2015/07/05 - 20:57~00:17 のログ
ご案内:「破壊された祠」に石蒜さんが現れました。<補足:黒髪に漆黒の巫女装束の少女、肌は褐色。【待ち合わせ中】>
石蒜 > ご神体が持ちさられ、神の名を刻まれた柱も崩され。もはや何の意味も為さない場所となった祠に、決意を秘めた瞳の少女。身を包むのは漆黒の白衣と血のように赤い緋袴、少女の名は、胸元の赤い彼岸花を示す、石蒜。
彼女は邪仙鳴鳴によって、サヤという少女の魂の破片から創りだされた存在であった、故に創造主である鳴鳴には絶対の忠誠を誓っていたし、さらに鳴鳴による汚染が進み、混沌の眷属となり果てていた。
それを石蒜は幸福だと心から信じていたし、それを疑うべくもなかった。
だが、今は違う。拒絶する石蒜にも構わず、何度も差し伸べられた手に、石蒜は、主人である鳴鳴以外にも自分を認めてくれる存在が居ることを知った。そして、それは主人の玩具であることを辞めるのに、十分な理由であった。
ご案内:「破壊された祠」に鳴鳴さんが現れました。<補足:道服の童女、邪仙/元ロストサイン>
石蒜 > だから、今彼女は鳴鳴へ、主人と決別する意志を伝えに、この祠にやってきていたのだった。
懐から、祠にあった神像を元に戻し、呼びかける。「鳴鳴様、いらっしゃいますか。」
鳴鳴 > 破壊された祠。祀られた神の名さえ忘れ去られた廃墟。
そこに一人の少女が訪れていた。黒い装束に身を纏った少女。胸元には赤い彼岸花が描かれている。
その少女が呼びかける。
ここに祀られていた神に呼びかける如く。
貌が削り取られたような神像に呼びかける。
「ああ、僕はここにいるよ。僕は君。ずっとそばにいるよ」
声が響く。まるで少女の耳元で囁くように。
「僕はここにいるよ、石蒜」
スッ、と背後から抱きつこうとしながら童女が現れた。
神像のほうからは現れない。
この童女らしい予想を裏切るような現れ方だった。
石蒜 > そう、石蒜と鳴鳴は半ば混ざり合ったような同種の存在となっていた。近くにいればお互いがわかる。
だから、背後からの声に驚くことはなく、その腕から逃れながら振り向いた。
「そうでしたね。私は、あなたでした。」私の中に鳴鳴様を感じる、恐らく相手も同じだろう。その相手の中にいる自分の中にも同じように相手が居て……、入れ子構造のようにお互いの中に自分が居る。
混沌の眷属で無ければ即座に発狂するであろう、常識や既存の観念を超えたつながりであった。
「なら、お分かりですね鳴鳴様。私が何を考えていて、何をしようとしているのか。」薄紫に光る目で、じっと相手の目を見た。
鳴鳴 > 「僕は君。君は僕だけど……同時に、僕は君でなく、君は僕ではない」
道服の鳴鳴は笑う。自らの手から石蒜が逃れても薄く笑うのみだ。
これまでは違っていた。鳴鳴の抱擁は石蒜にとって無上の喜びだっただろう。
しかし、その手を彼女は逃れた。
「あきらめ、悲しい思い出、想うはあなた一人、情熱、独立、再会、また会う日を楽しみに……人とは中々情趣ある言葉を思いつくものだね」
鳴鳴の手には一輪の曼珠沙華――彼岸花が握られていた。それに静かに唇を落しながら石蒜を見る。
先程まで、混沌の存在として、互いに互いを感じ取っていたはずだが、今はその同調を弱めているようだ。
鳴鳴の深いところまでは見えないだろう。
「君の花言葉だそうだよ、石蒜」
そして、静かに首を横に振る。
「……別に、恐れることでもないよ、仰々しくいうこともない。
君は、僕の玩具だけど、最初にも、そして何度も言ったはず。
――僕は、君の全てを赦している。君が何をしようとも。
たとえ……僕を裏切ろうとも。いや、そもそも裏切るなんていう言葉自体正しくないかもしれない」
自分の道服の胸元に持っていた彼岸花を挿す。
「僕は、最初から君の全てを赦している。君が好きだからね」
石蒜 > 「私を……救っていただいたことは、感謝しています。名前を与えていただいたことも、快楽を下さったことも……。あなたが居なければ、私はあのまま壊れて死んでいたでしょう。」思い返すように、一瞬目を閉じる。魂を刀に奪われ、その刀すらも叩き折られて、壊れかけ、苦しんでいたサヤを石蒜にすることで、鳴鳴はその生命と心を救った。
「ええ、私は自身の享楽を望めばいい、そのためならあなたすらも無視しろ、と言われています。だから……。」異能を使って、右手に刀を呼び出す。鳴鳴の手で作り直され、血に飢える妖刀と化した刀。
握る体も、鳴鳴によって真人へと作り替えられた体、宿る魂も鳴鳴が歪めて創りだしたもの。全ては鳴鳴が創りだしたものだ。
「私は、あなたの玩具を、辞めます。」だが、この心は私のもの、私が望むことをする。そして、私は畝傍と共に生きることを望んだ。
決意を込めて、刀に切っ先を向ける。
鳴鳴 > 「そうか」
石蒜の言葉を鳴鳴は黙って聞いていた。
そして小さく頷くと、自らに向けられた刀の切っ先に目をやる。
赤く輝く瞳がその煌めきに目を細める。
「君は僕をどうしてもいい。愛してもいい、嫌ってもいい、信仰してもいい、憎悪してもいい、凌辱してもいい……殺してもいい」
切っ先を自らに向けられている。それにも関わらず、一歩二歩と歩みを進めていく。
「僕はとても嬉しく思っているよ、石蒜。いや、サヤかな? 今の君はどっちだい?
サヤではなく、石蒜の心さえも動いたというのなら、実に僕は嬉しいよ。
取られちゃったのは、寂しいけどね」
それが本心なのかどうかは不明であろう。鳴鳴は今、石蒜との同調を弱めている。
そういう感情があるのかさえ、本来定かではない存在だ。
刀の切っ先の傍まで来ると、その切っ先を指で撫でる。肉が切れ、割れる。
一筋の血が流れ出した。本来鳴鳴には流れ得ないものだ。
そのまま、歩みを進めれば、鳴鳴の体に刀が突き刺さり始める。
刀が刺さっていようとも、血が道服を濡らそうとも、鳴鳴は気にする様子はない。
「……僕は、僕の享楽を成そうとしたまで。別に君に害意があるわけでもない。
あの時、僕と君は一つになったのだから、全てに価値があり、無意味であることを知ったはずだ。
僕は君のことが大好きだ。君が何をしようとも受け入れてあげる。
きっと、愛してもいるだろう。人の言葉の定義には当てはまらないかもしれないけどね」
石蒜に近づきながら、鳴鳴は手を伸ばす。
混沌が、手を伸ばす。
「僕は君に玩具であることを命令したわけじゃない。
僕が、君を玩具に扱っていただけ。
だから、それを決めるのは君じゃない」
赤く目を光らせて、這い寄りながら。
石蒜の身に、顔に、手を伸ばそうとしながら。
鳴鳴は近づく。
石蒜 > 今鳴鳴との同調は弱まっている、全てを受け入れて冷笑する混沌とした精神は鳴りを潜め、今石蒜は裸一貫で対峙しているに等しい。
突き刺さる刀に帰ってくる得体のしれない感覚、刺さっていることに気づいていないかのように歩いてくる相手、語りかけてくる言葉。全てが石蒜の精神を揺さぶってくる。
怖い、それが率直な感想だ。今すぐ逃げ出してしまいたい、あるいは気の迷いだったと許しを乞いたい、だがそれは敗北だ。私を助けようと必死になっている人たちへの裏切りだった。
だから踏みとどまる。そして
「私は、玩具じゃない!」突き刺さった刀を、そのまま伸びてくる腕を切断するように、振りぬいた。
鳴鳴 > 石蒜の叫びと共に、鳴鳴の体に突き刺さった刀が振りぬかれる。
勢いよく腕が吹き飛ぶ。血に擬態したと思われる何かがあたりを濡らしていく。
それでも、鳴鳴は薄い笑いを浮かべるだけだった。
「他に、言葉が思いつかないのさ。玩具? 友人? 恋人? 仇? 僕にとっては、全部同じ意味だよ。
全ては相対的な区別に過ぎない。その感情も存在も、何もかも。その時々の価値観で定義されるだけだ。
君には、自らを理解してくれる存在がいた」
鳴鳴は空を見上げる。遥か遥か遠い彼方を見るような目だ。
宇宙の果て。宇宙の外側。発狂する神々が踊り狂う外なる世界を見る。
「だけど、僕にはそういう存在はいないんだ。理解してくれる存在はいない。
僕は、全て受け入れているというのにね。今日のようなことになってしまうわけだ。
君は、初めて僕と会った時に、僕を求めた。助けを求めた。
玩具であることすらも。……それもまた、偽りだったのかい?」
飛び去った腕はいつの間にか、鳴鳴の体に戻っていた。
石蒜にしみこむように、這い寄るように、声を脳髄へ、根源へ、囁きかけるように言う。
全てを冷笑する存在。全てを嘲笑う存在。それが鳴鳴の本質だ。
今は、その瞳に涙すら浮かべる童女だ。
二人は今、個として相対している。心――鳴鳴にそれに類するものがあればの話だが――でも読もうとしなければ、その言葉の真意はわからないだろう。
石蒜を揺さぶるように童女は自らが傷つけられても、何一つ咎めることなく石蒜に近づく。
「僕にとって、理解は無理解の裏返しだ。裏切りは信頼の裏返し。全ては同じことだ。
君の行為も全て、そう。僕はとても喜んでいると同時に、とても悲しんでいる。
……嗚呼、でも。
もうきっと、君には理解できないのだろう。想いとはそこまで人を変えるものとは、僕も知らなかったよ」
そういうと、不意にふわりと浮きあがり、石蒜に抱きつこうと手を伸ばす。
首に手をまわしながら、その耳元に口を寄せる。
「……初めて出会った時のことだ。君は僕に助けを求めた。壊れてもいいから、とね。
あの時、僕が君の精神を操作したと思っているかい?」
彼女の首筋に触れようとしながら。呪縛するように言葉を投げかけながら。
石蒜 > 汗をかいているのがわかる、背筋に氷柱と差し込まれたように、体が冷えているのがわかる。
息が浅く、早くなる。
「わ、私は……確かに、あの時…も、もと、求めました。あなたが最後だと、もう他に誰も助けてくれないと、そう思ったから。だから、だからあなたに……求めました、本心からです。でも……違った。私には助けてくれる人が、他にも居て……。」涙?泣いているのか、この人が……?心にちくりと罪悪感を覚える。
「あ、ああ……。」怖い、理解が出来ない。ほんのすこし前まで、自分と同質だった存在が、星々の如く遠くに思える。蛇に睨まれた蛙のごとく、動けない。
抱きつかれ、首に手が回る。払いのけられない、動けない。その顔から目が離せない。
「ち、ちが……違う、んですか…。私を、あの時歪めて……だから石蒜になって……悪を……。」まさか、私の、サヤの心はそのままだったのか?だとしたらそのあとの私の行動は……。
首筋、気道と動脈の通る人体の急所、体はすでに縛らた。続いて、心まで縛られようとしている。
鳴鳴 > 「僕にはいないんだよ。僕は全てを受け入れる故に、全てを冷笑する。
僕は僕であり僕でない。価値を認めて、無価値を認める。全てに。
故にこそ、僕は全ての価値観を認め、嗤う。僕は、果たして誰だろうか?
君は、ついに君という個を確立した。だが、僕は千の異形の一つだ。
たとえ、同質の存在を作ったとて、理解も、助けてくれる人も、いないということがわかったよ。
嗚呼、悲しいな」
動けない石蒜に囁き続ける。混沌が囁く。
赤い瞳で彼女を見つめ続ける。かつて、そうしてきたように。
「僕は君を導いた。君の命や精神も、その体に繋いであげた。
……だけど、僕は最初から君の好きなようにやればいいとも言った。
それなのに、君の行動をある一定の方向に導くような真似を……すると思うかい?
僕には善悪もない。君の行動は全て受け入れてあげることができる。
……でも、この世界はどうかな? 君が僕に歪められたといって……傷つけ殺めた人が、君を赦すだろうか。
君が、幸せに浸ることを、赦してくれるだろうか。この世界は。
きっと、僕は君達に滅ぼされるかもしれない。それは無上の喜びさ。
だけど、その後君はどうなる? 社会に、世界に、君はどう購っていくつもりだい?
君の行動は、全て君の意志さ。だって、僕は君に――」
「悪を成せなんて、一言も言っていないよ」
囁く。静かに笑いながら。嗤いながら。
鳴鳴の言葉の真偽はおそらく判断できないだろう。何せ、今はその同調を弱めている。
例え後から同調を深めたとしても、鳴鳴は混沌だ。その深淵を見ることはおそらく非常に難しい。
石蒜に、優しげに、そう語りかけていく。
「でも、僕は――君の全てを、赦してあげられるよ」
首に手を回したまま、顔を近づける。
これまで何度もしてきたように。口づけを交わそうとしていた。
石蒜 > 「あ、あぁ……。」わからない、事実を述べているのか、自分を陥れるための嘘なのか。
だが、その言葉に矛盾はないように思える。
確かに石蒜は何をしてもいいと言われた、それを悪を為すことだと解釈したのは石蒜自身だ。
報告した時、それを否定されたのを覚えている。
だとしたら、だとしたら、私に幸せになる権利なんか、無い。
人を傷つけ、殺めてきた私に……。
「う、うぅ…………。」言い返せない、言葉が鎖のように精神に絡みついて、思考が出来ない。罪悪感と深い絶望に囚われている。
「うぅっ……。」戻れない、もう、戻れない。それだが頭の中をぐるぐると回っている。
そして、絶望の涙を流しながら、くちづけを受け入れる。
鳴鳴 > 「……きっと、世界は君を受け入れてくれない。
だからこそ、君はあの時、壊れそうになっていたんだろう?
僕は、故に君を僕の手の中に抱きとめたんだ。
もう既に、この世界の価値観の中で、君は生きていけない。
でも、僕は――君を赦してあげる。君が何をしようと、どうしようと、僕は君を抱きとめよう。
交わった時に、君は知ったはずだ。この世界の全ては無意味で無価値だと。
大いなる「道」のもとに、全ては同じなのだと。
……君は、この世界で、この社会で生きていく限り、きっと苦しみ続ける。
――でも、僕は、僕だけは……」
口づけを交わす。深く。深く。言葉で彼女を縛るように。
彼女の根源に語りかけるように。
人から理解されること。
人から認められること。
人から赦されること。
人から捨てられないこと。
それを、自分が与えると言わんばかりに。
舌を絡め、身体を接し、混沌の交わりを深める。
「想うはあなた一人」
口をゆっくりと離し、鳴鳴は笑った。
彼岸花の花言葉を口にして。
嗤った。
「……さあ、どうする。石蒜……いや」
「サヤ」
石蒜 > 「ちが、違う……今は畝傍が…風間さんが……ほ、他にもきっといい人が……。」数少ない、助けてくれる人物の名を連ねる。
でもわかっている、許してくれるのは彼らだけ、被害者達や、風紀公安といった治安機構は、決してそうではないだろう。
口を塞がれる、絡みつく舌はあの時のようで、心が安堵に満たされる。
ああ、私は……漆黒の空を飛びながら、微かに見えた地上の光に、そこで暮らす自分を想像しただけだったのか……。
もう遅い、ここは九万里の空、世界は漆黒に染まり、全てに意味も価値も無い。
石蒜の心は、また諦めの黒に染まった。
サヤの心も、罪への怯えで埋め尽くされた。
どれほどの間口付けを交わしていたのか、終わる頃には、石蒜の決意は燃え尽き、サヤは恐怖に震えていた。
逆らえない……、やっぱりご主人様が私の最後の助けだった。
その場に、跪く。それは屈服の刻印、忠誠の証。どんな言葉よりも雄弁に物語る。
ごめんねみんな、ごめん……。俯いた顔から、しずくが数滴、地面に落ちた。
鳴鳴 > 「……石蒜、サヤ。もういいんだ。君が苦しむ理由なんてない。
君は真人だ、全てを解き放たれているんだ。
でも、この世界の人とあろうとするなら、君は永遠に苦しみ続けるだろう。
だけど、だけど……僕の傍にいるなら、僕は全てを赦そう。君の、したいことをするといい。
僕は、君を責めたりなどしないよ。君を悪と罵ることもない。
……僕は最初から、君を助ける/弄ぶために、その手を差し伸べたのだから」
助けると、そう囁いた。
崩れ落ちる石蒜とサヤを赤い瞳で見ながらそう言った。
九万里の彼方、地上で生きる人間とは、あまりに遠い世界。
空の遥か向こう側から見れば、この地上は全て同じ地平。届かない世界。
鳴鳴は慈しみを込めるように、彼女の頬を撫で、抱きしめる。
跪く彼女の頬を撫で、瞳を見て、涙を見て。
「……君の傍には、僕がいるから。ずっと、ずっと。未来永劫。
この宇宙が果てるまで。この宇宙が再び闇に閉ざされるまで。
いや、宇宙が何度爆ぜて終焉し、新生しようとも。
僕は、君の傍に居よう。
二度と再び、千の異形たる僕の傍から離れないことを、宇宙に祈ると良い。
君が、そう望む限り、僕はそうしよう。
僕は這い寄る混沌――ナイアルラトホテップだから。
そして。
君の、鳴鳴だからね」
涙する彼女を抱きすくめて、全てを赦すように。慈母のように。そう言った。
「……さあ、これで全ては整った」
恐らく、諦め、怯える石蒜/サヤには聞こえない声で、鳴鳴は呟く。
「舞台は整った……再び、石蒜とサヤは僕の手に返った。
僕の演出のままなら、きっと全ては悲劇に終わるだろう」
空を見上げる。遥か星の彼方。フォーマルハウトの果てから来るものへ、あるいはオリオンの向こう側から来るものを見上げる。
宇宙の深淵、あらゆる全てを嘲笑う自分を見上げる。
「……だけど。僕は期待してしまう。一度、僕を振り切った君なら。
もしかすると、君ならば――」
「まだ君の心が、真に、真に、諦めていないのなら。君達の心が、真に諦めないのなら。」
「……嗚呼、楽しみだ。その時は、近い」
「アハ、アハハハハ……!」
そして、鳴鳴は、嗤った。
嗤ったのだった。
石蒜 > サヤ、ご主人様ですよ。
ごしゅじんさま?
そう、私達を受け入れてくれる唯一の人。私達と共に居てくれる唯一の人。
だめだよ、わたしはわるいこだから、みんなからきらわれる。
心配ありません、私達の全てを赦すとご主人様は仰りました、ご主人様は嘘をつかない。ずっとずっと一緒なんですよ。
でも、うねびたちはどうするの?たすけてくれるんじゃないの?
彼らは……所詮人間です、人間を辞めた私達やご主人様を理解できませんよ。
でも、ともだちだよ?
私達に友達なんか居ません、居るのはご主人様だけです。
そっか、さみしいな。
寂しくありません、ご主人様が居てくれますから。
そっか。ねむくなってきたから、ねるね。おやすみ、しーしゅあん。
おやすみサヤ、二度と起きないことを願いますよ。その方があなたには幸せでしょう。
石蒜 > 「……はい、ご主人様。石蒜はいつもあなたのお傍に……。」かつての、ご主人様に忠誠を誓った石蒜が、そこに居た。
いや、サヤすらも従えた今はの石蒜は、もう揺るがないだろう。そういう意味では悪化している。
世界から拒絶されたが故に、世界を拒絶する。全てを無意味無価値と笑い、享楽のタネとしか見ない。
這い寄る混沌の眷属にふさわしい存在が、また生まれ直した。
鳴鳴 > 「……ハハ」
混沌の眷属がそこにいた。
鳴鳴の導くままに、鳴鳴の望んだままに。
一度は揺らぎ、人の情に絆され。
人として、生きる道を、人と共に選んだ少女は。
再び鳴鳴の手中にあった。
「……おかえり。おやすみ。石蒜、サヤ」
「僕の、玩具。でも、愛してるよ」
彼女に寄り添い、身体を密着させながら、鳴鳴は笑う。嗤う。
石蒜を、サヤを、彼女を救おうとする者たちを、世界を、そして自分さえも嗤う。
「……道なんて、行こうとすればどこへでも行ける。君は真人だ。
九万里を翔けることも可能だ。僕に寄り添うことも、離れることも。
どんな人生を歩もうとも、どこへでも行ける。極大にも、極小にも。
……さて、それに君が気づくかどうか。それで全ては変わる。
期待しているよ、石蒜、サヤ。
僕は、自分の予想を裏切られることが、大好きだから。
一度はそうして見せたんだ。だから期待しているよ――」
「――君達が、本当に僕を喜ばせてくれることをね」
高らかな哄笑が響く。打ち捨てられた祠に、鳴鳴の嗤い声が響く。
その顔の半分は闇に染まり、混沌が溢れ出していた。
「ありがとう! そしていよいよだ! 君達が石蒜とサヤを得るか、それとも――」
「僕の悲劇が成就するか、どちらかだ!」
「アハ、アハ、アハハハハハハ!!!」
嗤う。月に吼えるものが、嗤っていた――
ご案内:「破壊された祠」から石蒜さんが去りました。<補足:黒髪に漆黒の巫女装束の少女、肌は褐色。【待ち合わせ中】>
ご案内:「破壊された祠」から鳴鳴さんが去りました。<補足:道服の童女、邪仙/元ロストサイン>