2015/06/22 - 21:15~06:14 のログ
ご案内:「ドールハウス」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:夏用スーツ。人待ち中。>
五代 基一郎 > 落第街の一角にあるビル。
外見は雑居ビルのそれだが、中は違う。
落第街を拠点にする人身売買を主とする違反部活”ドールコレクター”の拠点
”ドールハウス”

落第街にあるというのに悪趣味な人形用の建物を見立てた内装。
そこで実寸大にしたドール用のテーブルに備えられた椅子に座り
”無人”のそこで黒猫を膝に乗せつつ人を待つ。

情報の通りならそろそろ彼女が乗り込んでくるはずだ。
自分の持つ、いや誰かから与えられたものでもある正義を狂信するあの人物が。

ご案内:「ドールハウス」にクロノスさんが現れました。<補足:白い髪、紅い目、公安委員会の制服。歪んだ笑みを浮かべている。>
クロノス > 鉄底の靴の音をたてて、
その濁った空気を純白のマントで切裂いて
情報どおりに彼女はそこに現れる。

その場に立ち止まると、
辺りを一瞥し、そこに『ある』はずだった
虚ろな瞳の『人形』が居ないことに『遅かったか』と、舌打ちしつつ、
その人形の中心にいる、彼を見つけ、口元を歪めた。

「―――これは先を越されましたかね、『101』」

彼女はゆっくりと彼の元に歩み寄って行く。
現れた時と同じく、鉄底が床を叩く音を立てて。

五代 基一郎 > 「怖い顔はしないでおくれよ。中々お忙しそうだから都合つけるのに苦労するんだ。」

どうぞ、と向いの席を白い女に薦める。
彼女が対象を見て呼ぶ際の監視番号ではなく
”その名”で呼ぶことに笑いもせず。
ただ顔を見て”茶会”へ招いた。

ここには今、二人と一匹のみ。
ここに捕まっていた”ドール”と”ドールコレクター”はいない。

テーブルにはティーポット等原寸大のティーセットが揃う。
菓子もそのセット相応のものだった。

「ようこそ公安委員会直轄第二特別教室……室長補佐代理殿
 まずは祝辞からがいいかな」

クロノス > 「ええ、とても忙しいですよ。何しろ私には時間が無い。」
口元に笑みを浮かべながらゆっくりと歩み寄ると、
彼に勧められたその席につく。

彼が居て、彼らが居ない、ならば無事だろう。
この人は、そういう男だ。

「前置きは結構ですよ『101』、先にも言った通り私には時間が無い。
 本題から入るといいでしょう。」

『その顔をいくら眺めても花にはなりませんしね』と付け加えつつ、
足を組み、彼の瞳をその鮮紅の瞳に映す。

五代 基一郎 > 「安心しなよ。血気盛んな風紀の連中がなんとかしてるから」

遠目に、というより何かの異能で遠耳に澄ませば何かこのビルのいくらか離れた外で聞こえるだろうか
最も聞こえればそこで何か捕り物が行われているということがわかるぐらいだろうが。
ただ無事ではない。物騒ではないだけで法に則り罰せられる。
この男は、そういう男である。

適当に紅茶をカップに注ぎ、差出し。
自分の分も淹れては口をつけて……話を始める。

「”助け”ようか。」

それが何か、何のことであるか直接的には告げず
しかし本題としてこれ以上ない言葉を出した。
時間がない……導火線の火が迫る女に一言。
その鮮血のような瞳に、黒い瞳が映る。
揺るがない瞳。

クロノス > 「誰が血気盛んなんだか分かりませんね。
 ―――その指令を出しているのは貴方でしょう。」

外の音を聞き、帽子の鍔を掴むと、やれやれと肩をすくめる。
そして、彼の提案を聞けば、瞳を細め、嘲るように彼女は笑う。

彼を、或いは自分を。

「助けられるとでも?」

彼の質問にさらに質問を返し、机に肘をつき、
顎を乗せ、彼の瞳を覗き込む。

「―――そんな『力』も『意気地』も無い癖に。」

彼女はそう言って、口元を歪める。

五代 基一郎 > 「邪魔だから退いてもらっただけだよ。
 風紀の仕事してるんだから、何も悪くはないんじゃないの
 ”職務”に”求められること”をしているんだしさ」

越権行為なのであるが、そんなことどうでも良さげに話す。
それこそ、クロノスがやるようなことが当然とされる場所にいるからこそか。

「出来なかったら何のために君を待ってたのさ
 からかいに来るために呼び出すほど、それこそ俺も暇じゃないよ」

横柄な、試すような瞳をそのままに話を続ける。
覗き混んだ先の黒い瞳は真紅の瞳がまるで太陽のように
黒点を宿すそれのように写る

「”意気地”ね。勘違いしてもらっては困るけどさ。
 公安事態のイメージや第二特別教室が健全化してもらわないと俺も困るんだよね
 公安の上の方も今だいぶ天秤が揺れてるようだし。」

口元を歪める人非ざる者のような容姿の女に。
人の社会道理を説くように話す。”力”については語らず。
必要とされる事情だけを話す。

クロノス > 「なるほど、『仕事』なら仕方ありませんね。」

そう言って瞳を伏せる。

「なるほど、それも確かにそうですね。
 先輩として、私の素行を注意しに来たのかと思いましたよ。」

彼女もまた『職務』に忠実にこの場に現れた、
代わりにやってくれているのなら、それはそれで構わない。
その分の時間を、この男とのお茶会に裂くのも、
悪いことばかりでは無さそうだ。

「なるほど、『上』の、いえ、さらに上の都合ですか。
 いいでしょう、その話、聞いてあげますよ。」

『仕事を代わりにやってくれた分時間ができましたから、少し休憩にしましょう』
そう言いつつ笑うと、机の上にあったお菓子に手を伸ばして一枚齧る。

五代 基一郎 > 「まさか。”風紀委員”の”閑職”がお叱りしたところで
 聞く理由なんて君にはないでしょ。」

クロノスの是とするところが”公安”で求められている職務を
”逸脱”していることは言わず
素知らぬ顔で、平然と続ける。目線は茶菓子のスコーン。
こんな悪趣味な世界で、趣味のいいようなティーセット。
公安の狂える悪食と風紀の閑職の素行不良
例えるならば”マッド・ティーパーティー”

「ご理解してると思うけど今回風紀は動かない。
 前の事件と同じ対応なんて二度も通じないしな。
 公安もそこまで濁らせたくないから自分の手で下すなんてことしないし。」

スコーンを割ってイチゴジャムを差し込んでいく。
差し込めば差し込んだで口にして味わう。
雰囲気相応の味がする。そういう拘りがあったと見える。

「そも何か起きてるわけでもなし、式典委員長は動かない。
 バランスも何もないしな。生徒会だって動かない。
 他に動くところはないわけだが」

適当に手を掃い、紅茶を啜る。
それなりの味。雰囲気に合う味だ。ここまで拘りがあったのだろう。
ここの主らは。反吐が出る。

「となるとどうなるかの結論が見えてこない。
 君がどうなるか、という具体的な話がさ」

クロノス > 「ええ、もちろんありません。
 ですが、それでも一応忠告するような
 甘い男を私は知っていますので。」

バリバリとスコーンを噛み砕く、味はしない。
故に、食感を楽しむくらいしか彼女には楽しみが無い。
飲み込もうとするわけでもなく砕いたそれは、
半分以上が机に落ちるばかりだ。

おおよそ、お洒落な舞台に相応しいと食べっぷりではない。

「ええ、風紀は動かないでしょう。
 公安も、自分の手でそれを下す事はしない。
 そして、当然、式典委員も動く理由が無い。
 生徒会はそもそもとしてほぼ関係が無いようなものです。」

彼の言葉を繰り返す。肯定の意味を含めて。

「とはいえ、いざという時の『尻尾』を、
 処分方法を何も用意せずに野に放つほど『公安』の『上』は愚かじゃない。
 ―――私が首を置いているギロチンの紐を切るのは誰だと考えます?」

そこで言葉を切り、口元を歪め、彼の瞳を覗き込む。

五代 基一郎 > 甘い男ね。誰だろうなぁと返しつつ。
紅茶で口を洗うように濯ぎ。

クロノスの問いに答える。

「組織的な身分のない者。
 であり
 ”公安”と関係がある者。
 かつ
 ”クロノス”を滅ぼせる者。」

特にそれが誰とは言わず。
食ったものから目を外し、クロノスの瞳を見る。
もう言わなくても分かるだろうと。

クロノス > 口元を歪に歪め、目を細めて彼に答える。

「正解です。『101』。」

「最近組織的身分が無くなり―――。」

「最近まで公安と関係があり―――。」

「―――そして、最近『私のような強力な生存能力を持つ者』を
 滅ぼした経験がある人間。」

もう一つスコーンを手に取ると、口に運ぶ。

「それが、私の『結末』ですよ。『101』。」

五代 基一郎 > 「まぁ、無理だよね。そも勝てるヤツの方が少ないと思うよ」

もはやそれが全ての答えだった。
そこからどうなるか。
クロノスの首へギロチンが落ちた後のことなど
今話しても仕方がないことである。

「だから」

黒猫が、テーブルにいる。
いつのまにかテーブルに上がり、君を見ている。
その血を吸って塗りたくったような瞳を黄金の瞳が見ている。

「”結末”を変えて”助け”ようか。
 それとも西園寺偲を模倣するようなケースで、オシマイを迎えたいのかな」

クロノス > 「その通り、だからこそ時間が無いんです。
 その『結末』が私を捕まえる前に勝てるだけの力を手に入れるか、
 あるいは、それまでに『彼女』の―――。
 『全てを変える』という彼女の願いを叶えるか。」

『もっとも、それを振り下ろす時を見逃すわけもないですがね。』と笑みを零す。
金色の目には視線を向けず、ただ、その漆黒の瞳を覗き込む。

「『結末』をどう変えるかによりますね、『101』
 ―――私には、叶えなければならない『望み』がある。
 それが叶うのなら、その誘いに乗りましょう。
 そもそも、私自身、その『結末』を素直に受け入れる気は無いですから。」

音を立てて、スコーンを噛み砕く。
机に散ったスコーンは決して誰かの胃袋に入る事はないだろう。
食べ物というものが至るべき結末には至らず、
それは掃除されるまで机に散らばったままだろう。

五代 基一郎 > 「どっちも無理だよ。
 奴に勝つというのも。
 西園寺偲の願いを叶えるのも。」

諭すように。漆黒の瞳は見ている。
アレに勝つのは到底不可能と言っていい。
最も例外はあろうが、例外は例外だ。

「全部なんて変えられやしないよ、それこそ夢物語だ。
 世界が見えてない証拠さ。よくよく考えてごらんよ。
 それが出来ないから君は”落第街”で”しか”活動できないのはよく分かってるんじゃないの
 全てを変えるというのなら、どうこうする場所も事も検討違い。
 それが出来ないから鬱憤晴らしに暴れてるというわけじゃないか」

噛み砕かれ、そも食べ物という概念ですら怪しい存在となったそれら
対照的にちらとまたスコーンをみて、手に取りブルーベリーの
ジャムを塗って口に入れる。

「まぁ俺に君の全てが全て”都合のいい結末”は用意できんわな。
 まず君が公安でなくなることが前提条件だし。
 そのためにはクロノスが公安的な仕事が出来なくなり、一般生徒になる必要がある。
 それは辞職するに十分な理由だしな。
 そうすれば法的に裁かれるに値する身分になるでしょ。
 刑はさておきこれも一つの”結末”だと思うよ。
 断頭台で首跳ねられない”結末ね”」

意識不全で病院送りというのは無しで、と茶を啜りながら答える。
それが恐らく人として裁かれる限界の所だろう。

クロノス > 「そうかもしれませんね、奴に勝つなら、奴と同じモノになるか、
 或いは、その『例外』に、彼以上の『化け物』にならないといけないでしょう。」

そう言って、彼女は笑う。

「―――ええ、『全てを変える』のは偲様にしか成しえなかった事でしょう。
 彼女が失敗したのなら、その末端である私がそれを成す事は出来よう筈もありません。」

恍惚に口元を歪め、彼女を想起する。
―――そう、彼女は素晴らしかった。
私のような人間とは違う、選ばれた人間だった。 

「ですが、彼女の願いを叶える事は出来なくとも、その一部だけ
 あるいは、彼女を葬った『公安』への復讐だけなら、
 私にも果たす事が出来る可能性がある。」

帽子の鍔を摘み、正す。

「そう、私は『落第街』に火を放っただけです。
 ですが、その火は、何れ私諸共『委員会街』を焼き尽くす。
 腐って現状に甘んじる落第街の人間の心に叛意の火を灯し、
 腐った現状を見て見ぬフリをしている『公安委員会』に―――。」

その摘んだ鍔を引き、
彼女は、帽子を深くかぶり直す。

「『一石』くらいは、投じる事が出来るでしょう。
 ギロチンの紐が、切り落される前に。」

自信なく呟くそれは、彼女の本音なのだろう。

「『彼女は間違っていなかった』それを私は証明したいんです。
 現に学園の秩序は大きく乱れているではありませんか、
 偲様が居なくなってからは、散発する事件も増えました。
 偲様のような存在は、きっと必要だったんです。」
『私が、そうなろうと思えるほど、私は傲慢ではありませんが。』と肩を竦める。

「―――それに。」

彼女は言葉を繋ぐ。

「私は彼女の下に居た時も含めて血を流し過ぎました。
 今更『一般生徒』に『普通』に戻る……なんて、許されるわけがありません。
 そんなものは私の『正義』に反する。」

「因果応報、その罪は、
 死を以って贖わせなければ、
 私が斬った悪人達に恨まれるでしょう。」

五代 基一郎 > 「それもまた、ずいぶんと都合のいい話だな」

黒猫は見ていた。その双眸。二つの黄金の瞳で。
まるで断頭台の前で懺悔する罪人のような顔をする女を。

「やれ腐った現状というけどここ数十年変わらないように出来ているんだから
 現状も何もないでしょうに。他にやること思いつかなかったの?
 あとそれよりね。
 君が思い描いたその絵は実現するものなのかね、絶対に。
 もっと言おうか。そんなことしてなんの関係もない生徒巻き添えにするのが
 君の復讐とやらかね、誰に向けてるのそれは。
 通行人に石投げて重傷者だすのが御望みかい」

目を逸らした帽子を正す女に興味などくれず
スコーンを取り、今度はマーマレードのジャムを塗り
食い始める。


「西園寺偲がいなくなったから、というよりあんなことしてたから
 事件が増えて、そのどさくさに紛れて出てきたわけだし。
 完全に学園秩序乱してた反社会存在だよ彼女は。
 余計なことしてくれたもんだよ、本当に」

そうなられたら困るんだよと付けつつ紅茶を飲んで
スコーンを食い、紅茶を飲む。その組み合わせ。
腹が満ちていく。

「勘違いするな。”一般生徒”に戻った君を待つのは”罪人”の烙印だ。
 今更普通の生活に戻れると想定することすら烏滸がましい。」

カチカチ、と行儀が悪かろうがジャムを塗るナイフで皿を小突く。
こっちを向けと、注視を促す。

「そして悲劇のヒロイン面もやめろ。
 死ねば全て解決、などというのは自己満足でしかない。
 勝手な都合で死んで逃げることが掲げる”正義”というなら
 そんなものは主義思想でもなんでもない。
 恨まれようがこの世の法に則り罪を背負って償い続けろ
 果てが無かろうがそれが君のしてきたことだ。
 それこそ”正”しく”義”しとするものだろう。」

その漆黒の二つの瞳はクロノスを見ていた。
帽子を深くかぶるクロノスを、帽子など越すように。
その瞳を見るように見据えていた。

クロノス > 「―――ええ、都合のいい話でしょう。」

帽子を持ち上げると、再び、その瞳は彼の瞳を見る。
彼が見ていたから、自動的に、見る事になる。

「でも、それの何がおかしい。」

「私は貴方や元『室長補佐代理』ほど『利口』じゃない。
 自分が信じるものの為に動き、自分が信じるものを成そうとする。
 それの何がおかしいって言うんです。『人間』なら、誰しもそういうものでしょう」

机に身を乗り出す、彼女が撒いたスコーンが、
彼女の手に潰されてさらに砕け散った。

「彼女のした事は貴方がたにとっては確かに『余計な事』だったのかもしれない。
 ですが、『現状』を見て何もせずに椅子の上でのうのうとスコーンを齧っている
 貴方より、いえ、貴方がたよりはよほど『人間』でしょう。」

すとん、と彼女は席につき、瞳を伏せる。

「私から見れば、貴方がたのほうがよほど狂っている。」

再び瞳を開ければ、彼の瞳を真っ向から見据える。

「弱者を見殺し、犯罪者を捕らえる事も罰する事もせずに落第街という場だからと見過ごし、
 二級学生という存在を黙認し、その上でさらにそれを虐待する人間ですら放置して、
 自分自身は安全な場所でスコーンを食べながら『それもまた学園には必要な事だ』
 ―――そんな事を言いながら、箱庭でも見るような態度でこの世界を見ている。」

呆れたように首を振り、言葉をさらに紡ぐ。

「……果てには、私のような明らかな危険思想を持つ人間を
 説得しに来て、『罪人』としてこの学園に残すとまで言う。
 『害来腫』の一件で何も学んでいないんですか、彼を放置した事で一体何人の
 一般生徒が被害に会い、その癒着によって多くの悪を生んだか。」

「心底狂っている、後続の憂いを断つなら、
 『罪人の烙印』だけを押して放置するなんて、
 どこからどう考えても狂っているとしか言いようがない。
 私は一般学生になっても、自分の正義の為に人を斬るのは絶対にやめませんよ。」

帽子の鍔を摘んで正す。

「『助ける』と聞いたから期待しましたが、小難しい事を言いつつも、
 結局『今やってる事をやめろ、やめてくれれば命だけは助けてやる。』
 ―――そう言っているのと何も変わらない。
 自分のような閑職が『説得』しても無駄、
 そう最初に言ったのは貴方ではありませんか、『101』。」

ダンと机を叩く、スコーンの破片が飛び跳ねた。

「私を『法』によって裁くと言うのなら、
 まずは、貴方のその『法』によって裁くという正義を、
 しっかりと示すのが筋というものでしょう。
 そんな机上の、椅子の上に座って、現場に一切立たず、
 ただ見ているだけの閑職が言っている言葉、
 私は『正』しい『義』とは認めない」

ギリと一瞬歯を噛むと、口を歪に歪めた。

「本気で止めたいなら、今、ここで私を『逮捕』すればいい。
 それが出来ないから、貴方は『意気地なし』なんですよ。」

五代 基一郎 > 呆れるように一連のクロノスの言葉を耳にし、目にしながら
またスコーンを取り。ジャムが無くなったからバターを付けて食い始める。

「スッキリした?」

事も無げに。
目の前の女がテーブルを叩いたせいか零れて湿ったティーカップを手に
紅茶を啜る。

「まぁ結構に素敵な言葉を頂戴したけど。
 君の言ってることはそれなりに筋は通っているように見えて
 殆ど感情的な話だよね。世界がどうとか、学園がどうとかじゃなくてさ。
 これぞ義のため、と言ってるが要はやりたいからやってるわけじゃない。
 誰の為なのそれは」

他に特につけるものもないので、イチゴのジャムをまた取り
スコーンにつけて食い始める。

「君の言うことは一見正しいよ。誰もがそれが是とすることじゃないの。
 悪を挫いて弱者を助ける。でもそれ皆がみんな、独善でやったらどうなるかとか
 考えたこともないでしょ。自分の見た世界だけが正しいと思ってる。」

紅茶が温くなってきた。これがなければスコーンが食えないし。
困ったものだからスコーンを食うのをやめた。

「余計なことと俺は言ったけど。なんで余計なことって
 君が今してることと同じなんだよ。
 ”学園”で暮らす”人々”のためにね。
 君らがやったことで何を呼んだか答えようか。
 独善ででしゃばりすぎた結果
 公安委員会という組織は悪で、治安を守る風紀委員会は仕事しない組織。
 この学園の安全を守る組織存在が機能していない。
 としたことなんだよ。」

残るティーポットの茶を限界まで注いで少しの潤いを得れば

「一人の何かが困った時に助けてくれる、というのではなく
 治安維持組織学園が機能しているということで安心と安全を守る働きがありそれが主だ。
 それを、仮にもそういう組織にいる人間が独善で動き
 あまつさえ現状先に挙げた通り機能不全を起こしている。
 法律が機能していないに等しいんだけど、わかってるのかな」

と続け。手を掃いながらまた続けていく。

「学園もだけど、学園を生きる人々に必要なんだよ。
 君を残すというのも法がきちんと機能していることを示すためだ。
 落第街の問題も、存在はさておき大なり小なり風紀のものや
 然るべき人間が解決していくさ。君がやらずともね。
 誰もやらない?そうかな。俺はそこまで他の人間に絶望しちゃいない。
 義理が廃ればこの世は闇というけどその通りだと思うよ。」

黒猫を撫でる。既に黒猫はクロノスを見ていなかった。
尻尾を揺らし主と共にある。

「ここで君を”逮捕”とか言うけど。それこそ独善なんだよ。
 君を法で裁くのはそれこそ然るべき存在であり俺じゃない。
 ”意気地”がどうと言うが、それはお門違いだ。
 正義がどうの掲げて君を逮捕すれば、またこの学園の治安を守る組織に混乱が入るさ。
 そういう麻痺した状態にしたのは、してるのは君らでしょ。
 誰が何してるとか、公安や風紀の人間が何をしてるかも見ずに
 やれ無能だとか私がやるしかないとか独善担いだ結果なんだけどさ」

それと、と付ける。
まだ勘違いしているだろう彼女に告げるように。

「君を”助ける”ということは”法”が機能していることを示すためだ。
 命を助けるということが目的ではないよ。
 説得無理だと先に言ったけど、ここまで言ってようやくわかるかな。
 君は法を無視し、乱すのを何とも思っていないから
 聞く耳は持たないだろうな、ということだよ」

それこそが狂っているということなんだよ。
何も見えていない、盲信こそがと。
”マッド・ティーパーティー”の閉会を告げる様に
手を叩き答えた。

「法で守られるべき人は法と法の番人が守り
 法で守られない人は志ある者が守る。また法で守られるように働く。
 そうあってそうあるべきなんじゃないか、この世はさ」

クロノス > 叩きつけた手はテーブルクロスを掴む。
もはや、何も言う事もなく、言える訳も無い。茶会は『終わった』。
帽子をかぶり直し、彼女は立ち上がる。
未だ椅子に座る彼に視線を向けると、口を開いた。

「―――やはり、私は彼女と正しいと信じる事しか出来ません。
 自分が見た世界が全て正しいと信じる事、
 それの何が悪いのか、それすら私には理解できない。」

自分の服についたスコーンを払いながら、言葉を繋ぐ。
 
「彼女は行動で自身のその正義を示しました。
 それが今の現状を招いて、確かに彼女がやった事は間違っていたのでしょう。
 ただしそれは、口だけを動かし、机上の空論を並べ立て、
 ただ座ってスコーンを食べていただけの、
 いえ、座ってスコーンを食べているだけの貴方の言葉を信じるならば、です。
 何故貴方は動かないのか、動いて、実際に結果が出れば、
 自分が正しくない事が露見してしまうからでは?
 
 ―――だから、私は貴方の事は『意気地なし』としか思っていません。」

彼の瞳を上から覗き込み、口元を歪める。

「『助ける』と言いましたね。それならば、是非『助けて』ください。
 貴方が『悲劇のヒロインぶるな』というのなら悲劇のヒロインぶって
 『助けて!!』などと叫んだりも致しません。
 生きて一生罪を贖え、というのなら喜んでその罪を背負って過ごしましょう。」

ですから、と瞳を細め、彼を見る。

「貴方の言葉を行動で示し、
 それを『現実』に審判して貰うためにも是非『助けて』下さい。」

彼から離れると、椅子にかけてあったマントを羽織る。

「貴方の言葉がただの机上の空論でない事は、それから判断します。
 それまでは、私は私の見てきた世界だけを……いえ、彼女だけを信じ続ける。」

クロノス > 「付け加えて言うのなら、『私を殺す』、
 いえ、『彼に殺させる』というのは、公安上層部の意思ですよ。101。
 彼らは貴方と同じように『それで秩序が回復する』、と思っているのでしょう。」

帽子の鍔を握り、正す。加えて、ふぅと息をついた。
悔しいが、色々吐き出したおかげですっきりしたのは事実だ。
多少落ち着いて、彼女の顔に余裕の笑みが戻る。

「私を助ける事で秩序が回復する、
 そう思っているのは貴方個人の考えです。
 それに、どうにも貴方は私を『助けたがっている』ように、
 そのための説得に来たように見える。
 ―――それも、自分やら秩序の為でもなく、誰かの為に。」

口元を歪め、彼の瞳を覗き込む。

「貴方からは、どうにも件の『甘い男』と同じ匂いがします。」

五代 基一郎 > 嘲笑うように。
口元を歪め、見るクロノスにやる気のない目で一瞥すると
特に何かそれに言うわけでもなく黒猫を撫でる。

そも、前提が間違っていることを誰が聞くだろうか。
事に置いて”動く”ことが必要なときもあれば、また”動く”ことで事態が泥沼に落ち込む時。

”動かない”ことこそ正解の時もある。
まして先の件や、こと今回の件もそうだ。
そもそも動いたらどうなるかなんてわかりきったことだ。

故に”動くことこそ最善策”と思っている人間には
とてもじゃないが通じないのだ。
私は”動いているから”偉い、何かやっていると思う人間には
理解できない話でもある。

それは立場があれば、また力があればこそ生まれる枷でもある。
本来ここに来ることだって十分以上にリスクを犯して”動いている”ことなのだが
おそらくそれすら彼女は気づかないだろう。
気付かない程度に、もう泥沼にいるのだ。

「それは公安委員会のお話でしょ。
 組織の秩序と社会の秩序はまた別だと思うんじゃないの。」

さてどうだろうねと『甘い男』がどうとかとに
特に何かいう事もなく。
見送りの言葉の様にそれだけ送った。
その”誰か”もここにいる”誰か”も『甘やかしたくない』から
来たわけなのだが
それは語るものではない。


如何にしてクロノスを”公務を行えない程度にするか”とは話さないまま。
我関せずというように目もくれなずそのままに送るように
黒猫と戯れた。

クロノス > 「なるほど、それが貴方の答えなら、私は何も言いません。」

そう言うと瞳を伏せ、マントをはためかせてくるりと踵を返す。

「『ドール・ハウス』、貴方に実にお似合いですよ。
 どこに居ても変わらないなら、ずっとここに居てはどうです?
 ―――何もせず、ただ、そこに居るだけの人形。
 ええ、話し相手としては悪くありませんでしたよ。監視番号39」

『まったく、期待外れもいい所です。噂は当てになりませんね。
 ……ただの口先ばかりの意気地なしじゃないですか。』

そう小さく呟くと、彼女はそのドールハウスから出て行った。

ご案内:「ドールハウス」からクロノスさんが去りました。<補足:白い髪、紅い目、公安委員会の制服。歪んだ笑みを浮かべている。>
五代 基一郎 > そのまま何かするわけでもない。
腹が満たされればそのまま黒猫を引き連れて出ていく。
ここも捜査の手が入るだろう。

何もしない。
それは、何も出来ないと違いがあるのか。
誰に聞くわけでもなく。
何を示すわけでもなく。

されど既に腰を上げたのだから
できる限りはしようと歩きはじめた。

その結果これがどうなろうと、まぁ何もしない人間としての
評価は変わらないなと思いながら。

ご案内:「ドールハウス」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:夏用スーツ。人待ち中。>