2015/07/01 - 22:21~00:29 のログ
ご案内:「教室」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入歓迎)>
ご案内:「教室」に渡辺慧さんが現れました。<補足:白いパーカーを羽織った少年>
桜井 雄二 > 夕暮れの教室。
生活委員会の仕事は試験期間中も続く。
掃除担当にできることと言えば、せいぜい早めに掃除を終わらせて試験勉強に戻るだけだ。
「………っ!!」
目力が入りすぎな必死の形相で教室を掃除している桜井雄二。
彼は生活委員会の職務を全うしているだけだが、何とも顔が怖い。
渡辺慧 > 廊下から、軽快に歩く音。
ワザとらしいほどへたくそな鼻歌と共に。
それが、教室に近づくと共に、音を立てドアが開いた。
教室に現れたフードを頭に被った少年。
何かを探すように、周囲を見渡し……。
その、顔が怖い少年の姿を見つけ。
「…………オォ、なんてんだっけ、こういうの。…………空き巣?」
途方もなく失礼だった。
桜井 雄二 > 入ってきた少年に空き巣か、と言われれば慌てるのはこっちのほう。
「ま、待て! 俺は空き巣ではない……!!」
血走った目でモップ片手に近づいてくる。
そして彼に対してポケットから学生証を取り出し、見せる。
「生活委員会の桜井雄二だ、今はこの教室を掃除している」
「あ、怪しい者じゃないことはわかった…よな?」
内心ドキドキしている。伝われ、真実。
渡辺慧 > 「イッツァジョーク、HAHAHAHA」
うっすいアメリカンジョークのように、ついでにそれらしくポーズをとった少年と、慌てている少年。
どちらが怪しいかと言えば、一目瞭然なのかもしれない。
「ごめんね、なんか顔がものすごく真剣だったから」
なんて言いながら猫のように笑う。
桜井、雄二、ね。と呟いて。
「雄二は真面目だねぇ……試験日ぐらい帰ればいいのに」
等と言う少年は、まぁひどく馴れ馴れしいのかもしれない。
桜井 雄二 > 「な、なんだ……ジョークか………」
ほっと胸を撫で下ろす。彼は冗談はまだ練習中、白帯なのである。
「俺はいつだって真剣だ、ええと……」
相手の呼び方に困るが、とりあえずそのままに。
「試験日だからといって、掃除の手を抜くわけにはいかない」
「試験期間は7日間ある、一週間誰も掃除をしなかったら街は汚れ放題だ」
「俺たちは街の『便利』を守るために戦っている」
馴れ馴れしい態度に気にすることなく、相手の姿を見る。
白いパーカーを着ている。学生なのだろうか?
「失礼だが、名前と学年を聞いてもいいか?」
渡辺慧 > 「その掃除用具見れば流石に分かるよ。いや顔が怖かったからとりあえず言いたかったけど」
顔が怖かったから、と二度いう。
怖かった。とりあえず失礼だ。
自分にはなれないその真面目さ。
最近、よく出会うが…………まぁ。
自分のようなのよりは、ひどくかっこよく見えるものだ。
「それが生活委員会の使命、なのだ。ってかい?」
まるでからかいまじりの言葉に聞こえるが、真実。
少年にとってはそれを貶める気にはならないものだ。
「2年、渡辺慧。よろしゅーなー」
と言いながら、片手を振る。
桜井 雄二 > 「そ、そうか………? 顔が怖かったのか…」
「笑顔は、安室冥路という男を見習って練習中だ……」
「こんな風に」
ギシィ、という音が聞こえてきそうな強張った笑顔を見せる。
動物が威嚇するような顔つきにしか見えないが、彼にとっては笑顔だ。
「そうだ、生活委員会の使命だ」
「悪を捕まえなくていい、裁きを与えなくていい」
「だが埃はモップで捕らえなくちゃいけないし」
「毎日の仕事は捌かなくちゃいけない」
それが、街の『便利』を守ることだ、と胸を張る。
彼は生活委員会であることに誇りを持っている。
「二年の渡辺慧……噂のサボり魔の渡辺慧か?」
「ああ、よろしく頼む、同級生にあまり知り合いがいないからな」
無表情に片手を振り返した。真似っこ。
渡辺慧 > 「うん。怖かった」
そうはいっても、怖がるそぶりは見せない。
むしろ、面白がっては、いる、が。
その笑顔に、ちょっとひくつく。
「……うん、あれだね。要練習」
もっと力抜くといいかもね。
なんて、アドバイスのようなものを残し乍ら。
「シシシ」
変わった笑い声。
「そうだねぇ、悪はいなくなっても埃は増える」
「あいつら凶悪だからね。どこにいたってでてくる」
「埃は捨てても誇りは捨てるな」
なんてね。とこぼし、楽しそうに笑った。
サボリ魔。
え、サボリ魔?
びきり、と少し固まる。
「う、噂。噂のサボリ魔…………」
まぁ、うん。サボる時はあるけども。
あるけども! 一応、日数とかは考えてるけども!
いや全部真面目に出ろと言われたらそれまでだけども!
「噂になってん……のか…………」
心なしか、肩を落とす。
そうしながらも、その無表情に。
そういう時は笑ったほうがいいよ、なんてアドバイス。
桜井 雄二 > 「怖かったか………」
無表情に戻るが声音が寂しそうだ。
「やはり、笑顔を自分のものにするにはさらなる練習が必要なようだな」
「待ってくれ、とりあえずメモる……」
胸ポケットからNo.9と書かれた分厚いメモ帳を取り出してメモを取る。
「そのシシシ、という笑い方は参考にしていいのか?」
大真面目に話を聞く。
「そうだな、何もない空間にも発生する怪異のようなものだ」
「案外、異世界と繋がるゲートから埃だけがやってくるのかも知れない」
誇りとかけた言葉に無表情に頷き。
「いい言葉だ、メモを取らせてもらおう」
と、メモ帳にさらさらと筆記。
「あ………し、失礼なことを言った……」
「すまない、渡辺慧……俺はお前を傷つけるニュアンスで言ったわけではないんだ」
「いや、明らかに失礼な言葉だったことは認めよう……ど、どうしたものか…」
とりあえず、また笑った。ギシィ。怖い。
渡辺慧 > 「俺は嫌いじゃないよ?」
曖昧な言葉だが。さて、慰める意図があるのかどうか。
そんな無表情から繰り出される、その感情が分かりやすい動作は。
少なくとも自分にとって、いいものだった。
メモ、を見て。ほんと、生真面目なんだな、と微苦笑。
「これは俺の個性だからダメ」
個性らしい。
「それと戦えるのは、生活委員会」
「街の誇りを守るため」
「今日もモップ片手に、埃と戦え、生活委員会」
スローガンとかに採用していいよ、と、適当にこぼすが。
「……今適当にいったのをそう褒められると来るものがあるな、うん」
「気にスルな……サボっている俺が悪いんだ……いやサボりじゃなくて……いやサボりだけど……」
等と意味不明な言葉を残し。
「うん、これからは、真面目にしよう」
「雄二みたいに」
と、言うが、その誓いは大体試験期間終了後には忘れられている可能性が60%ほどで存在する。
「本来の笑顔は威嚇の為とは言うけども……あれだ。どういえばいいんだ……? こう。楽しそうに……? ハピネス……?」
桜井 雄二 > 「そ、そうか………」
無表情だが、声音が嬉しそうなそれになる。
「言い訳に聞こえるかも知れないが、色々と不器用な俺でも友達は多いんだ」
「ウィリー・トムスンとか、安室冥路とか、湖城惣一とか、あとは大事な友人に三千歳泪とか」
まるで宝物にしている玩具を自慢する子供のように名前を列挙していく。
「そうか、個性か……」
さらにその言葉をメモっていく。
「渡辺慧は個性的に見えるが、それはどういう風に得られるものなんだ?」
「生まれつきなのか、日常で磨かれたものなのか…」
「そうだ、生活委員会だ」
満足げに頷くが、相手の言葉に顎に手を当てて沈思黙考。
「生活委員会のスローガンは今月は『海浜清掃を徹底』に決まったからな…」
「海開き、楽しみじゃないか? 試験が終わってからだが」
あわあわと無表情に慌てながら相手を取り繕う。
「お、俺も生活委員会の仕事にかまけて授業に出ないこともある!」
「俺は真面目だけがとりえの男だが効率は悪いぞっ!」
取り繕う言葉は、どこまでも空しく夕暮れの教室に響いた。
アホーとカラスが鳴いた。
「楽しそうに……? ハピネス? 俺は、今の会話を楽しんでいるが……自然な笑顔は、やはり難しいな」
渡辺慧 > 「お、多い……………」
衝撃的な人数だった。友達多いな……すごいな……。
客観的に見て多いかどうかは置いておいて。少なくともこの少年にとってその人数は驚異的ともいえる友達の多さだった。
悲しい。
「ん、んん? 三千歳泪?」
どこかでて、聞いた。
自慢ではないが。人の名前は割と忘れる。
が、しかし。何かその、名前は、こう。強烈に訴えかけるものがあって。
「……あ、モンちゃんか」
モンキーレンチ少女=モンちゃん。
「そうかそうか、大事な友人か……モンちゃんも隅におけねぇ……」
いや、まぁ。確かにあの少女は、パワフルで魅力的な部分は多いだろうし。そういう人が居てもおかしくはないのだろう。
慧でいいよ、と前置きし。
「個性、ねぇ……」
「……そのまんま、でいいんじゃない?」
無理に得ようとすると、無理が出る。
ならば、そのままを。
この桜井雄二という少年は、今の時点でも、十分個性的で、魅力的に映った。
「海開きかぁ……」
楽しみではある。楽しみではあるが。
一緒に行く人が特に思いつかないのが、こう。
「まぁ一人で行けばいいか……」
なんて呟くその姿は、うん。
「な、なにおう! 俺だってなんか気づいたら授業終る時間だった時とかあるんだぞ!」
「非常に不真面目な自信ならあるからな!」
この言い合いに正義はあるのだろうか。
「そう? ……うん、そう言ってくれるとうれしいね。なら、いつか自然に笑えるさ」
桜井 雄二 > 「……俺は元々、友人がとても少なかったんだ」
「だが俺みたいな不器用な男でも笑って握手をしてくれるお人よしがいるから」
「俺は………この学園が好きだ」
そう言った時、自然な笑顔が僅かにだが浮かんで。
「そう、巨大なモンキーレンチの。知っているのか?」
「そうだな……大事な友人だ」
「今まで色んな事件に二人で首を突っ込んだよ、大変だった」
隅に置けない、という言葉に対してどこかズレた返答。
「そうか……じゃあ、慧」
「そのままで、いいのか……?」
メモ帳をパラパラと開く。
「自己の拡充には人との交流と笑顔での会話が必須と書いてある本を読んだが…」
「だが慧の意見からすると、うーん…」
悩む。試行錯誤の多い青春であった。
「ま、待て慧……行く相手がいないなら俺も同行するぞ…?」
「せっかくの海開きなんだから、誰かと一緒に行ってもいいんじゃないか…?」
その気遣いは、棘のように刺さる。
不器用だからといって許されてはならない言葉の暴力であった。
「そうか……俺の真面目と慧の不真面目、どちらが上なんだろうな」
無意味な言葉だけが積み重なっていく放課後であった。
人と人は分かり合えるという信条を持つ桜井だったが、この現状どこが分かり合えているのか―――
「そうか? それならいいんだ……それなら俺は、いつかの未来を愛するだけだ」
渡辺慧 > 「………………んー」
シシ。
と笑って。その滲む笑顔に、ふと右手を伸ばす。
「知ってる」
あれだけ振り回されたら、知らないというのは無理があるだろう。
だけれど、まぁ――…。
「だけれど、その大変なのも。思い起こしてみれば素敵な思い出、という奴?」
なんとなく。そんな気がした。
だからこそ、大事な友人、と呼んでるんじゃないかと。
「一般論、で言えばそうかもだけどね」
「雄二と話して、相手が笑ってるなら、まぁ」
「それでもいいんじゃない?」
自分でも、そういうものには疎いが。
少なくとも、この少年との会話は楽しくあった。
「うん、なんつうか、その」
「……うん、まぁ、あれだ。雄二はモンちゃんと行くといいと思う……無理しないでいいから……その……」
にじみ出る哀愁。
これでも言葉を頑張って選んだのだ。褒めてほしい。
「数直線で表せば、案外同じぐらいだったりしてね」
無意味な言葉。
だけれどやっぱり、それはどこか楽しさがにじむ。
「いいね、それ。いつかの未来ねぇ……」
それを想定するには、少しばかり。
少年は若かった。
桜井 雄二 > 「………?」
触れる頃には、いつもの無表情に戻っていたけれど。
「俺の顔に何かついているか、慧」
「そうだな、素敵な思い出だ」
「あってはならない事件だってあったけれど」
「二人で何とかしてきたから、最高の思い出だ」
それから、桜井は三千歳泪だけでなく、色んな友人と事件に首を突っ込んだけどな、と付け加えた。
彼にとっては毎日が刺激的なのだ。
「………そうだな」
「俺の周りの人間は、いつも笑顔で」
「自分が笑顔を返せないのが申し訳ないけれど」
手にしていたモップを降ろして、自然体になる。
「とても居心地がいい」
それでいいんじゃないか、と言われれば。
きっと、それでいいんだ。
「す、すまない慧………俺は、破廉恥な男だ……」
それだけ搾り出すように呟いて、俯いた。
正直、三千歳泪と海なんて――――めっちゃ行きたい――
恥の多い人生を生きている。そう痛感する17歳だった。
「結構、バランスが取れているのかも知れない」
「なぁ、慧。俺たち、いい友人になれると思わないか?」
それは冗談でもなんでもない、本心からの言葉。
「いつかの未来は、きっと来るよ」
「そのためには『場』をよりよくする努力が必要だし」
「転んでも歩き出さなきゃ、ダメなんだろうけれど」
時計を見る。少し話しすぎた。
「すまない、俺はこれで帰るよ」
「試験勉強をしなくちゃならない」
「今日は楽しかった、また会おう、慧」
手を振ってから、掃除道具を持って立ち去っていく。
ご案内:「教室」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入歓迎)>
渡辺慧 > 「いいや」
すっと離す。
「いい感じ」
恐らく、何が、とわからないだろうが。
むしろ、その方がいいのかもしれない。
考えすぎて、無理に出すより。
「ん。……お似合いって奴じゃん?」
なら、おめでとう、と言っておくのが。
今の気分なのかもしれない。
「がんばれー」
なんだか、適当な応援。だけれども、しかし。
「気にするな、じゃなくて……あれだな」
「また、いつか、笑ってるところでも見せてくれりゃいいんじゃねーかな」
なんて、気を軽く。
そっちの方が、多分自分にとっても。居心地がいい、というものなのだろう。
「いや、割と普通な感覚なのでは……?」
まぁ。
自分にはそういうのいないけどな!
等と自爆をしながら。
楽しそうに笑う。
「…………友人、友達」
……。その言葉には、いろいろ思うところがないわけではない。
だけれども。
向こうから、そう言ってくれる。
……この、無表情故、それを隠せない少年は、多分。
――本心から言ってくれてるのでは、なんて。
「――そーかも、しれないね」
なら、それは。嬉しいのかもしれない。
よく、分からない。
何となく自分は昔に固執してる節はある。
だけれども、やってくるものはやってくる。
「あぁ。……俺もやらなきゃなー」
「不真面目でも、単位は気にするものだって、メモに書いといてもいいかんな」
なんて冗談を飛ばし。
「あぁ、またな」
それを、片手を振って見送った。
渡辺慧 > さて。
と、独り言にもならない、小さな声を上げて。
机に移動する。
中から取り出すはペンケース。
そのまま、帰ろうかと。……ふと、窓の外を見る。
もう夕暮れ。それは人に何かを回想させるというが……。
なんの気なしに、椅子に座る。
渡辺慧 > ぼぉ、と。
遠くを見ているようで、焦点の合わない目線。
こぼれた様に、先程。
そして、昨日。
色々。
思い起こして、ぽつりと。
「友達、ねぇ……」
渡辺慧 > 「……俺の?」
それはいささか、疑心にとらわれた…………というより。
不思議そうな響きで。
しばらくの沈黙。
夏の音が教室に響く。
「…………兄貴のじゃなくてか」
渡辺慧 > 不意に。
小さく、わずかに口の端が歪み。
なにか、聞こえないほどの音量で呟く。
そのまま、さっと、立ち去るとあとにはだれもいない無人の教室だけがあった。
――ざまぁみろ、なんて。誰に言っているのかわからない呟きは、どこにも届いていなかった。
ご案内:「教室」から渡辺慧さんが去りました。<補足:白いパーカーを羽織った少年>