2015/06/28 - 21:13~01:37 のログ
ご案内:「科学風紀研究所」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:特殊警備一課の制服。>
ご案内:「科学風紀研究所」にレイチェルさんが現れました。<補足:金髪眼帯の風紀委員の少女。身体の一部を機械化したダンピール(ただしハーフエルフと吸血鬼の子)。元魔狩人。>
五代 基一郎 > 科学風紀研究所の入り口近くのロビー。
受付にて本日の予定が既に認可を受けていることを確認する。
その姿はいつものスーツ姿ではなく、特殊警備一課独特の白いロングコート。
式典時等で見られる彼らの制服であることからも
今回は外見上も相応の身分として仕事を求められる案件だった。
ロビーにてこれから来る人物の組織上にある個人データ
その書類を確かめながら当人を待った。
レイチェル > 科学風紀研究所。此処へ足を踏み入れるのは初めてのことであった。
「へぇ、こんな施設が……話には聞いてたが」
顎に手をやりながら、レイチェルは建物の中へと歩を進めていく。
入り口からすぐのロビーを見やれば、普段とは違った服装の五代が
待ち構えているのが見て取れた。
「式典でも無いってのに、すげー改まった服装してんな、五代先輩」
困ったように笑って頬を掻きながら、レイチェルはそう声をかけた。
五代 基一郎 > 「それだけの事ってことさ。俺だってちょっとこれはなぁ」
特殊一課は風紀の中にあって軍隊色が強い部分がある。
故に特殊の隊員は通常時は学生服、出動時は戦闘服
式典や公的に出ることを必要とされる場合は制服とされている。
今回もまたその正式なものが必要とされたからだ。
レイチェルがここに来ることがないのも当然であり
風紀幹部ならまだしも普段の捜査員、風紀委員には
縁のない場所である。故に、こうなっている。
「とりあえず面通しは済んでいるから、特殊装備研究開発部のところにいこうか。
そこで装備の選定があるから、基準にするためにさ
普段使いの装備等を聞くから今のうちに思い出しておいてね。」
一階の別棟にあるから、と先導するように歩きはじめた。
馬子にもなんとやら、というよりもいい年齢をした男子でもあるため
正式な制服を着用すればそれなりのため、行き交う関係者
から挨拶を受ければ、それなりの立場の挨拶を返し
歩いていく。
レイチェル > 「オレもこの服じゃマズかったかな……って、これくらいしか持ってねーしな」
自分の服を見回すように視線を自らの服に落とし、そんなことを言う。
私服はここに来てから買い集めたもの、
前の世界に居た時のものもそれなりに持ちあわせているが、
正式な場で身に纏う服と言えば制服《これ》くらいしか無かった。
「装備、装備ねぇ。了解了解」
そう軽く返しながら、五代の後をついていく。
何せ、初めて来る場所である。
まるで都会に来たばかりの田舎者のように、きょろきょろと
辺りを見回しては、五代を見失わないように、視線を戻して、
といったことを繰り返しながらすたすたと歩いて行く。
五代 基一郎 > 「あぁ君は大丈夫、今回必要なのは俺のだしさ」
とかなんとか話しつつ歩いていく。
レイチェルが見失うか、と思いきや意外にも白い制服がまぁ目立つためか
特に何かでもなければ見失うことはないだろう。
事実目立つもので道行く風紀委員や研究者に挨拶されていく。
◆特殊装備研究開発部棟一階
「はい、というわけでここが特殊警備一課等の装備を開発しているところ。
まぁ座って。」
別棟に入れば研究開発という目的のためか広いスペースの開けた場所に通される。
といっても研究開発を主にしているため、研究所的雰囲気はある。
一部の壁が強化ガラス張りになっており、先にはガレージのような武器このような場所も見える。
ここでは研究と開発、テストを行っていることがざっとでも伺える。
研究員が何かファイルを五代に渡すと、レイチェルに薦めた椅子の対面に座り
質問を始めた。
「えーと、それじゃまず普段はどんな武器を携帯しているか。
使用しているか、どの程度のものまで使用可能か。
身体能力はどの程度か。再確認もあるから自己申告をお願い。」
レイチェル > 「やっぱこういう場で見てると先輩ってすげーな」
そんなことをぽつり、と呟きつつ。
関係者から挨拶されている五代に合わせて、
レイチェルも軽く会釈をする。
こういった場には不慣れなのだろう、
傍から見ればぶっきらぼうに見えなくもない。
そんな返答を返し返し。
気がつけば、特殊装備研究開発部棟の一階にまで辿り着いていた。
「へぇ、何かすげーそれっぽいとこ」
武器庫らしい空間へと興味深げに目を向けていたレイチェルであったが、
五代に椅子を薦められれば、はっと気がついたようにそこへ座る。
「じゃあまぁ、適当に。全部出してちゃキリが無いから、主なもんだけな」
まず彼女が取り出したのは、テーザーガン。
対象を痺れさせ、抵抗を奪うものである。
最も、最近は強力な身体強化系異能を持った者達と遭遇しており、
通用しないこともままある。
「あとはまぁ、こいつだな。学園じゃテーザーを使うことが多いが、こいつも
使うことが無い訳じゃねぇ」
そう言って、クロークからぬう、と現れたのは黒を基調とした大剣である。
見るものが見れば、魔を宿した剣であることが分かるだろう。
彼女の身の丈ほどあり、かなりの重量がありそうだ。
一般的な人間の成人男性なら、引き摺って歩くのが精一杯だろうか。
「こっから先はまぁ……学園じゃ使ってねーが、元々よく使ってたもんだ」
そして、レイチェルはクロークからあれこれと取り出し始めた。
まず最初に、45口径のマグナム。水平二連のソードオフショットガン。
そして、リモート爆弾、ワイヤーといったものだ。
「身体能力ねぇ……ま、力で言えば、こいつを振り回せるくらいにはあるぜ」
そう言って、超大な大剣を軽く、一度だけ振って見せた。
五代 基一郎 > 「オートマグナムに大剣ね……その大剣、マスターの連中とは相性良くなさそうだなぁ」
さらさらとファイルに書き込みつつ、特に制限はなしで
と研究員に告げれば中型の運搬ロボットがアタッシュケースを3つ運んでくる。
「まずは特殊装備について概要を説明しよう。
特殊装備とは、君も”学園では”と言っているように
通常の風紀の業務であればテイザー銃や非殺傷武装で十分だ。
ガスグレネードとか、まぁよくて通常の拳銃とかだ。
だが特殊となれば話は別であり、通常の風紀業務で必要とされるレベルを
大きく逸脱した場合に許可が下りるものだ。
ハッキリ言えば通常業務で振り回すものじゃないし、過剰な攻撃力を有している。
普通じゃ風紀と言えど認可が下りないものだ。
だがその攻撃力が必要な場合が、今想定されている相手だ。
例えばこれ。」
そのアタッシュケースを3つデスクに置いてそれぞれを開ける。
一つにはリボルバー拳銃、もう一つにはオートマチック拳銃
だがそのどちらも通常使うようなサイズではなく大型
加えて装飾が施されている。リボルバーは赤と黒、オートマチック拳銃には蒼と銀のカラーリングをシンボルに。
3つ目はいくつかの種類の拳銃弾が納められている。
「リボルバーは.454カスール弾の規格。
ロシア連邦の試作モデルを基にした。
中折れ式でコードはレイジングレックス。
オートは50AE弾の規格。
ドイツ連邦のペーパープランを基にした。
トリガー前部にマガジンを装着する。コードはザミエルP969
装飾はどちらも魔術と法術を統計数学上から解析し科学混成融合させたものだ。
通常弾でも相応の威力を発揮する。」
次に、と言う様に3つ目のアタッシュケースにある
拳銃弾の説明に入る。
「まず通常弾。これも風紀であっても過剰ではあるが、些か心もとないのは承知済みだ。
それ以外に法化儀礼式済みの強化弾、対魔術強化装甲用の貫通弾
魔術効果を付与する刻印弾に着弾点に直径30cm球体状……小型の”門”を一瞬発生させるゲート弾。
これは現在研究中で、支給できるのは完成した.454と50AEそれぞれ1発しか渡せない。
使う対象と使う場所に細心の注意を払ってくれ。」
レイチェル > 「成程、ね……こいつはいいもんだ」
感嘆する。
風紀の特殊装備といっても、「風紀委員会からの支給」という体である以上は、
ある程度制限が加わるものだと、心の何処かでレイチェルは考えていたのだ。
だが目の前に置かれているものは、そういった箍の完全にはずれている代物ばかりだ。
一挺一挺、手にとって感触を確かめ、また様々な角度から眺め、構えてみたりなどする。
「それなりの期間、魔を狩る仕事をしてきたが、ここまでの装備はそうそう
目にしたことがねぇ、これだけのもんが使わせて貰えるんなら、
今から魔王だって討伐できるだろうぜ」
法化儀礼式済みの強化弾、対魔術強化装甲用の貫通弾。
そういったものならば、レイチェルとしても似たような物を使うことが無かった訳ではない。
とはいえ、類似品の手持ちは底を尽いていたので、この支給はありがたかった。
魔術効果を付与する刻印弾、これも容易に理解できる。
しかし問題は、五代がゲート弾、と呼んだ代物である。
門を発生させる――類似の代物を、レイチェルは耳にしたことがない。
「ゲート弾……そいつは初めて聞くな……? 似たような物も見たことがねぇ。門、ってのは何だ?」
シンプルに、最初に浮かんだ疑問をそのまま五代へと投げかけた。
五代 基一郎 > 「何言ってるんだ、これで満足されちゃ困るな。
これでも送り出す方としては、まだ足りないと思ってるしさ。」
あぁそれ後で使用の書類だすからサインしてねと付け足しつつ
それじゃ次、と席を立ち促すように手招きした。
強化ガラスの付近にある扉に向かって歩く。
説明はその先に行きつつでもいいだろうと。
尚その拳銃らは置いて行っても問題はない。後で回収できるのだから。
「ゲートは知っての通り門、異世界との門だ。
ごく一瞬その門を発生させることで
つまる着弾点を強制的にどこかの異次元に転送……飛ばす。
そうすることでこの世界にある体の大部分や構成体を
疑似的に消飛ばすことができる……という理屈だ。
まぁ、ビジュアル的に言えば削り取る、という感じかな。
要は門に関係する技術、その研究中のものを攻撃的に転用したから
存在自体機密だから、本当にここぞという時に使ってね。」
扉の奥。武器庫のようなガレージのような場所の一区画。
そこにそれは鎮座していた。各種機材の配線等を繋げられ最終調整を受けているその重二輪。
蒼く黒いその、騎士甲冑のようで曲線を描く戦闘用のスーパーバイク。
「これが話していた装備の一つ。移動手段の重二輪”BLASSREITER”
輸送経由の関係でドイツ語命名だがまぁ英訳すればペイルライダー、そういうことだ。
テンプル騎士団から研究モデルを取り寄せて、量産に向けてデータ収集用にしていたんだが
今回必要となったもんでこちらで研究していた装備を調整して搭載させた。
先の拳銃二挺と予備弾薬やマルチツールを格納できる。
通常時は重二輪、マルチバイクとして運用できる。
戦闘状態になると搭載してある人工知能が自動的に装甲カウルを展開。
戦闘モードとなり通常以上の出力等リミッターを引き上げる。
搭載兵装はデジタル化された法術シールド発生装置に、対呪術攻性防壁が4基。
疑似人格による戦闘補助とナビゲーション、風紀のシステムとの連携
車体後部に搭載した予備バッテリーと本島にある村正重工製の折り畳み式の個人兵装の魔道レールガンが一基。
アメリカ海軍採用のブラックハンマーより威力は落ちるが、地上戦では十分な威力だ。
射程はマッハ3で飛行する高高度航空機までなら撃墜可能という予測データはある。」
挨拶を、とそのスーパーバイクに声を掛ければ
落ち着いた青年の声が車体のスピーカーから発せられる。
■AI>「”Hello World” 貴方がラムレイ様ですか。
本機に搭載されてからこの日が来ることをお待ちしておりました。」
レイチェル > 「不満を言われるより気分良いだろ? ん、サインな。オーケーオーケー」
そんなことを言いつつ、頭の後ろに腕を回して、席を立った。
「マジでその「門」かよ。ここに来てから話は聞いたけどよ、
そいつを発生させるって……おいおいすげー技術だな。今更だが、
本当にオレに託していいのかよ?」
そのように存在自体が機密である装備を託されている
ことに、ここに来てようやく少し緊張を覚えるレイチェル。
本当に託していいのか――扱える、扱えないの話ではない。
信頼の問題である。この男は、そこまで自分に信頼を置いている
のだろうか、と。心の端に引っかかった疑問を、そのままレイチェル
は五代に投げつけた。
「マジで奥の手だな。大丈夫だ、そのことについては弁えた」
彼女は真剣な表情で頷く。
下手に扱えばとんでもない事態を巻き起こすことは、想像に難くない。
ガレージに着けば、まず目の前に鎮座するそれに、二度目の感嘆の息を漏らした。
まさしく一目惚れ、というやつだ。
「ブラスレイター、ね。いい名前だ、気に入ったぜ。聞いてる限りはかなりの
高機能バイクだな。戦闘面はばっちりみてーだ。
これで朝食のトーストまで焼いてくれたら言うことねーんだが」
そんな軽口を叩きつつも、レイチェルは湧き起こる高揚感を抑えきれなかった。
「よ、オレのことは聞いてるみたいだな。これから色々世話になるぜ、相棒」
そう言って、AIに対して微笑んで見せる。
五代 基一郎 > 「事態が事態であることを差し引いてもだ。
まぁあれだよ。独断でやる度胸も意志もある上で
部署外の俺でも相談して出方を決めてから動いたし、動いてるんだ。
君は自分で言うほど猪突猛進でも考えなしでもない。
預けるに足りうると考えたからこそだよ。」
そして、レイチェルの返答に返すように、それを保証するように。
太鼓判とは、折り紙というのはこういうものだろうかというように
「信頼を置ける、預けることのできる者と見込んだんだ。
それを覚えておいてくれ。それは派手じゃないが
見えない勲章だ。それであると胸を張っていいよ。」
認められるということはうぬぼれにも繋がるかもしれない。
しかしそれで暴走する、与えられたものを見せびらかしたり
慢心するような人間でもないだろうとも言葉にせず伝えた。
■AI>「本機の仕様上調理等は出来ませんが、ネットワーク検索により
常世島各飲食店の本日のメニューからラムレイ様の体調に合わせて
お薦めのメニューを検索することが可能です。本日ですが……」
「あぁ、えぇとそういうのはまた後で。最後に渡すものが終わってからでいいだろう。」
■AI>「了解しました。それではまた後に。こちらこそよろしくお願いします。
本機で出来うる限りのサポートをさせていただきます。」
それじゃ次、最後だ。と伝えれば
ガレージからまた奥に。壁面にある電子ロック等が付いている扉の前に止まる。
制服の手袋を外し、手をかざして認証をし瞳で覗けば
セキュリティロックが解除されて扉が開かれる。
扉が開かれた先には薄い青いライトが照らす地下への階段が出現する。
そこを先導するように歩き、中へレイチェルを招く。
それらを下りて行けば、薄暗い研究区画に入り
そこの最奥に近い部屋に通される。そこでは強化ガラス等で
シールドされたシリンダーが4基。そこには両脇に同型の大剣が1本ずつ。
一番左の大剣は白銀色に青の装飾、一番右の大剣は黒鋼色に赤の装飾。
中央の2つのシリンダーには細身の剣が1本ずつ。
それらは一番左の大剣と同じく白銀色に青の装飾……一対の双剣。
計4本。それぞれのシリンダーに1本ずつその剣らは安置されていた。
「北アメリカに本部を持つある財団機関からの技術提供で製造可能になった
特殊合金ヒヒイロカネを魔術を行使しつつ科学的に鍛造した魔導剣。
流体の法化聖銀を常に内部で巡らせることで魔力伝導率の上昇
かつ科学的に再現した機構追従機能により異能との同調を可能にさせた。
数種の記憶魔術兵装、異能強化追従機能。
君が行使する魔術と異能がこの件と同調し、この剣の機能として
振るうことが可能になる。魔術師で言えば杖に値するし、魔導書にも値する。
人工で作られた魔を滅ぼす兵装であり、最も新しく旧い聖剣。
正しき怒りの下に振るわれる無垢なる刃。魔を断つ刃。
人類が創りだした魔を断つ者……破邪剣正の剣(つるぎ)。
”DemonBane” この1つ、最初の1本目。
一番左のを君に預ける。」
その声に呼応するかのように、一番左のそれが薄く緑色の光を瞬かせた。
共に戦うものを待ちわびていたように、目覚めを待っていたように
胎動するが如く明滅した。
レイチェル > 「成程、な……ま、先輩の期待と信頼には全力で応えるつもりだぜ」
裏切るようなことはしまい、と。
その紫色の瞳に宿る熱い眼差しで以て五代に応える。
AIの反応には、肩を竦めて改めて五代の方を見やった。
そうして少し間を置いて、AIの方に向き直る。
「悪くねーな、お前。気に入ったぜ……ああ、よろしく。オレも頼りにしてるからな」
そう言って、未だ配線に繋がれたままの鋼鉄の騎馬を、レイチェルはその指で優しく撫でた。
五代に案内されるがまま、奥へ奥へと歩を進めていく。
これまでとは異なる、電子ロックによる厳重な警備に、レイチェルは息を呑む。
かつり、かつりと鳴り響く二人の足音が、やけに耳に響き渡る。
そうして。
目の前に現れたその代物に、レイチェルは今までに無い程の緊張を覚える。
五代からの説明を受けつつも、視線はその一振りの剣に釘付けになっていた。
「正しき怒りの下に振るわれる無垢なる刃。魔を断つ刃――」
呼応する、輝き。 胎動する、光。
近づく、少女。 脈動する、鼓動。
開く、その手。 応える、その剣。
「――ああ。確かに、分かった。今、全身で感じ取れた。こんなこと言うのも
変に聞こえるかもしれねぇ……けど、
こいつはきっとオレを待ってた。
同じように。
オレもきっとこいつを……待っていた!」
そう言って、その剣へと手を近づけた。
五代 基一郎 > シリンダーが開かれた。封が切られるように。
産道を通り生まれる様に。
人工知能ではない。
意志を持つかのように、待ちわびていたその剣は
レイチェルの手に納まり、今ここで生まれ、息吹を上げる。
共に戦う者……正しき怒りを振るう者を待っていたと。
生まれたばかりの赤子のような無垢な光を瞬かせて。
「その剣、もうラムレイ君のもののようだな。預ける、というあれなんだが。
まぁ……いいか。そういうものだろうし、きっとそういうあれなんだろう。
よし。ということで以上が現状用意できる類のものだ。
ブラスレイターの最終チェックを済ませてテスト走行の後に引き渡しになる。
今日はここまでになるが……他に必要なものはあるか?
ここにないものでも用意できそうなものなら用意するが」
レイチェル > 「感謝するぜ、五代先輩。それから、風紀委員会。
これだけして貰ったら、やらねぇ訳にはいかねぇ、な」
がしり、と魔導聖剣《デモンベイン》の柄を掴む。
「お前も、よろしくな」
確かめるように数度振るうと、満足気に目を閉じてそれをクロークへとしまう。
「今のところは大丈夫だぜ。あとは実際に使ってみてから、また色々頼むかもしれねぇ。
その時はよろしく頼むぜ、先輩」
目を開き、五代の方へと再び熱い眼差しを向けた。
まさしく、無垢なる刃を持つに相応しい、純粋な紫色の瞳で。
「ここまでして貰っておいて悪ぃが、オレは英雄《ヒーロー》じゃねぇ。
完璧超人でもねぇ。けど、この学園の生徒が一人でも、二人でも、
安心に学園生活を送れるように、全力を尽くす。そのつもりだ。
五代先輩にも、風紀研究所の皆にも、頑張って貰っちまった分――
いや、それ以上に、だ。オレは頑張るぜ。学園の仲間と一緒に、な」
そう言って、強く頷いた。
五代 基一郎 > 「それでいい。英雄は求めていない。
全てを解決する超人もだ。君が語る、君の行おうとしている事。
それを貫く意志を以って、やれる限りのことをやればいい。
レイチェル・ラムレイ。風紀として君としての健闘を祈り
最大限助力しよう。頼んだぞ。」
頷き、認証するようにレイチェルへ言葉を送る。
彼女なら大丈夫だろう。最大限のサポートの下、己の意志で戦ってくれるはずだ。
それがどんなに苛酷であろうとも、それを成せるものがある。
「それじゃ、上にあがろう。テスト走行の準備は出来ているはずだ。
射撃練習もしていけばいい、銃の慣らしも必要だしさ」
そう上を指すように人差し指を上に傾ける。
あとはテスト走行や銃の照準調整、食事があるだろう。
もちろん、書くべき書類がいくつもあるのだがそれはこことは別の話だ。
レイチェル > 「やっぱり、オレの『先輩』はあんただけだぜ、五代先輩」
彼女がこの学園で唯一『先輩』と呼ぶその男に向けて、レイチェルは笑った。
いつものクールだったり皮肉なそれではなく、歳相応の少女の笑みが一瞬浮かぶ。
「了解。こんな物見せられちまったんだ、どんな設備があるかわくわくしちまうぜ」
再び頭の後ろに両腕をやりながら、五代に続いていくことだろう――。
やることは、これからも変わらない。
風紀委員の一人として、風紀を守る為に戦うだけだ。
しかしながら、背負うべき物の重みを、レイチェルは改めて自覚するに至った。
しかしそれで弱くなる彼女ではない。
拳を握り、より強い意志で以て、前へと進んでいく。
学園の仲間たちのことを想いながら。
英雄ではなく、超人でもなく、唯一人の風紀委員、
レイチェルは、前へと進んでいくのだろう――。
ご案内:「科学風紀研究所」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:特殊警備一課の制服。>
ご案内:「科学風紀研究所」からレイチェルさんが去りました。<補足:金髪眼帯の風紀委員の少女。身体の一部を機械化したダンピール(ただしハーフエルフと吸血鬼の子)。元魔狩人。>