2015/07/01 - 02:51~03:33 のログ
ご案内:「女子寮内・畝傍の自室」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>
畝傍・クリスタ・ステンデル > 学生通りで鞘を探した後、畝傍は寮内の自室に戻っていた。あの後も結局、鞘は見つからずじまいだ。
試験期間も近いのでと、机に向かい勉強を続けていた矢先、畝傍の身にある異変が起こった。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「…………っ、ぐ……あ……ぅ」
畝傍は、これまでに起きたことのない幻覚症状に苦しんでいた。
「……やめろ…………っ……来るな……っ。わたしに……近づくな……っ」
以前まで使っていた狙撃銃の形状を寸分違わず再現したレプリカを抱きしめ、苦痛に喘ぐ。
絶えず頭の中を掻き回されるような感覚に座っていることもできず、床に倒れ、転がり、苦しむ。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍に現れた『炎』の力。それを行使するためには代償が必要だと……『炎』の化身たる者はかつて畝傍に告げた。
だが畝傍は、その代償が自らの『正気』であることを知らない。
無論、かつて自分を狂気に至らしめたのも、男たちによる暴行それ自体ではなく、
自らに発現した『炎』の力であるということも、畝傍はまだ知らなかった。
畝傍の視界は自在に形を変えながら蠢く黒い何かに塗りつぶされ、
男女の性別はおろか人間のものであるかさえも判別しがたい声が耳を嬲る。
畝傍は目を閉じ、左耳を塞ぐ。右腕で狙撃銃のレプリカをしっかりと抱きながら。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「う……う……っ」
今まで見聞きしたことのない何かが襲ってくる。とても耐えられない。
しかし何かしなくては、この『何か』は畝傍の前から姿を消さないだろう。ならば逃れる術は?
畝傍はしばし考え――瞼を開け立ち上がると、とっさに机の上に置いていたノートのページを数枚破り、口に入れ咀嚼しはじめた!
この行動はまさしく狂気そのものである。だが以前までの彼女の狂気とは明らかに異なっていた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「はべなひゃ、は、はべな、ひゃ、のみこまなひゃ、わたひ、わたひ、これを、のみこまなひゃ、わ、たひ、は」
再び目を瞑って耳を塞ぎ、食べなきゃ、飲み込まなきゃ、としきりに繰り返しながら紙を咀嚼し続ける。彼女は狂っていた。
しかし――飲み込めない。飲み込んでしまえば窒息しかねない。すでに紙の鋭さで口内を何箇所か切ってしまったようで、口からは少量の血が漏れ出ている。

畝傍・クリスタ・ステンデル > しばし咀嚼を続け、紙はすでに畝傍の唾液で濡れてしまい、ボロボロになっている。
だが未だに飲み込めてはいなかった。畝傍の中に残った正気が、飲み込むところまでは行きつかせまいとしていたのだ!
「…………う…………ぁ…………?」
やがて、畝傍の咀嚼行為が止まる。口の中に妙な感触と、何かで切ったような痛みが残っていることに気付く。
机を見ると、先程まで勉強に使っていたノートのページが数枚、破れていた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 破れたノート、口内の痛みと奇妙な感触。その二つの符号だけで、畝傍は自分の身に起こったこと、自分がしてしまったことを瞬時に察した。
「なん…………で…………?」
畝傍は紙を吐き出した後、しばし立ちつくし――自らの行為に恐怖した。畝傍は狂人である。
しかし普段の畝傍ならば、例え銃が手元から離れて長時間経過したことによるフラッシュバックに苛まれようとも、このような行動に出ることはなかった。それは畝傍が一番よく知っている。
「ボクは…………」
ああ――ただでさえ狂っている自分は、いつの間にか自分自身でさえ恐怖するほど狂い果ててしまったのか?畝傍は考えた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 立ったまま考えを巡らせ――畝傍は考えうる一つの結論にたどり着く。
「……もしかして。『代償』って。そんな。まさか。ボクは……ボクも……『狂った』んじゃなくて……」
形は違えど、畝傍もまた、彼女が救おうとしているトモダチ――石蒜のように。
ヒトならざる者によって『狂わされて』いたのだと。考えてしまった。気付いてしまった。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……こんなのって。こんなのって、ないよ。やっぱり、ボクも狂わされてたんじゃないか。おんなじだ。おんなじだよ。やっぱり、ボクたちはおんなじなんだ。アハ。アッハハ、ハ」
自身の狂気の起源を悟った畝傍は、その狂気に身を任せるがごとく、床に座り込んで嗤い、涙する。
「アハハ。アッハハハハ。アッハハハハハ!やっぱりボクもキミもおんなじだ!狂わされて、ゆがめられたんだ!どこまでいっても、ボクたちは、にたものどうしだ。そうだよ!ボクたちは!…………アハハ。ハ。アッハハハ……」
周囲に誰もいない今だからこそ、自身の内なる狂気のすべてをさらけ出し、泣き笑う。その後。
「……だから。だからこそ。ボクはキミを。たすけなくちゃ、いけないんだ。……シーシュアン」
一人、決意を固める。
気付けばもう蠢く黒い何かは見えず、声も聞こえない。幻覚は去った。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 先程吐き出したノートの一部を拾い、ゴミ箱に捨てた後。
「……べんきょう、しよ。シーシュアンがボクのコトみても、はずかしくないようにしなきゃ、ね」
誰に言うでもなくそう呟き、畝傍は再び机に向かったのだった――

ご案内:「女子寮内・畝傍の自室」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>