2015/06/09 - 21:09~23:46 のログ
ご案内:「異邦人街住宅街 安アパート」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:夏用スーツ。>
五代 基一郎 > 近所の異邦人街のみにあるコンビニチェーン”ファミリア・マート”のレジ袋を片手に
自宅である一室のある安アパートに帰ってきた。異邦人街と落第街の境界にあるそこは
治安はさておき、そういった立地条件からか地価がそもそも安くそれなりの住宅条件でも
結構に手ごろだった。
五代 基一郎 > そういった背景もあり。この安アパートもだが、ちょっと影のある事情の人間が住む場合が多い。
異邦人でありながら当面の金策や身分を得るために落第街で仕事をし
そのために近場でありながら、それなりに治安が整ったここに住んでいたりとか。
落第街に住むほどではないが、異邦人の中でも落第街に縁があるとかちょっとややこしい事情を抱えた人間が住むのがこのあたりの住宅事情なのだ。
五代 基一郎 > なぜここに住居を構えたか。風紀でもあるし、それなりの地位でもあった。
金銭的に困ることなどないのだが。例えば情報を仕入れたり、自分もまた黄昏時の住人であるからここにいる方が都合がいい……というわけでもなく。
基本的にサボってばかりで職務など守ってやしないし学業に精を出しているわけでもないのだから
それそうおうの慎ましい住居ぐらいは、という至極勝手な理由である。
しかしそういった自分の中の決め事やルールを守れなければ堕落というのは早い……とか
住居管理のあれそれのときにそれらしく話たな、とも思った。
まぁぶっちゃけあんまり使わないのである。
正直寝る所に水道設備さえあれば不満はない。
五代 基一郎 > かと言って一課棟の宿直室を私物化するのはよろしくない。
あれは夜勤や待機の人間が使うものだ。
階段を昇り自室前までくれば近くにある鉢植えを見る。
手入れされた鉢植えだが、その実この家の鍵置き場である。
足で鉢植えを上げてズラし、鍵があることを確認するとそのまま下ろした。
一種の確認作業である。これで鍵がなければ、鍵を使った人間が今家の中にいるのである。
出る時に戻しておいてくれ、とは言ってあるため今誰もいないはずだ。
ゆえにスペアではない自分の鍵を懐から出して、施錠を開けて自宅に足を踏み入れた。
甘ったるい匂いが出迎えた。
五代 基一郎 > 換気扇ぐらい回しておいてくれよ、と内心ボヤきながら自室に足を踏み入れていく。
靴は適当に足同士をひっかけて脱いで、室内サンダルに履き替えてだ。
リビングにでれば、PDAをテーブル近くの椅子に投げて放置し
上着を外套掛けに引っ掛けた。
レジ袋の中のミネラルウォーターと取り出すと、蓋を開けて口をつけつつ
袋を絞るように纏めて、綺麗に中身が捨てられたゴミ箱に流した。
目線を動かせばテーブルにはラップされたパンケーキとスイートなクリームにシロップ。"for you"とだけ書かれていたメモ。
テーブルにボトルを置くと、ラップを剥がして雑にシロップとクリームを足して冷えたパンケーキを食い始めた。
なんで俺が今日来ることがわかったかは、まぁそういう異能か魔術か占いだろう。
確か得意なヤツがいたな……と思い出しつつナイフとフォークでそれらを切り分け、ゆっくり味わいつつ胃に流していく。
五代 基一郎 > 越してきた当初、風当りは強かったというより他の住人により監視されている状態だった。
何せ灰色、グレーどころかほぼブラックのような人間が住む場所だ。
そこに風紀の人間が越して来れば穏やかではない。
管理者など何度止めたかわからないし、周辺に住む人間は挨拶などしもしなかったし
顔を見れば逃げるように消えていく腫物扱いだった。
しかし住んで一月半……といっても最初に部屋に出入りしてから三度目程度の機会だったわけだが
管理人の許可を得て、業者を入れて一部工事したことから少々事情は変わってくる。
管理者と話したことが流れたか、そこの一部の住人が知ったのだ。
アパートの一室に手を入れた場所を。
ボロだった風呂場と水回りをマトモにしたということを。
五代 基一郎 > そしてその工事が終わり、少ししてから。また少しの時間が空くのだが。
五代を待っていたかのように、一人の女が声を掛けてきた。
どうやら隣に住んでいる異邦人の女で、まぁこの場所に住んでいるということはそういう仕事であり
昼から夕暮れにかけての、普通仕事が終わるだろう時間に出てきて待っていたのだからそういう仕事に出る前だったのだろう女が聞いてきたのだ。
風呂場を使わせてくれないか、と。
もちろんそれが何がしかの裏のあることだったのかもしれない。
例えば仕事仲間とか近隣の住人との賭け事の対象だったり、中に何があるのかを調べられたらどうのこうの等
本当にただ単に風呂場を使いたいわけではないだろう。
だが特に断る理由もなかった。
なかったから、いいよと答えたのだ。
聞いた女はその返事を予想してなかったのか少しして、また続きを話し始めたのだが。
見返りがどうのこうの言ってきたがめんどくさいので自室で煙草吸ったり暴れなければいい程度に返し
持っていた鍵束にあるスペアを差し出して黙ってもらい、部屋に帰ったのがその時である。
五代 基一郎 > そこからまぁ事情が変わるというか本当に無防備に、何もなく風呂場を貸して、利用していたものだから
話が女からか女の仕事仲間かこの近隣のそういった近い仕事をしている連中は金がないとき等
五代がいない時や寝てる時に上り込んで風呂場等を使っていくのだ。
いつのまにか台所回りまで勝手に改修されて、小さいベランダには勝手に観葉植物が置かれ伝票だけ仕事場に来てたりとか少し勘弁してくれと思ったが
まぁこれはこれで時折帰ると何か食い物があったりで悪くはない。
おまけにボロアパートなもので、盗聴の類や監視する機材を仕込めないのも強い。
仕込んだらすぐその付近が壊れるし、何より腐っても異邦人街なのだ。
異邦人街監視してるなんて出回るようだとモデルケースとしては死活問題なのだ。
一部の学園側や財団等により整えられた建物はさておき、こういうところにはまずないし実際なかったのでそういう意味も安心である。
これは不可抗力だが、人が出入りしているというところもそれなりに安全と言えた。
五代 基一郎 > 食ってる最中にあぁ、これはあの子だなと思い出しながら咀嚼を続け
食べ終わると皿を流しに置いて蛇口をひねり。明日やっとくか、と面倒をどけてから風呂場へシャワーを浴びに行った。
ここまで考えると所謂ダンディズム溢れる探偵小説の主人公、その事務所だったり
些か退廃的であり既婚者であった男性探偵のハードボイルドなストーリーを思い描けるが実際は大きく異なる。
風呂場の一部は完全に女性が使う洗髪剤に支配されていた。名前のタグまである。
こういうことだ。女性は一度遠慮がいらない相手だとわかると一切遠慮しない。
ここだけではなく、冷蔵庫まで時折侵食されているのだからたまったものではない。
これで2年ほどになるが、パーソナルスペース……個人の自由になるスペースは
自宅だというのに段々と少なくなっていた。
何がとは言わないが面倒だなぁと思いながら熱いシャワーを浴びて汗を流し始めた。
今日は風呂に浸かるほど時間がない。もう少し時間さえあれば湯船に浸かれるんだが、と。
五代 基一郎 > 出るとこれまた綺麗に用意されたバスタオルで体を拭きながら
新しいミネラルウォーターのボトルを開けて流し込む。
汗やシャワーで流した分の水分を補給する。
もっともその汗を拭きとるバスタオルも、いつのまにか増えていた乾燥機、ドラム式洗濯機により蘇ったものなのだが
そんなこと今更気にしても仕方がないし、どうしようもない。
雑にバスタオルを応接椅子(これもいつのまにか増えていた、顔合わせしたのは領収書を見てから数日後になる)に引っ掛けると軽く下着やらインナーシャツ、私服のカーゴパンツに足を通していく。
デスク付近のチェアに寄りかかり、窓を開けて夜風を入れて目をつぶる。
涼しい風が気持ちいい。水を入れたことでまた噴き出た汗が風により冷やされていく。
誰か来るかもしれないが、こうして誰もいない静かで穏やかな日常を味わうのが好きだった。
些か内向的かもしれないが、普段から人と顔を合わせるような仕事なのだ。
一人でいる時ぐらい静かにまどろんでいたい。
そんなまどろみの中に瞼を、チェアに体を預けているとどうなるか。当然眠りの世界に誘われていく……
目覚ましがどうせ起こしてくれるだろう、と特に考えもせず意識を手放した。
五代 基一郎 > その、眠りを呼び覚ましたのはコーヒーの匂いである。
朝日もあったが、その香ばしい匂いは意識を覚醒させるに十分だった。
コーヒーの香りには精神を安静にさせる効果もあるわけだが、今はそんなことよりもう少し寝ていたい衝動が勝つ。
体をひねりながら何かを拒絶するように動き、体にかけられているタオルケットの存在に気付く。
五代 基一郎 > 「もう少し寝かせてくれよ……」
起きこしたかな、という掛けられた言葉にやむおえず返す。
タオルケットかけてくれたのは嬉しいが、コーヒー淹れて置くというのは目を覚ませという合図だ。
わかってやっている上に、そんなことを聞いてくるのだからその思惑の通りにするのは何か癪だった。
しかし相手はそんなことをお構いなしに目が覚めていることを前提で話す奴なので、半ば観念するように仕方なく体を蠢かせながら椅子の中でそちらに向いた。
コーヒーの香りが意識を覚醒させ、安らぎを与える。
そして癪だから半分目を開けたような、相手を確認してまた閉じた微妙な抵抗らしくもない抵抗の姿勢を取る。
五代 基一郎 > 薄目に確認した姿は、やはり彼女だった。
長い黒髪、艶やかな肌、豊かに盛られた女性らしい体の肉付き。
薄目にみても美女というのがわかるし、男が好むような姿。
最も普通の美女と違う……その今着ている薄く透ける黒いワンピースの寝間着越しに見える女性には本来ないものの影。
異邦人ということもありどこか神秘的なものを感じるが、それの仕事が仕事だ。
そういう需要もあるのか、とは当初は思ったが今はもう慣れたもので
そういう存在であり、時折やってくる朝方の話し相手だった。
大抵のここを訪れるそういった夜の仕事の女は、部屋を使う時は仕事が終わった時であり朝方。
部屋に主がいる場合、静かに入って静かに出ていくことが最低限の言わずともわかるだろうみたいなマナーなのだが
その相手だけはなぜか一通り済ませると、こうして話相手にでもなれと言う様に間接的に起こしてくる。
決して無理矢理ではなく、目覚めを促し相手を誘うように起こしてくるのだ。
中々にいやらしい。
五代 基一郎 > 「しばらくはゆっくりできるんだ。また出るかもしれないがさ」
そうでもないよ、と彼女は笑う。どこか見透かすような口調で。
今まで渾沌としていた状況がようやく打破されたわけだが、その間にもこれ幸いと沸いてきた連中は山といる。
例に出すならば旧ロストサインの幹部連中だ。脱獄の報告が入った時には公安も相当肝が冷えたろう。
おまけにあの沈黙していただろうザデルハイメスが再び姿を現したのだ。
対処も含めて緋蜂に会わなければいけない。最もそれ自体一部に察知されると面倒事になるので、会うこと事態考えなければならない。
目が覚めたらそこから手を付けるべきか、とも思っていた案件だ。
そんなことを考えると否応が無しに目は冴えてくる。
癪だからまだ目はつぶっている。
五代 基一郎 > 「……そうだったな。まだ夜明けに至らずか」
いや、明けた時などあっただろうか。欧州の時からそうだ。
ある程度こじんまりした常世島でさえこれなのだ。いや大人しく住んでいる。
外の世界がどうなっているか知る者や考える者は少ないだろう。
今も尾を引いている先の欧州大戦、新中米戦争、中国の半壊……
リバイバルした北アフリカと中東に再出現した聖域を巡る新たな聖戦等
あの日以来世界に安息などあっただろうか。
そう考えると、その優しい声の裏に含まれた休む暇などないのだろうというひどく現実的な冷たさを感じて嫌になる。
五代 基一郎 > それもきっといつかは終わる。開けない夜はないし、この世は常闇ではないのだからと
コーヒーを啜る彼女を薄目で見て思う。
ならばいつ開けるのだろうか。俺が生まれて今まで開けた時なんてあっただろうか。
こんな世界か時代のせいか。
自身の持つもの、持たないものもあって所謂学校教育など受けたことはない。
知識や最低限のもの、筆記や語学は学んだが
集団生活というのは軍で学んだものだった。
正直なところ学園で友人と呼べる存在がほぼいないものそういったことだろう。
まぁそれでもこういうことを聞いたり喋ったりできる人間がいるというのだから悪くはない。
自分でも子供の時間がなく、大人の時間の中で過ごしてきたことが殆どであることは歪であるのはわかっているんだ。
それでもどうにか出来ているのだから、世の中捨てたものではない。
五代 基一郎 > 「俺は受けた方がいいと思っているんだけどなぁ」
期末考査等、小論文はある種の免除を受けていた。
何せ必要とされることの邪魔になってはいけないし、という配慮だろうが。
執行部や風紀委員という立場上周りに示しを付けるために例外などなく、と思っているし
それにこの時期やれ慌ただしく受けている学生の姿を見ると羨ましくも思うのだ。
普通の学生の生活とはこういうものか、とも。
最もそういった希望とは別に、ある程度見聞きした講義などを除いて
正直言えば受けたら補修どころか追試ものであるのは知っているのだが。
そういった聞いて理解することと、体系化されモデルとかした学校教育の考査とはまた別なのだ。
五代 基一郎 > 「ん……わかった。食べる」
朝食、作っておくからという言葉を聞いてまた目を開けては閉じる。
そういった会話の機微にも聡い。異邦人だからだろうか。だとしても全く、何故こんなところにいるのだろうか。
どうせなら学校とか、そういう所で会いたいものだ。
カフェテラスとか空き教室で休みの時間に飲み物とか、菓子とかを摘まみつつ適当に
今の時勢とかを話しながら他愛もない時間を過ごす。
俺もそんな時間が欲しかったし、今でも欲しいと思っているんだが。
察しているだろう彼女からすれば、それはどうやらできない話らしい。
特に会話もなくなったもので目を閉じて、台所の音を聞きながらまた眠りに沈んだ。
五代 基一郎 > しっかりと意識の覚醒できた目覚め。
久しぶりにゆっくり寝れた気がする。
タオルケットを纏めると、デスクにはぬるくなったコーヒー
丁寧に作られたサラダと、盛りのいいサンドイッチに両面焼きのハムエッグ。
ご機嫌な朝食が出迎えてくれた。しかも調味料は中濃ソースとケチャップである。
日本人風の醤油や塩が好みかといえばそうではなく。案外にこういった洋風の味付けが好みであり。
それもまた、彼女の知るところなのだ。
目玉焼きにソースとケチャップを掛けて潰しながら食いつつ
サンドイッチを納めてコーヒーを啜る。
コーヒーがまた、いつも飲む安物のとは違ってしっかりそれらしいのがにくい。
最も銘柄などわからないのだが、なんとなくこの味が好きだった。
食べ終えて流しに置いて洗い始めれば、昨晩冷蔵庫に入れ忘れていただろうミネラルウォーターも収納されていたり
昨晩のパンケーキの皿も洗われていた。隙のないことである。
おまけに雑に引っ掛けてたスーツや制服にアイロンがかけてあるのだからもう言葉もない。
歯を磨いて、ミネラルウォーターで口を漱いでからスーツに袖を通す。
今日は仕事、というより人に会う予定を立てるために動かなければならない。
公的ではなく個人として、だ。
ベランダからようようやってきた黒猫と共に玄関に並び、磨かれた革靴を履いて朝の世界に出かけて行った。
さて、どちらに会えるだろうか……
ご案内:「異邦人街住宅街 安アパート」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:夏用スーツ。>