2015/07/05 - 01:05~04:54 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏」に石蒜さんが現れました。<補足:黒髪に漆黒の巫女装束の少女、肌は褐色。【乱入歓迎】>
石蒜 > 「う、うぅ……。」漆黒に染まった白衣と、血のように紅い緋袴に身を包んだ少女、石蒜は今、青い顔をして歓楽街の路地裏にうずくまっている。
「食べるんじゃなかった……食べるんじゃなかった……。」ぶつぶつと、それだけを繰り返している。後悔と吐き気が、石蒜を責め苛む。

石蒜 > 落第街の路地裏で出会った相手、クラスカと名乗った男を追って歓楽街まで来たものの、匂いは雑踏に紛れ込んで追跡できなくなってしまった。
そして、ふと目に止まった屋台、たいやきという甘い香りのものを売っていたそれに興味を惹かれた。
先日出会った相手が食事に執着していたのもあって、もしかしたら食事というのも楽しいのではないか、と思って買ってみたのだった。

石蒜 > 一口食べて、早速後悔した。甘く煮詰められた豆はとにかくただ甘いという情報だけを舌に叩き込み、生地は粉っぽいだけだった。
真人として作り替えられた石蒜はもう飲食を必要としない。だから、味や食感といった感触を快く思えなくなってしまったのだった。
それでもいつか良さがわかるかもしれないと、無理して全部食べきったのがまずかった。
胃はまるで毒でも流し込まれたかのように暴れ回り、中に入ってきた異物を押し出そうとし始めたのである。石蒜は慌てて口を押さえながら路地裏に駆け込んだ。そして現状である。

石蒜 > 「うっ……ぐ……。」もう我慢の限界だ、壁に手をついて青い顔で浅い呼吸を繰り返す。
そして決壊の時が訪れた。「ぐぇ、■■■■■■■!!!」地面に胃の内容物をぶちまける、胃酸はなく、飲み込んだものだけがそのまま出てきた。

石蒜 > 「はぁ……はぁ……。」拒絶反応は痛みではないため快楽に変換できない。
胃液がないため出てくるのは固形物だ、それを吐くのがとても辛い。
「■■■■■■■■■!!!」べと、べとと少しずつしか吐けない、全てを吐き出すのにどれぐらいかかるか、考えたくもなかった。

ご案内:「歓楽街路地裏」に焔誼迦具楽さんが現れました。<補足:黒いセーラーに黒髪、赤い瞳の小柄な少女。>
焔誼迦具楽 >  
「……うっわ、辛そう」

【嘔吐を繰り返す石蒜の後ろ、路地の影からにじみ出るように姿を現すのは、先日の、食事を楽しむ少女】

「ちょっと、大丈夫……じゃないよねえ」

【数刻前、路地裏に居たのを感じ取り様子を伺っていたのだが、その様子に興味を持って追いかけていたのだ。
 その結果見られたのが……この苦しげな姿である。
 特別警戒することもなく、その背中に近づいて行く。
 抵抗されることがなければ、吐き出しやすくなるよう背中を擦るだろう】

ご案内:「歓楽街路地裏」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>
石蒜 > 「げほっ、げほっ……。」背後からの声に、何とか振り向く。その顔は明らかにやつれている。
「すみ、ませ……うっぷ……■■■■■■ッッ!!」何か言おうとして慌てて壁を向きまた咀嚼した塊をぼとぼとと口から落とす。
背中を擦る手には、抵抗はしない、する余裕もない。
「■■■■■っ!!!■■■■■!!」そのまましばらく吐き続けて。ようやっと、胃の中が空になったようだ。
「はぁ……はぁ……。」汗がしずくになって垂れる、疲れきって、その場にしゃがみ込む。「すみ……ません、ありがとう……ゲホッ、ございました……。」

畝傍・クリスタ・ステンデル > 散弾銃を抱え、橙色に身を包んだ少女が、夜の歓楽街上空を飛ぶ。
突然の体調不良から回復したばかりの畝傍は早速『狩り』に赴き、歓楽街近辺において生徒を襲わんとしていた魔物を討ったばかりだ。
だが帰路につかんとする途中、彼女が最もよく知っている『人』の気配に気付き、この光の入らない路地裏へとやって来たのである。
『炎』の力を持つ畝傍は、『混沌』の力を持つ者の気配をわずかながら察知できる。
まして、それが彼女の最も知り得ている少女ならば、気付くことは容易かった。
フライトパックを脳波操作し、ゆっくりと降下する畝傍の眼前に映った、彼女のよく知る少女――石蒜は、その場に屈みこんでいた。
彼女の近くには、吐瀉物らしきもの。畝傍は何が起こったかを察すると。
「シーシュアン!」
石蒜の様子を心配し、近づく。
今は敵対同然の状態になっているとはいえ、彼女は畝傍の最初の友人であり、最も尊ぶべき存在であることに変わりはない。
ゆえに、それは畝傍にとってごく自然な行動であった。
するとそこにはもう一人、見知った姿の少女。
「…………クト?」
彼女にも声をかけてはみるが――何か、違う?畝傍は考えていた。

焔誼迦具楽 >  
「……ふうん、普通にお礼とか言えるんだ?
 どういたしまして」

【落ち着くまで背中を擦ってあげると、吐き出したその吐しゃ物をみる】

「たいやきねえ……うわ、甘い」

【自分の体を伸ばし、吐瀉物を飲み込む。
 そして焼却し、あとには何も残らないが、迦具楽から率直な感想がこぼれる】>石蒜

「…………?」

【また『クト』か。と思いつつ、そちらを見る。
 畝傍を見る瞳は赤いが、暗い赤。
 いつか見た玖杜の赤い瞳とは異なっているだろう。
 そして、視線を向ける少女には赤いマフラーはなく、スカートの丈も短い】>畝傍

石蒜 > 「う、畝傍……。」青い顔をして、声の方向を向く。友達が来て嬉しいのか、敵が来て警戒すべきなのか、わからなかった。それにそれを表情にする余裕も無かった。
「はぁ……はぁ…どうしました……。」どうかしてるのは自分の方なのだが、そう聞くしか無かった。どう話をすればいいのかわからない。>畝傍

「ええ、言えますよ……約束も、守って…ます……。」ぜえぜえと肩で息をする。
「甘い、甘すぎました…はぁ……人間のまね事なんか……すべきじゃなかった、ですね……。」吐き戻すとわかっていたのに、なんてバカなことをしたんだろう、と後悔しきりだった。もう二度とやるまい。>焰誼

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「クトじゃ……ないんだ、ね」
少女の様子、瞳の色のわずかな違い。それに服装から察し、確認をとった後。
「ボク、さっきまで『狩り』をしてたんだけど……帰る途中でシーシュアンの気配がして……心配になって、来てみたんだ。シーシュアン……それ……どうしたの?」
畝傍は石蒜の問いに答え、彼女の近くの地面に先程まであった吐瀉物について問う。
石蒜の体がもはや人の食物を受け付けなくなってしまっていることを、畝傍は知らない。
だが、嘔吐してしまったのだとしたら大変なことだ、と考えていた。

焔誼迦具楽 >  
「うん、知ってるよ、見てたもの。
 ……食べ物が食べられないのね。さすがにちょっと、可哀想かも」

【向けられる視線には僅かな同情が含まれているだろう】>石蒜

「そ、違うの。
 私は迦具楽。焔誼迦具楽(カグラ)よ、おねーさん」

【さほど畝傍には興味がない様子で視線も石蒜に向けたまま、そう名乗る。
 以前気まぐれに思いついた名前は案外気に入っていた。
 とある炎の神の名前を真似てみたのだが、その由来が気に入ったのだ】>畝傍

石蒜 > よろよろと壁に手をついて立ち上がる。「気まぐれに……食べ物をね、食べたんですよ。でも受け付けなくて……私はもう、何も食べなくても生きていけるんですけど……気づいたら何も食べられなくなっていたんですよ。ふふ、馬鹿なことをしました。」自嘲の笑い。
「自ら望んで人間を辞めたのに、いまさら人間の真似なんかして……。」笑みを浮かべながら頭をふる、その目には本当に微かに、悲しみが宿っていた。>畝傍

「いいんです、いいんですよ。この体になったことで私が得たものは大きい。何も食べられないぐらい、大したことじゃないんです。」だから哀れみは不要だと、焰誼の視線から目をそらす。
袖で汗を拭う。大分回復してきたようで、壁から手を離しても立っていられる。でもまだ歩いてどこかに行けるほどではなかった。>焰誼

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「カグラ……うん、わかった。ボクはウネビ。畝傍・クリスタ・ステンデル」
迦具楽と名乗った少女に視線だけを向け、自身も名乗りを返す。
片や、ある炎の神に由来する名。片や、火のうねる様を意味する名。奇妙な偶然であった。
「なにも……たべられない……」
石蒜自身の口から語られた事実に、畝傍の表情が曇る。
畝傍は石蒜の瞳を見つめ、ほんのわずかに宿っていたその悲しみを察しようとしていた。
「…………そっか。だから」
言葉は続かない。

焔誼迦具楽 >  
「大したことない、ねえ」

【訝しげに視線をむけ、はあ、とため息を一つ】

「はいはい、無理しないで座ってたら?
 どうせまだ動けないでしょ。
 ……それとも、抱えてあげた方が嬉しいかしら」

【呆れたように、冗談のように言いながら、自分の一部を変化させて石蒜の後ろに椅子を作る。
 自分の外見は、一応人間がいるので変化させないが、中身が張りぼてのようになってしまった】>石蒜

「……もったいないわよねー。
 この世界には、美味しくてたまらないものがたくさんあるのに。
 この世で食に勝る娯楽なんて……私には考えられないもの。ねえ?」

【表情を曇らせた畝傍を一瞥し、肩をすくめて見せる。
 しっかりと目を向けた瞬間、僅かに『同種』の気配を感じたが、微かなためにとりあえず無視した】>畝傍

石蒜 > 「同情しないでください!」声を荒らげ、壁を拳で叩く。
「私は今、幸せなんだ、これでいいんだ。何も、後悔など、していない!」その言葉は誰よりも自分に向けたもの。自分を肯定しなければ、サヤであったことを否定しなければ自分は消えてしまう。石蒜はそう思っていた。だから今の自分が不幸であるなど、考えることすら禁忌なのだ。>畝傍

「……。」焰誼の子供を言い聞かせるような言葉に、恨めしげな目線を送るが。
椅子に座るという誘惑には勝てず、それに腰掛けた。
「別に……立ってもいられましたからね。」負け惜しみのように、呟く。>焰誼

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ごめん……ごめん、シーシュアン。……そう……だよね」
同情するな、という石蒜の言葉に。畝傍は詫びる。
これは石蒜が自ら望んで、人間であることを捨てた結果なのだ。
ならば、石蒜がどれだけ苦しんでいようと、畝傍に口を挟む資格はないともいえるだろう。
しかし、狂人でありながら良心を失っていない畝傍には、苦しむ石蒜の身を案じずにいることなど不可能であった。
「うん……そう、だけど。だけど」
神楽の言葉に相槌を打つが、畝傍が考えている問題の本質はそこではなかった。
そして畝傍には、石蒜に伝えねばならないこともあった。何から、どう伝えるべきか?しばし考える。
「……ねえ、シーシュアン。きいてほしいことが……あるんだ」
そして、話を切り出してみる。石蒜に交戦の意思がなければ、畝傍の話を聞いてもらえるだろうか。――あるいは。

焔誼迦具楽 >  
「あら、結構可愛いのねアナタ。
 ふふふ、座り心地はどうかしら、お姫様?」

【負け惜しみのように言う石蒜が可笑しかったのか、楽しそうに笑う。
 そしてまた、冗談のようにからかうような言葉をかけた。
 ……ついでに座り心地は、クッションが効いていて体にフィットするモノだろう。不定形ゆえになせる業である】>石蒜

「…………」

【石蒜をからかうつもり満々だった迦具楽だが、畝傍が真剣に話し始めれば、それを面白そうに眺めているだろう】>畝傍

石蒜 > 「~~~……。」もう何を言ってもからかわれるのだと、諦めて畝傍に視線を移した。
すわり心地は確かに良好で、疲れた体にとても嬉しかったが、それを伝えればまた何か言われるだろうと黙っていた。>焰誼


「……ごめんなさい。言い過ぎました……。」謝られると、膨れ上がった怒りもしぼんでしまう。
彼女は敵なのに、ご主人様に害を為そうとしてるのに。
自分でもどういう態度で当たればいいかわからない。

「何か、あったんですか……?」深刻な雰囲気で話を切りだされれば、不安になって、問う。一瞬前まで敵だと思っていたのに、相手のことが心配になる。>畝傍

畝傍・クリスタ・ステンデル > 石蒜の問いかけに答え、畝傍は真剣な表情で語りだす。
「シーシュアン……ボク……ボクね……気付いたんだ。あの時……ボクの体が炎になったとき。ボクは代償を支払ってた。ボクがシーシュアンに最初に会ったときに話した、『あの日』も……そうだったんだよ」
忘れもしない『あの日』。畝傍が暴行を受け死の淵に瀕し、異能に目覚め、狂気に陥ったあの日。
すでに畝傍は『炎』の異能に目覚めており、『代償』を支払っていたのだ。
畝傍の狂気は自身の精神の破綻から生じたものではなく――『生きている炎』への代償として『正気』を支払った結果なのであった。
「ボクの炎のチカラ……『炎鬼変化』<ファイアヴァンパイア>って、よぶけど。あの時、ボクが見せたあのチカラは……ボクが『炎鬼変化』を使うには、代償が必要で。その代償っていうのが……ボクの『正気』なんだとおもう。ううん……そうなんだよ。だから」
故に、自分は――
「……ボクも、シーシュアンとおんなじ、かもしれないんだ。狂ってたんじゃなくて、狂わされてた」

焔誼迦具楽 >  
【ふぅん、と。
 畝傍の話で幾つか合点がいった。
 畝傍から感じるもの、そしてその正体。
 その大よその部分を、恐らく正確に推測した。
 しかし口は挟まない。以降、話が落ち着くまでは黙って聞いているだろう】>ALL

石蒜 > 「え、それって……つまり……。」絶句する。
異能の代償が正気だとすれば、だとすれば……。
彼女は私のご主人様をその異能で殺すつもりだ、そうすれば、そうしたら……。
椅子から立ち上がり、畝傍に、ヨロヨロと歩み寄る。
「畝傍……、あ、あ、諦めて……お願い、そうだとしたら……ご主人様を倒すのにその力を使ったら、畝傍が……狂っちゃうよ、もうこれ以上狂ったら駄目だよ……。」すがりつくように、畝傍を抱きしめようとする。>畝傍

畝傍・クリスタ・ステンデル > 石蒜の腕に抱かれつつ、畝傍は弾を抜かれ折り畳まれた散弾銃を右腕に抱えたまま、左腕で石蒜の体を抱き寄せた。
「……ありがと。シーシュアンは……やさしいんだね。そう。ほんとは……やさしいんだよ」
畝傍の身を案ずる石蒜の言葉に、心からの感謝を述べる。
いかに石蒜が『混沌』の力に染められ邪な存在となっていようとも、彼女にその気持ちがあるという事実が、畝傍に希望を見せた。
「だいじょうぶだよ。ボクは……どんなに狂っても。シーシュアンのこと、わすれたりしないもの。だってシーシュアンは、ボクのいちばんだから。だからボクは、シーシュアンをたすけるよ」
心配する石蒜をなだめるように、優しい声で囁く。

石蒜 > 「違うよ!やめてよ畝傍!もう狂わないで……!」そうすれば考えが変わるとでも思っているように、畝傍にしがみついて前後に揺する。
「どうして……どうしてそんなに…ご主人様を憎むの……?どうして……。やだよ、私……ご主人様も畝傍も…失いたくない……。どうして……。うぅ……。」崩れ落ちるように膝をつき、それでも畝傍にしがみつきながら、涙をこぼす。どうして、そこまでして畝傍がご主人様を倒したがるのか、わからなかった。わからないのが悲しくて、悔しくて涙をこらえられない。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 石蒜を抱きしめたまま、畝傍は語り続ける。
「……シーシュアン。シーシュアンの『ご主人さま』は……あの、メイメイってヒトは……シーシュアンをゆがめて、どんどん悪い方向にすすませようとしてる。……なにもたべられなくなったっていうのも、あのヒトのせいなんでしょ?」
畝傍は先程の事象の原因を推察し、問うた。
石蒜の『ご主人様』――『腐条理』の鳴鳴。彼女により歪められ続け、
ついには『混沌』そのものとなった石蒜の姿は、先の鎮守の森における交戦で畝傍も視認している。
「だから……ボクは、ゆるせないんだ。ボクのトモダチを、こんなふうに苦しめてるヒトは……ゆるせない。シーシュアンが、それを望まなくても」
畝傍は、石蒜の体をより強く抱きしめんとする。そして、語る。
「……ボクは『鞘』をみつけた。みつけたんだよ。だから、もう。だれにも……ボクのことは、とめさせない。それがシーシュアンの頼みでも……ボクは、ボクのするべきことをする。ぜったいに、やめたりなんかしないよ」
その瞳からは涙が零れていた。決意と覚悟が、そこにあった。

石蒜 > 「苦しんでないよ……畝傍、私は……幸せだよ……。」自分を抱きしめる手に、自分の手を重ねる。もう何を言っても畝傍は止まらないのだろう。
声が、抱きしめる手の力強さが、それを雄弁に語っていた。
「うっ……ぐすっ……うわぁぁぁぁぁん!!なんで、なんで……やめてよ畝傍ぃぃ!!!」耐え切れず、大声で泣き始める。力なく、ぽかぽかと畝傍を叩きながら。もう、畝傍は止まらない。私は失うだろう、ご主人様か畝傍を、あるいはその両方を。
「うわぁぁぁぁぁん!!わぁぁぁぁぁん!!」地面に突っ伏して、泣き続ける。もう、あの頃のような幸せな時間は訪れないだろう。それが嫌だし、辛かった。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……ごめんね、シーシュアン。ほんとに……本当に……ごめんね。ごめんね……」
大声で泣き続ける石蒜の姿に、畝傍はまた涙する。
ああ、ボクはまた――石蒜を悲しませてしまった。
畝傍の心は、その事実から生じる自責の念に苛まれる。だが、その悲壮な決意は揺るがない。
「もう……止められないんだ。ボクは決めたから。ボクはキミを……ボクのトモダチで、いちばんすきなヒトのシーシュアンを……たすけなきゃいけないから」
例え、再び幸せが訪れないとしても。全てが『悲しい思い出』として、忘却の彼方へ消えたとしても。
『想うはあなた一人』――それこそが石蒜――彼岸花の花言葉の一つであり、畝傍の決意を示す言葉であった。

石蒜 > 「うぅ……ぐすっ、えぐっ……。」今は泣いてる場合じゃない、奥歯を噛み締めて涙を止め、袖で顔を拭う。
「なら……もう、止まるつもりがないなら……行ってください。あなたの決意は、わかりましたから……。」嘘だ、行ってほしくない、もう今の畝傍と話せるのはこれが最後なのかもしれないから。もっと話していたい。
「私とこれ以上話して、決意が鈍ったら不味いでしょう……。だから、だから……もう、行ってください……。」行ってほしくない、ずっと抱きしめていて欲しい。
でもこれ以上、私の泣いている姿を見せたくない。畝傍がこれ以上私に情をうつしたら、彼女は苦しむだろう。だから/でも、もう行って/まだ行かないで。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は石蒜の言葉を聞き、彼女の心情を推し量って一度はその場を去ろうかと考えたが、
すぐに去ってしまわず、しばし考えを巡らせる。そして彼女の言葉の裏にある真意に気付くと、
ヘッドギアを操作し、頭上に開いた収納ポータルへ散弾銃を一時的に放り込んだ後、またポータルを閉じる。
そして――畝傍は何も言わず、石蒜の小さな体を、今度は両手で思い切り抱きしめんとした。

石蒜 > 抱きしめられると、また泣きそうになったが、頑張って止めた。
畝傍はいつも銃を持っているので、両手で抱きしめられたのは初めてだった。ぎゅっと拳を握って、涙をこらえる。
「さよう、なら、畝傍……。」泣かずに言えるのは、それだけだった。これ以上口を開いたら涙が止まらなくなるだろう。
最後に、ぬくもりを忘れないように、自分もできるだけ強く抱きしめて、手を離す。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……うん」
石蒜を抱きしめていた畝傍もまた、涙が溢れそうになる。
それを必死に堪え、これが最後かもしれない、彼女のぬくもりにしっかりと触れた。
そして、手を離し。
「さよなら…………シーシュアン」
石蒜に背を向けないまま数歩後ろに下がると、
笑顔で手を振り、別れを告げる。堪えていた涙が、再び溢れだした。

石蒜 > 最後かもしれないから、こちらも笑顔で手を振る。見えなくなるまで、手を振って。

「うっ……ううぅ……!!」泣き崩れた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は石蒜に背を向け、彼女の視界から姿が見えるか見えないかの位置まで歩き、
先程と同様の手順で開いたポータルから散弾銃を取りだすと、ヘッドギアを通じた脳波操作でフライトパックを起動する。
円形の中心部から板状の羽が左右に伸び、その先端の卵型推進装置に点火。青色の噴射光が路地裏の暗闇を照らした。
徐々に浮かんでゆく畝傍の体。やがて、橙色に身を包んだ少女の姿は、再び歓楽街の空に消えてゆく――

ご案内:「歓楽街路地裏」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>
焔誼迦具楽 >  
「……っ、く……~っ!」

【そんな二人を見ていた迦具楽は、ただ笑いをこらえるのに必死だった。
 自らを省みない決死の覚悟と、失う事を恐れた慟哭。
 そのやり取りは驚くくらいに悲劇的で、なるほど感動的だ。
 けれど迦具楽には、それが涙が出そうになるほど滑稽に映ったのだ】

「――ぁ、はぁー……あー、もうお話は終わり?」

【畝傍が去っていけば、呼吸……などはもともとしていないが、わざと落ち着けるように息を吐いてようやく声を掛ける。
 滲んだ涙……を真似た雫を拭いながら、椅子を回収して泣き崩れる石蒜へと近づいて行く。そして】

「……よしよし、存分に泣きなさい」

【楽しませてもらった礼くらいはすべきだろう。
 膝を着いて、頭を撫でるように手を伸ばす。
 一人で泣くのはつらい。そんな、迦具楽にこびり付いた魂の欠片がそうさせた】

石蒜 > 「うっぐ、えぐ……っ。泣いてません、泣いて……ませんし……。ひぐっ……。」頭に差し伸べられた手を弾くことなく、歯を食いしばり、肩を震わせながらすすり泣いている。
焔誼迦具楽 >  
「はいはい、泣いてない泣いてない」

【そう強がる姿に、すこしばかり呆れ……微笑ながら、胸に抱き寄せる。
 記憶にそうあるように――コレハワタシノキオクジャナイ――抱きしめて、優しく撫でる】

石蒜 > 抱きしめられると、びくりと震えたが、次第に安心したように体の力を抜いていく。
「どうして……どうして……私は…友達が欲しかっただけなのに……。」
同類の人を見つけて、一緒になろうと誓った。でも今はその友達はご主人様を、自身の正気を犠牲にして倒そうとしている。
「私は……私はどこで間違ったの……?どうすれば……良かったの……?」止めどなく涙を流しながら、誰に言うでもなく、つぶやいた。

焔誼迦具楽 >  
「知らないわよ、そんなの。
 私に友達なんていないし……アンタと違って、最初から人間じゃないもの」

【答える必要なんてないんだろう、と。
 求めてなんていないんだろうと思いながらも、呆れた声でゆっくりと話す】

「まー、でも。そうね。
 こーなったのは『ともだち』だから、なんじゃないの。
 アンタが好きで好きで仕方ないから」

【自分のモノにしたいんだろう、と。
 そこは言葉にこそしなかったが、迦具楽の中では先ほどのやり取りをそう結論付けていた。
 結局、畝傍も石蒜も、迦具楽から見ればやりたい事を、願望を押し付けあってるだけにしか映らない。
 ……しかしだからこそ、その魂は滑稽で――美味そうに見えた。
 食を最大の娯楽と位置づける迦具楽にとって、美味しそうなものがある、というのはそれだけで心が弾むのだ。
 だから、今の行為はその礼。ただの礼なのだ。
 そう――コレハワタシノイシジャナイ――言い聞かせ、ただ慰めるように撫で、抱きしめる】

石蒜 > 「私のせいで畝傍が……私が……私のせいで……。」友達になってしまった、それが間違いなのだと、自分を責める。
あの時、声をかけられても無視していれば、同類だと認めなければ、畝傍が異能を使わないで済んだのに。

「ごめんなさい、ごめんなさい……。もう少し……もう、少しで……動けますから…立てますから……。」ギリギリと歯ぎしりをして、全身に力を込めて、涙を止める。泣いていてももうどうにもならないから。泣いてる場合じゃない。

撫でる手を、抱きしめる手をゆっくりと外して、立ち上がる。その目は泣きすぎて赤く腫れていた。
「すみません……ありがとう、ございました……。もう、大丈夫です。」下唇を噛み締めながら、涙をこらえて礼を言う。

焔誼迦具楽 >  
「……もう、アナタねえ」

【石蒜が立ち上がれば、自分も立ち上がりその額にでこピンをくれてやろうとするだろう。
 そしてその成否に関わらず、迦具楽は呆れながらも念押すように】

「うだうだ後悔なんかしてないで、アナタもやりたいようにやればいいの。
 あっちもこっちも失いたくないなら、失わないようにやってみせなさいよ。
 アナタの力は何のためにあるの?
 誰のためでもない、アナタ自身のためじゃない。
 少なくとも私の力は、望むものを望むように、楽しんで愉しんで生きるためにあるわ」

【それがたとえ、与えられたものだとしても】

「だから――もう少し強くなりなさい」

【そう、言い聞かせるように言って、石蒜の胸を指す。
 自分でも――ワタシノコトバジャナイ――何を言っているんだろうかと思いながら】

石蒜 > 「あうっ。」俯いてたので、デコピンを受ける。痛くはないけど、衝撃はあった。じっと相手を見る。

「私の……やりたいように……。」ご主人様が言うことみたいだ、でも何か、意味は決定的に違う気がする。
「私の力、私のための、力……。私の望むように……。」私の望みって、なんだろう。
私を作り替えたのはご主人様だ、ご主人様の喜びが私の喜び、そう思っていた。
でも、本当にそうなのだろうか、初めて、そこに疑問を持った。
まるでずっとつけられていた鍵が開いたように、思考がそこに踏み入る。
ご主人様は、きっと私のことは玩具の1つでしかない。でも畝傍は、私が一番だと言ってくれた。
なら、どちらに答えるべきなのか。

「強く……なれば、畝傍を救えるでしょうか……。」指された自分の胸に、視線を落とす。

焔誼迦具楽 >  
「だからー、知らないわよそんなの」

【思いっきり見るからに呆れた顔をして、息を吐く】

「あのね、私だってまだ生まれて一ヶ月も経ってないの。
 この言葉も、この記憶も、この体も!
 ぜんぶぜーんぶ、借り物!
 これまで食べてきた人間から奪ったもの!」

【両手を広げて、身振りと共に狂りと回る】

「だからそうしたらどうなるかなんて、私は知らない。
 どうなるかなんて全部、アナタ次第でしょ」

【石蒜に背中をむけ、首だけで振り向いた。
 自分だってわからない事を、人に教えられるわけがない。
 今の言葉も、勝手に浮かんできた言葉を継ぎ接ぎしただけなのだから】

「……はい、たいやきのお礼はここまで。
 また遊んでほしかったら、約束どおり美味しいものでも持ってきてね」

【言いたいことは済んだとばかりに、そのまま路地の闇へと歩いて行く。
 けして見世物の礼とは言わず、あくまで食べ物の分だと。
 あくまでこれは、その礼なのだと言い聞かせながら】

石蒜 > 何か異形の存在だから、年上だと思っていたので、驚く。
でも、いくら借り物でも、多分私のために言ってくれた言葉だから、嬉しかった。
「ええと、あ、ありがとうございました。」去りゆくその背中に、頭を下げる。
そして
「私のために、私のための力。」呪文のように繰り返して、登り始めた朝日に向かって、歩き出した。

ご案内:「歓楽街路地裏」から焔誼迦具楽さんが去りました。<補足:黒いセーラーに黒髪、赤い瞳の小柄な少女。>
ご案内:「歓楽街路地裏」から石蒜さんが去りました。<補足:黒髪に漆黒の巫女装束の少女、肌は褐色。【乱入歓迎】>