2015/07/04 - 22:31~02:08 のログ
ご案内:「常世公園」に『室長補佐代理』さんが現れました。<補足:汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。公安委員会の腕章をつけている>
『室長補佐代理』 > 深夜。宵闇に沈む森林公園。その片隅。
誘蛾灯の微かな明かりだけが照らすベンチに、その男は座っていた。
それなりに広い通路を挟んで、等間隔に並ぶベンチ。
そのうちの一つに腰掛けて、男はただ瞑目している。
『室長補佐代理』 > 深くベンチに腰掛け、大きく緩やかな呼吸を繰り返し、胸元には銀の指輪の輝く左手を置いている。
パっと見ただけなら、それは眠っているように見えるかもしれない。
それは半分は正しい。
確かに男の意識は曖昧である。
瞑目し、想起を繰り返しているその様は、夢想と呼ぶにふさわしい。
『室長補佐代理』 > 男は、瞑目していた。
男は、想起していた。
深く深く、目を瞑り、意識を沈めながら、問いかける。
声に出さず。思いに現さず。
ただ、問う。
『室長補佐代理』 > 問う先は、既にそこにいる。
向かいのベンチ。そこに佇む影。
気怠げに背を曲げ、膝がしらに両肘をのせたまま、だらりとこちらを覗き込む影。
瞑目する男にその姿は見えない。
だが、それは確実にそこにいて、確実にこちらを見ている。
そういう、漠然とした確信だけが、男にはあった。
『室長補佐代理』 >
「」
『室長補佐代理』 > 声なき声で問いかける。
声に出さず、ただ問う。
向かう相手の相貌を浮かべず、問う。
ただ、問う。
何もあらわさず。何も示さず、問う。
答えを求めればそれは答えを与えるだろう。
だが、その答えにすら、『相手』は『対価』を求めるに違いないのだ。
ご案内:「常世公園」にヨキさんが現れました。<補足:人型/黒髪金目/197cm、拘束衣めいた長衣>
『室長補佐代理』 > 男は問う。問わず、物言わず、物思わず、ただ、問う。
その有様をまるで嘲笑うかのように、影はじわりと滲み……汚濁に塗れた、笑みを返す。
見えてなんていない。聞こえてなんていない。
それでも、わかる。
それでも、感じる。
『奴』は……嗤っている。
『室長補佐代理』 >
【それでも、俺は奪い続ける】
『室長補佐代理』 > 誰ともつかないその囁きを『聞き届け』、男は目を開く。
当然、いるのは自分だけ。
向かいのベンチにも、誰もいない。
ただ夜の公園で休んでいる、自分がいるだけ。
「それでも、か」
ただ、呟く。
それこそ、誰にともなく。
ヨキ > (ぺた、と足音。裸足が土を踏む音だ。両手にブーツを片方ずつと、左手に丸めたストッキングを握っている。
片側のブーツの高いヒールが根元から折れて、歩くたびぷらぷらと揺れている)
「……参ったな。とんだ足止めだ」
(広い公園では、小さな呟きも響き渡ることはない。
――やがてベンチに背を預けた姿に気付く。立ち止まり、しばし見遣る。
腕に腕章らしきシルエットが見える。おそらく制服、と判断はそれっきり。
ゆっくりと歩み寄る)
「…………、君。どこか身体の具合でも?」
『室長補佐代理』 > 話しかけられれば、ゆっくりと男が振り向く。
ベンチに座ったまま、見返すその瞳は……伽藍洞を思わせる黒瞳。
じっとりと、汚泥を思わせる笑みを浮かべて、男は口を開いた。
「軽い貧血みたいなもんさ」
皮肉気に嘯いて、左肩だけを竦める。
中指に嵌められた銀の指輪が、妖しく輝いた。
「そういうアンタは池にでも落ちたのか?」
両手に持っているブーツを一瞥して、そう尋ねる。
ヨキ > (街灯の光をてらてらと照り返す金色の瞳。その瞳孔は楕円にひどく拡がって、相手を見ている。瞬きの少ない両目。
閉じていた口が開くのに併せ、表情を見定めた様子で応える)
「貧血か。……体調といい、戦闘といい、この島の者たちは貧血の原因が多すぎて判然としない。
病弱な娘も君のような男も、等しく血を欠かしているらしい」
(問い返され、両手のブーツを見下ろす)
「これか?これは――踵が折れたのだ。ヨキは池とは無縁だからな。
苛立ったヨキが木を蹴った。踵が刺さり、折れて、このざまだ。
ヨキには踵がない。歩きづらいことこの上ない」
(足を持ち上げる。
背伸びをしていたように見えていた足は、元来がその形であるのだった。
犬の足をそのまま人間の骨と肌で仕立てたような、歪な裸足を晒す)
『室長補佐代理』 > 「血気盛んとは無縁な性質でね」
金色の輝きを飲み込むように、光彩の境目すら知れぬ黒が細まる。
街灯の疎らな光が、両者の顔を左右対称に照らしだす。
そして、男はふと、言葉を続ける。
「その足から察するに……『異邦人』かアンタ。
遠路はるばる御苦労なこったな」
仕事の関係上、男は『そういう事』にはそれなりの知識がある。
造詣が深い訳では決してないが、一目見て当たりをつける程度は何とかできる範囲であった。
「生憎靴職人じゃねぇんでそいつをどうにかすることはできねぇが……もし、保護を求めるってんなら一応請け負うが?」
そういって、左手で右腕につけた腕章……公安委員会の腕章を指差した。
ヨキ > 「ほう?……君が腕章の名のもとに拳を振るう人間でなくて安心したよ。
特に、異邦人を疎む類の」
(安心したと口にしつつ、その声は至って平坦だ。
保護という語に、首を振って)
「いいや、保護は結構。委員会にはもう、随分と世話になった」
(顔を近づけ、公安委員会の腕章と、相手の顔とを見比べる。
その様相を漸う視認して顔を引き離す折、すん、と小さく鼻を鳴らした)
「ヨキだ。学園で教師をやっている。……君、公安か。やっと判ったぞ。
腕章を着けて深夜にひとりとは、ヨキが労うべき公務の途中かね?」
『室長補佐代理』 > 「振るおうにも片腕なんでね。時と場合を選ぶだけさ。
しかし、アンタ教師だったのか。『異邦人』でやるには面倒が多そうな稼業だな」
おどける様にそういって、また左肩だけを竦める。
みれば、男は右手はずっとポケットに突っこんだままで、ほとんど動かしてもいない。
「公務中といえば公務中だな。
今まさに保護を断るヒールの折れた教師に任意同行の提案をしているところだからな。
まぁ、他には今のところさして目立った仕事はねぇな」
ヨキ > 「ここまで来るのに、随分と時間を掛けたものだ。だからヨキは“教師”であらねばならん」
(彼の右手に目を落とし、)
「……それは不具か?それとも、君の異能によるものか。
委員会にも、その構成員にも、秘するものごとが多いらしいな」
(大きな唇が、ようやく薄い笑みを見せる)
「目立たぬ仕事をこなすのが、君ら公安の仕事なのだろう?
例えばヨキのような余所者が……あるいはヨキよりか弱きものたちが、“時と場合”に遭遇せぬように」
ご案内:「常世公園」に一樺 千夏さんが現れました。<補足:2m近い赤髪のサイバーエルフ 右腕がゴツイ 現在、血が乾いて黒く変色したジャケットを着用中>
一樺 千夏 > 暗がりに火が灯る。
それは一定の明滅を繰り返し、近づいてくる火だ。
外灯の下に出れば身の丈2m近い大柄な女性がタバコを吸っているだけなのだが。
左手にコンビニ袋をぶら下げて、悠々と歩いてくる。
「あらやだ、深夜の逢引だわ」
声に出た。
一樺 千夏 > 煙を吐く。
「お邪魔みたいだから退散しましょうかねー。
ったく、蒸し暑くて嫌になるわ。
人気がなけりゃ、少しは涼しいかと思ったんだけどねー」
ご案内:「常世公園」から一樺 千夏さんが去りました。<補足:2m近い赤髪のサイバーエルフ 右腕がゴツイ 現在、血が乾いて黒く変色したジャケットを着用中>
ヨキ > (耳に届いた女性の声に振り返る。不思議そうな顔をして、合い挽き、と呟いて)
「……ああ、逢引。如何にも」
(真面目くさった顔で、はっきりと肯定した。ブーツを持ったままの両手を緩く広げて)
「そうだ。ヨキが彼に声を掛けたのだ。
次は君がこのヨキの獲物になるかね?」
『室長補佐代理』 > 「邪魔ってこたぁねぇが、逢引っつうには少し色気のない出会いではあるな」
ぐっと背伸びをしながら立ち上がって、そう呟く。
「目立たず仕事出来てりゃいいんだけどな。実際はそうもいかないってことも多いのさ。
仕事ってのは往々にして、『時と場合』を選ばないもんだからな」
教師の笑みに薄笑いを返しながら、男は教師に近寄り、一枚の紙切れ……名刺を教師に渡して嘯く。
正確には名刺でもない。
何せ、名前が書かれていないのだ。
名刺のような何かとしかいえない何かだ。
公安委員会調査部への連絡先だけ簡潔に書かれている。
「『時と場合』はそっちが選んでいいのさ。俺達は一応これで、行政機関の一部だからな」
ヨキ > (ああ、と残念そうに声を漏らす)
「……機を逸してしまったか。次は彼女との逢引を図らねばなるまいよ」
(歪なかたちの指先が、名刺を挟むように受け取る。
表裏と引っ繰り返して文字を探し、懐へ収める)
「ふ。これが君の自己紹介か。
……良かろう、ヨキにもまた“名刺”がある」
(言って、空いた指先が外套の襟に隠れた首に触れる。
金属をなぞるような、ごく微かな音がして、)
「――これがヨキだ」
(弧を描いて差し出された人差し指と中指に、いつの間にか鉄の花弁が挟まれている。
花弁は指の中で有機物めいてふわりと広がり、小花を象った。
金属のテクスチャを持つそれは、紙のような柔らかさでいて、熱くはない。
宿っていた体温ほどの熱が、夜気に晒されてすぐに冷えた。
冷えると同時、花は柔らかさを失う。作り物の鉄の花が、相手の手に残る)
「学園では工芸を。……しかし創るときに異能は使わん。
“我ら人間”には、異能よりも雄弁な手わざがある。
……それではね。公安の君、夜の眠りは大事にしたまえよ」
(踵を返す。ゆっくりと公園を後にする)
ご案内:「常世公園」からヨキさんが去りました。<補足:人型/黒髪金目/197cm、拘束衣めいた長衣>
『室長補佐代理』 > 受け取った鉄の花弁は手のうちに丁度おさまり、銀の指輪にふれて冷涼な金属音を鳴らす。
夜風に流れる音とその技に目と耳を傾けるうちに、その教師は既に踵を返していた。
男は一瞥だけ視線でそれを追い……静かに、笑った。
「教師らしい手厳しい指摘だな」
もしかしたら、あの教師……ヨキにはその『眠り』の意味も、よくわかっているのかもしれない。
内に潜む何者かの息遣いすらも。
『異邦人』には、そういうモノがいることも珍しくはない。
ならばこの邂逅も、偶然に見せかけられた何かしらの必然なのだろうか。
「なんてな」
確証も意図も理由も意味もない、予感という名の妄言にも近い推測を戯言のように脳裏で転がして、男もまた公園を後にする。
以前なら、らしくないと一笑に付すのかもしれない。
だが、それで済ませた結果、『知らずに踊った』事例の直後では、その自嘲の論すら説得力にはなりえない。
そこから先は既に堂々巡りでしかないが、巡る当人は巡ることには意味を見出す物である。
自分も所詮はそれに過ぎないのかもしれないと、男は苦笑した。
ポケットの中に転がる鉄花が、徐々に体温の熱を帯びる。
強いていうなら、恐らくそこに残った熱だけが、今は唯一信憑性に足りえる『何か』なのだろう。
心中でそう一人ごちて、男もまた、宵闇の中へとその身を滲ませていった。
ご案内:「常世公園」から『室長補佐代理』さんが去りました。<補足:汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。公安委員会の腕章をつけている>
ご案内:「常世公園」に『室長補佐代理』さんが現れました。<補足:汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。公安委員会の腕章をつけている>
ご案内:「常世公園」から『室長補佐代理』さんが去りました。<補足:汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。公安委員会の腕章をつけている>