2015/07/02 - 21:24~01:40 のログ
ご案内:「超常図書館『パンディモニアム』」に三千歳 泪さんが現れました。<補足:【乱入不可】金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。フォーマルな制服姿に重たそうな巨大モンキーレンチつき。>
ご案内:「超常図書館『パンディモニアム』」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入不可)>
三千歳 泪 > 日付と時間と、場所のヒントだけがタイプされたメモと1943年に鋳造された鋼鉄のリンカーン・ホイート。
桜井くんのところにも、私の名前で同じものが届いてるはず。
指定の場所にはどこでも見かける自販機が置いてある。コインを入れたら、あとは転移魔術にお任せするだけ。
それが失われた楽園へとつづく唯一の道筋。ここまで順調に進んだら、司書さんに言って案内してもらおう。
私の居場所は、『パンディモニアム』に設けられた小閲覧室のひとつ。アンティークの調度品に囲まれた無音の空間。
そこで私は大きな安楽椅子に身体を沈めて、本を抱きながら覚めない眠りに落ちている。
テーブルの上には君に宛てた手紙を残しといたんだけど、気付いてくれてるかな。
桜井 雄二 > 気がつけば、また不可思議で奇妙な世界。
確か自分は、決められた日付、決められた時間である場所の自販機に例のコインを入れただけ。
気がつけば、謎の建造物の中。
司書さんがいるのだから、きっとここは図書館であることだろう。話を聞いて案内をしてもらう。
「泪………?」
まるで二度と醒めないような、深い眠りにつく彼女の姿。
とりあえず周りをぐるぐると3週しながら状況を把握しようと努める。
そして、テーブルの上にある手紙に気付いて封を切る。
一体、何が始まるのだろう。
三千歳 泪 > 『君がこの手紙を見てるってことは、私はまだ眠り姫のまま。爆睡中ってことになるよね』
『たぶん自力では起きられなかったから、私はまだ夢を見ている。つまり、君を呼んで正解だったんだ』
『私が抱いている本、わかるかな。名前はトロイメライ。メスメル学を修めた夢占い師が作った、治療器具みたいなもの』
『この本には、読んだ人のトラウマを呼び覚ます力がある。いやな思い出ってさ、誰にでもあるものでしょ?』
『そういうのを夢の中で追体験して、克服する。あの時は無理でも、成長した今なら苦手意識に打ち勝てるはず』
『それがこの本の意図。でも、実際は狙った通りにはいかなかったみたい』
『あるとき本は壊されて、直せる人はもうどこにもいなかった。私が現れるまではね!』
『そこから先はいつもと同じ。私ひとりじゃ無理そうだから、ちょっと助けにきてくれないかな』
『心の準備ができたら本を開いて。そこには私の夢が記されているはずだから』
吐息の音がしなくなってずいぶん経っているはず。読んでいるあいだは生命活動のレベルが極限まで引き下げられてしまうのだ。
ずっとこのままでいていいはずがない。最悪の場合、衰弱したまま死に至る危険もあるんだってさ。
それが禁書になった理由。滑らかな装丁には金文字の表題が刻まれているだけ。書物は黙して語らず、ただ待つばかり。
桜井 雄二 > 「お、おい……それじゃ…」
とりあえずメモ帳を開いた。分厚いNo.9と書かれたメモ帳の後半部分の白紙を手繰る。
「この本に囚われて、目が覚めなくなった?」
「このままじゃマズいよな………」
毒リンゴを齧ったスノー・ホワイト。
助ける方法は、夢の世界行き。最悪、片道切符になっても彼女は助けなくては。
一通り今の状況をメモに取る。何故か、このメモが自分を助けてくれる。そんな気がした。
「心の準備はできた……よし、いくか…」
高鳴る心臓を押さえつけて、人の夢を覗き見る罪悪感と共に本を開いた。
三千歳 泪 > 本を開けば、君は立っていられないほどの眠気に襲われるはず。
世界はぐるりと廻り回って、足元にはぽっかりと大穴があく。落ちていく。果てしなく。目を瞑ってしまうまで。
―――――――
夏祭りの夜。21世紀初頭の何度目かの大合併で消えていった名もない村の、年に一度のエンターテイメント。
いつもは静かな境内にどこからともなく縁日が立って、老若男女がお気に入りの浴衣を着こんで集まってくる。
提灯は古くなってて、中には破れてしまったものもある。ひなびた風情? そういうのはないよ。ただド田舎だっただけ。
でも、やっぱりお祭りは特別な場所。日常の中の非日常。祝祭の夜。誰もが浮かれた顔をして遊びに来ているのだ。
目玉はカラオケ大会? 盆踊り? どっちも盛り上がるけど、もっとずっとスゴイのがあるんだ。
シャン、と神寂びた鈴の音が響き、舞台の上に華やかな飾りと巫女装束を身につけた異貌の巫女が現れる。
年に一度だけ人里はなれた山奥からやってくる、古式ゆかしい神楽の舞手。その末裔の、今日ははじめてのお披露目の日。
かがり火の薪が爆ぜて、夜空に火花が舞い上がる。村の人たちの奏でる音色にあわせて、ゆっくりと進み出るその姿。
金色の髪。蒼い瞳。長い耳はすこし気弱に垂れて、あどけなさの残る顔はどこか遠くを見ているみたい。小さい頃の、昔の私。
桜井 雄二 > 眠気に襲われる。あ、まずい。これは意識が飛ぶ眠り方だ。
そんなことを考えながら俺の意識はどこまでも深層に沈み込んで入った。
―――――――
夏祭りの夜、であることは周囲を見て理解した。
俺はぼんやりと周りをただ見ている。
どうして俺はここにいるんだっけ。
なんだか綺麗な子がいる。このまま夢のような世界に浸っていたい。
「………っ!」
意識を必死に繋ぎとめる。茫洋の中に意識が拡散していくのを、決死の覚悟で堪える。
「ここでまた眠ったら……きっと俺は二度と目覚めない…!」
何か、何か気が紛れるものはないのか。
ポケットの中に飴でも入っていないかと探ると、メモ帳が出てきた。
なんでメモ帳? No.9と書いてある。
これは俺のメモ帳なのか………?
メモ帳を手にしたまま、金色の髪の少女を遠くから眺める。
三千歳 泪 > 大丈夫。うまくいかなくても平気。こわがらないで。おばーちゃんはそう言ってたけど、たぶんうそ。
わたしがたよりないから、こわがりだから。どっか行っちゃいそうだから、おまつりが終わるまで安心させようとしてるだけ。
目をとじれば思いだす。地獄のような毎日。来る日も来る日もおんなじ動きばっかりくりかえして。
地獄をみたことはないけど、おんなじ踊りをずっとずっとつづけてないといけないなら、それは地獄とかわらないはず。
目を開けるのがこわい。わたしを見ている人たちの目。わたしとちがう、黒い髪。黒いまなざし。
どこを見ても目があってしまうから、逃げられない。くるしい。のどがつまりそうになって、息をはく。息を吸う。
わたしを見ている。ヘンな顔して。たましいが抜かれたみたい。夢をみているみたいな、のっぺりとした顔。
おかーさんとおばーちゃんの顔だけは平気。でも今そっちを見たらぜんぶが台無し。
なにも考えなければ耐えられるかな。こころをからっぽにしてさ。からだはうごいてくれるから。
音楽にあわせて向きを変えたそのとき、水色の髪がみえた。見まちがえじゃない。あんな人がいたんだ。目があって、すぐにそらした。
桜井 雄二 > 金髪の少女と目が合う。
すぐに逸らされたけれど、その瞳の中に移る色は。
どこか……辛そうだった………
彼女の瞳の色を覗き込んだ時、胸の中に何かが痛みとして走った。
泣いている女性。時間旅行機の時の………?
ふと、ぼんやりする頭の中でパラパラとメモ帳を開いた。
そこには、三千歳泪という女性との思い出があり…
ウィリー・トムスンや安室冥路、湖城惣一との出会いや記憶がある。
風でページが勝手にめくれた。
【夢の瞼を開くんだ】
これは……自分の文字、なのか…?
瞼ならもう開いている。夢の瞼とは一体なんだ………
ふと、その前のページを開く。
そこには、自分が三千歳泪という女性を救うためにこの世界に飛び込むこと。
彼女を助けるために全力を尽くすこと。
その前のページへと逆に開いていけば、そこに到達するまでの順序が書いてある。
そうだ、これが夢の瞼……俺の、記憶…
明晰夢を見る条件、それは今いる世界が夢であると自覚すること。
自分がこの世界にあって、自己を認識するために思い出さなければいけないこと。
それこそが夢の瞼だったのだ。
はっきりとした意識で、舞台の上を見る。
これが泪の辛い過去であるなら、目を逸らしてはならない。
三千歳 泪 > わらいあう声、ひそひそとささやく言葉。わたしに向けてピカピカ光る、おおきな目玉がついたハコが出す音。
山鳥みたいな笛のしらべがわたしの背中をおしてくれる。おまつりの音がとおくはなれて消えていく。
わたしのこころのまんなかに、ぽっかりと穴があいてしまったみたい。その穴を通ってなにかが入ってくる。
しらないだれか。神さまかもしれない。からだが軽くなっていく。勝手にうごいてる。でも、ふしぎとこわくない。
シャン、シャンと鈴の音がころがっていく。とまらない。―――とめられない!!
たすけて。だれか。しゃべれない。言葉をなくした人魚姫みたいに。
くるりと回る世界の中におかーさんの顔が流れていく。水色の人の目がみえる。回る。回る。回る――。
音が止む。
そう。おわったんだ。ほっとしたはずみになみだが出てきた。
舞台のうえでひとりっきり。踊りはおしまい。どきどきしたまま、からだじゅうが汗でびっしょりと濡れていた。
めいっぱい開かれた目が、かぞえきれない人たちがわたしを見ている。こわい。こわいよ。逃げないと。
おかーさんとおばーちゃんが待ってるのとは反対のほうから下りて、逃げていく。鈴を投げすてて、だれもいない場所へと。
桜井 雄二 > これが彼女の悪夢。
心の中にある、心的外傷。
自分に何ができる? そんなこと……
「やってみなければ、わからない…!」
ポケットにメモ帳を入れて、走り出す。
「泪!」
彼女を追いかけて、走り出していく。
Hello your dream―――――だがここからだ。
彼女を救い出すには、ここからだ。
どこまでも走る。夢の中の景色を置き去りにして。
三千歳 泪 > おいしそうなたべものの匂い。水にういてくるくる回る、まんまるのなにか。
しらないもの。しらない場所。しらない世界。
黒い人のおなかにぶつかるたび、びっくりした顔をして道を開けてくれる。
言葉が出なくて、こわくなってまたぶつかった。
るい。わたしの名前。だれかがわたしをさがしてる?
やめて。こないで。ほっといてよ!!
鳥居があるほうの正反対。まっくらな森の中、ずっと進めばかえれるはず。
おおまわりして、本殿のかげ。とおり抜けようとしたわたしの前を大きな手のひらがさえぎった。
「!!」
足が浮いて、顔ごとつかむみたいに口をふさがれる。金のかざりが落ちて踏まれた。
おとなの手。男の人。何人いるのかわからない。村の人たちとはちがう服。髪を乱暴につかまれた。
「―――!!!―――っ!―――――――!!!!―――」
はなして。だれか。きづいて。たすけてよ。さけんだはずなのに。なみだ、とまらなくて。
さらわれていく。どうしてこんなことになったんだろう。おまつり、たのしみにしてたのに。
まれびと。えるふ。まよいが。かくれざと。興奮してうわずった声がとぎれとぎれに聞こえる。
なにを言ってるの。どこに行こうとしてるの? わからない。でも逃げないと。
力いっぱいもがいたとたん、頭がのけぞって世界じゅうに星がまたたく。
なにがおきたのかわからない。口の中に血の味がして―――そっか。ぶたれたんだ。
桜井 雄二 > 走る。走る。彼女を追いかけて、走る。
さすが山育ちを自称していただけあって足が速い。
だが、追いつかなければならない。
何があっても。どんなことがあったとしても。
彼女の影に追いつく頃、金の飾りが踏み躙られた場面を目撃する。
男が何人か、彼女を浚おうとしているんだ。
「そこまでにしてもらおうか」
首をコキコキと鳴らしながら彼らに近づく。
「彼女は浚わせない。何がエルフだ、何がマヨイガだ」
「女の子一人力ずくでさらって! 女の子を泣かせて!!」
「何がしたいんだ、お前らは!!」
「恥ずかしいとは思わないのか……!?」
叫びながら近づいていく。
この距離と暗さで異能を使うのは彼女を巻き込む可能性がある。
だから、歩く。歩いて近づく。
「俺はその子を守るぞ!! 何があってもだ!!」
三千歳 泪 > なにもできない。笑い声がこだまして、目の前がまっくらになっていく。
―――なにもできない? ほんとにそうかな。
そんなのは嫌。わたしは……ううん、「私」は諦めることをやめたはず。
もっと強くなりたいと願っていたはず。こんな結末は認めない。お断わりだよ。
人さらいなんかに負けたりしたら、――――くんに笑われちゃうから。
めいっぱい口を開けて、大きな手のひらに噛みついた。
野太い悲鳴が聞こえて、身体がふわっと宙を舞う。かるいなー私。
怒り狂った怒鳴り声をさえぎる様に、別の声が聞こえる。
私に気付いてくれた誰かの声。私のために憤ってくれる人の声。
助けてくれるならこの際誰でもいいけど、その声は不思議となつかしくて。
「――――桜井くん!!!」
誰。誰だろう。水色の人。このひと桜井くんっていうんだ。
知らないはずなのに、気持ちいいくらいスッと名前が出てきた。
それなら悪い人じゃないよね。節くれだった手を逃れて男の子のかげに隠れた。
見るからにカタギじゃなさそうな三人組。その一人が黒い筒のようなものを向ける。
暗くてよく見えないけれど、桜井くんの足元で音もなく土が舞いあがった。
亜人。遺存種。カネになるのさ、とうそぶく声はゾッとするほど冷たくて、血の気が引いていく。
桜井 雄二 > 「―――――泪!!」
その名前を呼ぶ。まだ心の力に余裕はある。
異能を完全にコントロールできる、この夢を変えられる!
後ろに隠れる彼女の頭に手を置いた。
「怖かったか? もう大丈夫だ……守ってやるさ、いつでもな」
そのまま無表情に目の前の男たちを見る。
「そうか……金になるのか…」
「胡散臭いはした金のためにお前たちは」
左腕を振る。魔人化する必要すらない。
「――――後悔することになる」
極低温が男たちに向けて収束していく。
氷の塔が完成した。
それは、天を突くほどの高さの、男たちが入った氷の彫像。
男たちの顔だけが出たその氷塊に、親指を下に向けた。
「まだ聞こえるようなら、覚えておくといい」
「―――――俺が桜井雄二だ」
そのまま振り返って、彼女に笑顔を見せた。
「もう……大丈夫だ」
三千歳 泪 > それはあっという間の出来事で、いつ終わったのかもわからなかった。
頭を撫でられて、怖くはないと言おうとしたけどうまく声が出なくて。
大事な記憶のとびらが開きかけてる気がする。あとちょっとで取りもどせるのに。
「ん……私の名前、知ってるんだ。私を探してた人?」
冷たい風が吹きぬけて、目を開けると三人分の氷の塊ができていた。
何かおかしなことが起きたんだ。魔法みたいに。すごい。よくわからなすぎてすごい。
笑顔を向けられると最悪な無力感がどこかに吹き飛んで、すこし顔が熱くなった。
「――――助かっちゃった」
「ていうか桜井くんだね。来てくれたんだ!」
おなかに抱きついておでこでぐりぐりする。
「でもなんで私だけちっちゃいままなんだろう! 桜井くんはちぢんでくれないの?」
「これが私のいやな思い出。見た目のせいで酷い目にあったこと。たぶん。それが私の――」
「すぐに大騒ぎになって犯人は捕まったんだけど、その時はいろいろ台無しになっちゃったからさ」
「ね、雄二おにーちゃん。お祭り、つれてってくれる?」
トロイメライの力を借りればきっと再現できるはず。あの夏の夜に失くしたものを。
ずっと楽しみにしてた、はじめてのお祭りを。
「それとさ。私のおとーさんとおかーさん。おばーちゃんと、たしかひいおばーちゃんも。会ってみない?」
桜井 雄二 > 泪の言葉に、頷いてみせる。
ポケットからメモ帳を取り出して、右手で開いて見せた。
「お前をずっと探していたんだ…ずっとな」
そこには、三千歳泪を救い出す、という言葉が書かれている。
夢の瞼は開かれた。今日という日のハッピーエンドはもらった……多分。
抱きつかれると『おっと』と小さく呟いて抱きしめ返した。
「ああ、来たよ。まさか夢の中まで探しに来るとは思わなかったけどな」
「無茶言うなよ、子供の頃の俺は弱いんだ……」
「そうか…………そういうことだったのか…」
「俺は、お前の見た目も好きだけどな」
「髪も、耳も、瞳もな……って、この容姿の泪に言ったらロリコンじゃないか」
全く、締まらないな……と呟くとメモ帳をポケットに入れた。
「ああ、お祭に行こう。お前の家族にも会うさ……料理を泪に教えてくれたお礼も言わなきゃいけないしな」
「ただし、それが終わったら確実に帰るぞ」
「俺たちの世界にな」
三千歳 泪 > 縁日の雑踏に戻って、自分を探してる家族の姿を遠目に指さした。
「あれは私の中の家族のカタチ。見た目はいっしょだけど、中身はけっこう違ってるかも。だから、今はここから見るだけにして」
「あっちがおばーちゃんで、となりの人がひいおばーちゃん。すっごく若いでしょ。おかーさんと三姉妹みたいっていわれたりもしてね」
「うちは代々女が強い家なんだよ! ご先祖様のおかげかわからないけど、ふつうの人より長生きだしさー」
「気が済んだらそれでおしまい。たぶんそういう仕組みだから、すぐに帰れるはず」
「いいよ別に。私はそういうの気にしない人だからさー。ほらほら! 行くぞっ桜井くん!!」
―――――――
「おーい桜井くーん。起きろー朝だぞー」
今度は桜井くんが床に伸びてて目を覚まさない。嫌な予感。これはよろしくない気がする。
私が座ってた安楽椅子までひっぱりあげてぺちぺちと頬をたたく。ダメかー。かくなる上は是非もなし。唇、近づけて――。
桜井 雄二 > 「………? なんだ、遠目に見てもなんかこう…えっ」
「…若いな!? ひいおばーちゃんだろ、あの人!」
「因果の逆転か………?」
よくわからない単語を口にしながら彼女に手を引かれる。
夢の世界は時折、こうして人の心に恐怖を見せることもあるし。
安寧を与えてくれることも、ある。
―――――――
目を覚ますと、三千歳泪が唇を近づけてきていた。
「うおおっ!?」
慌てて体を起こそうとすると、彼女の額と自分の額がぶつかる。
「い、いててて………おい、その起こし方は白雪姫に対する王子様のそれだろ」
「逆だ、逆」
額を押さえながらポケットから落ちていたメモ帳。それを引っ張り上げる。
「今回は貴重な経験をさせてもらった」
「泪の子供時代とも遊べたしな」
そう言いながら開いたメモ帳に、新たな1ページを書き記す。
今日のところはめでたし、めでたし。と。
ご案内:「超常図書館『パンディモニアム』」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入不可)>
ご案内:「超常図書館『パンディモニアム』」から三千歳 泪さんが去りました。<補足:【乱入不可】金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。フォーマルな制服姿に重たそうな巨大モンキーレンチつき。>