2015/07/11 - 20:03~01:11 のログ
ご案内:「転移荒野外縁部」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入歓迎)>
桜井 雄二 > 第二部 氷炎の支配者編 桜井雄二
最終章『この不完全なる世界のために』
抜けるような青空の下、土曜の午後にて。
転移荒野外縁部に怪異対策室一課、二課、そして桜井が所属する三課が武装して待ち構えている。
異世界と繋がる巨大なゲートが出現する、という予報が出たからだ。
ご案内:「転移荒野外縁部」に安室 冥路さんが現れました。<補足:生活委員の腕章を付けた学生服姿。>
桜井 雄二 > しばらくして、空間にヒビが入り限定的に世界が砕け散る。
口を開いた空間の中から生臭い空気が広がっていく。
瘴気とも表現できるそれは、蟻人との世界と繋がった際の臭い。
そして。
向こう側の世界から鎧や盾、刀剣などで武装した蟻人たちが多数出現する。
蟻人とは、怪異対策室でA級怪異災害と認定された存在である。
人間に敵対的な彼らは、今まで何回もこの常世の地に侵攻してきた。
しかし今回は規模が違う。
サムライアリやパラポネラといった蟻人の上位種も多数、姿を見る上に蟻人兵士も数が段違いだ。
何より、その遥か後方に控える見上げるほど巨大な蟻の化け物。
膨らんだ腹を引きずってこちらの世界を睨んでいるもの。
それは、蟻人の女王蟻。亜人を生み出すにしてもイビツなその存在は、狡知にこちらの世界へ入る隙を窺っている。
「は、はは………冗談だろう…?」
どう見ても相手はS級怪異災害クラスの化け物。
それだけじゃなく蟻人があんなにたくさんいる。
周囲の怪異対策室隊員たちも気圧されている。
ご案内:「転移荒野外縁部」にウィリーさんが現れました。<補足:顔に傷のある長身の青年。重武装>
ご案内:「転移荒野外縁部」に湖城惣一さんが現れました。<補足:どなたでも乱入歓迎。身長181cmの痩せぎすで目つきの悪い男。勘違いしたような和装ベースのファッション。横一文字に傷痕の残る腹を丸出し。>
安室 冥路 > 空気が、重い
当たり前の事だ、これから始まるのは正しく決戦
怪異対策室の精鋭達もそれぞれ緊張感に満ちた顔でその時を待っている
これだけの人数が集まったとしても、押しきれるかどうか分からない
何故この場に呼ばれたかと言えば、先日桜井と共にかの蟻人達を撃退した
その実績が買われた、という事なのだろうが
…本当に、最近はこういった事象に遭遇する事が多い
軽くため息をついて、一人。大きなペットボトルを緊張感なく飲み干していく
1.5Lのコーラを二本空にして、腹をこなすように準備運動をする
…流石にこういった状況にも慣れてきた
全く緊張をしないのはそれはそれで問題だろうが
余り緊張しすぎても仕方がない
こうなるであろうことはなんとなく、見越していた
出来る限りの準備も整えてきた
あとは自分にやれる事をやるだけ
そう吹っ切れてしまえば、覚悟は決まったようなものだ
「…お出ましかな」
「…って、おい、おい。これは…また。」
一目で分かる、彼等の親玉。大ボスの存在
その威圧感に、乾いた笑い声が漏れた
湖城惣一 > ――速けく神州の 禍患を祓い除き 是成戦を成し遂げ給えと 祈願奉らせ給う
戦場に響く声。涼やかな柏手とともに男がその地に降り立った。
刀はいまだ脇差しの一振りなれど、しかしそれで臆する男ではない。
「なるほど」
大軍勢だ。ただ腹を切るだけで事が済む場合ではあるまい。
これは湖城惣一という男にとって初となる戦場。
ただ沈むだけでは成し遂げられぬ戦場だ。
しかし。それでも男にとってその戦場に意味は無い。
友が戦う戦場だ。であるならば、彼にとっては同じこと。
「衆生一切切り捨て仕る」
白刃を抜き去る。敵も味方もない。
ただ血の一滴が枯れ果てるまで、その剣を振るう。
シンプルだ。実にシンプル。
ならばあとは根比べ。相手が全て死に絶えるか、それとも己が力尽き友を守れぬか。
――所詮戦いとは、己の淵に挑む業。ならば、腹を切ろうが切るまいが。
友を助けるために刀を抜くことに関係はない。
ウィリー > 異界への門の向こう側にあったのは、正しく異形の者たちの世界であった。
蟻人。桜井にとっての仇敵であり、ウィリーにとっては「対策」を講じるべき相手のひとつ。
地獄より地獄らしい。そこに立つ怪異対策のプロたちですらこの異様に固唾を飲んでいた。
「随分と手厚いお出迎えだ」
周囲をみやる。やはり、一番の敵は遠くに見えるあの巨体だろうか。
無論、壁めいてうねる精鋭らしき蟻人たちの脅威も尋常ならざるものに違いない。
銃を持つ手が、武者震いじみて震えた。
桜井 雄二 > 安室冥路のほうを見る。
準備運動をして、覚悟を決めた様子の彼。
「……今回ばかりは死ぬかもな…」
「あれだけの数が相手だ。まさしく戦争だな…」
「どうせなら、最後に泪に絶対帰るとか言っておけばよかったよ」
冗談でも言わないとやってられない。
彼我の数の差は圧倒的。
あとはこちらが持つ異能がどれだけ覆せるか。
無論、敵には異能使いと並ぶ蟻人上位種がいる。
苦しい戦いであることは疑いようもない。
「巻き込んでしまったな、すまない安室冥路」
「謝って、済むことじゃないかも知れないな…」
無表情に、しかし嫌な汗を流しながら言った。
なるほど、という声に振り返る。
「湖城惣一……相変わらずストイックな男だな」
「だが、今はお前を見ていると勇気が出てくるよ」
「結局、この場に来た以上戦うしかない」
前を向いて右半身から炎を、左半身に氷を纏う。魔人化。
「死ぬのに良い日なんて、死ぬまで来ない」
自分を鼓舞すると、士気も挫かれた怪異対策室一課、二課のメンバーたちを置いて前に出る。
守るんだ、大切な人を。
戦うんだ、この不完全なる世界のために。
ウィリー・トムスンに顔を向けて頷く。
「ここまで歓待を受けると気後れするな、ウィリー・トムスン」
「できれば固辞して退席したいところだ」
拳を軽く握って肩を竦める。
「この世界は残酷だ。だが、戦う価値があるだけマシだな」
構えを取り、走り出していく。
蟻人への恨みを捨てきれたわけじゃない。
だが、今は。
蟻人たちが戦列を整える。
そして、戦いの開始の口火を切る――――蟻人たちの雄たけび。
それに呼応するかのように、遠い間合いから蟻人たちの放つ矢が無数に飛来する。
まずはこの金属の雨を切り抜けなければ話にならない。
ご案内:「転移荒野外縁部」にシン・アルバートさんが現れました。<補足:日系アメリカ3世の青年、半袖ジャケット。両方の手首に包帯>
シン・アルバート > まだ、野次馬か、引き返すか、後方支援か、を決めれる位置まで、やって来て。
その光景を、見遣る。
(またというか、様子が可笑しいといくらか聞いたんだが、これは、なぁ……)
特に呼ばれても居ないし、何処にも所属はしていない、が。
先日の蟻人の群れを一度見ていたからこそ、確実に分かることが1つ。
「この間のあれが、尖兵っていうのも、笑えない話だな……。」
「……見る限りだと一番奥のが、大将軍様とか、そういう辺りなのだろうか?」
怪訝な顔をする。
門が開くようになってから色々な異世界人が辿り着くようになった、とも聞いてはいるが……
明らかに、その見えていく『群れ』は、侵略者のソレで。
……流石に変な溜息が出そうになる。
安室 冥路 > 腰に取り付けたポシェットを確認する
そもそもそうなりたくはないものだが、近寄られた時の為の短剣
ポシェットの中には栄養ドリンクがみっしりと詰まっている
…まぁ気休め程度にしかならないだろうが、その気持ち程度が大事だ
付け焼き刃の体力強化にどれだけ効果があるかは分からない以上
気持ちが途切れさせない事、これが重要となる
要は気力勝負
…だったら、あんなものが出てきたところで震えている場合じゃあない
周囲を見渡せば…見覚えはある腕自慢が、自分以外にも外部から呼ばれているらしい…まぁ自分は腕自慢でもなんでもないのだが
各々方、覚悟を決めた良い目をしている
共に戦う仲間として、これほど心強いものはない
「っふぅーーーーーー………っしゃっ!やってやりますかーーーっ!」
少々わざとらしかっただろうか。場違いな、大きく、明るい声音で気合を入れる
「まぁ、ここが破られるとしたらその時点でこの島みんな巻き込まれるんだろうし」
「だったらさっさと、自分から巻き込まれてた方が精神衛生上よろしい、ってね。」
「頑張ろう、お互い五体満足で帰ろうよ桜井くん、ガールフレンドの為にもさ。他の皆も気をつけて」
「勝って帰ったら、きっと死ぬほど飯が美味いぞーーー?」
へらり、笑みすら浮かべて片手を大群に向けて突きつける
出し惜しみなんてしている余裕は、最初から無い
全力で行こう。場合によっては…切り札を。奥の手を。使うことも躊躇わない
この場にもいる、友のために。
この場にいない、友のためにも。
「"Relinquish"」
薄紫色の人型を、三体産み出す
「だから、みんな生きて帰ろうぜー!!!」
突き出した手を、握りしめる。同時に、人型が宙空へと飛び出して行く
湖城惣一 > 見知った顔もいる。見知らぬ顔もいる。
これだけの手勢同士で戦ったことは未だかつてない。
「人はいずれ死ぬ」
日常を死に向かわせる男だからこそ、無表情に、淡々と。
「だが。そのために俺が居る」
戦勝祈願。さきほどの祝詞が戦場に響く。
これによって、いくらか生活委員、そしてそれに手を貸すものたちの"加護"となることだろう。
「終わったら飯でも食おう、桜井。……他の奴らも合わせてな」
この人数では収容できる飯屋などあるまいが。
もしそうなったら屋外でのパーティでもいいかもしれない。
滅多に言わぬ軽口のまま、ただ疾走する。
矢の雨も男にとっては問題ではない。
腹を切らずとも、常に死地と隣合わせの経験値が湖城という男を導いていく。
「あれだけの大物は、見上げ入道を斬ったとき以来か」
人が見上げるたびに巨大になるという大怪異。
育ちきった時の大きさなど今でも同僚たちの語りぐさだ。
嗚呼、だから何も問題はないのだと。
ただひたすらに先陣を切る。
「俺に構うな。当てる気でやれ」
後方支援。それは敵の渦中で戦う湖城惣一を巻き込む可能性の高い技だ。
だが。
「風紀・公安嘱託委員、湖城惣一。遠慮は要らん。全て捌く」
彼を巻き込まぬ前提で戦えるほど甘い場所ではなく。
湖城惣一には蟻人の軍勢が集っていく。
脇差し一本で蟻人を切り裂き、断ち割り。
ただ後方に控えるものたちに視線だけで"好きにやれ"と告げる。
(湖城惣一の『戦勝祈願詞』が発動。もしかしたらみんな戦いやすくなるかもしれない)
ウィリー > 「はは。折角準備してくれた会場だ。……きれいに平らげてやるのが道理だろう?」
冗談めかした言葉で、炎と氷の魔人の心を励ます。
戦くのも無理はない。彼の過去を思えば当然の事であったし、むしろここで平然としている方がおかしいのだ。
自分はその、おかしい方に入るのかもしれない。
友と、その愛する人のために戦うと言う理由とは別のところにある衝動。
魔術の反動によって生まれた獣じみた闘争本能が、戦意を高揚させているのを感じるのだ。
突撃銃、そのマガジンにしこたまくくりつけた予備弾倉、グレネード、その他もろもろを確認して駆け出す。
あの矢面、その直撃のエネルギーを吸収して無効化するためだ。
防御と、次の一手のための布石。運動エネルギーを失った矢は、勢いを失して落ちていく。
他の連中は各々うまくやるだろうが、できるだけ彼らの道も確保するようにーー
「少し多目に……《万物流転》」
同時に、進行方向へむけて弾幕銃撃を行うじりじりと進み、間合いをつめていくーー
桜井 雄二 > シン・アルバートが見下ろす光景はこの世の地獄。
これが現実である。これが真実である。これが―――戦争である。
戦場に大音声が響き渡る。驚いて振り向く。
「安室冥路……ああ、そうだな…」
「島のみんなのために。泪のために。大切な人たちのために」
「戦う、そして生きて帰る!!」
「……美味い飯のためにもな」
戦いは始まってしまった。それでも、生き残るために。
前に駆け出していく。
湖城惣一の言葉に薄く笑う。
「そうだな、みんなで飯を食おう……ラーメンでも、和食でも、なんでもいい」
「みんなで食えば絶対美味い」
それだけ告げて散り散りに蟻人に突撃していく。
湖城惣一が蟻人たちを蹴散らす中、後方からも様々な放出系異能が飛ぶ。
怪異対策室も逃げ場などないと察して、攻撃を始めたのだ。
あちこちで派手に戦いが始まる。
だが、確実に湖城の祝詞が効果を上げている。
この差は、戦争にあって確実に響く。
ウィリーの言葉に、口元を歪めて笑う。
笑顔を作るのだ。今はそうするしかできない。
「そうだな、おかわりはさすがに要らないが」
ウィリーの異能が発動する。
矢の運動エネルギーは吸収され、その場に落ちる。
それは後方にいる人々さえ守る、戦場の奇跡。
そして銃撃。圧倒的なる鉄の銃弾が連続で蟻人たちをなぎ払っていく。
「やるな、ウィリー・トムスン! ならば俺も!!」
「ベタ踏みの『右』を見せてやる!!」
右腕を振ると火炎が放射される。
それは金属の鏃を持つ矢を焼き払い、伴う熱波の上昇気流で撒き散らしてしまう。
それでも全体はカバーしきれない。矢に倒れる怪異対策室メンバーもいる。
だが後ろを見てばかりはいられない。敵は、前にいるのだから。
敵陣に突撃して右手に炎の剣、左手に氷の刃を作り出して蟻人を切り裂いていく。
次に出現するのは、盾と槍を構えた重装甲陸戦騎兵たち。
隊列を組んで真っ直ぐに前線の人間たちを蹴散らしにくる。
「あいつらは鎧や盾で攻撃を防ぐ、何とか隊列を崩せれば…!」
シン・アルバート > 「……仕方ない」
足元が渦巻く。怖気づく「本職」の中に、気づけば交じるように、足は動いていた。
「―列を乱せばいいのなら。こちらの仕事だ。前線に派手にやってもらうためにも……崩そう」
「『生命』が惜しければ、帰れ。そうでないなら……『還れ』」
蟻人は流石に敵だと言う事は明確に理解していたのか。
前線の味方の間を当たらぬよう、縫うように、黒い風が駆けて。
「―その『生命』、差し出してもらおう」
蟻人の隊列を荒らすかのように吹き荒ぶ、黒風。
…普通重装備であれば強風内では飛ばされない、だろうが。
逆にソレは『下手に動けない可能性』を示唆する。
「巻き込まないようには、するが……持久戦という考えは、させんぞ?」
勿論倒すつもりで『生命力奪取』が起動しているので、制御には細心の注意を払っている。
……約一名、消耗させては絶対にいけない人員が居るのが分かったから。
安室 冥路 > 自らの異能で生み出した人型達は蟻人の先陣へと飛び込んで、その拳を、足を、尾を持って彼等を殲滅にかかる
先日の『先駆け』との戦いで現状の限界はある程度把握している
人型の三体程度ならばそれなりの長時間、機動させていても問題はない
自身から遠く離れすぎては精密な動作をする事は叶わず
だからといって近寄りすぎれば敵後衛からの飛び道具で集中が効かない
我ながらなんとも勝手の悪い事だが、"丁度良い"位置取りをするのに手間取る
いっそ自動で動かせればいいのだが…前線は混戦模様
敵方の方が数は圧倒的に多い現状で区別もつけずに戦うのは自陣の戦力消耗に繋がる……
…ん?
………区別をつけなくとも済む場所に置けばいいのか
余りにも簡単な事に気付かなかった自分に多少、腹が立つ
遠隔操作が出来…空を舞う事も出来る。それを有利に活用する方法があるじゃないか
「…実戦経験ってやつが足りてないね、本当」
「…足りてないのはおつむの方か?」
くい、と手首を捻れば人型達は飛び立って、敵陣前衛から後方へと飛び立ってゆく
そして自身の操作を"打ち切る"。これで、精密な動作こそ不可能となったが
簡易な命令ならば、実行出来る。例えば、そう。
目の前にいるものを倒せ。等というくらいならば。
Relinquish達が降り立ったのは丁度、敵後衛の弓兵部隊がいる辺りだろうか
見えはしないが、敵陣に混乱が走っている気配だけは感じる
湖城惣一 > 立ち並ぶファランクス。あれを前には下手な相手は手出しができぬ。まるで山嵐。
だからこそ、アレに対処するには一手では足りない。
疾走し、切り裂いて、時折隣の誰かをフォローしながら。
このような戦いをしたのは何年ぶりだろう。
己が"神域"を目指した、そのずっと前――。
「今の俺はただ一矢」
敵陣を食い破るただ一矢。それには少々の犠牲はつきものだ。
腹を切っても居ないのに、湖城惣一の背後に光をまとった陣が浮かぶ。
それはあらゆる要因によって湖城惣一が性能を落とさずにいるためのもの。
死に果てるその時まで、彼に万全の戦いを約束するもの。
古い言葉で書かれた誓約が彼の背を押す。
「――俺が拍子を崩す。あとは頼む」
重装甲陸戦騎兵。その渦中に再び湖城は"翔んだ"。
この手の手合は、整然とした隊列を組んで運用してこそ効果がある。
方向転換。獅子身中の虫へと対処が遅れるのは道理。
飛び込む際、肩と腹を"抜かれた"が、動作に支障はない。致命打ですらない。
「は」
わずかに口の端に笑みが漏れた。ひたすらに無表情だった男が、ただわずかに。
戦いで"頼む"などと口にしたのは――初めてのことだ。
だからこそ。湖城惣一は隊列を食い荒らす。
戦場に吹きすさぶ風の性質を理解し、それを利用する。
並み居る敵を風除けに、先陣であるが故の交わし方。
シンの配慮も相まって、黒風は湖城惣一を傷つけない。
だからこそ。奴らの注意は湖城惣一に向くはずで。
つまりそれは、隊列を崩す致命の隙となるはずだ。
見れば、後方で巻き起こる混乱。機動力に任せたその戦法はたしかに有効だ。
前後を挟まれ、腹中で暴れまわる鼠が一匹。
これで崩れぬ規律など存在はすまい。
ウィリー > 「……古式ゆかしい戦法だ、盾の後ろに弓を置き」
目の端に映るのは、赤。桜井の炎が誰かの援護もあってか、ますます大きく燃え盛り前方を侵食する様だ。
圧倒的だ。一対一においては間違いなく。ここが闘技場であれば決着などとうについている。しかし、ここはただ殺しあうためだけの、戦場。
「相手を釘付けにして殲滅する」
数と質を兼ね備えた敵が渦巻く地獄で、桜井はもちろん自分も含めた全員が劣勢であるのは言うまでもないだろう。
ではどうするか。単純だ、桜井の言う通りに陣形を崩す。
それだけではない。逆しまに、味方が全力を発揮できる陣形を構築するのだ。
矢から奪ったエネルギーが機械の左腕を肥大化させる。
「ふぅーー……」
気づけば矢の勢いにばらつきが出始めていた。恐らく後方で攪乱している味方がいるのだろう。
まずは陣崩しの一手はなったわけだ。
近づいてくる尖兵を、ハンドガンによる対甲殻酸弾銃撃で無効化しながら、
更に回りを見れば、光のごとく駆けゆく命知らずと、死神めいてふきすさび重装兵たちを弱体化させていく黒い風。
「……いい友達を持ったじゃないか、桜井」
銃撃を強め、時に魔術、時に異能を駆使し戦列を楔めいて穿ってく。
傷は増えていく。残弾は減る。だがその顔には悪鬼じみた笑みがあった。
必ず、詰ませてやるーー
桜井 雄二 > 戦場に歩を進めてくる存在、それは。
「シン・アルバート!? 来たのか……」
この凄まじい物量にあって彼の異能は頼れる。
その異能の全容を把握しているわけではない。
だが対生物に関して彼ほど頼れる存在はなかなかいないと認識していた。
蟻人の隊列に吹き荒ぶ黒風。
それは蟻人たちから生命力を際限なく奪い取っていく。
生命力の弱い固体が膝をついていく。
押し切るなら、今しかない。
安室冥路が生み出した人型たちが蟻人たちを切り崩していく。
『彼ら』は勇猛で、獰猛で、勇敢で、果敢だ。
決して逃げることなく蟻人の群れを殲滅していく。
そして、安室冥路は気付く。
それを有効に活用する方法に。
後方に飛来し、『彼ら』は蟻人の弓兵たちを倒していく。
自動制御の兵士。死を恐れぬ兵隊。
蟻人たちに混乱が伝播する。
湖城惣一が飛び立つ。
まるで放たれた矢のように、速く、疾く。
「湖城惣一! くっ……無茶をする!」
だが、頼まれた。男が男と見込んだ物に頼むのだ。
決して違えてはならない。決して、裏切ってはならない。
重装甲陸戦騎兵たちが鎧の隙間を切り裂かれ、
倒れこんでいく。
銃撃。魔術。異能。
その複合でウィリー・トムスンは敵戦力を削っていく。
ハンドガンには特殊な銃弾。打ち倒された蟻人兵が呻き声を上げて動かなくなる。
桜井も、ウィリーも。傷が増えていく。
アドバンテージは取れても、どんどんリソースが減っていく。
それでも。ウィリーは笑った。
「これで……どうだ!!」
右手から炎の銃弾を、左手から氷の弾丸を放出。
混迷を極める戦場でファランクスを打ち破っていく。
仲間のサポートがなければ、ここまで上手く攻撃は通らない。
頭の中に、三千歳泪の笑顔が浮かんだ。
血が嫌いな彼女のいる場所を、惨劇に巻き込んではいけない。
心からそう思った。
ファランクスが破られる頃、立ちはだかる蟻人の上位種たち。
二刀を持ち、卓越した技術でそれを操るサムライアリ。
剣と盾を持ち、邪毒を秘めた針を尻尾に隠し持つパラポネラ(弾丸アリ)。
その怪力と強靭な顎で物理攻撃を仕掛けてくるツムギアリ。
三位一体の攻撃を得意とする三人の軍隊アリ。
そして致死毒を持った針に総合的な戦闘能力が高いファイアーアント。
五種類の蟻人上位種が人間たちに襲い掛かってくる。
「みんな! 一人で一種類の蟻人上位種を相手にするんだ!!」
「雑魚を蹴散らすのも忘れないでくれ!!」
桜井が構えを取る。皆が選ばず、残った最後の一種類を相手にするために。
湖城惣一 > これまでの間。湖城惣一という男は腹を切っていなかった。
持久戦というところから最も遠くかけ離れたところが己の本領故に。
目の前の蟻人は果たしてどうか。己の術理だけで渡り合えるかどうか。
いや。
「委細問題なし」
つまるところ、それはどこまで己の限界に挑めるかだ。
それに限れば、腹を切ろうと切るまいと、一切合切問題はない。
こんな戦いは初めてだ。戦いの中、余力を考えることなど今まで決して無かった。
――沈む。
別に腹を切らずとも往ける境地はある。
――沈む。
あらゆる音と光を置き去りにして、ただ孤独の境地に耽る。
そこでは敵も味方も等価値で、ただ成すべきを成すにすぎない。
抱えていけるのはただ一つ。
それはなにか。
敵を斬る。剣の境地に挑む。――いずれも違う。
『無茶、しないでよね』
誰かの声が響く。ああ、無茶はすまいと心に誓おう。
『じゃあ俺と友達になってくれ』
ああ、そうだ。今、新たな立ち向かう友のために剣を抜く。
これからよろしく頼むと言われたのだ。友達として。
だから。抱えていく思いはただ一つ。
危難を払う。ただそれだけ。
それ以外のあらゆる価値は薄まっていく。
敵も味方も、湖城惣一にとっては存在しない――。
「推して参る」
金切り声を上げながら二刀を構える異形の剣士。
男にできることは、最速最高の剣でもって、一秒でも早く打倒すること――。
合理を無視した異形の剣が湖城へ迫る。
まるで慣性を無視するかのような、力によって成される魔剣の太刀筋。
まるで一筋の剣がアギトの如く挟み込む。まるで跳ねまわる毬のごとく弾ける乱舞。
それらを交わし、見切り、時に傷を受けながらも。
湖城惣一という男は着実に蟻人の隙をつく。
しかし、甘い見切りで放たれた太刀筋はその硬い外殻に弾かれる。
丁々発止の剣戟をくぐり抜けながら湖城は己に挑む。着実に。意識を深く、深くへ沈めていく。
シン・アルバート > 「今回もたまたま、だけれど……な?己れは呼ばれるツテも無いのは承知している。が……」
桜井の方を見遣り、その豪炎の出力に苦笑する。
「……全力で燃え盛っている、と言うべきか?」
「一応当たらないようにして貰えると助かる。あれは異能殺しと魔術殺しが本分だからな……」
彼の知る所の自分の異能の性質は、
異能と魔術の力を削ぐ、生命力を奪取する、というものであり。
生命力奪取は意識的な切り替えまで可能になったが、
どうしても異能と魔術を『殺す』力は切り替えが難しいらしい。
……故に。フレンドリー・ファイアを起こせば、大惨事である。
「ただ、まぁ、……此処を剥いでおいて、次が大将軍様……」
…三位一体のフォーメーションを取る軍隊アリに視線を向ける。
「……いやぁ、単騎相手よりはよっぽどマシだな。」
「……少し、己れの嵐が運ぶ『不運』と『凶兆』遊んでもらおうか?」
と、見栄を切るのは良いものの。物理的な攻撃力は少々心持たないことは承知済みなのである。
故に、まずは連携の流れ、をまずは雑魚を捌きながら、把握する。
手元と支援を同時にこなせる程、器用ではないが、『事故のように』紛れ込んでくれるなら、話は早い。
……一人が流れを作り、もう一人が誘導し、もう一人が仕留めを狙うような。
「同時攻撃も勿論可能であるなら。…答えはひとつか?」
連携仲間を「予想していない所に配置させる」。
要するに、無理矢理同士討ちを発生させてから、巻き込もう、と言う算段である。
その為にはチャンスを得るまで捌き続けなければならない。
(………まだだ、決定的に己れが「返しやすい」配置になるまで―)
連携を崩す隙、それを、この男は待っていた。
安室 冥路 > 疾走し、剣閃を走らせる侍めいた男の姿
原理は分からないが…命を奪う死神めいた力を使う男の姿
悪鬼の如き形相で銃火器をかき鳴らす男の姿
本人の性質を表したような熱と冷でもって敵を屠る男の姿
まるで統一性の無い、しかしこの乱戦の中でも際立った力を持った男達の姿に
頼もしさと、誇らしさが募る。
絶望的な戦力差があると思われたこの戦いに、希望が湧いてくる
そうした中で、敵方が選んだのは…彼等の排除、ということだろう
…そこにどうも自分も含まれているというのは、若干
いや、大いに違和感を感じずにはいられないが
脅威とみなされた、という事を誇ればいいやら、嘆けばいいやら
そして、よりにもよって
「…相手さんもこっちをよーく見てるな、っていうのが分かるお相手で。」
現れた上位種の中でも、最も固そうな。
最も、自分が相手をしづらそうな。
如何にも接近戦が得意です。とでもいいそうな風貌のアリが、こちらに迫ってくる
制御状態に戻した人型をけしかけてみるも、一体は拳の一撃で粉砕され
組み付いたもう一体は力任せに引きちぎられて
残ったRelinquishは一体、ツムギアリと自分の中間へと配置し牽制とする
「近寄られたらほぼ、積み。とはいえRelinquishじゃ相手にならない程度に強い…」
「まいったねこりゃ。なんだよあの横綱みたいな体格…」
一定の距離を保ち、こちらを観察している様子のツムギアリ。
奇っ怪な力を使う、と警戒してくれているのか?
だったらこちらとしては好都合、考える余裕が生まれる
とはいえこの余裕は薄氷のものでしかなく…隙を見せたら
自分の異能が"アレ"を生み出すものでしかない、と看破されれば
「ってなると、やるっきゃないか………」
覚悟はもう決めた筈だろう?
相手は慈悲なんかかけちゃくれない、手を打ち間違えればただ、自分が死に
…仲間が、友が、危険に晒されるんだ
だったら、命を惜しんでどうする?
引き攣り笑いが収まらない表情筋
歯を食いしばって、眼前の敵を見据える
「…自分の為ならともかく」
「友達の為に、誰かの為に…命削るんだったら本望か」
最高に、カッコいいじゃないか
ウィリー > 彼らにはいかにも、精鋭の中の精鋭という風格があった。
蟻人でさえなければ、頭を垂れて手合わせを乞うに値するほどだ。
それほどの威圧感が身体にのし掛かってきているのに、不思議と意識の萎縮はない。
重装備の蟻人の攻撃を、流し、いなし、そのまま矢受けの盾にしながら弓兵ににじりよって殺す。
鉄魔術によって強化された肉体は、闘争本能の高揚によって更なる力を産み出していた。
そうして、積み重ねた死体の山は即興の防御陣へと変貌しーー
その影で、装備を整える。対甲殻酸弾を装填したマグナム二丁。
使い物にならない壊れた突撃銃。後は、あちこちでエネルギーを溜めておいた「ストレージ」がいくつか。
「よし」立ち上がって、相手と対峙する。
「パラポネラ…バレットアント、だったか。蟻人相手にするからって蟻のお勉強をしておいた甲斐はありそうだ」
「蟻程度風情が狼に勝てると思うなよ」銃撃。戦いの幕は再び、切って落とされる。
ご案内:「転移荒野外縁部」に白崎玲刃さんが現れました。<補足:自由人な、なんでも屋。>
白崎玲刃 > 【転移荒野外縁部そこへと、時速250km/h程で駆けてくる人影があった。
あれはジェットマン……否、白崎玲刃である。
風紀委員会の本部から、開拓村へと帰った玲刃は、開拓村にてまた蟻人の騒ぎを聞き
ここ、転移荒野外縁部へと急行してきたのであった。】
これは……前よりもやばいな…
【そうして、5人の活躍により減ってはいるものの
未だ、相当な数が存在している蟻人の群れを見渡しつつ苦々しい表情をして呟く。
そうして、数人か見知った顔を含めての5人がそれぞれ精鋭の蟻人と対峙しているのを見やると玲刃は】
ふむ……ならば、雑魚は任せてもらおう。
【精鋭の蟻人と戦う5人の様子を見ながら、収納の魔術を発動すると投げナイフを取り出し、
精鋭の蟻人に加勢しようとする、一般兵の蟻人に対し投げつけてゆく。】
桜井 雄二 > サムライアリが吼える。
金切り声を上げながら、湖白惣一に二刀を振るう。
斬りつけ、斬り上げ、斬り払い、斬り下ろす。
無数の斬撃が乱れ舞う。
湖城惣一とサムライアリの剣戟は、どこか美しさすらあった。
その剣舞に伴う金属の噛み合う音は、音楽だった。
しかし両者ともそんなことに拘泥してはいない。
サムライアリが狙うはただ一つ、相手を殺して勝つことのみ。
サムライアリが右の刀で斬り下ろし、左の刀で斬り上げる同時剣を振るう。
その踏み込みの速さ、実戦に使う技の発想共に人外のそれだ。
シン・アルバートに向けて右手を振り上げる。
「ああ、燃えているのさ………」
「殺すためではなく、守るために!!」
そして異能の性質を聞くと、深く頷き戦場に戻っていく。
軍隊アリがシン・アルバートに襲い掛かる。
一匹が剣を振り、一匹がその隙に潜り込んで剣で突き、もう一匹がシールドによる打撃を仕掛けてくる。
まるで一つの意思の元に統率されているかのような、隙のない連携攻撃。
それなのに時折、仲間の両肩を踏んで大ジャンプして斬りつけてくる、など。
遊んでいる場面も見られる。
軍隊アリはそう、遊んでいるのだ。彼の命で。
彼が無様に殺される様を見るために。
三位一体の技術を、惨殺のために向けている。
三匹の軍隊アリが雄叫びを上げた。
ツムギアリがRelinquishを打ち破りながら安室冥路に近づく。
その膂力、顎の力、共に規格外。
武具など必要ない。己の肉体が最高の盾であり、最強の矛なのだ。
顎をガチガチと噛み鳴らしながら安室冥路に近づくツムギアリ。
ツムギアリは相手の表情を見る。
ここまで絶対的な力の差を見せ付けているのに。
目の前の戦士は絶望していない。
それではつまらない。
ツムギアリが走り出す。地面を蹴るたびに岩肌を削りながら。
爆発的スピードで安室冥路に迫る。
パラポネラがギチギチと鋭い顎を噛みながらシンプルな盾と剣を持ってウィリーににじり寄ってくる。
ウィリーの銃撃を右手側に走りながら回り込み、盾を構えることで回避していく。
パラポネラの目的は一つ。
隙を見て毒針を叩き込むこと。
それだけが勝利。それだけが喜び。
パラポネラが少しずつウィリーに距離を詰めてくる。
円の動き、そして装備重量を感じさせない軽い走り。
蟻人たちの将軍、蟻人上位種は伊達ではない。
そこに現れた白崎玲刃。
声を上げて威嚇する蟻人たち。
が、すぐに投げナイフが頭部に刺さり大人しくなった。
彼らは認識する。彼もこの戦場におけるエースなのだと。
後方でおっかなびっくり攻撃を繰り返す有象無象とは違うのだと。
蟻人たちが白崎玲刃に向けて槍を構えて突撃してくる。
ファイアーアントに向けて桜井は突撃する。
こいつを倒すことで確実に女王蟻へ近づく。
まずは火炎放射を浴びせる。
だが、すぐにシールドで防ぎ、凄まじい速度で距離を詰めながらファイアーアントは剣を突き出してくる。
「ぐっ、速い!?」
肩口を貫かれて後退り、そして足元を蹴りつけて氷の蔦を発生させ、相手を氷で拘束しにかかる。
それも回避し、凄まじい剣捌きで桜井を攻撃するファイアーアント。
「こいつ……強い!!」
シン・アルバート > 「……遊んでる、つもりなら」
「……随分と、楽だな?」
大方、平時の彼から想像もつかない程、ニヤリと、凶悪に、笑う。
「言の葉の刃より、物理的な刃の方が、『分かりやすくて』、ちょうどいい」
時折見られる「遊んでいる事」が隙なのだと、理解した。
飛ぶ瞬間を晒す、空中に身を投げ出す、と言うのは、
『風使いに対して最も取るべきではない行動』だと、彼は理解している。
故に。遊びに付き合うことにした。
パターン化は、されきっては居ないが、戦場で『遊ぶ』というのは最も慢心を誘うものだと、彼は思っているため……
「……遊んでばっかの時間は、オシマイだ」
両肩を足場にして飛ぶ瞬間に、風を叩き付ける。
どんな精鋭だろうと、風を捌く技術が無ければ、その瞬間に、
……足場も、飛び手も、崩れる。
崩れたのであれば、残りを処理すればいいだけの話だ。
ゆっくり、調理するための、まな板の上に、三匹を揃える準備は、出来た。
湖城惣一 > ただ沈む。ただ沈む。
相手の術理は磨き上げられたそれだ。蟻人の寿命とは何年だろうか。
数年か、数十年か、数百年か。
その間に磨き上げられた外法の剣は、"ただの"湖城惣一では敵うべくもない。
だから、ただ深度を落としていく。
腹を切っていないがために、それはまるで深海へと素潜りするような行為。
暗い水底に光明はない。ただ己の"想い"だけを重石に沈んでいく。
「…………」
口から漏れる吐息も。敵の打ち鳴らす顎音。
荒ぶ爆音も、生活委員の鬨の声も。 何もかもが彼の"沈む"妨げとなる。
しかしそれでも少しずつ、意識の純度は高まっていく。
上。
下。
左右。
袈裟、逆袈裟、突き、当て身。
相手の剣に合わせて交わすように血刃をくぐり抜けていく。
湖城の血がややも空に舞う。この程度なら――問題はない。
腹を切るのに比べれば、如何程のものでもない。
不条理を極めたが如き異形の剣。それをまさに紙一重の見切りで突破する。
蟻とはいくつかの神経節からなる生物だ。頭部を切り離したところで油断はできない。
目の前のそれが蟻と同様の生態かはともかくとして、用心するに越したことはない。
迫る二腕に合わせるように、脇差しが跳ね上がる。
――見えた。
刀の鍔元、そこならば切れ味は鈍く。
切り裂かれることがなければ"動きを合わせる"。
たたきつけられるような剣の衝撃を地面に逃し、その動きを利用する日のごとく相手の体を崩す。
一閃。涼やかな音とともに、胴から頭にかけてを湖城の剣が切り裂くだろう。
白崎玲刃 > ふむ、こちらへ来るか…引き付けられるのは好都合だが…
【いかんせん数が多い、しかし、玲刃は不敵に笑みを浮かべながら、
水の魔剣を取り出して構える。
前回は強度の問題でピンチになったが、今度はこうはいかないと玲刃は構え。
槍を構えて突撃してくる蟻人達に切り込んでゆく、
勿論、もう片方の手で精鋭の蟻人に加勢しようとする蟻人へ投げナイフを投げるのも止めない。】
一掃出来ると楽だが……
【この状況で剣の雨を使っては味方を巻き込む可能性もあると考え、
使用を否定する。
襲い掛かってるく槍を構えた蟻人、
通常リーチの関係上、槍は剣よりも有利である、
その優位を誇る様に槍を構えた蟻人達は笑う様にしながら一斉に玲刃へと襲い掛かるも
しかし、
玲刃はその場で強く力を込めながら振るわれる槍に対して水の魔剣でなぎ払った
目的は武器破壊である。
いくら槍といえどもその穂先を砕かれればそれはただの棒である
だが、普通の剣でその様な事を続けていれば、刀身が砕け、否砕けずとも手に相当の負荷がかかるだろう
しかし、現在玲刃が持つ武器は水の魔剣である、強力な硬度を持つ刀身と、その衝撃を逃がす機構はある意味武器破壊に向いているともいえるのであった。
そうして、玲刃は、片手で投げナイフを投げながら、
もう片方の手で持つ水の魔剣を使い、襲い掛かってくる蟻人達に対して武器を破壊し無力化していく事を狙うのであった。】
安室 冥路 > 目を閉じる。
戦いの最中だというのに。
その隙が命取りとなり得るというのに。
しかしそうしなければ思い出すことが出来ない。
厳重に鍵をかけた記憶の奥底。
その鍵を一つ一つ開いて、呼び起こしていく。
自身の異能、その根底へと近づいていく。
クリアになった意識の端で
鳴り止まない戦場音楽が奇妙な程静かな、その端で聞こえてきた
最後の一体が、その強靭なる顎で噛み砕かれた音
『…見透かされたかな?だけど。』
敵の足音が近づいてくる
それすらも、ゆっくりと聞こえる程に研ぎ澄ましていく
カチリ
そして、自身の原初たる異能を解き放つ為の最後の鍵を開いた
見開いた目が捉えたのは、今まさに自分を食い破らんとするツムギアリの大顎
安室冥路はただ静かに、微笑んだ
「ちょっと遅かったね?」
ツムギアリの顎が捉えたのは虚空
確かに一瞬前まではそこにいた筈の安室冥路の姿は掻き消えていた
ツムギアリのスピードは決して、遅くなどは無い
だがしかし、確かに、遅かった
もう少し早く、安室冥路に襲いかかっていれば
彼は確かにその規格外の力で安室冥路を殺害せしめていた
直後、ツムギアリが背後に巨椀を振るったのは野生の勘だっただろうか
今度こそ捉えた筈の腕が、敵を粉砕する筈だった腕が
半分、消えてなくなった事に彼は気が付けただろうか?
先ほど相対していた筈の敵と同じ気配の
しかし先程とは全く違う姿になった敵の姿を捉えたのが
ツムギアリの見た最後の光景となった
「…ごめんね、こっちも死ぬまでは死ぬ訳にいかないし」
薄紫色の装甲を纏い、敵を腹部を貫いた右腕を引き抜いて
倒れ伏したツムギアリに視線を落とす
普段彼の使う異能"インスタント・パッケージ"は
所謂異能ステージ説におけるところのサードステージであり
自身の持った本来の異能を遠く切り離したもので
これが安室冥路の持つ、原初の異能
自身を対象に、極めて強度の高い"異能物質"を纏い
意志と思考、反射でもって強制的に、限界を越えた駆動すら可能とさせる力
限界を越える、その代償は大きいが
「お前も群れの為に必死なんだろうけどさ」
「こっちも、友達の為に必死なんだ」
ウィリー > この種ーーパラポネラもまた、ご多分に漏れず古い時代の戦術を用いている。が、そこにはもちろん例外もある。
剣闘士に似た戦い方ではあるが、明らかに銃への警戒心とそれ以外の意図を感じる立ち回りをしている。
突撃銃に持ち替えて剣撃を弾く。袈裟の一振りを一旦受け止め、体を横に流し相手の体勢を崩そうとする。
しかし、パラポネラは踏みとどまってカチカチと顎をならした。
まるで笑っているようだ。すぐに下段からの抉り込むような突きが来る。
「っ!」余りにも正確で速すぎる。防ぐのは無理、ならば避けるしかあるまい。
バックステップで辛うじて避けた、そのタイミングでの一撃。
顔面をしたたかに打つシールドバッシュ。
脳が揺れる。鼻血と口の中を切った血とが混ざって宙に舞う。
ーー無駄がない。流れるような動きを見るに、戦いなれている……
ならば、こそ。
この蟻人は、次の一手においてもそうであろう。
白目を向いたウィリーが、血走った金の双眸を取り戻す。
パラポネラがとどめに用いるそれに、のし紙をつけて返すためだ。
膝をつく寸前のところ。必殺の一撃が容赦なく頭部をめがけて降り下ろされる瞬間。
「鉄魔法《流動》」ボロボロの突撃銃が金属の塊の体を捨て水銀のように動き回り、相手の尾を絡みとる。尾だけではない。
肉体のその全てを覆っていく!
「鉄魔法《固定》」金属は肉体の形のままに硬化して。
ウィリーは立ち上がると、尾の毒針だけが飛び出していたところをめがけて、銃弾を叩き込んだ。
「だから最初に言っただろうに」
毒針の成分が爆発的なエネルギーを発し炎となって。バレットアントは自らの弾丸が招いた炎の中で炭へと変わっていった。
桜井 雄二 > シン・アルバートの風が仲間が両肩に乗った瞬間の軍隊アリの姿勢を崩す。
倒れこむ二体の軍隊アリ。
それをフォローするように残った軍隊アリが単騎で斬撃を仕掛けてくる。
だが、それだけだ。
三位一体の連携は崩れた。
一直線に並んだ三体の軍隊アリは。
もう処刑台に上がったに等しい。
湖城惣一に向けられる刃は鋭い。
どこまでも続く刃の乱舞。
刹那の見切り、瞬く光の閃光。
が。
サムライアリの姿勢が崩される。
それは剣技、その技量にて敗北した証左。
一閃と共にサムライアリの胴体から顔が切り裂かれる。
サムライアリが次の一手を練る。
血や砂の目潰しか? それともさらなる剣技で凌駕するべきか?
いや、違う。負けを……認めるべきなのだ。
黒い血を流しながら、サムライアリがその場に膝を突いた。
何か言いたげに手を伸ばした瞬間、傷口が開く。
サムライアリは魚の開きのように傷を広げて倒れこんだ。
白崎玲刃に襲い掛かった蟻人たちの武器が破壊されていく。
意味がわからない、と言う顔で立ち尽くす蟻人たちが投げナイフが当たり、刺殺されていく。
氷の魔剣の硬度は凄まじい。
それを振るうだけで、次々と破片を散らして蟻人の武器が壊されていく。
戦況が、白崎玲刃の参戦により、戦況は傾きつつあった。
ツムギアリが人型を噛み砕く。
その顎の力は金属や宝石、骨であろうとも用意に噛み貫く。
そして、安室冥路を殺すために欲望の顎を開き、向かう。
しかし。
気がつけば、相手はいない。
本能に従い、腕を振るう。しかし。
自分は謎の刃に、いや違う。殺そうとした相手が纏った装刃、その右腕に貫かれていた。
ツムギアリが呻き声を上げて倒れこむ。
絶命。
蟻人上位種であるツムギアリの存在そのものが、断たれた瞬間だった。
パラポネラがシールドバッシュを決めた瞬間、勝ちを確信した。
必ずこいつを激痛の中で呻きまわらせてやる。
その上で首を刎ねてやろう。そう思った。
しかしそれは叶わない。
肉体を金属で覆われ、全く動くことができない。
呻くことすらも。
次の瞬間、撃ち込まれる銃弾。
炎の中に沈み込み、弾丸アリは自らの業によって命を断たれた。
ファイアーアントの猛攻を辛うじて凌ぎながら、桜井が立ち回る。
相手は強い。そして、恐らくだが相手は奥の手を隠し持っている。
自分も持てる力の全てを持って、相手を倒さなければならない。
右側から獄炎を、左側から極低温を吹き上げる。真・魔人化。
それでも彼我の技量の差は埋まらない。
相手の攻撃をかわし、凌ぎ、それでも。
ファイアーアントの剣が桜井の太ももを貫き、そして。
膝を突く桜井に対してファイアーアントが尻尾を、その先端にある針を突き出す。
ファイアーアントの持つ毒はフグ毒と似た成分を持っている。
間違いのない、致死の一撃。
だがそれは届かない。
「悪いな……勝てそうにないから、奥の手を使わせてもらった…」
「お前の周囲だけ、酸素を急激に燃焼させた……」
「お前らがどれだけ酸素を必要とするかは、知らないけど」
よろめきながら立ち上がって、右足で震えながら動きを止めたファイアーアントの腹部を軽く蹴る。
それは敵に右足を乗せた、くらいの軽いものだ。
「なかなかに効くだろう?」
次の瞬間、爆発的に炎が右足から吹き上がり、獄炎は円錐状になって相手の防具を削る。
後方に跳躍し、背後に炎で推進力を作り出す。
熱せられた空気がブースターのように燃えて相手に向けて桜井が飛翔する。
円錐状の炎に飛び込むように左足で蹴りつける。
極低温の核を足で叩き込みながら、反動で後方に跳ぶ。
着地。そして敵に人差し指を向けた。
「地獄に落ちろ」
蹴りで吹き飛んだサムライアリが獄炎と極低温の急激な反応により、消滅エネルギーを部分的に発生させて爆裂する。
バラバラになった蟻人上位種の死体が散らばった。
桜井 雄二 > 「シン・アルバート! その蟻人を片付けたら…」
「みんなでやるんだ!!」
「あの女王蟻を倒して、ゲートを消し去る!!」
右手と左手を組んで、意識を集中し始める。
最終能力(ファイネストアーツ)、極大消滅波。
両手の中に消滅エネルギーを作り出し、ゲートごと全てを吹き飛ばすつもりだ。
もちろん、それまでに集中が途切れなければ。
シン・アルバート > 「さぁ、雑魚も一緒に流してやるから」
「……下等な一兵卒と一緒にされる事を嘆きながら、搾り取られるんだな?」
連携攻撃が崩れれば、三位一体ということで、成立していた精鋭は。
……ただの蟻人だ。
容赦無く、その生命は、他の蟻人と同様に、摘み取られ、刈り取られ、……風の中の弾となる。
「ああ、こうしてしまえば後は巻き込み続けるだけでいい。風に乗せてしまえば勝手に弱ってくれるからな。」
そう言って桜井の方を向き、彼が必殺の技を撃ち込もうとせんことは、見て取れた。
ならば、己れの、するべきことは?……簡単だ。
「……打ち込むのならば、邪魔はこちらで掬い上げておこう」
「精鋭でない雑魚同然の物に、邪魔立てが出来るとは、思わせん」
集中を切らさせぬ様に、妨害を全力で排す。それだけ。
後は、機を見計らって、増えた『弾』を親元に『返却』すればいい。
湖城惣一 > 「…………」
沈んだ最中、諦めたように倒れこむ蟻人を見た。
その姿にはただの狂乱だけが映るわけではない。
むしろ知性すらも感じさせるものだった。
無表情に、淡々と。湖城惣一は倒れ伏す蟻人を見る。
敵も味方も居ない。だからこそ彼は迷わず対手を断てる。
それは湖城惣一という男の機能であり、ただ一つの働きだ。
怪異も蟻人もつまるところ知性を持つものである場合は少なくない。
しかし、それでも湖城惣一は斬る相手に感傷は懐かない。
吐き出されるのは結果だ。まるで機械のようだと人は言う。
「…………次か」
見上げるのは巨大な威容。圧倒的に巨大な女王蟻。
そこでようやく、湖城惣一は己の腹を割く。
――ひと、ふた、み、よ、いつ、むゆ、なな、や。ここのたり。
本来ならば神域に至るための"それ"だが、今回はそれとは違う。
そもそもこれは己の命を神へと奉納するための儀式。
血潮のかわりに腹より立ち上る淡い光は、命を変換することによって顕れる濃密なまでの神力。
その光に包まれながら湖城惣一は朗々と祝詞を奏上する。
あらゆる危難を取り払い、戦に勝利するためのそれ。
脇差しを剣に見立てての剣舞とともに。
この場にいる全ての力を増幅する。
白崎玲刃 > ああ、あれが大ボスか…
【大方自分の方へと向かってきていた蟻人達を片付けると
桜井の言葉を聞き、女王蟻を見据えながら呟く。】
邪魔はさせない。
【桜井の攻撃を見据え、桜井の邪魔をしようとする蟻人に対し、投げナイフを投げながら、
シン・アルバートの活躍もあり、大体周囲の蟻人が片付いて来たのを見やると、
収納の魔術を発動し、水の魔剣を仕舞い、弓を取り出し、もう片方手で取り出すのは、投げナイフでは無く大剣だ。
玲刃は大剣を弓につがえると、
未だ、ゲートから這い出てこようとする蟻人達へと向けて女王共々狙いを定め
限界まで引き絞り、
総攻撃という最高のタイミングを待ち続ける】
安室 冥路 > 「オッケー、"フィニッシュ"は任せたよ桜井くん!」
何処か機械敵な動き、人間的とは言えない駆動で持って苦戦する味方の手助けを行っていたが
桜井の声を聞いて、その意図を察する
敵の"将軍"格は倒した、既に蟻人の歩兵達は統制を失いつつあり、武器を失い戦意も喪失しつつある
あとはあの大物…女王蟻を倒すまで、だ。
その大役、締めは桜井に。彼ならばやる。その確信がある。
ならば自分はその時間稼ぎをするまで…
今の自分はスピードこそあるが小回りが効かない。要するに撹乱は向かない
「タメが終わるまで、桜井くんには指一本、触覚一本触らせないから、さ」
桜井の周囲に陣取り、彼が"何か"をしようとしている、と気付いた蟻人達を牽制し、切り裂いていく
自身の役割を守護と定める…性質的に、攻めこむというのが苦手というのもあるが
久しぶりの異能使用で酷使された体では、それが精一杯だった、とも言える
ウィリー > 「城を守る石垣も兵もない、ふんぞり返っていていいのか女王?」
運のいい事に、自分はまだ生きている。みっともない姿ではあるが戦える。
そして見た限り、主戦力といっていい連中も踏みとどまったようだ。
「それ以外は……厳しそうだな」
落ちていた矢を数本拾い鉄魔法で剣に変えると、生き残りの蟻人を次々と切り捨てていく。桜井への邪魔が入らぬように。
「うまくやれよ、桜井」
蓄えたエネルギーをストレージに移動する。今回はもう、使う必要もない。後は落ち穂拾いのようなものだ
桜井 雄二 > ウィリーとシン・アルバートと安室冥路が桜井の周囲の敵を討滅していく。
全ては最後の一撃のために。
極めし一撃で、戦争を終わらせるために。
左手の氷、右手の炎。双方のエネルギーを結集させ、全てを消滅させる力を放つ。
これは精緻なコントロールがあるからこそ成立する最後の攻撃。
今まで実戦で成功させたことは、一度しかなかった。
それに。
「ぐ、ううう!!」
異能を真・魔人化で強化した今、そのコントロールの難度は通常時の比ではない。
全身が凍りつく、あるいは全身が燃え尽きてしまいそうだ。
それでも。
あの笑顔に。
三千歳泪の元に帰るんだ。
「兄さん、力を貸してくれー!!」
亡き兄を想う。この炎熱の力を完全に制御していた、兄を。
この力を死してなお、自分に託した兄を。
兄の復讐ではなく、全てを守るためにこの力を使いたい。
そう、思った。
「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
右の背から炎の翼が、左の背から氷の羽根が生える。
余剰エネルギーを後方に逃がした結果だ。
今、両手の中に完全に制御された消滅エネルギーが満ちている。
湖城惣一の祝詞により、力の方向性も定まる。
桜井に力が集中するのを見て、こちらへ向けて突撃しようとしていた女王蟻。
白崎玲刃が弓から放った大剣に刺し貫かれ、大量に亜人を産むための下半身を吹き飛ばされて身悶える。
放たれたその速度は音を超えていた。破壊力も並外れており、それだけで女王蟻は瀕死。
それでも下半身を切り離し、上半身だけで巨体を器用に動かしながら女王蟻は迫ってくる。
そこに加速された大量の『散弾』が迫る。
黒い風を使う男の放つそれは、蟻人の屍を大量に巻き込み、暴風となって女王蟻を襲う。
それでも前に出る。それでも女王蟻は一人でも多く道連れにしようと妄執のままに迫る。
みんな、ありがとう。
もう大丈夫だ。撃てる――――今なら。
「消え失せろ、この世界からー!!」
両手から白い光の奔流が放たれる。
それは異世界と繋がるゲートから半分以上体を乗り出していた、蟻人の女王蟻を消し飛ばし。
ゲート全てを飲み込み、削り取って吹き飛ばした。
「はぁ………はぁ………はぁ……」
もう火の粉一つ、氷片一片たりとも作る余力はない。
桜井が両手を組んだままの姿勢で、荒い吐息を漏らした。
「勝った………のか……?」
世界の修復力により、極大消滅波により消し飛んだ世界の一部が通常空間に戻っていく。
後には蟻人の死体と、残された人類が残るばかり。
怪異対策室のメンバーたちから歓声が上がった。
湖城惣一 > 「――――終わったか」
桜井雄二の一撃は全てを吹き飛ばした。
その一撃は見惚れるほどに完璧であった。
それは奇跡の一撃。およそ湖城の境地とは両極の関係にある技。
己には一生真似できまいと心中思いながら賞賛した。
神力を過剰に奉納する切腹奉納からの奏上は、ともすればただ戦闘するよりも消耗が激しい。
相手の送還、周囲の無事を確認するなり膝をつく。
「は」
崩れ落ちながら、もう一度笑みを浮かべた。
今までに遭遇し得なかった戦場。それは彼にいかほどの影響を与えたのかは分からない。
しかしながら。
「これで……ゆっくり飯が食えるというものだな」
怪異対策室の面々を含めた全員を見回して、大きく息を吐いた。
安室 冥路 > 例えて言うのであれば天使、だろうか。
炎と氷、相反する二つの翼を持ったそれは熾天使
冒涜者を審判するもの、神の光を持って断罪を成すもの
大天使ウリエルを彷彿とさせる、光の奔流が
女王蟻を、ゲートを、飲み込み消し飛ばしてゆく様を半ば呆然とした顔で見届けた
『…とんでもないものを見た。』
無数の蟻人達と戦い続けた戦士達からの歓声、それを聞いて、我に返る
異能を解除し、座り込んでポシェットの栄養ドリンクを取り出し、飲み干して一息つく
「…あっはは、すっげぇ。なんとかなっちゃったよ。あっはっはっ…♪」
何が面白いのか、喜ばしい事には違いないが何故か笑いがこみ上げて
手を叩きながら暫し笑い声をあげる。
目元に溜まる涙は、限界の駆動を繰り返した体が悲鳴を上げたからか、笑いすぎたからか
一頻り笑い転げた後。改めてこの難局を乗り切った"仲間"を見回して
「お疲れ様。」
疲れきった、だが充足感に満ちた笑みを浮かべて一言、絞り出した
白崎玲刃 > っぅぅ……
【限界まで振り絞り大剣を弓で放った玲刃の手も無事では済まなかった
放たれた大剣の伴う衝撃と放った反動により腕や手の骨にひびが入ったり折れたりし、衝撃波で皮膚が裂け
負ったダメージの苦痛に呻く。】
………流石だな…桜井。
【しかし、次の瞬間見えた桜井の攻撃の凄まじさを見て痛みを忘れ唖然とする。
そして、女王蟻とゲートが消滅したのを見やり、
極大消滅波の壮絶な威力に感心したように桜井へと呟いた。】
ああ、勝ったんだ。
【怪異対策室のメンバーやこの場に集まった者たちを見回し、
そして、蟻人が居なくなった事を確認しながら玲も警戒を緩めると
玲刃も安堵したように、一つ溜め息を吐きながらその場に座り込む。】
シン・アルバート > 上だけになってもなお、妄執で駆け抜けた、貪欲なるモノが、
……氷炎と、爆炎とが生み出す消滅波により、『なくなった』。
断末魔も上げる暇があったのだろうか? 流石にそれは知らないが。
「道連れは、十分過ぎただろうに。」
「………贅沢な母親だな、最後まで」
風が、黒い風が、霧散し、行使が終了する。
流石に最初から最後まで長時間制御しっぱなしだったこともあってか、
『奪いとった』分では割に合わなかったのかふらふらと体勢を崩しかけ………
ぺたんと座り込んだ。多少その姿勢は崩れている。
「ゆっくり休めるだろうな、少なくとも。」
乱れかかっていた手首の包帯を戻す。
夏場の彼にとっては誤魔化すために必要なものなので手放せないのだが、
流石に他人に痛々しい手首の痕を見せるわけにもいかないので、見つかる前にこうして、隠そうとするのはいつものことらしい。
「……これで、『この件』は終わってくれると、助かるんだが、なぁ」
「流石に侵略者戦争はあんまり、好きじゃない」
ウィリー > 一撃の後の静寂。
ついに、それは打倒された。
「……疲れたが、まあ前途あるカップルを守れたと言うことで」
座り込んで、にっと笑う。
桜井 雄二 > 「ああ……そうだな、湖城惣一」
あちこちが焦げていて、そのくせ氷で固着していた両手を引き剥がし。
「腹が減ったよ、味噌バターコーンラーメンって気分だ……替え玉ありのな」
「……ありがとう、湖城惣一。今回も助けられたな」
「何か、すっきりした。自分の目の前にかかっていた霞が晴れたような気分だ」
そう言って無表情に自分の両手を振った。
安室冥路に手を振って近づく。
「ああ、何とかなるものだ。結果としてみれば大勝だな」
「これもお前のおかげだ、安室冥路。なんだあの姿は」
「蟻人上位種が一撃だったじゃないか、たいしたやつだよお前は」
無表情ながら、相手の目を見て。
「お疲れ様」
そう言って、自分の口の端を両手で持ち上げた。
白崎玲刃に向かって軽く手を上げる。
「さすがなのはお前のほうだ、白崎玲刃」
「奥の手を使ったからか? その手、痛そうだな…」
「俺もしばらく箸を持つのに苦労しそうだ」
あちこちが焦げ、あちこちが凍った両手を見せた。
「全く、勝つというのも大変だな……」
シン・アルバートに頭を下げて。
「すまない、また助けられた」
「そうだな……やっぱり、あの蟻人たちは領土が欲しかったのだろうか」
「……こんな被害を蒙ってまで、求めるものかは知らないけれど」
青空を見上げた。どこまでも広がる空を。
「こんなのは、もうたくさんだ」
ウィリー・トムスンに首を傾げる。
「そういえばそうだな、三千歳泪に……」
「正式に告白してみる」
両手を広げて、あれこれと言い訳を始めた。
「今までこう、友達以上恋人未満のままあれこれあちこち遊びに行っていたが」
「俺は変わるぞ、ウィリー・トムスン。泪に彼女になってもらう」
「上手くいかなかったら……その時はその時だ」
無表情に、よく喋るものである。
安室 冥路 > ポシェットを弄れば、先程自分が飲み干したものと同じ栄養ドリンクがあと6本。
丁度最前線に出ていた面々と同じ数。
見知った顔はそれこそ桜井しかいない、が。
共に死線を潜ったもの同士、仲間と言っても差し支えないだろう
湖城、ウィリー、シン、白崎、桜井
五人に向けてそれぞれ、栄養ドリンクの瓶を放り投げる
「乾杯するには色気の欠片も無いけど、良かった飲んで。みんな疲れてるっしょ。」
「ぬるいけど、疲れた体にはけっこー効くよこれ」
「みんな、凄かった。みんなと戦えて、良かったよ。頼もしかった。」
へらり、緩い笑みを浮かべてそれぞれの顔を見比べるように視線を移していき…親指を立てた
湖城惣一 > ひとまず。
「どうしようもない負傷のものがいればこれを使え」
そう言いながら、いくつかの符を取り出した。数はそれほど多くないが、
効果は覿面。湖城という男が切腹をしたあと、その治療に使うものである。
失った血までは取り返せないが、おおよその傷であれば復元する。
自分にもそれを使った後、怪異対策室の面々にも配っていくだろう。
そして、桜井にかけられた言葉には、
「何、全ては君が導いた成果だ。俺も、彼らも。恐らくは」
あらゆる価値を置き去りにする湖城の剣は、まさに今回の結果とすら真逆と言える。
桜井雄二の力とは、ただ己の裡にとどまらないものなのだと認識した。
それを羨ましく思うことはないが、同時に、桜井雄二という男の立ち位置を認めるのであった。
「ラーメンか。君の勧める店で無心にかきこみたい気分だが」
桜井にも護符を投げ渡しながら、
「その傷ではラーメンをすすることも難しいだろう。使え。……む」
そして、放り投げられてきた栄養ドリンク。
「なるほど」
それを軽く掲げてみせる。
こうした音頭をとるべきは、この場に一人しか居るまい。
白崎玲刃 > ははは、俺のはあくまで武器に頼ったに過ぎないさ。
奥の手というよりは力を限界まで振り絞ったって奴だな。
【玲刃は褒められ慣れて無いのか照れた様に呟く。】
ふむ……もし良かったら治癒するか?
【桜井の両手の負傷を見ると。
骨折していない、骨にひびの入った方の手を身体強化で無理やり動かし、
呪符Cを2枚ほど取り出しながら問う。】
ああ、大変さ。相手だって必死なんだからな。
ああ、ありがとうな。
【冥路からドリンクの瓶を受け取ると、
礼を言いながら玲刃も、身体強化で無理やり動かし、親指を立てた。】
シン・アルバート > 「……就職に関してはご自由に?というところか。」
「就職という表現は可笑しいが、現状は何処にも籍を入れていない『普通の』学生だからな?」
ここまでやったんだから、流石に何もアクションが無いのは怖いなぁ、と思っているから故の発言なのだが……
聞く限りだと「スカウトしてもいいんじゃよ?」と聞こえなくはない。
本人にそういう意図は全くない、つもりである。
「それでも。」
「………呼ばれたら、己れで良ければ、力になろう。立場が今と変わろうが変わらまいがそれだけは、言えることだ。…サクライ」
「だから、頭を下げなくてもいい。己れは、己れの意志で、手伝ったのだから」
頭を下げる桜井に、少々困惑しながら、そう答える。
投げられる栄養ドリンクを受け取り、つつも、彼への視線は外さず。
それを、待っている。
安室 冥路 > ほんと、気持ちのいい奴等だ。どうも全員が全員、桜井とは繋がりのある人物のようだが…
皆、満身創痍であるにも関わらず。自分よりも他人の心配をしている
まぁ、命懸けの現場に駆けつけてくるような連中だ
度を越したお人好しばかりなのは、想像に難くない
あちこちの筋肉が痛むというのに、くっくっと笑って
彼の、合図を待つ
桜井 雄二 > 安室冥路から投げられた栄養ドリンクを受け取り。
「おっと……いいな、みんなで飲もう」
「乾杯? 俺が言うのか?」
うむむむ、と栄養ドリンクを片手に固まっている。
「そ、それじゃ僭越ながら……」
「ああ、ありがとう湖城惣一」
一枚だけ符を受け取って右手に貼った。
「お、おお……便利だなこれ、痛みが引いたぞ」
「……湖城惣一、お前もたいした男だ」
「お前の友人でいられることを、そして共に戦えたことを誇りに思う」
白崎玲刃からも呪符を一枚だけ受け取り。
「ありがとう、こっちは左手に使わせてもらおう」
「おお……これでラーメンが食えるな…」
「……白崎玲刃、その手より俺の手を優先させてよかったのか…?」
両手を振る。もう痛くない。助かったけれど、少し申し訳ない。
そして、桜井もみんなに親指を立ててみた。
お互いを労うように。
「そうか、そういうことかシン・アルバート」
「それなら生活委員会に入るか? みんなで掃除、楽しく掃除、死ぬまで掃除だ」
たまには桜井も冗談を言うことがある。
「……ありがとう、シン・アルバート」
「お前も俺の大切な友人だ、何かあったら呼んでくれ、力になる」
そして周囲を見渡しながら、咳払いを一つ。
「今日という勝利を祝って……乾杯!」
栄養ドリンクの蓋を開け、そして――――それを飲み干すと、自然な笑顔を見せた。
これは男が本当の笑顔を取り戻すまでの物語。
友情と恋と、戦いと涙と。
それは有限の時間の中で、不器用な彼が掴み取った全て。
第二部 氷炎の支配者 桜井雄二編 完
第三部 星空の観測者 三枝あかり編へと続く
ご案内:「転移荒野外縁部」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入歓迎)>
ご案内:「転移荒野外縁部」から安室 冥路さんが去りました。<補足:生活委員の腕章を付けた学生服姿。>
ご案内:「転移荒野外縁部」から湖城惣一さんが去りました。<補足:どなたでも乱入歓迎。身長181cmの痩せぎすで目つきの悪い男。勘違いしたような和装ベースのファッション。横一文字に傷痕の残る腹を丸出し。>
ご案内:「転移荒野外縁部」からシン・アルバートさんが去りました。<補足:日系アメリカ3世の青年、半袖ジャケット。両方の手首に包帯>
ご案内:「転移荒野外縁部」から白崎玲刃さんが去りました。<補足:自由人な、なんでも屋。>