」
飢渇した農奴のように頭を下げながらグァバジュースを飲む。
「生き返りました………それで、さっきの言葉なんですが」
「熱操作概論、先輩は初級がわかるんですよね?」
「俺は現代文、古文、漢文、現代社会辺りが得意なので協力し合いませんか」
そこまで言って頬を掻いて。
「といっても、先輩に教えられることは限られるかも知れませんが」

『車掌』 > 「お、おう、そんな好きなのか……」

ちょっと引きつつも頷く。
まぁ、役に立ったならいいか。

「――っと、そいつは良い取引だな。あたしの国語、社会なんかも初級も初級のやつだ。それでも教えてくれりゃ助かる」

いそいそと社会、古文の教科書を見せる。ぶっちゃけ高校1年生レベルである。
ありがたいなぁと言いながら、熱操作概論に関する資料を受け取ろうとするだろう。

桜井 雄二 > 「はい、それはもう。グァバジュースが一本あれば三日生き残れます」
引かれているが気にしない。
だってグァバジュースだから。

「じゃあお互い教え合いましょう。取引成立です」
見せてもらった社会と古文の教科書を見ると、頷いて。
「これなら教えられそうです、これが熱操作概論初級で使っているテキストです、先輩どうぞ」
そう言って資料を差し出す。なんだかやる気も出てくるというものだ。

『車掌』 > 「ほーう、どれどれ……」

熱操作概論初級を見て頷く。
うん、自分が2年前に取ってたのと同じだ、これならなんとか教えられる。

「いいか、お前があたしと同じタイプだとしたら、理論を理論で覚えようとするからこんがらがるんだ。
理論を覚えようとするんじゃなくて、実際のものに当てはめて、それに必要なものを計算していくんだ」

あたしの時は蒸気機関車に当てはめた、と言いながら。

「そうだな――お前は生活委員会だから、焼却炉がいいかな。
効率的にゴミを燃やす焼却炉を造る。その為に必要な熱の量、熱の働き、温度、それを実際に計算する為の式を当てはめていくんだ」

ノートに大きな焼却炉の絵を書き、それに式をいくつか書く。
桜井は熱系統の能力者だ、コツを掴めばヴァージニアよりもはやく理解に到達するだろう。

桜井 雄二 > 「………うーん…」
先輩の言葉は、理解しやすい。
計算に丸暗記ではなく、実体験に基づいたアプローチからの勉強法。
「なるほど、わかりやすいです………」
「ありがとうございます、『車掌』先輩」
相手の言葉に頷きながらメモをとっていく。
「俺、炎熱系と氷雪系の能力者なんで……この単位落としたくなくて」

次に相手の古文の教科書を見る。
「ええと、多分先輩が躓いているのは文法問題だと思うんです」
「大体、覚えるべきは動詞の活用と助動詞の活用と意味、接続です」
「例えばここは………」
たとえ話を交えながら相手に説明していく。
得意分野なのでこっちも上手く説明できていればいいのだが。
「あとは『る、らる、す、さす、しむ、ず、じ、む、むず、まし、まほし』で未然形接続なんですが…」
「ぶっちゃけ助動詞の接続はリズムで覚えたほうが楽です、口で言いながら覚えるんですよ」

『車掌』 > 「はは、そりゃそうだ。
あたしだって車輪の運動の単位と弾道学だけは死んでも落とすもんかって思ったもんさ」

こちらも頷く。
前は呪文だとしか思えなかった古文だが――

「なるほどな――『る、らる、す、さす、しむ、ず、じ、む、むず、まし、まほし』
あ、なんかテンポいいな。覚えられるかも」

軽く手で机を叩きながら呟く。
そうか、面倒がって目で追ってるだけだから覚えられないのか。

桜井 雄二 > 「ですよね……なんか気恥ずかしいですよ、自分の仕事や能力に関する単位を落とすのって」
苦笑いをして熱操作概論のテキストを見る。
今までは漠然と覚えることばかり広がっていた文章が、今は順序だてて攻略できる対象に見える。
これなら次のテストもいける。

「はい、あとは古文が読み解けなくてもあらすじさえ知っていれば点数が稼げる問題がかなり出るので…」
「授業でやった範囲の古文はストーリーを覚えておくといいです」
例えば、と出題範囲の古文の内容をかいつまんで言っていく。
「……先輩は何で鉄道委員会に入ろうと思ったんですか?」
それは何気ない質問。

『車掌』 > 「鉄道が好きだから」

あまりにもあっけらかんとした答え。
だが、彼女は胸を張って堂々と答えた。

「お前さ、列車の運転手になりたい、って思った事、ないか?
あたしは思った。小さい時、これを運転したいって思った。
だから列車に何度も乗ったし、列車の事を勉強した。
そんで今はこの通り、ってわけさ」

ヴァージニアは嬉しそうに話す。
列車の事を話す彼女は、どんな時よりも輝いているだろう。

「去年は運転手もやってた。
で、今年は車掌さ。本当はずっと運転手でも良かったんだが、管理職か車掌かどっちか選べって言われてさ。
列車に乗れないなんてまっぴらごめんだから、車掌を選んだ」

にこにこしながら古文のメモを取る。
うん、これならテストもいけそうだ。

桜井 雄二 > 「好きだから……ですか」
それはあまりにも単純かつストレートな答え。
だがそれに留まらないのは、彼女の語り口。
「列車の運転手ですか…それは、憧れたことありますよ」
「子供の頃には、運転手になりきる玩具が擦り切れるまで遊んでました」
そして彼女の輝きを知る。
本当に好きなことだから、頑張れる。
そんな誰もが知っていて、誰もができているわけではない行動が。
どこか―――――眩しく見えた。

「だから車掌、ですか……なるほど」
にっこり笑って熱操作概論のページを眺める。
今日はひと段落、ということでいいかも知れない。
「今日はありがとうございました、『車掌』先輩」
「ひと段落ついたんで、俺は後は家に帰ってから勉強することにします」
「また何かあったらよろしくお願いします、ではまた」

頭を下げて、勉強道具を仕舞うと、飲み終えたグァバジュースのパックをゴミ箱に捨てて教室を立ち去っていった。

ご案内:「教室」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入歓迎)>
『車掌』 > 「おう、またな、桜井」

手を振って見送る。
うん、良い奴だった。おかげで勉強もはかどった。

「さぁって、テスト、頑張りますかね……」

ご案内:「教室」から『車掌』さんが去りました。<補足:本名ヴァージニア・ヴァンダービルト。鉄道委員。金髪で帽子を被っている。>