2015/06/20 - 21:38~07:10 のログ
ご案内:「異邦人街住宅街 安アパート」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:夏用スーツ。>
五代 基一郎 > 連絡があり駅に迎えに行ってから少し。
異邦人街特有の異邦人らしい建築や道のりをそれなりに歩いていけば
見えてくるのが古めかしい、もっと言えばボロい2階建てアパート。
この街が出来てから初期の方に建てられたのか。
常世島、一部の管理者が手違いか勘違いで作った日本式のアパート。

「はい、ここの2階の端がうち。階段の手すり古いから気を付けてね」

駅からつれてきた人にそう注意しつつこれまた古めかしい階段を昇っていく。

ご案内:「異邦人街住宅街 安アパート」に遠条寺菖蒲さんが現れました。<補足:ハッチング帽にポニーテ―ルの黒髪で蒼い瞳の明るめの茶色でまとめた落ち着いた色合いの服の少女。左肩に小太刀ほどの肩袋を背負っている>
遠条寺菖蒲 > 異邦人街の方面に来るのははじめてだ。こんなところにも日本風というか、こちらの世界的なアパートも存在するのに少し驚きつつも少し学生街で歩いてきた後なので私服姿の菖蒲が後に続く。

「こういう建物のところに実際にくるのは初めてです」

不動産の資料や写真は稀にそういう点検をしただとか改築したという書類としてみたことはあったが、肉眼で見て触れるのは初めてである。

五代 基一郎 > 「ルジュリニスカ帝国式建築とかもここぐらいでしか見られないからなぁ。
ここなんて極初期の仮設住居みたいなもんだったらしいし、時代の遺産だよほぼ」

いつもの通り玄関ドア前の鉢植えを足でズラして、鍵があることを確認すると
上着のポケットから鍵を取り出して施錠を解除。
ドアを開けて先に入った。靴を適当に擦り合わせて脱いで、足で退けて。

「はい、どうぞ」
脱いだ上着もそこそこに外套掛けに引っ掛けて部屋の中に進んでいく。

中は古めかしく、フローリング張りで敷居もなく広く。
ただ山積みになった本や満載された本棚、黒板やら。パイプ組みのベッドやら事務デスクや
応接用のテーブルに長椅子。
まるで何かの事務所を改装したのか、というような雑多さ加減である。
所々に置かれた観葉植物が人の住処らしさを演出している。

入ればわかるが、キッチンまでのしきりすらない。
異邦人向けなのか広めにとってあるのだろうかと思われる。
ベランダ窓のところには大鳥が1羽、デスクには黒猫。
電子的な音を出しながらドラム缶大のお茶くみのロボットがオカエリナサイと発しつつ動いていた。

遠条寺菖蒲 > 「お邪魔します……」

五代の後に続いて玄関先で腰を降ろしてショートブーツを脱ぐと焦げ茶色のタイツで部屋に踏み込む。
人の部屋というのは初めてであり少し緊張したが、部屋というよりは事務所のように見える。
しかし、これがもしかすればこういうところに住む人の基本的な住まいなのかもしれないと考えると不用意にそういう風な感想を言うのは躊躇われる。

「わ、ロボットですか?」

思わず視界に入ったそれに目を奪われつつもこういうような形のものは最近ではあまり見かけないと思わず食いついてしまった。

五代 基一郎 > 「どういう文化かわからなかったから、とか当時ここで働いていた人間のための……とか言われてるな。
大体普通の間取り2つ分は取ってるらしい。
一人で使うのも持て余してるし、こんなもんになったわけでさ」

スリッパはないのか。と言われそうだがない。
ないが清潔に保たれている辺り、誰かの手が入っている証拠なのだが。

「あぁ、そこの長椅子でもいいから適当に座って。」
と事務デスクに納まっていた椅子を引き出して自分は座る。
菖蒲がドラム缶に履帯を履かせ、アームを付けて頭は風呂桶つけたようなロボットに興味を持つと
ロボットは自分から挨拶を返した。

■ロボット>「ハイ。ハジメマシテ。遠条寺サン。今オ飲み物ヲ持ッテキマスネ」
無限軌道、履帯を動かし台所に併設された冷蔵庫からペットボトル飲料のオレンジジュースを持ってくる。

遠条寺菖蒲 > 「なるほど……」

納得の行く話だ。
後で誰が住むにしろ最初に地盤となる場所を用意する人が住む場所も当然、必要になる。
それに異邦人であれば、体格の大きな人種も多い。それならば分かる話だ。

「では、こちらに失礼して」

そう言って長椅子へ、スカートを折れないようにしつつゆっくりと座り膝の上に肩にかけていた小太刀を袋に入れたまま置いた。

応答して動き回るロボットをみて
「可愛いですね」
なんて思った。

五代 基一郎 > ■ロボット>「ハハーッ アリガトウゴザイマス!テレチャイマスネ!」

わかったから、わかったからと何かロボットを宥めつつ
椅子に腰かけた姿で手を組み菖蒲を見る。
黒猫はベッドに、大鳥はテーブルに備え付けられた足場に降りて。
何か所定の位置についたような姿で部屋にあるようになっていた。

「さて……俺から話すこと。話した方がいいこと。君が聞きたいこと、とあるだろうが
幾つか繋がっている部分がある。故に俺から話し始めようと思う。」

いいかな、と返事を伺いつつ付け足すように何故ここを選んだかも知らせた。

「ここは古いのもあるが、機械的な盗聴の対策。魔術や異能に対する防御を施してある。
そこらの施設よりかなり安全な部類でさ。まぁ、色々聞かれたくない話をするにはうってつけというわけ。」

遠条寺菖蒲 > ロボットに対して笑顔を向けながら、宥められる様子を見守る。

それから話す姿勢になったのを感じて菖蒲も姿勢を正す。
とは言え元々悪くない姿勢なので雰囲気を変えたというところだ。

「はい、色々と話しを聞くために来たというのもありますから。
それとこう言ってはなんですが意外と凄いところですね、ここ」

この部屋が特殊なのだろうが純粋に生徒会の会議室や幹部たちの部屋とも劣らないのではないだろうかという性能をしていると聞いて純粋に驚く。

五代 基一郎 > 「まぁね。この学園組織というか、色々耳を立ててる連中は多いからさ。」

さて、とコーヒーを一口。安物ではなく最近自分以外の誰かが
自分の金で買っただろうそれで喉を潤し。
雰囲気を切り替えた菖蒲同様、意識を切り替えるように話し始めた。

「まず君をスカウトした……私の所属を伝えよう。
そは”同盟”と呼ばれるものだ。20世紀後期に欧州で結成された組織であり
社会の枠組みを超えて跋扈する魑魅魍魎、異世界の脅威や怪異に対向するために生まれたと聞いている。
21世紀に始まった異変より、現在では国際的な警察組織として世界中に広がりその脅威と戦っているのが”同盟”だ。
正式な名称は今では擦れているけどな。」

これはまず、いいかな。と菖蒲の様子を伺いつつ。
質問があればどうぞとも付け加えて話した。
若干どころではなく突拍子もない話であることは承知しているからもあるが。

遠条寺菖蒲 > 耳を立てている連中と言われ、自分が最近ふとした瞬間に『感知』出来るようになった違和感について思い当たり、こくりと頷いた。

「どう、めい……」

まさかそんな歴史のある組織が存在するだなんて予想外だったが、
元々スカウトだなんて単語を聞いていたのだから少しは身構えていたから。

説明をかみ砕き理解していく。大雑把に言えば実家の加盟していた退魔師組織の派閥のない国際版かな?とその対象がただの魑魅魍魎だけから異世界絡みの事まで扱うようになったと。
そういう風に知っているものを比較対象として理解していく。
少し理解したところで

「続きをどうぞ」

と五代に続きを促す

五代 基一郎 > 「その外の世界の組織に何故君を勧誘したか。それは君が社会の枠組みを超えた脅威と遭遇したからだ。
正確には遭遇し、かつ現実的に捉えることができたことによる。
君自身、ある種何かの枠組みから踏み出そうとしていたことが大きいのではと思っているが……」

社会の枠組みを超えた脅威。
正確にはもっと区分されるような問題であるが、それはひとまず置いて
菖蒲に確認するようにその瞳を見る。

どうだろう、理解は追いついているだろうかと。

遠条寺菖蒲 > 「少し、いいですか?
確かに違法部活『ロストサイン』の“害来腫”ブラッタは強力でしたし、“失落園”も驚異的だと思いますが
学園内の組織じゃ……」

とそこままで言いかけて、それぞれの存在が未だこの学園に存在していたと言う事実が意味する事を考える。
そこから考え出して小声が漏れる。

「学園外も絡んでる……確かにロストサインの記録には外も……
既に学園の『社会』組織だけでは対処しきれない?もしくは、学園が明確な理由を持つまで手を出せない?」

考えるとキリがない。
思考から飛び出して声が出るのは頭がオーバーヒートするのを防ぐ為だ。
それとも他になにか目的があって、それはなんだ?
そもそも『ロストサイン』に関する情報が足りていない部分が多い。危険であることは違法部活ということとその行ってきた違法行為は調べた。それぞれが持つ二つ名と判明している組織上位人の名前は西園寺偲から聞いた。では、その目的はなんだったのか?お金集めか部員という名のコマ集めか?いや、違う。では?

――ミイラのような男、あの男のことをふと思い出す。

“害来腫”とはただならぬ関係だったような気はする。
いや、まとう。
この思考は脱線し過ぎている。

「……同盟とは、『学園』と言う枠組みだけでは対処出来ない時のための世界規模の組織ということでしょうか?」

少し思考が脱線した結果、単純にそう尋ねることにした。

五代 基一郎 > 「考えることはいいことだ。が、情報が少ない間に考えてもなんとかの考え休むに似たりだ。」

コーヒーを舐めつつ、ロボットに頼むと黒板を菖蒲から見やすい位置に持ってきた。
尚、五代は椅子から立ち上がりその黒板の前まで歩く。

「では遠条寺君。社会の枠組みがどういうものかを簡単に勉強しよう。
ちょうど、モデルケースという常世学園というものがあるしさ」

ネクタイを止めるピンを外し、胸ポケットにいれれば
黒板に置かれたチョークを手にして”常世学園”と書いて見せた。

遠条寺菖蒲 > 言われて少し頭を冷やすために深呼吸をする。

「そうですね。五代さんお願いします」

すっかり、この先輩のことを兄か先生だとかそんな風に思うようになってきた。
色々とそれだけ面倒をかけているということだろうか、等と少し思考の端で思う。
ロボットにもらったオレンジジュースを少し飲む。

五代 基一郎 > よしよし。と呟きながら黒板に書き込みを始める。

「まず”常世学園”を創設した”常世財団”がある。
これが”常世学園”という社会を作った。」

”常世学園”の上に”常世財団”を描き込みつつ
常世財団については、不明な部分しかないし今必要ではないから省くな。
と、して”常世学園”から大きな四角い枠を書きはじめた。

「これが”常世学園”という社会。
この中に、”生徒会”が存在し、警察や軍事的権力である”公安委員会”と”風紀委員会”が存在する」

”常世学園”の下に”生徒会”を書き込み、下に”公安委員会”と”風紀委員会”を書き込んでいく。

「他にも”式典委員会”等のいくつかの委員会がある。これが学園という社会を円滑に進ませるために”公的機関”だ。」
それら生徒会の下の委員会を先ほどまでの白いチョークとは別に赤いチョークで、枠線を引いて囲んでいく。

「そして学生や教師等という身分、もちろん異邦人も含まれるが”一般の存在”が存在する。民間人な、所謂」
その下に”民間人”と書き込み枠の中の3分の1を〆させる。
わかりやすく表すためだ。

「最後に違法部活、落第街等のイリーガル、反社会存在だ。犯罪組織とかもここだな。」

カリカリと黒板に書き込む。ちょうど”常世学園”という枠組みの中に”公的機関” ”民間人” ”反社会存在”
の三つが納まった。


「ざっとこんな感じ。どう?分かりやすく簡単にしてみたつもりだけど」
質問があったらどうぞ、ともしつつチョークを持つ右手とは反対の左手でコーヒーを啜る。

遠条寺菖蒲 > 「そうですね。ここまでは大丈夫です」

ここまでは世間知らずだとか箱入りだとか言われてたかつての自分でも書類上の存在として、知っていたし今では日に日に肌に感じるようになってきた枠組みと言える。

「ここからどう変わっていくんでしょうか…?」

純粋な疑問。
この島は、島というだけで閉鎖的だ。
しかし、異邦人たちは異世界からやってくるし定期的に外部とも連絡をとったり何なりしている。
つまり、鎖国的ではないにしろ外部から何かがあればそれはよく分かるはずだ。
と菖蒲は疑問に思うのだ。

五代 基一郎 > 「どうも。モデルケースというだけあってわかりやすいな。」

外。とおもむろに”常世学園”から離れた、かつ平行した場所に書き込み。

「特に変わりはしないよ。これは一種の国家やら何かのサンプルモデルだしな。
異邦人だって極端な話でいえば外国人旅行者と一緒。
まぁ言葉が通じなかったりなんだりで揉めることは多々あるけど。
外に対してもそれなりに、形式上オープンな部分はあるし……そもそも外とは概念的な意味だよ。
どこそれの国家とかではなく、常世学園の社会という枠組みの外ね」

そして。
恐らく菖蒲が一番知りたい部分に入る。
その名前が書きこまれていくのが、菖蒲に見えるだろう。
”ロストサイン”
それは”外”と”常世学園”を跨ぐように(反社会存在にかかるよう書かれている)
名前が書きこまれ、それを囲むように線が引かれた。

「これがロストサイン。学園初期から存在する、外部とも繋がりを持っていた
学園という社会の中にあってその外にもいた組織。
グランドマスターを頂点にマスタークラスと呼ばれる幹部が存在した違反部活だな」

そこから線を引っ張って”グランドマスター”を頂点に”マスタークラス”やら”メンバー”とか書き込んでいる。

「さて、何か質問は?」

遠条寺菖蒲 > 「それだけ大きな事をしていて組織が壊滅的な状態になったのが二年前ですよね……」

当時の菖蒲は情報封鎖と生徒会室の雑用という状況に忙殺されていて内の事も満足に把握できていない。

「それだけの事をした違反部活の幹部がどうして普通に学園にいたりするという状況があるのでしょう?」

生徒会で最近閲覧可能の中にあった“害来腫”が最近まで一時的にだが公安委員のものであったという記憶とそれを上司が『処理』したという報告。
疑問は多い。

五代 基一郎 > 「そ、二年前に壊滅ね。」
-2、と書き込んで”ロストサイン”の上に大きく×印を書き込んだ。

「それが有り得るんだよ。これがね」
カツカツ、とチョークで軽く小突く部分。
それはロストサインがかかっている違反部活、反社会存在の部分。

「ロストサインもまた、学園という社会の枠組みにいる組織だったからだよ。
だから偶発的とはいえ、当時の執行部の俺や公安委員会の連中とか使える人間……
学園社会の人間で対処して壊滅することができた。」

”生徒会”やら”公安委員会”とかからチョークで線を引っ張る。
あくまで学園という社会の中での騒動であるというように。

「つまり、かつてロストサインという違反部活にいた”害来腫”も組織壊滅すれば罪状あれどただの学生。
学園にいてもなんら不思議じゃないんだよ。社会上はね。
犯罪組織にいた人間が司法取引で情状酌量、一般社会へってのはあるでしょ。そういうの」

もっと突っ込んだ話、というかなんかだけどとも付けて
反社会組織のところにチョークを持って行けば

「これは個人的な見解だけど、恐らく反社会的存在の最たる”落第街”は学園という”社会”が黙認している存在だと思っている。
考えてごらんよ、いくら治安の悪くなる原因はあろうと世界に見せるための華々しいモデルケースのようなこの島で
行政が殆どほったらかしで半無法地帯が未だにあるってのもおかしな話じゃない。
財団は学園を異邦人や異能や魔術の社会のモデルケースといて利用してるんだから
当然異能や魔術等が行使される治安の悪い場所、それを反社会的に利用する連中がいた場合の
外部に向けたテストケースやら何かが必要になる。
それらに対抗する警察機構の対処や、民間人がどうなるかとかね。」

ようは学園は実験場で、落第街は箱庭の一部みたいなねと続けるように話し

「そうなるとロストサイン自体やら壊滅騒動の後とか、その処遇も
そういったテストケースのうちの一つとして見られているなら
何もおかしくはない。」

遠条寺菖蒲 > 「……よく悪くも手のひらの上」

って感じですか……と少し呟いて書かれている内容と解説された事を反復する。

「ありとあらゆる場合を想定しなければならないのならその中で発生するであろう問題とそのなりゆりも全てが試験であり、『財団』にとってのサンプルケースの一つで……」

顎に手を当ててまさかこれまでの事も学園にとっては想定内の事であったりとか……。

「まさかいえ、そんな、今も『これからどうなるか』なんてある程度被害が予想されるのも想定してるのに財団は知らないフリを……見て見ぬふり……いえ、分かってて放置してるということですか?」

自分が口にしてる内容が滅多なことだというのも分かっているが、まさかそこまでは予想出来ていないのかも知れないが今の話を聞いてしまえばそう考えてもしまう。
これまでの事など、今起きている小中様々な事件のことなどを。

五代 基一郎 > 「先の西園寺偲の件だってそうでしょ。
公安という諜報的に社会の治安維持を担う公的機関の人間なんだから本来特別な思想なんて持っちゃいけないんだよ。
風紀ならともかくね。そういう危険性を持ち暴走し
強権を用い私的思想活動(反社会的な破壊活動)に走ったものがどうなるか、とかさ。」

そんなの解かりきったことなのにな、とか
”炎の巨人事件”とか言われてるんだっけ?レイチェル君に頼んで彼女ががんばったことにしてあるけど。
いや実際がんばってもらってたけどさなとど補足しつつ
適当にetc(えとせとら)と落書きのように書き込む

「他にある色々の案件も、こういった社会の中で想定できうることだと思うよ。
それらのサンプルケースと結果が多ければ多いほど統計データ上正確になる。
最も、これは確定事項ではなく俺の個人的見解。あくまで俺の考え。」

そこは注意してね、と付け足しつつ話をまた続けた。

「で、これもその中に関わってくるんだけど。
君が常世神社で俺にした質問。そして俺が聞いた質問の答え。
今この場所なら教えてくれるよね」

と。コーヒーのお替りをロボットに頼みつつ遠条寺菖蒲を見た。
もちろん、答えなどわかっているのだが。
誰から、何を、何のことを聞いたかという。

遠条寺菖蒲 > 話を聞きつつ、またそう言われると考えてしまう。
どこまで想定されているのだろうか。

色々と思考は余計なことを考えてしまうし、行き着いてしまうのは
私がここに来てこういう話をされるのもひとつの可能性としてみられているということだ。
何もしてこないということはそれも含めて観測しているのだろうかとも。

そしてこの間の話と言われて余計な思考を一時中断する。

「そもそも生徒会からもあまり情報を得られなかった私が『ロストサイン』の事などを含めての情報を聞いたのは」

ふぅ…と一度深呼吸して。

「常世保険病院にいた西園寺偲さん本人からお聞きしました」

それは彼女の意識体とも言える存在でしたが、と付け加えて先ずは様子を伺うようにして五代の方を見る。

五代 基一郎 > 溜め息。解かりきっていたが、なんだかなとも思いつつ。

「感情的なのは抜きにして、今後は接触しないように。
接触を求められても拒否すること。情報は俺が出したり、収拾に同行させるから。
今下手すると情報端末系にはどこからでも出てくる可能性があるし」

病院でも言ったが念を押すようにもう一度告げた。
誤った思想で誤った情報を伝えてくるものほど人を落とすに恐ろしいものはない。
危ない橋を渡らせたり、ここから先に出る人物のようになってしまうことこそ危険である。
そういったことがあったの、報告してないでしょ。きちんとするようにとも付けて話を続ける。

「あったからといってそのまま処刑があるわけじゃないしその話はさておく。不満があるなら聞くけどさ。」

ロボットが持ってきた新たなコーヒーの香りをかぎつつ
そういえば御茶請けがなかったなとも考えるがそんな常備しているものは覚えがない。
しかしロボットは菖蒲にだけなぜか買った覚えのない切り分けたカステラを差し出して、また所定の位置に戻った。

「……まぁ、そういうわけで。その西園寺偲からクロなんとかについて何か言われたから俺に聞いたんだろうけど
何を言われたのさ」

遠条寺菖蒲 > 少し納得はできない。
しかねると言ったほうがいい。
一応、全部が終わったら彼女が名前を告げた二人を連れて彼女の病室にはもう一度だけ訪れようと思うからだ。

「……一応片付くまでは行きませんよ。後、彼女は多分ですけどそんなに自由ではないです」

どうしてかそう思った。恐らくだが自分への接触は彼女の必死な努力によるものではないかと思う。
と、そんな話を続けても仕方がないと言葉と思考を切り替える。
今は別の話だと。

「彼女から聞いた名前は二つです。
『能見さゆり』と恐らく彼女に親しいと思われる『クロス』?とかそれに類する名前の人です」

先に五代からトンデモない話をしていたんだ信頼する意味でも情報は開示すべきだ。

「先ず彼女が自由ではないというのは彼女が私と接触出来る時間に制限があってそれ以降は音沙汰がなかったことからきっとそんなに自由はないのだと予想しました。
少し名前に関して疑問なのは、あとの名前の人は西園寺偲先輩の声が雑音にかき消されたのもあってよく聞き取れなかったんです。
風紀委員の能見さゆりは『話せば』強力しくれるだろうというのとクロス?さんは助けてあげて欲しいと言われたくらいです。
未だにその二名ともに接触できてすら居ない状況ですが……」

と現状も含めて一通り答える。
言ってみれば彼女から頼まれたことは今のところ何一つ出来ちゃいない。

「そして何よりもロストサインを止めて欲しい、と言う言葉でした」

今はもうバラバラのスタンドプレイ状態ではないのかと後になって首を傾げた案件なのだが。
これも報告する。

五代 基一郎 > 「本来接触があった時点で君の正気は疑われていてもおかしくない状況なんだけど、理解してないだろうなぁ」
事の本質的な部分を理解していないだろうし、今はまぁという彼女に対して
一応の推測されうる事実を教えつつ話を続ける。

「名前が出たのは”能見さゆり”と恐らく”クノロス”だな。
ロストサインがどうの、というのも続けて説明するから。
気に食わないだろうけどそれで彼女が今でも自分本位な思想を持ってるかがわかるでしょ」

一から全部説明するほうが何かと速いと思うが、それでも人間の感情というのはままならない。
性分なのだろうが、だからこそ見識と経験を積まなければ体よく利用される末路だ。

「まず”能見さゆり”は風紀委員である生徒だがアンドロイドであり、主とする存在の命令を絶対とする。
先の案件で公安所属の西園寺偲に手を貸していたのは確認されているし、その関係だろう協力させられるというのは。
現在は大きな損傷を受けてて否支中活路……ほら、この前の病院で見ただろう包帯男。
あれが面倒見てるから。あとなんかロストサインがどうので協力を求めるのは不正解と言える。
元々が違うんで、これも後で説明するから保留ね」

また黒板に”否支中 活路”とか”能見さゆり”とか書き込まれている。
否支中は外側、能見は風紀のetcと落書きのように書き込まれ

「で、助けろだの言われてるクロノスについて説明するけど。
この時点で君は都合のいい人間として扱われているのはわかっているかな」

遠条寺菖蒲 > 「……そう言われるとなんとなくは」

そもそも私が彼女に協力しようと思ったのは、
たまたまその場でその声を聞いてしまったのと、その時の彼女が余りにも悲しそうだったからだ。
なんとなくは、とは言いつつも要は菖蒲自身がそれでもいいと判断したのも大きい。

「でも、割りと彼女のお陰で病院で“害来腫”ブラッタに抵抗出来たのでそこには先ず感謝しなければなりませんし」

出なければ今自分はここでこうしてはいないだろう。

「否支中活路……メールでミイラマンについては家で説明するって言ってましたもんね」

あの容姿と特徴的な格好やら瞳を含め忘れることはないだろうなぁと考える。
翌々考えるとよく敵だと誤認しなかったなぁと自分を褒めたくなる。そんな夜に見たらちょっと困る容姿ベスト10に入る存在感だった。
細々と返答しつつ五代の言葉の続きを待つ構えでいるようだ。

五代 基一郎 > 「お人よしっていうんだよ、そういうのは。
そもそも偶然いただけの君に頼むことじゃないでしょ。
よく考えてごらんよ、一人に頼むものとは思えないからこうしてるんじゃないか。
まぁそこは君の美点ではあるが今から見る世界では弱点にもなるから気を付けてね、本当に」
頭が痛くなる彼女のメンタルを今どうこう言っても仕方がないのだが
言いたくもなるので口に出る。

「否支中活路はロストサイン壊滅の件の切っ掛けになった人物だ。
妖精眼を持つ者。あいつがロストサインの末端と戦いになったことが切っ掛けで芋づる式に戦いになり
公安等含めたそれなりの規模の戦闘になり……という感じ。
ロストサインが保持していた門を破壊したため、ゲートクラッシャー(乱入者)と呼ばれている。
当時俺も居たから現場に。ちょっと、まぁ色々あって連絡は取り合ってるんだよ。
一応こちら側。」

ガラ悪いだけでそれなりの人間、とも付け加える。
最も今開示出来ない情報が多い。あの時奴は。開示出来ないと言うより思い出したくない。
思考したくない情報が多すぎる。俺はあの時。マグカップを握る力が自然と強くなる。
だから俺は。

■ロボット>「五代サン」
「あ、あぁ……質問は適度に挟んでくれればいい。否支中についてとかな。
答えられる範疇で答えよう。続けてクロノスだ。」

公安部の枠に書き込む。”クロノス”という名前。

「調査を主とする公安委員会直轄第二特別教室の所属。
そこの室長補佐代理に会ってただろう。あのザンバラ髪の、あいつ。
”害来腫”と共にあいつの部下だった女だ。」

デスクの上にあるクリップボードを手に取り、菖蒲に手渡す。
そこには非常連絡局解体時の聴取で得ただろう顔写真と異能、素行や話したのとは別の身分等が書かれていた。

「が、あのザンバラは”害来腫”の活動等の責任を被って除籍。
今はそいつが室長補佐代理の席にいる。」

そこからコーヒーをまた一服して話を続ける。

「問題とされる主だった行動は元非常連絡局所属ということから
西園寺偲の”思想”に強く同調。西園寺偲が生み出した炎の巨人を神聖しクロノスの持つ正義を理由に
落第街に出没しては放火と一部施設への襲撃と殺人行動を繰り返している。」

観測されてるだけでずいぶんとあるもんで、日課なんじゃないのと
ペラペラと資料を捲りながら話し

「クロノスのプロフィール紹介こんなだけど、俺が念を押す理由、わかった?」
何に念を押すか、はわかっているだろうと暗に伝えつつ
既に束となっている資料も手渡した。

遠条寺菖蒲 > 色々と聞いてミイラマンこと否支中活路がとんでもない奴だったこと、あの室長補佐代理さんがいつの間にか『元』になっているなど驚きはあるが、
それに五代さんにも何やら思うところはロストサインに事件関連についてはあるようだ。

「それで……」

と手渡された資料と聞いた言葉とこれまでの説明を受けての疑問点が浮かび上がる。

「どうしてこのクロノスさんが今あの『室長補佐代理』さんに代わって室長補佐代理なんでしょう?」

疑問にもなる。
なぜなら、

「公安委員会は感情や思想といったものがない方がいいのでは?彼女が選ばれるのは余りにも『不自然』ですよね?」

今までの話を聞く限り、思想だ何だを持っても昇進出来る可能性がある風紀委員会ならあり得るだろう人事異動。
公安委員会としてはあり得ないだろう人事異動。
納得しかねる。

「念を押す理由は色々思い浮かびますが、先ずはその疑問が不可解で『気持ち悪く』感じます」

何かがおかしい。変だ。
狂ってる。
少し話を聞いた程度の自分がこう思うのだ。疑問に思わないほうがおかしいのではないかと考える。

五代 基一郎 > 「表にでない調査部というのにやりすぎた”害来腫”は始末され。
表にでない調査部というのにまぁそこそこやってた”ザンバラ髪”は除籍と言う形で処分された。
それでは公権力でありながら、危険な思想を持ち
暴力を振るい続ける者がどうなるかは言わずともだよな」

クロノス、の文字に×印を付ける。
それが予想されうる最も正答といえるモノである。

「公権力が横暴してるのがどういうのかは説明したけど、西園寺偲で。
まぁあれは公安員会副委員長だからかなりのやらかし案件だったからまた別だけどさ」

カツカツとチョークで黒板を小突く。
小突いて、そこに書き足す言葉。室長補佐代理

「室長ならまだしも室長の補佐の代理なんて肩書きだけみたいなもんでしょ。
さっきのような個人的見解だけど体良く首を落として処分できる……公安委員会の第二特別教室にとっていつでも切れる尻尾ってところかな。
調査が主、つまり諜報組織なんだから存在はさておき、そのメンバーはそもそも目立たないことが存在としての前提なんだよ。
目立たず人の印象に残らず、かつ敵とは違う姿。
だから本来の主たる仕事をしている第二特別教室の人間はその姿を見ることはあっても察知等されないだろうさ。
そしてそれらから目を逸らすための存在であり都合よく切れる捨て駒が”害来腫”や”現室長補佐代理のクロノス”だろう。
前補佐代理はそういう意味じゃ大変に優秀だったよ。保身的といえばそれまでだけど、ある程度目立ちはしつつも
突かれるような暴挙にはでない。だが仕事はする。
だから”除籍”という形で放逐されることができたんだ。」

暗に始末されるのが常であろうと伝えつつ
あくまで個人的な見解だけどね、と先ほど同様につける。
そして菖蒲の疑問に答えた。故に言葉を待つ。なぜこの話になったかそもそもの話についての言葉を。

「で、どうして欲しいと言ったんだっけクロノスを。西園寺偲は。」

遠条寺菖蒲 > 「……助けてあげて欲しいとお願いされました」

クロノスと言う名につけられた☓印。
今語られた第二特別教室の尻尾切り。
これは大きくまわりまわって“西園寺偲の起こしたことのツケ”の支払いということか。
いや、それだけではないだろうが含まれる。
『室長補佐代理』さんは優秀だったが故に除籍にしか出来なかったとも言える。
故に明確に処分出来る対象をつくりあげようとしているのではないか?

手元の束。

きっとこれだけでもクロノスという少女は詰むのではないか……そう思い至って固唾を飲む。
遅かった、ということか……と僅かな逡巡の果てに五代に向き直る。

「クロノスを助けてあげて、と」

そう「誰を」を付け加えて答える。

五代 基一郎 > 「クノロスを助けるということは、どういうことか」

×印のつけられたクロノスの文字の部分にカツカツとチョークを
小突くように当てて差す。注視させる。

「遠条寺菖蒲。具体的に答えなさい」

病院の時と同じように、その目は菖蒲の目を見ていた。
まるで試すように、詰問するように。問うように。

遠条寺菖蒲 > 「状況的に言うなら“尻尾切り”の対象から除外させ、処刑を行わせない……
つまり、公安委員会第二特別教室の室長補佐代理と言う役職からの解放とこれまでの過激な行為に対する刑罰を身内処理により暗殺または大々的な殺人処分による処理をさせないこと……で

それは、風紀委員会の上と……その上の指示に従う風紀委員会という組織一つと敵対することになります……」

そう、先程の説明受けてそう言う考えに至らないことはない。
組織一つを敵に回すだなんて馬鹿げてるし個人で出来ることじゃない。

悔しいことに『連中』は既に生贄を祭壇へと進ませている。
知らずか知ってか、クロノス本人はその階段を登っている。
最後の階段を登り始めている。

既にお膳立ては整いつつある。

「……」

菖蒲はいつの間にか握りこぶしを作っていた。
知らず知らずのうちに。

五代 基一郎 > 「現実的に考えられている部分が半分というところかな。
まぁ知らない部分もあるしいいとしよう。」

左手で持ったコーヒーのマグカップを傾けて
喉を潤しながらまた話を続ける。些か冷めてきた。
もう一杯欲しい。

「西園寺偲が頼んだことだろうが、ここからでも自分本位な思想な見えてくるでしょ。
というか現実が見えていないからこその君へのお願いというかさ。
状況的に風紀は動かないと見ていいよ。
先の西園寺偲の一件で風紀は個人に落としどころとして手柄を出したが、それは組織の暴走を嫌ってだよ。
だがここで”また”公安委員会の人間を、風紀が介入することでどうにかしたら
それこそ先と同じ事だ。その二度目なんて個人どうこう二度もできんから完全にひっかぶりたくない泥。
やれば組織として毒を飲みこむことになる。正義の戦いの美酒ではなくてさ。」

そして。公安委員会はまずないとして、風紀からチョークを外し
「では他の委員会はどうか。まぁ無理だな。軍権どうこうできるところなんざないよ。
式典委員会もこういっちゃなんだがどうにもすることはできない。これは天秤の話じゃないしな。」

そして次に移るのはその上。

「生徒会は基本不介入。それは遠条寺君もよくわかってるでしょ。事後からって話」

つまり組織として出来うるだろう可能性の場所はない。
それなのに個人で出来ることはあるか。答えは決まってる。
覆すことなど不可能である。

「これは元から個人ではどうこうできる話じゃなく、社会の枠組みの中にある組織の話なんだよ。
かといって社会が悪いとかそういう思春期の子供が描く話でもない。
その社会の地位を利用し、己のしたいがままに暴挙に出て人の命を奪い続けてきた。
西園寺偲は、私の影響でかわいそうな子ができたから助けてくださいという悲劇のヒロインのような姿で言ったんだろうがそれ自体間違い。
自分が何をしたのか理解してない人間の言葉だよ。
子供がヤンチャしたからどうのという次元の話じゃないんだよ。
そこがもう間違っているんだ、認識が。」

カツカツ、とまたクロノスの名前にチョークを当てて続ける

「君は今、クロノスのことをも悲劇的な人物として捉えている。
踊らされていた可哀相な女で不要になったから始末されるのだと。」

その心中を見るように菖蒲を見ながら、ロボットへコーヒーと俺にもカステラくれよと頼んだが
コーヒーだけが出た。品切れらしかった。

遠条寺菖蒲 > 「……確かにそうです」

西園寺偲先輩の頼みは子供の駄々のようと言えばそれまでになる。
あれを失敗したらあれこもこれも失敗してしまって通りかかった体の良い人にどうにかしてと言っている子供のようだ。
クロノスの件に関しても立場と権力を使った殺人は西園寺偲と同じだし、誤ちを繰り返しているに等しい。
自業自得の結果、と言ってしまえばそれまでだ。
けれど、けれどだ。
どうして誰も本気で止めてあげようとしていないのか。
西園寺偲先輩に関して言えば処分についてなど考えていなかった可能性すらあるが、クロノスに限っては違うだろう。

「けれど、それでも、捕まえて牢に叩き込んでおけばいいだけじゃないですか……」

恐らく、公安委員会はそうはしないだろうとなんとなく思う。
余計な事を言わせないように。

生徒会は事後でしか動けない。しかもそれは大体は法的処分についてであり現場に行くことは稀である。

この場所からこの手は彼女を助けるには届かない――。

五代 基一郎 > 「それは違う。悪いことをしたらごめんなさい、と謝るのは当然だが。
罪を犯したから捕まえて牢に入れて反省しなさい、というのは大分大雑把で違う。
程度がある。逆に聞くが、それだけのことをして牢に入れて反省してねだけで済ませていいのか?」

菖蒲に手渡された資料。わかっている部分だけでこれだ。
実際どこまでやっているか知れたものではない。

「奪われたものは納得しないし、この”常世学園”という社会に生きるものも納得しないだろう。
それを許すということは、己に何時か飛んでくる理不尽な暴力を許容することに他ならないからな」

コーヒーを啜りながら続ける。腹が減る。

「助ける助けないではなくて”社会”に裁かれる必要があるんだよ。
そこをまず履き違えてはいけない。
そういう意味じゃ、始まりがまず彼女の言葉ありきの時点で
君はもう影響を受けているといっていいな。西園寺偲の言葉にさ」

他に質問は、とか君個人が介入すると生徒会がどうのでなるから
そこはきちんと理解してねと付けつつ言葉を待った。
特になければ、次の話に移るだろう。

遠条寺菖蒲 > 「……」

やはりこの五代の言葉は正しいのだ。
客観的に見て正しく判断している。
それが理解できることだから悔しいと思うのだ。
私は被害者でないから理想論を口にできるだけだと言われているのだ。
そう言われてしまえば反論もなにも出来はしない。
実際に、その通りなのだから尚の事質が悪い。
故に、言葉を一つ一つ噛み締めるしかない。
聞き逃しがないように。

「質問は、特に今のところないです……」

今のところ打つ手が無い。
手札がないし、あったとしても開示されておらずそのカードが使えるかも判明していない。
別に何か質問しなければならない理由はないのだが、結果は少し不満なものだった。
もちろんそれを顔や態度には今は出しはしないが要は「何もするな」と言う状態まで運ばれた形に少し納得していないだけだ。それなのに納得できてしまう理由(こたえ)を既に出されてしまっているのが不満なのだ。

正しさや現実をある程度見たとはいえ、菖蒲はまだまだ16の少女にすぎないというところであった。

五代 基一郎 > 「不満なのはわかるが、出来る事と出来ない事を知ってこそ何をするべきか。何をするべきでないかがわかるんだ。
今感じていることは悪いことではないよ。」

それは忘れないでね、と付けつつ買い置きのものを何か取って来させると
適当に冷めたドーナッツが出てきたのでそれを左手に持って聞く。

「では次だけど、西園寺偲は何を止めろって言った?」
右手に持つチョークで、×印が刻まれたロストサインの文字を小突きつつ
ドーナッツを咀嚼し始めた。
答えを出す間に食べ終わるだろうということだろう。

遠条寺菖蒲 > 思考は切り替える。
次の話題に前の話題の感情を引きずるのはナンセンスだ。
深呼吸を一つして、答える。

「……ロストサインを止めろ、と言ってましたが
そもそも今は既に壊滅してバラバラ、ですよね?」

そのはずだ。
先程も壊滅したとして☓印がつけられたわけで今存在するのはロストサインの幹部たちは『元』であるはずだ。
そこで少し喉が渇いてるとようやく気づいてオレンジジュースを飲む。

五代 基一郎 > 「そう、正解。ロストサインという組織はもうないんだよ。”あった”という過去形が正しい。」

ドーナッツを咀嚼しおえ、コーヒーを流しながら答える。
既に組織は壊滅しているのだ。テンでバラバラで、ようは元とつく連中しかいない。

「だから、そのロストサインがまだあると思っている前提がおかしいのさ。
未だ学園を揺るがす脅威ロストサインという組織がある、だからこそ私がなんとかしなければ……という誤った認識が供覧を産んだと言っていい。」

黒板消しを使い、挿絵のように書かれたロストサインの概要図のようなピラミッドの枠組みを消していく。

「これもまた、如何にであれ学園の枠組みの中に戻ったわけだ。
大なり小なり、マスターであれ”害来腫”のように学園社会という世界に再びという感じ。」

だから、と次ぐように言葉を接続させ

「ないものを止める、というのはそもそもおかしい話なんだ。
マスタークラスと呼ばれるものでさえ、元ロストサインで元マスターの学生だよ。
学園社会の中ではね。今や頭のネジが外れた狂人が群れなくなっただけでさ
ただの個人になったのさ。元ロストサインは誰も彼もね。」

遠条寺菖蒲 > 「……群れがなくなったとなればモノによってはより厄介なんじゃ」

仮にグランド・マスターと呼ばれる存在がそこそこメンバーの動きを制約してたとすると厄介な話どころではない気もする。
そしてどうしてもそんな言い方をされる時になることもあるわけだ。

「それに学園社会の中、と外からの認識も気になるような言い方をされるとまるでそういうのが確りと存在するみたいじゃないですか……」

 それはそれでまたなんとも厄介な話になるのだろうかと考える。

五代 基一郎 > 「だから、最初の方に話は戻る。
これまで話してきたことは常世学園という社会の中での話だ。
落第街のとか、クロノスのことも含めてさ。ロストサインという組織も。」

カツカツと常世学園の枠組みを小突きながら、話を続けていく。
本題が近い。

「だがいるかいないかもわからんグランドマスターがいたことでかなんでかはしらないが
群れとして社会にいた者達が、解き放たれて好き勝手やっているのが今。
組織としての脅威はなくなったよ、確かにね。
だから力の大小があるからそいつらは学園社会の公的武装組織……風紀や公安で対処するものであり、されている。
事実残党はまだいるし、それに駆り出される部署もある。
だが」

そのチョークは学園社会から、外。
枠組みが無くなったマスタークラスのところへ移されて

「その中でも学園という社会の枠組み……というより土地にいて
その社会制度や存在そのものを何とも思わない者達がいる。
好き勝手に暴れている連中だな。それの最たる連中がマスタークラスの奴らだ。
連中にとっては学園の法などあってないもの。完全に野に放たれた獰猛な頭のイカれた人間だ。
2年前に生き残った連中の殆どが強力な無法者(アンチェイン)と化している。

マスタークラスだった者の名前一つ消すにも中規模の一個組織の力と武力を使うんだ。
もう社会がどうとかというレベルではないのが現実だよ。
脅威の問題というのはもう別なのさ」

2年前、ロストサインという組織があった時と崩壊した後では
その問題は大きく変容していた。
故に多くの者が思っている問題のヴィジョンと、現在現実として表れているのは全く別であると
ここに来た遠条寺には伝えなければならなかった。

遠条寺菖蒲 > 「無法者って……」

――いや、それだけのチカラが彼らにはあったか。

それを身を持って体験しているだけにゾッとする話だ。
正装・『オホナオミ』を装備した《禊祓》を直撃させて尚、生き残るすべを持つ等常識の埒外に存在すると言ってイイ。

「さらに今、割りとあちこちでいろんな事が起きている中で実力者をそんなに集めるのは厳しいというわけですよね……」

思考すればするほど対向するには学園内だけの組織だけでは今は手が足りていない。
明らかに不足している。
ロストサインについては知れば知るほど無茶苦茶な相手だと理解させられていくような気がする。

五代 基一郎 > 「報告みたけど、君が最初に遭遇した肉腫の群れ。
あれはザデルハイメスの力の末端に過ぎない。
その前日に第九特別教室のメンツが駆逐艦“さくいかづち”引っ張り出して攻撃仕掛けたんだ。
艦隊でも軍団でもなくザデルハイメスという一個体に。
しかも結果は痛み分け。とてもじゃないが規模がもう学園社会の範疇を越えているよ。
正直言えば、2年前のが大人しかったんじゃないかって程にさ」

偶発的な戦闘だったのもあるが、ほぼ小規模と言っていい損害。
数日もしない紛争程度の事件だった。
だが今の現状、組織ではないバラバラのアンチェインを相手にするということは
下手をすれば島どころかそれ以上のものが吹っ飛びかねない。

「だから、学園という社会の中にいて外を知って理解できる者をスカウトしたわけ。スカウトしたのは他にいないけど増やさんでもいいし。
一応否支中も協力者だしな、緩やかだけど。ザンバラは何にせよしばらく休養だな……」

遠条寺菖蒲 > 「あの部屋を覆うような呪法を末端が扱う……」

それはトンでもなく強大な相手ということになる。
一人二人、加勢が増えたところでどうにかなる相手とも思えない。

「元『室長補佐代理』さんもで、否支中さんは協力者ですか……」

確かに得体の知れないようなあの男たちならやり合えるのだろう。
想定していたよりも大きな元ロストサインの幹部連中の個々の危険度に今更ながらに私でどうにかなる可能性のある話なのだろうか、とも思考する。
いや、いざとなったら逃げるしかないよね逃げれるなら、と考える。

「……それでスカウトを受けたとしたら私に何をしろという事が待っているのでしょうか?」

少し先を急いだ質問だが、それだけ脅威について煽られれば聞きたくもなる。

五代 基一郎 > 「元『室長補佐代理』のあいつも、協力者ね。この島にいる”同盟”は現在俺一人。
なんで公安のあいつがって今挙げた連中は体制を揺るがす脅威なんだけど、現状終わった案件の関係のだからさ。
公的に認められないんだよ。今またほじくりかえして危険です、って言うわけにはいかないし。
とっとと終わったことにしたんだよ。他にやること多いし。でも現実としているから
黙認されてたんだろうけど、その黙認してた連中の御意見が変わったか何かしたのも関わってるかもね。
否支中は協力者といっても目的が近かったり似たりとか、2年前のことでってのでかな……具体的なのはまぁ、受けてからかな」

もうえぇやろという風に黒板消しで黒板に書かれていたものを消していく。
黒板と黒板消しが擦れる独特の音が鳴る。

「期待している結果から言えば脅威の排除。
過程としては何と戦うか、この世界に何があるか。もっと状況を知ってもらいつつ
知識と武共に力を付けてもらうって感じかな。力が欲しい、とかどうこうでないのは大体わかるし。
一番必要なのは人間としてどうか、とかそういった現実等を受けいれてどうするか決められる人間なのか否かなんだよ。
そういう人間って中々いないんだよね」

さらりと今聞いてる菖蒲からすれば考えるに至らないところを付けつつ
どうだろう、と答えて聞いた。

遠条寺菖蒲 > 「……」

とは言え、現状のままでは八方塞がりだしやれることはない。
こういう状況をカードゲームなら詰みと言うのだろうが、
現実はそうではなくて詰んだとしても続けさせられる。

それをどうにか出来るのは第三者であり、今目の前にある逆転の一枚かそれとも更なる詰みへの一枚か。
現状が行動の詰みならば選択肢などあってないようにも感じる。
別に私はそこまで求めている訳でもない。
ただ、理不尽で知り合いが侵される可能性があるのにそれを見て見ぬふりして、どうにも出来なくて泣くだけしか出来ないなんて言うのが嫌なだけだ。

「……スカウトの話、受けさせていただこうと思います」

自分のこの自己満足を少しでも、目の前で救いの手を求めて伸ばす誰かの手くらいは掴める可能性が少しでも高まればそれだけでもいいと願って。

菖蒲はハッキリとした口調でそう言った。

五代 基一郎 > 「では、あらためて。よろしく遠条寺菖蒲君。まぁまだ危ないし見習いみたいなもんだけどね。なんとなかるよ。」

そんなことを言いながら黒板を脇に退けて。椅子に座り。
遠条寺の目を見る。

「他に聞きたいことはあるかな。なければファミレスにまで行ってみる?」

大鳥に餌の豆を与えながら問う。
もう大体においてメインの話は終わったというような雰囲気だ。
もちろん、質問があれば答えられる範囲で答えるだろう。

遠条寺菖蒲 > 「いきなり一人で実戦とかしろ、と言われても困りますからね……」

正直、言われれば事務作業ならそこそこ出来るかもしれないが、
そういう組織ではないだろうし、安堵の溜息かそれとも大きな選択をしたためか大きく息を吐き出す。

「聞きたいこと……関係ないことですが一つだけ」

そう、以前から気になっていたことが一つあってそれが未だに分かっていない。

「公安委員会の第九特別教室の方で私を助けてくれた方々にお礼か何かをしたいのですが、連絡などって取れないのでしょうか?」

関係ないけれど、しばらく放置していた謎で知りたかったことだ。

五代 基一郎 > 「してみる?最も稽古みたいなもんだけど」
もう少し後かもだけどさとか冗談めかしつつ椅子から立って
キッチンで蛇口をひねり、手を洗う。
脇にあるタオルで手を拭いつつ、その一つの質問に答える。

「あそこは対呪術等のスペシャリストの集まりでさ。
だから顔とか素性は基本的に隠匿するものなんだよ。
名前や顔、身分が知られるだけで不利になるし。
まぁ一応知り合いはいるし、それとなく言っておくから。」

最もその知り合いはまだ回復していないだろうが
それについて菖蒲に伝える必要はないというより言って不安にさせるのもどうかである。

「どうする、ファミレスまで行く?まぁいたいならここは好きなだけいていいし…あぁあとでここの合鍵渡すけど。
都合がいいしな何気に。」

遠条寺菖蒲 > 「取り敢えず、今日は知ったことを整理する時間がほしいので稽古とかは後日でお願いしたいです」

一日で詰め込みすぎても覚えきれる自信も集中力がそこまでもつかという自信も今は曖昧な感じだ。
一度まとめないとどこかを忘れたりしそうだ。

「そういうことなのでしたら五代さんの方からお願いします」

出来れば相手に直接礼を言いたかったがそういう事情ならば仕方がない。

「実はここに来る前までカフェテラスにいたのでファミレスはちょっと見るだけになってしまいそうですが……」

それでも大丈夫ならと聞く。

五代 基一郎 > 「俺も後日がいいかなぁ。腹が減ってさぁ……」

まぁ何かわからないことがあれば個人連絡で、ともつけつつ
外套掛けにあった上着を取って着はじめる。
もののついでのように胸ポケットにいれていたネクタイを戻しつつ。

「あー……じゃぁ適当に何か買ってでいいか俺は。
まぁ駅までになんか考えよう。」

そんな適当な返事をしつつ、黒猫がいる玄関に向かってあるく。
黒猫はいつのまにか玄関にまでいた。

「そんじゃ、出ますか」
とんとんと靴べらを使わず雑に革靴を履いて玄関戸を開ける。
会合のような、まだそれとすらも呼べないものは終わった。
外の話から、中の世界に戻っていく。

遠条寺菖蒲 > 「その時は気軽にメールさせていただきますね」

と答えて菖蒲も帰る支度と言っても小太刀の入った袋を肩に背負い直すだけだが。

「すみません。
私の家って家政婦がいるので外食とか余り考えないので……」

なんて少し謝罪する。
毎日作って頂いてるのでそれを食べないのは菖蒲としても申し訳がない気持ちがあり、
間食としてカフェテラスで少し甘味などは食べても晩御飯を外で食べるのはほぼない。

「はい」

五代に続いてショートブーツを履いて部屋を出る。
これからのことに期待半分恐怖半分ではあった。

五代 基一郎 > 「えー……俺も時々作ってもらってるけど、大体は外食でさぁ……」

先ほどの話とは違い。
身近な、日常的な話が続けられ、施錠の音がする。
やれ何がうまいだの、ファミレスといえばドリンクバーだの
なんだの話しつつ。

おそらくまたここに来るときも同じように
かつ中ではまた中でありながら外のこととなるのだろうと。

まだ見えぬ先のことを自身も考えながら菖蒲と並んで歩いて行った。
先には黒猫が一匹。先導するように歩く……

ご案内:「異邦人街住宅街 安アパート」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:夏用スーツ。>
ご案内:「異邦人街住宅街 安アパート」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:ハッチング帽にポニーテ―ルの黒髪で蒼い瞳の明るめの茶色でまとめた落ち着いた色合いの服の少女。左肩に小太刀ほどの肩袋を背負っている>