2015/07/10 - 22:42~01:40 のログ
ご案内:「スラム」に癲狂聖者さんが現れました。<補足:謎の動物の仮面を被った舞台衣装の怪人。(乱入歓迎)>
癲狂聖者 > スラムの片隅、入り組んだ地形のさらに奥まった場所。
そこには舞台があった。
単に木材がそれっぽく重なっているだけだが――――
フェニーチェという組織は時折、ここを利用する。

違法薬物と演劇の魅力を教え込むための劇場として。

舞台の上に仮面の男が立っている。
舞台衣装に袖を通し、足場の悪い舞台の上をまるでスケートでもするかのように滑らかに移動して回る。

「きみも舞踏会に行きたいのかね」
芝居がかった口調でゆっくりと振り返る。
「よろしい。では仮装着(ドミノ)と天鵞絨(ビロード)の仮面を手に入れたまえ」
「仮装着は黒繻子の、なるべく洒落たやつがいい」
「それから舞踏靴と、とくに今回は黒絹の靴下をはきたまえ」
「で、火曜日の晩十時半ごろ、きみの家で待っていたまえ」
「ぼくが迎えに行くからね」
仮面の男が喜色たっぷりに語りかける。
「とまぁ、ジャン・ロランの『仮面の孔』という作品の台詞ですな」

観客は薬物で酩酊したまま、彼の一人舞台を見る。

癲狂聖者 > 「薬は十分に行き渡りましたかな……?」
観客の目を引く派手な動作、それは演者の乱れ舞い。
「結構!」
「今宵は私、癲狂聖者(ユーロジヴィ)のステージにようこそ!」
「罪もなき囚人たちよ! 私たち、フェニーチェの劇を見に来てくれたことを感謝します」

腐った目をしたスラムの住民たちの視線は今、彼に注がれている。

「ホラー短篇の雄・ロバート・ブロックがその世界に入るきっかけになったのは、ある映画のワン・シーンを見てからです」
「それは無声映画の『オペラの怪人』ヒロインが怪人の白い仮面を取り去り、その素顔を見た瞬間の絶叫シーン」
「ロン・チャニーが演じた素顔の怪人もさることながら、恐怖映画には魅力的な仮面が数多く存在する」

男は芝居がかった台詞と動きで舞台の上を『滑る』。
ツツ、と移動すれば、まるで魔術師か何かのよう。
そこは異界、口を開いた非日常。

癲狂聖者 > 「連続殺人鬼(シリアル・キラー)ものに限ってみても、なにより有名な『十三日の金曜日』シリーズ」
「あれはホッケー・マスクでしたな……」

男が手を軽く振ると、手の中にホッケーマスクが現れる。
手品か、魔術か。しかしそのマスクからは禍々しい雰囲気すら感じる。

「『悪魔のいけにえ』の電動鋸男の人肉面(レザー・フェイス)」
「『ハロウィーン』シリーズの怪人ブギーマンの白い仮面」
「あれはSF映画の『スタートレック』のカーク船長のラバーマスクを改造したものというのは有名な逸話です」

話をしながら、男は手の中に何枚もの仮面を用意し、そして消していく。
仮面。そう、仮面―――――男がもっとも執着しているもの。
仮面こそが今日の舞台のキーワード。

仮面で表情こそわからないものの、男の声は喜びに満ちている。
それが胡散臭い、という点を除けば。
好きなボードゲームの話をする少年のように純粋だ。

癲狂聖者 > 「センスの光るところでは、ミケーレ・ソアビ監督のイタリア映画『アクエリアス』」
「巨大な梟の仮面が錬金術的なムードさえ感じさせてくれたものです」
そこで男は自分の仮面をくい、と人差し指で軽く持ち上げる。
「今日の私の仮面はいかがでしょうかな?」
「私、ユーロジヴィのお気に入りなのですが」

外套を翻し、そうおどけて見せると、観客たちが顔を見合わせて笑った。
演劇に必要なものは何か。
その一つに、観客に共通体験をさせるということがある。
共に笑い、共に泣き、共に怒る。
その一体感が劇を名作たらしめるのだ。

今は、その一体感を増すために薬物を使用しているだけだ。

ご案内:「スラム」にマティアスさんが現れました。<補足:マティアス・ベルンシュタイン/14歳ぐらいに見える少年、背に脊椎と肋骨の絵がプリントされた黒い学ラン>
ご案内:「スラム」にヴィクトリアさんが現れました。<補足:ネコミミパーカーに縞ニーソの少女>
癲狂聖者 > 月光のスポットライト。捻れた世界観の演出。
それらを計算した上で舞台は成立する。
ああ、良い月夜だ。とても良い月夜だ。

「そう! お気づきのように、これらの恐怖映画には、ノン超自然(スーパー・ナチュラル)なストーリーも多い!」
「妖魔・怪物ならぬ、日常的な人間の恐怖。これらを、超自然的なベクトルへと近づけるためには」
コツコツ、と指先で自分の仮面を叩く。
「――――――仮面という異形が必要だったのです」

その時、観客の一人が倒れた。
ドラッグに耐性のない人間が混じっていたのだろう。
仮面の男が指を鳴らすと、その観客は謎の男たちに担ぎ出されていく。

「いやはや、私の夢は実は演者ではなく舞台監督でしてな!」
「こうして人を使う立場に若干の憧れが」
冗談を交えて、仮面の男の話は続けられる。

ご案内:「スラム」に三崎 春華さんが現れました。<補足:桃髪で薄着の少女。>
ヴィクトリア > ……あー。
【なんか聞こえてくると思ったら、アレか
スラムには馴染みが深いから知ってる例のやつだ

ぶっちゃけ、あんまタチの良くないヤツだ
安全はどーでもいいのだが、ボクの大事なコマを削り落とすやつだってのがあまり好ましくない
そういった安全や規律は風紀や公安の仕事だ、ボクの知ったことじゃない

そう言う意味で、また復帰したのはあまり好ましくないなーと思いつつ様子を見る】

三崎 春華 > [「客席」の中には一人の少女。一見スラムの住民に見えるが、舞台からは意思のはっきりした眼――薬物に溺れていない――が見て取れるだろう。少女は微笑みながら話を聞いている]
マティアス > 「んふっ」

(冷酷に、客観的に、愉快に笑う少年が一人)


「楽しそうですね面白いですね愉快に愉快ですね? ええ、こういう「如何にも」な雰囲気とか、オクスリやってそうな舞台とか好きですね?」

(落第街中に漂う澱んだ雰囲気を楽しみながら、緊急用の細胞をばら蒔くために彷徨いていたのだが、なかなか楽しそうな光景が目の前に広がっているようだ、ニヤニヤしながら一人呟く)
(こういうヤバそうな雰囲気はクズいので大好きだ、物陰から傍観する)

癲狂聖者 > 「しかし、仮面舞踏会には、堂々と本物の怪魔も忍び込んできます」
「エドガー・アラン・ポオの『赤死病の仮面』という作品をご存知かな?」
「それは――――――」

話の途中で、薬物に淀んでいない瞳を見つける。

「その話はまた次の機会にいたしましょう」
「そこのお嬢様、舞台にお上がりください」

三崎春華を指名し、手招きする。

「あなたの瞳は美しい、さぁ! 一晩のヒロインとなりましょう!」
「それとも、あなたにも役名が必要ですかな?」
「殺戮の舞台女優、とでもお呼びしましょうか」

芝居がかった台詞で客席の少女を呼ぶ。

三崎 春華 > [こちらに向けて言われている事を確認すると、とりあえず周りを見渡す。他の人に言っているのではないようだ]
「私、ですか?」
「いやあ、照れちゃいますねー」
[少女の服装は演者とは正反対と言えるほどラフだ。木の階段をスニーカーでこんこんと上がる]

「役者不足かもしれませんが、せっかく名前を貰えるのならそれでいきましょう」

「私は≪殺戮の舞台女優(レーヌ・ミシェル)≫」
[靡く飾りがあるかのように、くるりと回ってみせる]

マティアス > (舞台の上に少女が上がったのを見て、呟く)

「んー、んー、なにか始まるみたいですね?」

(んふっ、と笑いながら心の中で拍手、まだ前に出るつもりは無い)

ヴィクトリア > あーあー、楽しそーだなァ?
【物陰から見守る。
正直、舞台がどーなろうと割とどうでもいい
なんとゆーか、アレだ
ボクの迷惑になりそーなことをされると気分的にムカつくというだけだ

とゆー訳で、コトの成り行きをとりあえず見守る
困ったことにされなきゃいーなーと思いつつ】

癲狂聖者 > パン、と手を叩くと、くるりとターンをした。
そして舞台に上がる少女に恭しく一礼。
「皆様、レーヌ・ミシェルに大きな拍手をお願いします!」
観客たちが拍手を始める。
それは扇動。いざとなれば、スラム街の住人程度巻き込んでしまえるという劇団の手管。
しばらく続いていた拍手を、右手を上げて制する。

「世にも怪奇(ビザール)な仮面舞踏会(マスカレード)へようこそ!」
「貴方のようなダンシング・パートナーの到来を待っていました」
「レーヌ・ミシェル………さぁ、私と握手をしましょう」
仮面の男が白手袋を嵌めた右手を差し出す。
「夢のようなひと時を、あなたへ」

その右手の手袋からは僅かに、ほんの僅かに。
注射器の針のようなものが突き出ている。
先ほど住人たちに使った違法薬物と同質のもの。
刺されば、ドラッグの影響を受ける。常人なら。

仮面の男は悪意の握手を求めた。
まるで淀みのない動き、完全に意思の元に制御された一挙手一投足。
彼は演じているだけだ。フェニーチェの一員という、役を。

三崎 春華 > [鳴り響く拍手に向かっての一礼。そして向き直り、手を伸ばす]

[少女には、針先の光は見えていない。が]

「ううん…手袋、脱いでもらってはいけないのですか?」

[彼女の力は、密着するほど、肌を合わせるほど強力な精神干渉を行えるものだ。]
[手袋をされては、時として発動すらも危うい。易々と提案を聞いてもらえるとも思っていないが]

ヴィクトリア > なんつーかなァ……
【正直、勢いに乗り損なった冷めた観客というのはつまらないのだ
劇である以上、一度演技だと思ってしまえば、あとは延々と嘘を繰り返されるだけである
しかも、もともと楽しむためでなく面倒くさいし邪魔、と思って見に来ているのである
退屈極まりない
さてどうしてくれようか

ここで見ているのもいいし、まあ大体把握したし代わり映えしないだろうと周りに目を向けるのもいい】

ヴィクトリア > ……ぁー、よし決めた
【よく考えれば、自分が確かめなければいけないわけじゃない
子飼いの2級たちがいるのだ、とりあえず誰が何をしているかさえ把握してしまった今はさして困るわけでもないし
巻き込まれたら、2級の連中は言うことを聞くとはいえ薬の影響は避けられない以上、面倒でもある

ここの把握は任せ、自身は別件に対応しようか
今のボクがここでできることは限られている以上、それくらいでちょうどいい

物陰へ引っ込むと、そのまま姿を消した】

ご案内:「スラム」からヴィクトリアさんが去りました。<補足:ネコミミパーカーに縞ニーソの少女>
マティアス > 「んー、んー、よく考えたら、別にここに居なくても私は劇を観れますね?」

(この場に居らずとも、自身の能力で「目」と「耳」を発生させれば普通に劇を観れる、生でもDVDでも対して差は無い)
(べたり、と血液のようなものを壁に塗る、見た目は悪いが「目」と「耳」の機能は有る)

癲狂聖者 > 内心、舌打ちをする仮面の男。
しかしすぐにプランを変更する。
握手をした後、彼女の背に左手を回す。
その瞬間に左手に持った右手袋の中の注射を刺せばいいだけだ。

この女も薬物でグズグズにして金蔓にしてくれる。

男の完璧な演技が、一瞬の間隙にあって素になった。
アドリブに入る瞬間、演者は素の自分と向き合う。

「おおっと、これは失礼! レーヌ・ミシェル……あなたは本物の淑女(レディ)のようだ」
手袋を外して右手を差し出す。
「さぁ、舞台の幕は開き、月光の元に花は咲き乱れる」
「さしずめあなたは月下美人―――――闇に瞬く大輪の華」
仮面の男がピンと立っていた背筋をそのまま屈めて握手を求める。
敬虔なる信徒のように、あるいは姫に傅く騎士のように。

マティアス > そのぶん次会ったときに楽しめればいいんですよ!
マティアス > (壁に設置した液体はうぞうぞと気持ち悪く蠢いている、正直手直しの必要があるレベルの見た目だと思う)
(きちんと機能しているのを確認すると、少年は路地から去る、次に会うのは何時かは分からないが、次も楽しめれば良いだろう)

ご案内:「スラム」からマティアスさんが去りました。<補足:マティアス・ベルンシュタイン/14歳ぐらいに見える少年、背に脊椎と肋骨の絵がプリントされた黒い学ラン>
三崎 春華 > 「いえいえ、褒められるほどの者ではありませんよ」
[演者が外した手袋に、針のような何かが月光で輝く]
[それは台本に無い動き故の瑕疵。先ほど客席で渡されたモノ。]

(……なるほど。「札を切る」しか無さそうですね)

「月下美人…いいですね。耐え忍び耐え忍び、一夜の舞台に全霊をかける。」
[屈んだ演者の手を取り、立ち上がるのを促すために軽く持ち上げる]

癲狂聖者 > 「そのようなことは!」
芝居がかった口調で『劇』を続ける。
「あなたが美しくないのであれば、この世界に美は存在しなくなってしまう!」

内心、笑いが止まらない。
この女はみすぼらしい見た目ではない。
金を持っていることだろう。

「そう、あなたにこそその名は相応しい―――」
促され、立ち上がる。まだだ、まだ針を刺すタイミングではない。
美しく、完璧に。それが自分が舞台に求めるもの。
演者としての誇り。

三崎 春華 > [スカートの右ポケットが淡い光を放つ。しかし、気にするほどの事には見えないだろう]
(やっぱり無声化まで仕込んでおいて正解でしたね)
[ポケットの中に入ってるトランプ、その一枚がその光源であることは本人以外知らないからだ]

(点と点を繋ぎし糸、仮初の事象を今ここに。ハートのクイーン≪魅了(チャーム)≫)

[自身の力が使えない時の「切り札」、護身魔術。効果を確実なものとするため、仮面に隠れた目を覗きこむ]

癲狂聖者 > 「皆さん、この美しき………っ!?」
鼓動が跳ね上がる。
視線と視線が合って、相手の瞳から眼が逸らせなくなる。
「うつ、美しき…………」
ああ、美しい。なんとこの女性は美しいのだろう。
一瞬で私は恋に落ちたのだ。そこに疑いは微塵もない。
「………っ」
慌てて左手の中の手袋をポケットに突っ込む。
ダメだ、この人を薬漬けになんて絶対にしてはいけない。
「えー………本日は……………その…」

急に言いよどむようになった演者に首を傾げる観客たち。

「と、とにかく! また劇が観たいのであれば、劇場に足を運んでいただきたい!」
「幾ばくかの金子をお忘れなく! では!!」
恋する乙女のようにときめきを隠しきれずそのまま仮面の怪人は走り去っていく。


後日、魅了の効果が切れた頃にあの女、と憎々しく思うももう手遅れであったとさ。

ご案内:「スラム」から癲狂聖者さんが去りました。<補足:謎の動物の仮面を被った舞台衣装の怪人。(乱入歓迎)>
三崎 春華 > (初めて使ったけどそんなに効くんですか…なんてものを渡してくれたんだあの先生)
「…今日のところはお開きみたいですね。では、私もこれで」
[どうせ薬漬けの観客だ、追いかけてくる者はいないだろう。]

[斯くして女優は舞台を降り、貧民街の雑踏へと消えてゆく]

ご案内:「スラム」から三崎 春華さんが去りました。<補足:桃髪で薄着の少女。>