2015/07/06 - 23:49~00:16 のログ
ご案内:「歓楽街・路地」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>
畝傍・クリスタ・ステンデル > 夜。歓楽街の路地――弾を抜かれ折り畳まれた上下二連式の散弾銃を抱え、橙色の少女はあてもなく彷徨う。その足取りは重い。
畝傍は苦しんでいた。過去の記憶――彼女が異能に目覚めた『あの日』よりも、さらに前。
某国で身体強化実験を受けた畝傍は、狙撃手として多くの命を奪っていた。
無論、それこそが狙撃手の任務であり、そこに余計な感傷の入れ込む余地はない。
当時の畝傍がそれに対して何の感情も疑問も抱かなかったのも事実だ。だが、今は――。
「…………ボクは、ひとごろしだ」
そんな言葉が、小さく漏れる。
畝傍・クリスタ・ステンデル > しばらく歩いていると、近くに誰も座っていない手頃なベンチを見つけ、腰掛ける。
誰に伝えようとするでもなく、畝傍は一人宙を見上げながら、うわごとのように呟き続ける。
「ボクはひとごろしだ。ヒトを撃った。あのときもたくさん撃って、ころした……。いまでも……」
畝傍は悔やんでいた。友達を救いたいと言いながら、一番救いたいと願っていた少女――石蒜に一度でも銃を向けた、その矛盾。
あの時、畝傍がそうせざるを得なかったのは客観的にみれば確かであろう。
しかし――そのような手段をとることでしか彼女に手を差し伸べられなかった自分自身を、嘆いていた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「そうだよ。ボクはひとごろしだ……ボクは、ひとごろしだ……だから、ボクは、ボクは……」
自らに言い聞かせるように、ただ繰り返す。
血に塗れた足跡。汚れきった手。
これまでの生涯の中で踏み越え、これからも築き上げてゆくのであろう屍の山への想像が、
畝傍の頭の中で絶え間なく渦巻く。そして、俯き。
「……しあわせになっちゃ、いけないんだ。そう……だよね……」
誰に問うているのか、自分でもわからない。ただ、そんな気がしていた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 俯いたまま瞳に涙を浮かべ、畝傍はさらに呟く。
「ボクのチカラは……罰なんだ。女神さまがボクにあたえた罰なんだ……きっと。ボクの正気を全部ささげるまで……ボクの罪は……ゆるされないんだ」
『炎鬼変化』<ファイアヴァンパイア>。炎を司る、畝傍の異能。
そして、その異能を発動する代償は――畝傍自身の『正気』。
忘れ得ぬあの日、この異能が発現したことで、畝傍の精神は狂気に陥り、それは現在も持続している。
畝傍は心のどこかで、この代償を自らの罪に対する罰と結論付けようとしていた。
冷たい夜風が、畝傍の肌に吹き付ける。俯いたままの畝傍の瞳からは涙がとめどなく溢れ、頬を伝って流れた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……ごめんなさい。ごめんなさい。ゆるしてくれるなんて、おもってない。ボクは一生ゆるされないって、わかってる。でも。ボクにはこれしかないんだ。これしかできないんだ。ボクには。ボクには……」
しばらく涙し続けた後、畝傍は。
「……もう、かえらなきゃ……」
ゆっくりと立ち上がり、学生街方面へ向け、また重い足取りで歩き出す。
「……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」
歩きながら、何度も、何度も――繰り返す。彼女は狂っていた。
そして――狂っていながら、良心を完全に失ってはいなかったが故に、
畝傍は罪の意識に苦しめられ続けているのだった――
ご案内:「歓楽街・路地」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>