ご案内:「風紀委員会本部会議室」に
五代 基一郎さんが現れました。<補足:夏用スーツ。>
五代 基一郎 >
委員会街、風紀員会の本部にある会議室。
そこを貸切り、書類のファイルやら機材の調整をしつつ
今回呼び出した人間を待つ。
テスト期間でもあることも、上半期報告会が終わったこともあり
使用の予定を入れるのは楽だった。
ご案内:「風紀委員会本部会議室」に
レイチェルさんが現れました。<補足:金髪眼帯の風紀委員の少女。身体の一部を機械化したダンピール(ただしハーフエルフと吸血鬼の子)。元魔狩人。>
レイチェル >
「よっ」
その人物は、そう時間の経たない内にやって来たことだろう。
普段通りのクローク姿で、彼女は会議室へとやって来た。
「何とかテスト勉強終わらせてきたぜ、先輩」
小さく手をあげて、声をかける。
五代 基一郎 >
「悪いね、こんな時期に」
待ち人が来れば、席につくように促す。
その席には厚みのある書類ファイルが置かれていた。
「まぁ勉強で不足分あったら手伝うよ。
成績どうこうするのは不正だが、勉強の手伝いくらいはできる」
そうして自分も同様のファイルを手にして捲り始める。
「それじゃ、2年前のことを含めてロストサインの話をしようか
主に幹部連中のことをさ」
レイチェル >
「ま、手を煩わせることはないぜ。テスト期間になって慌てないように、コンスタントに勉強は
してきたからな」
席につくように促されれば、クロークを翻してどかっと座る。
手元の書類を見やれば、手を添えてぱらぱらとめくりつつ、そんな風に返す。
「ん、よろしく頼むぜ、先輩」
レイチェルはまだ常世学の一年生だ。
ロストサインのことに関してはあまり詳しいとは言えない。
殆ど彼らのことを知らないと言ってもいい。
真剣な面持ちで、五代の語が継がれるのを待つ――。
五代 基一郎 >
「それは何より。それじゃ始めようか。」
そういって手元の書類束の最初の方から補足するように
話し始めた。成り立ち、そして……
「正式に誕生したのはいつとはわからない。
”ロストサイン”という違反部活、犯罪組織はあった。
この学園社会が出来てからとも言われている。
長い間、そいつは存在していた。外の組織とも繋がりを持つ、秘密結社といったほうがいい。
故に本来派手に動くような組織ではなかった、と推測されている。
これは所持していたロストサインの門が関わっていると見られているな。
それが何の門であるかは、公的なデータはない。
さておき数十年単位で影で動いてきたわけだから、それなりに隠密性を重視していたらしい。
だが近年組織の肥大化等もあってそれらに綻びが出始める。
それが2年前のこと。末端と一般生徒であった否支中活路とのいざこざ乱入により
遭遇戦から組織戦に変わっていった。
ページをめくってくれ」
ページを捲れば出てくるのが”2年前”の否支中活路の
学生プロフィールデータ。履歴書等にも近い。
「否支中活路。現在22歳。日本人。異能は”破門”(ゲートクラッシャー)等と呼ばれている。
能力もあって、彼が切っ掛けとなり、乱入を招いたことでロストサインの門は破壊。
それを皮切りに組織は崩壊して今って感じだな。」
まぁ、ロストサイン自体の話の切っ掛けだから今は特に重要ではないな
こいつはとページを飛ばす。
「こいつについて何か質問はある?今包帯男で、絶賛生きてる話とか。
”ミイラ男”とか”シュラウド”とか”不死身の”とか呼んでるけどさ
まぁ、戦うわけでもないし」
レイチェル >
「成程、秘密結社……だった訳か。ま、組織がでかくなりゃ統制も取り辛くなるのは当然だな。
綻びが出ない方が不自然ってもんだぜ」
へぇ、と頷きつつ、五代の言葉に従ってページを捲る。
「成程な、否支中活路。名前を聞くのは初めてだが……こいつがきっかけ、か」
プロフィールの細部まで目を通すが、尋ねられれば首を振る。
「いや、まぁ事の始まりは分かった。先輩の言う通り、この男に関しては今これだけ
知ってりゃ十分だろ。戦う訳でもねぇなら、尚更だ」
そう言って、次のページを捲る。
五代 基一郎 >
「世界規模ってなら話は別だったろうけどさ。
まぁ狭いからなぁこの島、広いけどさ」
そいつには話通しておくから、とも伝えて起きつつ。
次のページについて説明する。
次のページ、ロストサインの首領にしてトップ
全ての者を従え、マスタークラスをおく者
「ロストサインのリーダーでありボス、グランドマスター。
すまないがこいつに関しては一切データがない。
データがないし、姿もわからない。
ただ2年前に誰もその存在を確認できなかったものだから
グランドマスターがいる、というのは組織を纏めるための方便であり
実際は存在しなかった、と見るのが妥当とされている。
あの時も姿を現さなかったし、今も出てきているわけじゃない。
知らざることは語りえないんだよ。
データがあるのは次のマスタークラスからかな」
話せることがなくてすまないな、としつつ。
ページをめくることを促す。
レイチェル >
「実際は存在しなかった可能性、か。その推測が正しいものとすれば、
下に向けて頭の存在を信じ込ませてた存在が居る、若しくは居たって訳か。
そいつは興味深い話だな。まぁ、現状からじゃ判断しきれねーか」
そんなことを呟きつつ、ページを捲る。
「マスタークラスね、こいつらとは色々関わることになりそうだから、しっかり聞いておかねーと
いけねーな」
五代 基一郎 >
「マスタークラスは8人いたとされている。
正確には遭遇したのが8だか、情報があるのは8というか
まぁハッキリはしないがその半数は現在消息不明だ。
”葬戯業”エンバーマー、折神 直
”調慄者”ネゴシエイター
”戦創屋”ウォーモンガー、ヴェルミア・オーリス
”時刻剽”デイウォッチ、オーランド・ウィルマース
以上4名が2年前に消息不明、死亡した者達だ。
まずはこの4名からだな。」
そしてちら、とページを捲ればまず出るのが
「”葬戯業”エンバーマー、折神 直(おりがみ なお)
専攻科目等など在学時のデータは存在するが、その他
特殊な技能については不明。
ただ2年前に直接戦闘した否支中活路の話等から消息不明とされた。
二つ名等からネクロマンサーか呪術師ではと見られているが、現在じゃ確認のしようもない。
似たような奴を見かけた、と報告はあるが実際はどうなんだかなというのがさ。」
書類には身体検査の数値、または専攻していた科目等がある。
それらだけとれば、優秀な生徒だったのだろうが。
レイチェル >
「ネクロマンサーか呪術師、ね。面倒だな、そいつは。搦手使いそうな奴は好きじゃねーぜ」
死霊術師や呪術師ならばかつて交戦したことがある。
どちらも、かなりの苦戦を強いられた記憶がしっかりとレイチェルの脳には焼き付いている。
果たしてこの男はどれほどの者なのだろうか、とプロフィールを見ながら思案する。
マスタークラス、と言うのであれば相当なのであろうが。
何にせよ、警戒しておく必要がある一人なのには間違いない。
「成程、成績も優秀だった訳か。もしまた表に出てくることがあれば、の話だが、
余計やり合うのが面倒臭そうだぜ」
まず正面から殴りあってくるタイプではあるまい。
ロストサインと関わる以上は、こいつの存在は常に留意しておく必要がありそうだ。
五代 基一郎 >
「まぁ消息不明の一人だから、いるかもいなかも程度に。
ちょっとどころではなくデータが少なすぎるんだよな。
現状動けるのは少ないから、そこも考慮してね。
ほら今だってこの折神が何かして騒ぎになってるってわけじゃないでしょ。」
実態として出ていないなら、考慮はしなくていいというような言い様で済ませる。
実際未然に防ぐにしても、身構えすぎて別のところから脇腹刺されたら本末転倒だ。
「次は”調慄者”ネゴシエイター……こいつは交渉術や悪魔学を力とするマスターだったようだ。
いや、伝聞ですまないが当時公安の上の方から直接な。
詳細は一切伝えられなかったが、対処したとは聞いた。
どこが、とは聞かなかったが出来たというのだから出来たのだろうってさ。
公安のそういう時に動く部署が動く、ということはそういうこと……というわけ。」
レイチェル >
「ま、それでも用心しておくに越した事はねぇだろ。消息不明とはいえ、いつまたひょっこり顔
を出すか分からねぇ。呪術師だとか、ネクロマンサーだとか、そういった輩ってのはどうにも
しぶといイメージがあってな」
個人的な経験に基づいただけの話だが、と付け加え。
そしてこれ以上は見る必要は無いだろうと判断し、ページを捲る。
「交渉術に悪魔学、か。伝聞なのは仕方ねぇだろ。何たって秘密結社だったんだから。
特に何か文句言う気もねーよ。こういった情報を教えてくれるだけで十二分だぜ、
感謝してる。悪魔ってんなら一応オレとしては慣れた相手ってとこだが、対処したってんなら
まぁ……やり合うことは無いかもな」
そう言って腕を組み、次のページを捲る。
五代 基一郎 >
「ただ、これも忘れないでほしいが
と、見られているだからさ。まぁ後でいうけどザデルハイメスのような奴もいるんだ。
まだ何かしらでいる、というのは否定できないけどさ。」
ページを捲れば次に出てくるのが学園での地位が教師の男性。
異能、行使可能な魔術等の記入。
そして二つ名と顔写真にその名前。
「”戦創屋”ウォーモンガー、ヴェルミア・オーリス。
学園以前の経歴は不明だが、まぁ外では傭兵をやっていただろうことは間違いない。
ただ戦争が好き、というよりそれに民間軍事会社等組織の経営者、が加わった厄介な感じかな。
こいつにより勧誘されて教育されたロストサインの兵隊も結構にたようだ。
そのせいで2年前だいぶ苦しめられたからな、こいつには。
ただ当時引き入れた人間に寝首をかかれて死亡とある。
死骸等の確認はされなかったが、当時率いていた軍団や
指揮系統が乱れたことから推測される。
問題があるとするなら、後のウィルマースと同じく
奴が教育した兵隊等がまだ生きてるってところか。
死んだこいつ自身より、こいつの部下やらと遭遇する可能性は高い。」
レイチェル >
「オーケー、オーケー。頭に入れとくぜ……で、こいつは成程、教師、ときたか」
そう言って、次のページに目をやる。
教師、という記述を見て、胸の下で腕を組む。
「良い兵を育てるだけの力があった男、ってことか。そいつの教え子が健在って
んならまぁ、厄介なことこの上無いな」
傭兵としての技術や知識を持っている者達がそれなりに居るということだろう。
楽しくなりそうだな、などと心の片隅で思考を過ぎらせつつ、レイチェルは次のページを捲った。
五代 基一郎 >
「厄介と言えば次のヤツも厄介でな」
ページを捲れば現れる男の顔写真と名前。
前半のトリ、最後は
「”時刻剽”デイウォッチ、オーランド・ウィルマース
こいつは当時鉄道委員会の運行管理をしていた。
そのせいで2年前の制圧作戦のときに列車等の運行麻痺から足の軒並みを狂わせられた。
時間関係の広域魔術だった。ヤツ自身相当な高位の魔術師だったんだが
作戦中に所属が密告されてな、内部の人間から。
その際に当時の執行部役員、俺の部下を”一人”送り込んでさ。
そのページに挟んである資料の奴ね。
まぁ戦闘どうのはさておきその際に死亡、遺体も確認された。」
ウィルマースの手前に挟まれた一枚の資料
そこにはアルベールという名前と、出身地であるフランス
以外異能も魔術も表記されていない資料。
生徒会執行部役員の青年の顔写真があった。
金髪、細目であり上げられた片目から覗く翆眼
押されている印は”消息不明”
「厄介なのはオーリスと同じく、その後だ。
ヤツの工作した鉄道等が今も残っている。
ロストサインの元構成員らが使っていると見られているんだ。
俺らはそれを”ウィルマースの遺産”と呼んでいて、今も捜査している。」
ご案内:「風紀委員会本部会議室」に
虞淵さんが現れました。<補足:黒髪黒瞳、筋骨隆々、大陸風の大男>
レイチェル >
「ま、厄介な奴らしか居ねーだろうな……」
はぁ、と溜息をついてから、大きく伸びをするレイチェル。
「そいつはまぁ……ご愁傷様、だな」
その報告を聞きながら、資料に目を通す。
アルベール。当然だが初めて聞いた名前だ。
憶測だが、生徒会執行部役員と言えば、それなりの力を持っていたのだろう。
そんな男が、このような結末を辿ったのだ。
再び腕組みをし、レイチェルはうーむ、と唸った。
「ウィルマースの遺産、ね。成程、奴らはそういう遺産を色々蓄えこんでいる訳だ。
確かに、厄介だぜこいつは」
これから風紀が、公安が、常世学園が、挑まなければいけないのはこのような相手なのだ。
更にページを捲っていく。
虞淵 >
突如、会議室のドアが蹴り開けられる
「よォ、邪魔するぜェ?」
ぬぅ、と突然現れたその男は、風紀委員ならよく知るはずの顔
そして、こんなところに現れるはずのない顔だろう
「お、知ってる顔がいるな…ちょうどいいぜ。
なァオイ、川添ってヤツ知らねェか?学園の生徒だと思うんだけどよォ。
風紀委員なら詳しいだろ?」
男は悪びれもせず、言葉を一方的に投げかけてくる
五代 基一郎 >
<レイチェル
「アルベールは俺が執行部員の中から選抜した特筆すべき者達……
”エキスパート”だった。奴が出たのなら勝利は間違いないだろうが、アルベール自身も消息がつかめないのがな。
ウィルマースの遺産と共に今も捜査中ってところだな。
そういった点じゃ、連中もまだ秘匿している何かを持っているのかもしれない。
壊滅しただろう後でもな」
>虞淵
川添……川添。
この常世学園でその名前を持つ者は一人しかいない。
ルシファー川添。GTR乗り……乃ち川添孝一。
「あぁ、川添?川添……ヤツなら生活委員所属だから
生活委員本部の方で問い合わせるかのほうがいいんじゃないか
今何してるか、なんてのは流石に監視しているわけじゃないからわからんよ」
特に乱入者について、驚きもせず続ける。
レイチェル >
「捜査中、とは言ってもな……ま、見かけたら伝えるとするさ」
言葉を濁しながらも、五代にはそう返し。
「動物園の檻《おうち》を探してんならここじゃねぇぜ、虞淵」
蹴り開けられたドアに肩を竦めたレイチェルは、溜息をついてファイルをぱたりと閉じた。
この男、風紀委員の本部にずかずかと入って来たのか。
呆れた男である。ここまでの警備は、どうなっているのだろうか。
まぁ、想像に難くない。
「川添……ね。見知っちゃいるが、別に今何処に居るとかは知らねー」
五代と同じく、特に驚いた様子は無いのだが、呆れた様子で肩を竦めたまま、
そんな風に答える。
虞淵 >
「クックッ、相変わらずだな風紀の女。
オマエはあの女とは違っていきなり喰ってかかってこない分、頭ァ切れるよな」
愉しげに嘲笑って
「ふゥん、アイツ生活委員だったのか、見かけに寄らねェもんだ。
まァいいか、それがわかっただけでも探しやすくなる」
廊下から喧騒は聞こえない
警備にあたっていた不幸な風紀委員はおそらくあっさりとナックダウンしていることだろう
レイチェル >
「てめーにはいつか後輩の借りを返す。だが今はその時じゃねぇ、満足したならさっさと帰るこったな。
悪ぃがここにはバナナの取り置きも無いんでな」
そう言って、虞淵が蹴り開けたドアを指さす。その表情は鋭く、虞淵を睨んでいる。
が、虞淵の言う通り、動く気配は無い。
「五代先輩、警備の奴らをもちっと扱く必要があるかもしれねーぜ」
やれやれ、と首を振ってそんなことを提言する。
まぁ、あの男相手ならば仕方の無いことだろうが。
風紀本部の警備をしている者達があまりにもあっさりとやられていることに
内心呆れているのは確かだった。
五代 基一郎 >
>レイチェル
「まぁそういうことで。俺は今主にそいつらをって感じだけど」
ファイルを一度閉じてさてどうするかと考えながら
まぁ、それなりに答える。
>虞淵
「まぁそういうことだから。
委員会の本部でやらかすのは”遊び”の範疇超えてるから
お薦めはしないし、人探すだけなら受付とか派出所で十分じゃないの……
一応仕事中だから、要が済んだら正面から帰ってくれ」
どうしたものか、という感じというか
やれやれというような呆れた雰囲気で首の裏あたりを揉みつつ告げる。
正直落第街でどうのというのはいいんだが、委員会本部でやられると
乃ち公権力への暴力や兆戦等にあたる。そこからどうなるか、それがどうなるか
そこまで頭が回らないとは思っていなかったのだが
30にもなって学生の身分で好き勝手やってるピーターパン
に期待するだけ無駄なのだろうかとも思い悲しくもなる。
虞淵 >
「クク、仇討ちするのにもタイミングを見なきゃアいけねーとは、
良い子ちゃんは大変だなレイチェル・ラムレイ」
大仰に肩を竦める
「そうかね、俺として面白い遊び相手がいたらついでに、ぐらいのモンだったんだが。
残念ながらそういう空気でもねェようだ。
昔の風紀委員はもうちょい血の気の多いやつが多かったもんだがなァ」
やれやれ、と首を振って、踵を返す
「じゃあ、また来るぜ。
正面の警備やらせるならもうちょい不意打ちへの機微も持たせておけよな」
ご案内:「風紀委員会本部会議室」から
虞淵さんが去りました。<補足:黒髪黒瞳、筋骨隆々、大陸風の大男>
五代 基一郎 >
「警備はあれでいいんだよ、まぁそれなりにがんばるさこれを励みに。
戦時下でもないんだからガチガチに固めてもさ。
まぁさておき」
適当に指でファイルを小突いてレイチェルの意識をこちらに向ける。
「はいはい、余計な茶々が入ったけど続けようか」
ファイルのページをめくっていく。
先ほどの続きであれば、現在生存または確認が取れている
ロストサインの元マスターへと移っていく。
レイチェル >
「ここでやり合ったら本部がめちゃくちゃになるだろうが……ゴリラよか良い子ちゃんの方が
マシだぜ」
ふん、と腕を組んで、再びファイルに目を落とす。
いずれ一発殴らねば気は済まない。
それに、風紀委員としても、放ってはおけない。
のだが。
時と場所を弁えないレイチェルでは無い。
向こうが引くのであれば、別にそれ以上どうこうする気もない。
満足したのなら、そのまま帰しておけばよいだろう。
放っておいても、また再会することになるだろう。
しかしながら、落第街を飛び出て活動を始めるとは。
ロストサインとは別に、またあれも実に厄介な男である。
「さて、まぁ続きを頼むぜ」
肩を竦めて、五代の方を見やった。
五代 基一郎 >
「では続き。存在が確認されているのは以下4名。
”吸結鬼”ラストライト ウェインライト
”殺刃鬼”ヒトキリ 東郷月新
”失落園”フォールアウト ザデルハイメス
”腐条理”アウトオブゴッド 鳴鳴
だが、ちょっと生きている連中も連中であるので
個々にというより手短に済ませられたり省けるものは省く。」
そう伝えれば、ウェインライトの項目を開く。
ダンピールであるレイチェルからみれば思う所はあるかもしれないが。
「あぁ、この吸結鬼 とかラストライトというのは適当に付けたのだから。
もっといいのが在ったり自己申告があれば頼む。
ウェインライト自身は何か呼び名があったわけじゃないらしいのか
それとも確認されてないだけなのかもだけどさ、まぁさておき。
2年前最初に交戦したロストサインの元幹部で最初に倒された。
魔術や呪詛の飽和攻撃とほぼ自爆に等しい異能を反射させてというものだ。
今なぜか蘇ったが、蘇った後の行動は言ってしまえば社会不適合者に過ぎない……
というよりロストサイン自体の組織やグランドマスターに愛着があったと思える。
特になにか大規模に他人に迷惑かけてるわけじゃないから、ほぼ監視という形になっている。」
続き、と続きを促せば細目の白髪の東洋人が出てくる。
「 ”殺刃鬼”、ヒトキリ、東郷月新。まぁ人間を斬ることが趣味の殺人鬼だ。
生きている連中ではもっとも交戦記録が多い。
多いが故に情報も多い。能見さゆり等からの情報やら
その場に居合わせたものからの情報等あるが
現在は公安の方が対処にあたっている。
こちらから、という事はなくなると思われるな。
任せられるところは任せて行く方針でいこう。
人間できること、時間は限られているしな。」
一応異能や交戦の記録、対処法等の刷新されたデータが
資料として記録されている。収監時に取った身体データもある。
レイチェル >
「ふぅん、成程。まぁロストサインも色々って訳だな」
ウェインライトのプロフィールを見て、顎に手をやる。
なんというか、こう。この人物は、なかなかに、別な方向で
面倒くさそうである。
続いてページを捲る。
「公安が、ね。あいつらには任せてられねー、と言いたいところではあるが、
まぁ五代先輩がそう言うんだったら仕方ねーな」
ふむ、と三度腕を組んでそんなことを呟くレイチェル。
実際、公安の事はあまり信用していない。
知り合いが多く無いのもあるだろうが。
五代 基一郎 >
「そうそう、まぁ侮っているわけじゃない。
ウェインライトについては現場じゃないが見ていたしな。
だが今じゃ元とはいえ学生だ。罪状はさておき。
都市伝説のようだが、まぁ学生生活をしているならというのだろう。
独自の美学がどうのともあるし、面倒そうでもあることはあるけど
逆に言えばそれがある限りは、ともさ。」
ページをめくりながらレイチェルの疑心について
嗜めるように挟む。
「公安も立派な公職だよ。君が見てきた者は、信用ならないかもしれないが
本来裏方だ。風紀が病気に対する処方薬なら
公安はまず日々の健康法というのかな、そういう普段は意識しない
日陰の存在さ。彼らもその存在意義があるからこそ、存在しているし
目にした日向に出てくる一部だけみて判断するのはよくないよ。
彼らも学園の平和のために活動してるんだからさ。
もちろんその平和のために、を間違えた者を見てきただろうけど」
そして、続ける。
恐らく残る二人がレイチェルの今後で遭遇の可能性が最も高い。
その一人が
「”失落園”フォールアウト ザデルハイメス
異世界の呪霊騎士。呪術を操る高位の騎士だ。
2年前行方を眩ませていたが非常連絡局の案件の際に出没。
広報部の人間が遭遇。その次はある部署によって沿岸部で戦闘。
駆逐艦さくいかづちを持って攻撃するも戦闘要員の半壊等を以って痛み分け。
その後傷の修復のために学生を捕獲し呪術的なエネルギー供給源にしていることも確認されている。
先日商店街で遭遇戦、風紀委員3年生・式状猛がその際に死亡したのは通知で出たのを知っていると思うが」
他のページと同じく、プロフィールの次にある戦闘経歴のページにはそう書かれている。
次を捲れば戦闘能力、対処法、予測されうるデータのページに移る。
レイチェル >
「まぁ、一部だけで判断はしたかねーが、今の所、傍から見てるとな。
公安と関わっていくことで今後オレの考えは変わってくかもしれねーし、
変わらねーかもしれねぇ。どちらにせよ、今のところは信用できねー、
信用の判子はまだ押せねーって話だ」
彼の言う通りでもあるが、やはりまだ彼らのことを認めるだけの何かが
レイチェルの中には存在していなかった。
五代の言葉には頷きつつ、ファイルのページを捲っていく。
「式状ね、あの通知はしっかり見てるぜ。ま、やばい存在なのはしっかり把握してる。
が、詳細なデータを見るのはこれが初めてだな。成程……」
真剣な面持ちで、データに目を通す。
これから遭遇する可能性が高いのであれば、より正確にそのデータを叩きこまねば
ならない。
五代 基一郎 >
「論より証拠、百聞は一見にしかずか。
まぁ俺がいうより今後会うかもしれない人間に期待するしかないか。」
外環で出会った第二の新人を思い出す。何かしらあったようではないが。
何かおかしい、という部類ではなかったと思う。
ただ彼女個人を差してどうこうと判断するのもおかしな話だ。
”正義の味方”であるレイチェルと『正義の味方』である彼らとは
また思う所も違うし、どれも必要なことだ。
「ヤツの恐ろしい部分は呪術師、暗黒魔道の使い手としても一流
騎士としても一流、ということだ。
人間の感情的流動をエネルギーとする呪法。
これは奴が傷ついた際に見られたのもあるが、魔力源として
人間を捕獲して活かさず殺さずに搾取し続けるとの報告があった。
加えて確認されているのは2年前、死者を蘇らせて戦わせるネクロライズ。
黄金の螺旋剣を振るう剣術等どれととってもな。
風紀からの報告も上がっているが特に反射の呪法が厄介だ。
それに対処するためでもあるが、いや鳴鳴にもだが
対呪戦闘の場合、ブラスレイターに搭載されたデジタル化された対呪シールドや
搭載されこれから支給するPDA、携帯端末に差し込む
対呪攻性防壁が有効と見られている。沿岸部での戦闘で
ヤツもこちらの世界の機械を活用することが事件後に確認された。
こちらも目には目をだ。」
挟まれているのは小冊子が2冊。
特殊一課等に支給されるPDAの説明書と
梵字で書かれた表紙……経典のような小冊子。
「片方は説明書と、もう片方は攻性防壁の概要書だ。
一応目を通しておいてくれ。それだけで違うから。
この学園、島は神道色が強いが、この攻性防壁は
デジタル化した仏教経典を用いたものだ。知っていればより効果はあるが
知らなくても十分、それをデジタル上に走らせるだけで十分に効果がある。
文字通り破邪顕正。世界中に門が開いたころ以前から
その概要はあったが、デジタル化されて攻性防壁とされたのはその後でさ。
今でも更新が続いていて、それが一番新しい世代になる。
後で説明する鳴鳴やザデルハイメスのような呪術攻撃には結構に通用するはずだ。
特に連中は大きい傷負っても黄泉返る可能性が高い。
本体をどうにかし”尽くす”必要がある。
それには現状じゃ不十分なものが多い。だからこそ、引くべき時は引いて
なんとかできる、とは思わないことを念頭に置いて行動してくれ。」
レイチェル >
「そういうこったな。実際に自分の目で見ないことには完全に信用はならねーし」
昔からそうしようと決めていることだ。
「ま、相手が何をしてくるか、ある程度の情報と、対抗策まで貰ってんだ。
会った時は有効活用させて貰うさ」
それだけ呟いて、感心したように、小冊子に目を通す。
「ま、こいつは時間のある時に眺めとくとするぜ」
そう言って、ぱたりと小冊子を閉じた。
今全てを目にするのは難しいだろう。
「ま、心得たぜ。アンデッドってのはほんと何処の世界でも厄介なもんだな」
肩を竦めて、更にファイルのページを捲っていく。
五代 基一郎 >
「困ったら法世寺の住職、次に紹介するからそこを訪ねてみるのもありだな。
経典類は彼のほうが強い。」
そう脅威を纏めつつ、次のページに移れば
「”腐条理”アウトオブゴッド 鳴鳴。
若年層の女子の姿をした元ロストサインのマスターだ。
道士、仙人、仙術使いとされていたが実際は怪しい部分がある。
仙人というのは元々道教的な教義を体現した存在で不老不死のものだ。
かつての歴史では故に不老不死を求める者達から重用されていたんだが
不老不死、であることは修行の末に得られるものだったり
道教的意味でいえば最終目標がそれだ。
本来修行を受ける過程で俗世や欲望等から切り離して行くんだ。
不老不死となり、世間に出れば様々な悪影響もでるしな。
それがどうも欠如しているが故に何か別の要因で、と
2年前……当時の俺の部下、名を入雲竜という法術を得意とする
道士の”エキスパート”が戦いその時の術戦から感じ取ったらしい。」
挟まっている資料。
そこには入雲竜と呼ばれた成人男性の僧の写真がある。
現在は執行部ではなく法世寺の住職をしているとも。
「彼が言うには自称仙人だが前世紀の仙術や妖術とは何か違うものを扱うようだ。
異邦人ではないか、ともさ。
今まである知識ではそれなりに当てはまるが、不明なことが多い。
加えてこいつは昔もだが現在も裏で動き、人を堕落させている。
石蒜、サヤという風紀委員詰所襲撃の主犯も
こいつに堕とされたようだ。鳴鳴は不明な部分も多いため
レイチェル・ラムレイには当面こいつに対する捜索が妥当と判断しているが
どうだろう?」
レイチェル >
「流石に仏教はオレも詳しくないんでな、そういうのは専門家に聞くとするぜ」
うんうん、と頷くレイチェル。
「鳴鳴……ああ、こいつは話に聞いたことがあるぜ」
何度か話に聞いたことがある。一人の少女を洗脳しただとか……
と、思考を走らせている内に五代の口から少女の名が出たので、
改めて五代の方を見やった。
「やれやれ、人を堕落させる存在ってのもまた、面倒なもんだぜ。
どいつもこいつも、全く……やれやれだぜ。で、成程こいつが入雲竜。
経典の関係で何か困ったらこいつに聞きゃいい訳か」
ふむ、と頷きながら、その写真を眺めた。
「分かった。まぁ確かに、間接的に風紀の詰所もやられてるんだ。放ってはおけねーよな。
これ以上学園の他の奴を堕落させられても困るしな。
任されたぜ、当面はこいつを追うことにする」
そう言って、彼女のプロフィールを改めて眺める。
なんとも厄介そうな存在である。
五代 基一郎 >
「ウィルマースやオーリスもだが裏でやってる連中がな。
まぁ面倒でな……仏教はここじゃと思うが
社会機関と同じく必要なもんだよ、まぁ宗派の違いもあるけどさ……」
と、いったところでファイルを閉じて。
説明は終わりという感じで鞄にれていた先のPDAを箱ごと手渡す。
「現状こいつに関してわかっていることが少なすぎる。
そういうわけだから、まぁ危険だけど適度に突いてくれ。 何より情報が欲しい。 トライアンドトライの精神で頼むよ。」
それじゃぁと片付けつつ雑談に入る。
会議や情報を出す時間は終わりだ。
特に質問が無ければ、会議室を出てとなるだろう。
「何か食べてく?甘いもの欲しいでしょ」
外では先の騒動もあって色々ごたついているようだが。
レイチェル >
「ま、どんな宗教でもその教えを知る分には勉強になることも多いからな。武器として知りたいのも
あるが、純粋に興味あるからな、機会があったら話を聞いておくことにするぜ」
そう返すレイチェル。
「オーケー。接触して何か分かったら連絡するとするぜ。突き過ぎない程度にな、やってやるさ」
そう言って頷きながら、箱を受け取った。
「ん? いいのか? 奢りか?」
真剣な面持ちは何処へやら、ぱっと明るい顔を見せて五代を見上げる。
五代 基一郎 >
「奢り奢り、スイーツキングダムでもどこでもいいさ。
これくらいしか出せるもんはないしさ」
あ、ちょっと言い過ぎたかなと思いつつ
ファイルを鞄にしまい。
途中にいる倒れている委員を運ぶのに
忙しそうな委員を手伝いつつ、外に出ていった。
これが始まり、スタートなのだろか。
それとも続きであり、リスタートなのだろうかとも思いながら。
レイチェル >
「よっしゃー! 流石先輩! 愛してるぜー!」
などと、傍から見れば大袈裟にも見えるくらいに喜びながら、レイチェルも席を立つのだった。
自身も委員を運び出すのを手伝いつつ、だ。
情報は得た。
武器も得た。
ならば後は、動いてみるしか無い。
真実は、自分の目で見通さなければならないのだから。
そんなことを考えながらも、行く先に待ち構える甘味に思いを馳せ、
レイチェルは軽い足取りで歩いて行くのだった。
ご案内:「風紀委員会本部会議室」から
五代 基一郎さんが去りました。<補足:夏用スーツ。>
ご案内:「風紀委員会本部会議室」から
レイチェルさんが去りました。<補足:金髪眼帯の風紀委員の少女。身体の一部を機械化したダンピール(ただしハーフエルフと吸血鬼の子)。元魔狩人。>