ご案内:「ロビー」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>
畝傍・クリスタ・ステンデル > 橙色に身を包んだ少女は、おぼつかない足取りで女子寮の廊下を歩く。
元はといえば飲み物を買うためロビーに向かっていたその少女、畝傍の頭の中には、絶えず、ある声が響き続けている。そして、畝傍はその声に苦しめられていた。
あと少しでロビーへたどり着く。だが、そのごくわずかな距離が、今の畝傍にはとても長く感じられていた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > ――赦………イ。お前ノ…は赦サ……い――
男のものとも女のものとも、あるいは子供のものとも大人のものともつかない、混ざり合った複数の声。
かすかに聞き取れる言葉は、畝傍が持つ罪の意識につけ込み、彼女自身を責め苛むものであった。
――焼ケ………チカラで…オ前の身………焼き……セ――
「やめろ。……やめろ……」
畝傍は一人、呟く。聞こえてくる声に対し抵抗を試みる。
しかし、畝傍がいくら拒絶しようと、その声が止むことは無かった。
――…前が……身を……滅ぼス…………ノ罪……しテ赦され……――
「…………やめろ!ボクは……ボクは……っ!」
大きな声が出てしまう。周りに他の生徒がいれば、恐らく聞こえているだろう。
畝傍・クリスタ・ステンデル > そして、ようやくロビーに着いた畝傍は、どうにか本来の目的である飲料の自動販売機まで向かおうと歩みを進めるものの、
突然、畝傍は背後から殴りつけられたかのように大きく体勢を崩す。
左手を近くの壁に付け、ふらつき今にも倒れそうな身体をどうにか支える。
しかし、力及ばず。畝傍の身体はそのまま床に崩れ落ちた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 動けない。全身が震える。畝傍は耳を塞ぎ、抱えていた銃を取り落としてしまう。
しかし、耳を塞いでもなお、声は畝傍を苛み続ける。
――…さレない………ノ罪…赦さレ……――
――…け。ソノ………で……の身…全テ……滅……――
――お前ガその…を…………スまで………ノ罪…決して……………――
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……う……うぅ……っ……ぅぐ……」
声を拒絶する言葉さえも出てこない。ただひたすら、涙が溢れてくる。
畝傍の脳内では、『あの日』の記憶がフラッシュバックを起こす。
男たちに囚われ、嬲られ続けた記憶。死の淵を彷徨い、生に呼び戻された時、眼前には燃える部屋と、消し炭になった『人間だったもの』たち。
それらを、これまでより鮮明に思い出してしまった今の畝傍は、あまりに無力であった。――そして。
「……ぅぐぇ……!」
喉の奥から、何かが体内を遡ってくる感覚。抗うことすらできない。畝傍は嘔吐していた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「うっ……ぐぇ……っ……ううぅげぇ……ぇ……ぇぐっ」
畝傍は胃の中に残っていたものを吐き出し続ける。その表情は苦痛に歪んでいた。
やがて嘔吐が止まると、他の生徒が来る前に吐いてしまったものをどうにか処理しようと試みるが――全身の震えはよりいっそう激しさを増し、止まることがない。
かろうじてその吐瀉物が顔面に触れるのを避けるように、右向きに床に倒れ込む。
「(やっぱり……だめだ……。こんなんじゃ……ボクは……)」
彼女を救えない――そう、考えてしまう。
畝傍・クリスタ・ステンデル > やがて思考も途絶え、畝傍の意識は深い闇の底へと沈んでゆく。
その後彼女は、発見した保健課生徒により、保健室へ搬送されたという――
ご案内:「ロビー」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。散弾銃を携帯>