2015/07/16 - 22:40~06:16 のログ
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、拘束衣めいた長衣、ハイヒールブーツ>
ヨキ > (夕刻の美術室。廊下にも人気はなく、しんとしている。折り畳み式の長机を広げ、本を読んでいる。
『色彩の文化史』。ほかにも机上には数冊の本が重ねられていた。歴史、文化史、生活史、変遷史、風俗史。
いずれも歴史について扱っていながら、テーマはみなばらばらで、取りとめがなかった。
動物観の、裸体の、ヨーロッパの、家庭料理の、交通の……)
(黙したまま、視線は右から左へ文章を追っている。
時どきページを捲る以外には、校舎をなぞる風の音が響くだけ)
ヨキ > (章をひとつ読み終えるごと、手にした本に親指を挟んで表紙を閉じ、瞼を閉じる。
人間に比べれば、ひどく遅い読書だった。眼鏡の下から指先を差し入れて、目頭を擦る)
「………………、くらくらする」
(人間の姿になって、十年と少し。
一朝一夕で学ぶにはあまりにも膨大な歴史の一端が、手のうちの、それから目の前の数冊の書物に圧搾されている。
一ページにつき、およそ800文字強。800文字が裏表で一ページ。それが全部で、284ページ、322ページ、438ページ、618ページ……)
ヨキ > 「…………。図書室、とか、本屋、というのは……」
(あの場所を好きこのんだり、勤めたりする人間は、ときに恐ろしくはならないのだろうか、と思う。
こんなにも――こんなにも文字と、思想と、意図と、創意とが固く詰め込まれた書物というものが、目の前に十万、頭上にも十万と収められている、ということに。
数えたことがある。書架の一段に、およそ50冊。七段から八段。まとめて一連。四連で一列。
一列が二組。左右で二列。『社会科学』のほんの一区画。
学園が所蔵する書物の、ごく一部。それ以外のまだ見ぬ本。あるいは島で流通さえしていない紙の山……)
「……だめだ」
(持っていた本に栞を挟み、机に置き、頬杖を突く。
何気なく木のタイル張りの床へ視線を落とすと、そこには刷毛で擦ったような、古い油絵の具の跡があった)
「……………………」
(山積している。この視界に入る何もかもに、人の営みが。
頬に当てた手のひらで顔を拭い、額を押さえる)
「(……――途方も、…………なさすぎる……)」
ヨキ > (目を閉じたまま、手のひらから額が滑り落ちる。
ごとん、と重い音がして、机上に額をぶつける。
目の前に置かれた本はみな黒ずみ、色褪せ、擦り切れて、図書館の所蔵している本ではないことが分かる。
いずれも古書店で買い求めた古本だ。
それもまた、見も知らぬ誰かの手を経て自分のもとへやってきたもの)
「……ヨキは」
(傍目には、机に突っ伏し、両手を机上に力なく置いた格好で丸くなっている)
「ヨキは……人間ぞ。疑いようもなく」
(たまに少し、疲れるだけで)
ご案内:「教室」に蒼穹さんが現れました。<補足:PCNo:53/気紛れな邪神様。>
ご案内:「教室」に朽木 次善さんが現れました。<補足:生活委員会。偶然通りがかり、物音に気づいて教室内を覗きこんだ。>
ご案内:「教室」から朽木 次善さんが去りました。<補足:生活委員会。偶然通りがかり、物音に気づいて教室内を覗きこんだ。>
蒼穹 > (夕方。初夏に入ったこの頃は、昼が長く、夜が短い。)
(放課後となった今でさえ、少し昼の鮮やかな青色と夕色が鬩ぎ合っている…くらいかもしれない。)
(静まり返った廊下、いやにしんとしたその廊下を、何の偶然か練り歩くわけだが…。)
(たまたま、美術室の横を通りかかる。窓から見える、机上に突っ伏し広がる黒髪。)
(ここからは聞こえないけれど、何かを呟いていたようで。)
(がらーっと、ノックもせず扉を開けて無遠慮にも一歩そこへ踏み入れてみる。)
お、おーい、だいじょーぶですかー。
(外見先生っぽいけれど、実に馴れ馴れしい口調にて、突っ伏した彼へと入り口から声をかけようか。)
ヨキ > (扉の開く音。人の気配。机上を引き摺るように頭を引き起こすと、椅子に腰掛けたままの格好でやってきた少女を見る)
「――ああ」
(相手が生徒らしいことを察すると、小さく笑う)
「済まない、驚かせたな。少し居眠りを。
君は……委員会の、見回りか何かかね?」
(机上に広げていた本をまとめながら、美術室は辺鄙なところにあるから、と、眉を下げて笑う)
蒼穹 > (入り口にて、彼が無事に起き上がったこと、それから笑みを浮かべたことを見れば余計なお世話だったろうか、と懸念。)
なら良かった。
(見た目大人で、それも教師であろうとも、やっぱり馴れ馴れしいのが己の在り方。)
いや、ま、…流石に学園の…それも美術室とか平和そうな所で倒れちゃってたらねー…。
私?いや、ちょいと放課後にうろついてるだけだよ。
(委員会はサボり気味だしと付け加えて笑み。)
辺鄙、かぁ。確かに人通りは少なかったけど。
(後ろ目で廊下を見遣る。)
因みに、…先生なの?生徒なの?
ヨキ > 「いつだったか、女子生徒に怒られたことがあったな。
飲まず食わずの不眠不休で保健室の世話になったときに……
重すぎて運べない、と。
……何だ、委員会に属していながら仕事をせんのか?」
(眉を顰め、まさか、とでも言いたげに相手の顔をじろりと見る)
「ヨキは教師ぞ。
美術を取り持っているが、目立たぬ教科ではあるからな。
…………。
だが、今のは冗談だろう? どこの委員だ?」
(座ったままで居ながら、相手とそれほど目線が離れるほどではない。
低い声で、咎めるような調子が交じる)
蒼穹 > …おいおい、体壊しちゃあ良くないね。
特に飲まず食わずで不眠不休なんて最悪。怒られてとーぜんじゃん。
―――ってそっちかい!
(一連の話を聞いていたが物凄い落としどころにツッコミポイントがあったのできりっとツッコミ。)
…ん?あっはは、まぁ、ね。
(悪びれずに肯定の為頷く。)
ふーん、あ、先生ヨキって言うんだね。
私蒼穹《ソラ》って言うんだけど、学年は一年。
んでまぁ、…習得教科は主に魔術が主軸。
(軽く自己紹介を述べて。)
ん、風紀委員刑事課だよ。一応。
(やっぱり悪びれない。一応仕事はしていると言えばしている。どちらかと言えばしていた、と言う方が正しいが。)
ヨキ > 「本当にな。ヨキはこれ以上軽くはならないから……すっかり反省したものだ」
(肩を回し、首を左右に慣らす。こきん、と、小さく鉄のかち合ったような音。
言葉は穏やかだが、相手を見る眼差しはひどく訝しげだ。
軽い調子の声を耳にすると、眉間に薄く皺が寄る)
「魔術を取っていて、刑事課で、サボりか。
……一年の、蒼穹君。覚えておく」
(少なくとも、相手の言葉遣いについては、全く意に介した様子はない。
真っ直ぐに少女の顔を見ながら、それで、と言葉を続ける)
「なぜ仕事をしない?」
蒼穹 > 反省は良いけどヨキさーん。
あなたは生真面目系なんでしょうかー…。
(それに関しては言うまでもなく、と言ったところだろうが、彼の視線が何処か己にとって痛々しいのは自明の理。)
(あまり軽い調子はお気に召さない様だと消沈気味。)
ん、ま、今後ともよろしく。
ふぅ…してないわけじゃあないんだよ?一応警邏と報告書はやってる。
勿論検挙しないこともないさ。
でもね、私自身、本当は正義なんてくそくらえな生き方してるから…、
積極的な活動もしない。
(真面目なタイプ。真っ直ぐに、射抜かれるような視線には少しだけ困った様子。何故と聞かれてこうだと答えられるような明確な答えを持ち合わせていない。)
ヨキ > 「生真面目? いいや。全く?」
(なぜ評されたかが分からない、とでも言わんばかりにきょとんとして、首を振る)
「言ったろう、ヨキは教師だと。
生徒の指導が、学園より課せられたヨキの使命ぞ。
ヨキは自分の仕事をしているだけだ」
(言うなり、にっこりと穏やかに微笑んだ。
大きな口で微笑むと、見るからに人間の形でない牙が並んでいるのが覗く。
間を置かずその口を困ったように結ぶと、小さく息をついて)
「例えば……倫理の授業で教わるような『正しく在ること』が、君にとって『糞喰らえ』だとして……。
君の中に、君だけが持つ価値観があったとして。
それに倣って『個人的に』動いているなら、ヨキは何も言わんよ。
怠けるも結構、暴れるも結構。ヨキは全力で応援しよう。
……だが君の属する委員会は、違う。
君個人の考えを放棄せよという訳では、決してない。
だが悪が悪を働けば咎められると同じように、委員は委員の仕事を働かねば、咎められるのだ。
常世島の――何より委員会として、責を果たすとはそういうことだ。……」
(そこまで言い終えてから、これがヨキの仕事よ、と、肩を竦める。小さく苦笑い)
「それだけ悪びれぬなら、叱られるのには慣れたものか?」
蒼穹 > …ほう、根っからの生真面目と見た。
先生、ボケとツッコミのたしなみはあるかな?
(どうにも理解が得られなかったのか、と思えば付け足すように問を投げて。)
ふぅん…そう。成程…ね。
(真面目、と思ったら、彼は彼の仕事を全うしているだけだという。)
(確かに、それはその通りだ。その口はにこりと見せられる穏やかな表情とは対をなすかのようだ。)
(彼の歯―――猟犬の如き鋭い牙が、己の視界に一瞬だけ飛び込んでくる。)
(「ひょっとして、人間じゃないの?」なんて今更彼が最初に突っ伏して呟いた言葉を抉り返す。)
(もっともかく言う己も人間ではないが。)
…ほうほう。なるほどなるほど。
先生、本当は社会科や倫理科の先生やった方がいいんじゃないの?
でも、結構良い事を言うね。
特に個人的に動いているなら、という仮定を入れるのが良い。
その通り、委員は委員の仕事を働かないと咎められる。
だから、最低限はやってるつもりさ。勿論、それは正義の為なんかじゃあないけどね。
私は思うけどさ、私は"正義"じゃあなくて"善"としてありたいなと思ってるよ。
正義なんてのはどこまで行っても建前。だからまぁ、癪なんだよね、正義の名の下に行動するの。
柄じゃないし。
―――とまぁ、御話がそれたね。良いお仕事。
(さて、と一息入れて話を戻す。)
理解した、御忠言にそってまた少しだけ組織のいう事聞く良い子になるとしましょうか。
あっはは、悪いことして怒られるなんて、とうの昔に慣れっこだよ。
(酷く懐かしそうな表情で目を伏せながら述べてみる。)
ヨキ > 「残念ながらこのヨキ、『呆け殺し』で通っておるのでな。丁々発止の期待はするな」
(澄ました顔でそれだけ答える。人間ではないのか、という問いには、小さく首を振って)
「……人間よ。ヨキと交わる、君もまた。
生憎と、ヨキにとって『人間という括り』は誰より大きい自負がある」
(切れ長の眼差しが半眼になる。ふんと鼻で息をつき、)
「善か。……組織に負担を課すこともまた、君の善なのか?
君が『最低限』と称して放った仕事は、他の委員が片付けているはずだ。
もし君がより強力な異能の持ち主ならば、君の力に値するだけの人数が。
風紀が君ひとりの籍を保つためにどれだけのコストを払うかを、まずは考えてみるがいい。
……全く、君がどんな志によって委員と任ぜられたか、理解できんな。
それに、それだけの考えがあって尚、君が『組織というもの』に身を置き続ける理由も」
(呆れたように目を伏せる。尖った指先で、額を掻いた)
「……ヨキは、美術以外を教えるつもりはない。
美術を学ぶことは、また社会を学ぶことでもあるからな」
蒼穹 > ボケ殺し…なんだそりゃ。
(あんまりその辺はよく分からないが、少なくともやっぱりこの人生真面目だと思うばかり。)
おや、…人間なんだ。
まぁそうかな…人間という括り、なんて曖昧なもんだよね。
どっからどこまで人間で、どれ以上が人間じゃない、なんていう定規はないんだしさ。
ふふ…負担ね。
言ってる事は分かるよ、私がもし一騎当千だったら私の代わりに1000人のコストがかかるって事だよね。
でも…良いんじゃないかな、どうも組織自体、私を登用したくないみたいだからね。
一応私、戦力としちゃ中堅クラスを自負してるんだよね、代わりはいくらでもいるって思ってる。
それから、どうして組織に身を置くか、という理由もごく単純なものだよ。
情報が得られること、それからお給料が入ること。
落第街を闊歩して風紀の腕章振りかざしながら違反組織の情報を纏めて報告するだけで良い。
コストに見合うこと、組織の負担を減らすって、それこそ何をどれだけやったら良いか定規がないよ。
極論を言えば、全部ぶち壊せばいいってわけでもないでしょ?
(少し屁理屈に聞こえることも織り交ぜながら、なおも悪びれる様子はない。)
そう…美術に社会…。
確かに、その二つは色々関わってるよね。
絵って言うのは、思想を映し出したもの。戦争反対、とかね。
古来から存在する壁画は神々に豊穣を祈るためのもの。
…私の知る限り神なんてもしいてもロクなヤツいないと思うけど。
(程々に自身の意見を述べながら話に乗っかって行く。)
ヨキ > 「さあな。思ったことを口にしていたら、そうと呼ばれただけのこと」
(ヨキほど人間らしい人間もあるまいよ、と嘯いて笑う。
腕を組む。椅子の背凭れに身を預ける)
「常世島は、異能の者の集まりよ。
言うまでもなく、『代わりはいくらでも居る』。
今はどれほど希少な人材とて、いずれ補填が利くようになる。
我々に、誰しも特別なことは何もない」
(蒼穹の顔を真っ直ぐに見ている。その表情は乾いたように動かない)
「……働かざる者食うべからず、とは、君のためにあるような言葉だな。
仕事にマニュアルと勘はあっても、定規などない。
目分量ながら正確に測るわざを身に着けるのが、この学び舎だ。
……『次に育つもの』があるならば、何も壊し尽くすことは悪ではない。
壊すだけ壊して責を負わぬのが、本当の悪だ。
もし君がサボりでなく、 Sabotage でもない『破壊』に目覚めたときは、ヨキはどこまでも君の味方でいよう」
(『神』の語に、ふっと笑って)
「ロクでもない、と思うのは、君が信心を持たないからであろう。
神に実在するか否かは必要ない。
必要とする者の心のうちに、自ずと生まれるものだ。
芸術も、社会もまた。それらが生まれることに、言葉にできるほど明確な要因はない」
蒼穹 > …で、それを否定する気もないんだね。
(随分と先生らしく語るものだなぁ、なんて腕組みしてゆったりとしたその姿勢を見遣れば心中にて独り言つ。)
そうそう、代わりはいくらでもいる。
それ自体はいやーな言葉だけど、認めざるを得ない。
でもさぁ、そうやって特別な事は何もないって割り切るのも面白くないじゃん?
ほうほう…社会人になるためにってことかなぁ。
破壊って言うのはう…結局破滅の果てに新たに何かが芽生えるから齎されるのかもね。
永遠の繁栄なんてあり得ないもの。
へぇ…壊すことに味方で居てくれるの…そりゃ、何ともありがたいや。
さっきから…色々と私個人のやることには寛容で協力的なんだね。
(くすくすと悪戯に笑み。)
所で聞くけどさ、ヨキが思う壊しつくした責ってのは何かな。
壊したものを直すこと?それとも、壊れたところで新たに何かを育てること?
…まぁ、どっちにしても…多分過去の私は本当の悪だったんだろうなー…なんてね。
ああーっ、難しいね。思想や御仕事の御話。私は何にも考えず、壊すだけの存在でありたいな。
ちょっと御話が噛み合ってなかったらごめんねっ。
(うーん、と大きく伸びをして、結局少々勝手な願望を漏らす次第。両手を合わせて小さく頭を下げる。)
あっはは、成程。
神も芸術も社会も、確かにそうだね。必要とされたから言葉として、曖昧な存在が生まれるんだ。
(賢いなぁ、なんて思いながら。話は飛躍するけどと前置きして。)
んじゃあさ、幽霊ってのはどうかな。
これも曖昧で、実在するか否かは分かんない。明確な要因もない。
必要とする人って、いたと思う?
ヨキ > 「……各々に、特別なことなど何もない。
だがそうした一人ひとりの巡り会いこそが、本当に尊く、面白い。
ヨキのように生真面目で、石頭で、話の長い美術教師などは、これから先いくらでも居るだろう。
だが君にとっては、たった一人のヨキだ。
……我々は、常世島にとってはいくらでも換えの利く歯車に過ぎん。
だが互いにとっては、永劫たった一人でしかあり得ない。
信仰と同じように、そうした『特別さ』もまた、自然と芽生えてくるものだと――ヨキは思う」
(ヨキにとっての、君のことさ、と、穏やかに笑う)
「もちろん、ヨキはこの学園の教師であると共に、ひとりの男であるからな。
この命を賭してでも、ヨキは島の秩序と調和を守る。それと同じほどに、ヨキは君と、君が持つ信念を守ってみせる」
(愉快そうに笑う相手に、ふっと表情が緩む)
「もし壊すべきでないものを壊してしまったら、それは直すべきだ。
だが、世には『壊されるべきもの』が必ずや、ある。
そうしたものを壊したあとには、次に代わる何かを、新たに生み育て直さねばならん。
直してしまっては元の木阿弥であるし……放っておけば、荒れ野となるばかりだからな。
ふふ。君は……『本当の悪』であったか。
良かったな。『今のヨキ』と『昔の君』が出会わなくて済んだ。
ヨキの頭に上った血は、なかなか冷めることを知らんでな」
(冗談めかして笑う、が、その語調に嘘はないようだった)
「……いいや、ヨキこそ難しい話ばかりで済まない。
君とて聡い。この話下手なヨキの言葉を、巧く導いてくれる」
(蒼穹の笑い声と朗らかな言葉に、浸るように頷いて)
「そうだ。世界にははじめに音があり、光があった。
それらが言葉に表されるのは、随分と後のことだ。
人には、決して抗えないものがある。その強大さや、理不尽さや、底知れなさによって。
それらに打ちひしがれたとき、人はそれらより大きな存在を産み出す。
人の心や力が試されるとき、天変地異に揺るがされたとき、およそ自身ではどうにもならないとき。
人は祈る、『神よ』と。
幽霊もまた、同じことだ。
光の届かぬ暗闇や、人の手の及ばぬ病、その他の悲しみ、得体の知れない偶然を前にしたときに。
自分を救う存在と同じように、自身を奈落へ陥れる者もまた、そうして生まれるに過ぎない」
蒼穹 > …そうだね、存在自体はいくらでも変えが効く。
どんな異能も、どんな魔術も、どんな種族だってそう。先生に限ったことじゃない。
きっと私だって、知識と能力と魔術を以ってすればいくらでも代替品が作れる。
けれど、出会いは、その関わりは…そうだね。
たった一人の先生ってことになる。どんなに同じものが作れても、出会いだけは作れない。
ヨキの言う通り、尊く、面白い。
どんなに永く生きようと、今こうして、美術室で突っ伏したヨキって先生と今の私が出会う確率は、
きっと天文学的確率より少ない。
そう考えると、どんなに同じ人が居たってそれが行く道は奇跡に近いものだね。
あっはは…、素敵じゃん?
(相変わらず語調は軽いが、深く、神妙に頷く。柄でもないか、と最後におどけて笑み溢す。)
ほうほう…美術の先生なのに、凄く大きく出たね。
―――「守る」「守ってみせる」か。私にはこの先どれだけ生きても言えなさそうな言葉。
かっこいいね。何かさ。
(彼の表情を見れば、最初に比べれば随分優しい目付きになったと思う。)
成程…。美術の先生なのに凄く語るね…。
"壊されるべきもの"…それも壊すだけじゃだめなんだね。
悪のタネを摘んで、平野に鮮やかな色の花を植えるってとこかな。そうすれば荒野になる事もない。
何にしても、私には直すことも育てることも出来ないんだよね…残念ながら。
私が出来るのは壊すだけ…何か、はぐくむ努力をした方が良いのかなぁ。
(少しばかり遠い目で想起しつつ。)
うん、"本当の悪"だったんだよ。私は。…今でもそうかもしれないけどね。
何かを壊したって、反省は勿論、修復も何もしないどうしようもないヤツだったんだ。
けどまぁ、お互いこうやって穏やかに話せてるんだし、私も"昔の私"からは少し変われたのかなっ。
(視界の内の彼は笑う。冗談めかすその仕草は愉快気で、けれど、そこに嘘を吐いた色は見えない。)
(彼の言う"本当の悪"だった者を前にしても、それに恐れず笑う姿は、不敵な様に見えた。)
あっはは、そっか。私も御話好きだからね。
そういってくれたら何よりさ、何分、
御話が好きだと気持ちが先行して何を言っているか分かんなくなっちゃうのが悪い癖でね…。
(蒼い髪を左手で弄りながら、それでも苦くも笑う。)
(壊す者とて、人間としての精神面では色々と不出来なのは自覚している。)
ほう…。
そうだね、音があるから話せる。光があるから見える。
けれど、ジュア紀の連中は言葉にする事は出来ない。そもそも言葉という物が発足する事が"世界"が出来て大分と後。
音や光は"発明"ではなく"発見"であり、元あったものを見つけたに過ぎない。
神や幽霊も然り、なのかもね。
あと、逆に天変地異自体が神や悪霊と喩えられることもあるね。
人には決して抗えないもの。理不尽で強大なもの。覆せない事象。
―――津波、台風、地震、落雷、隕石、噴火。
これらの解決を"神よ"と祈るなら…神に祈って解決を試みられる、これらの災害は"邪神"とでも言うのかな?
(どこまで行ってもあいまいだけど、漸く形が分かってきたかも…といいつつ。)
成程…って、さっきからそればっかりになっちゃってる。
必要とするものではなく、逆に必要とされないけれど、生まれてしまう者なのかな。
暗闇、病、悲愴、絶望…それらが相俟って、ぼやけた何かが、形を帯びる。
ヨキ > 「素敵だろう?だからヨキはこの時間を忘れるまい。
君を叱ったことも、こうして和やかに話したことも。
柄でもない、と断じるには早いだろう。
普段は言い慣れない言葉を口にするときこそ、本当の自分が出るものさ。
その言葉が、自分に合っていようと、居なかろうと」
(『美術の先生なのに』と評されれば、目を細めて)
「言ったろう、ヨキは教師である前に、ひとりの男だと。
君が学園のルールから外れれば、ヨキは教師として君を叱るが、
君がひとりの女性として在るならば、ヨキはそれを大切にする。
君が壊すことしか出来ないならば、育みの心を持つ者を、誰か味方につけてしまえばいい。
たとえ性格が捩くれていたとて、何かを壊そうと思うとき、その力は真っ直ぐだ。
――真っ直ぐな力は、良くも悪くも人を惹きつける。
こうしてヨキを壊すでもなく言葉を交わしてくれる君は、一体どのような時間を経たのだろうな?
つい話に引っ張られてしまうのは、それだけ君の心が活き活きとしている証拠だよ」
(神や幽霊の話には、そうだな、と少し考えてから)
「“邪神”の他にも、名前はある。たとえば“悪魔”。
神と呼んでいたはずのものが威光を損ねたとき、あるいは自分の心が蝕まれたとき、『神は堕ちた』と罵られるだろう。
元は何も実体のありはしないものが、その人物の中でのみ、勝手に姿を変えたと錯覚される。
……カミ、というものがもし実在するならば、よほど難儀な仕事であろうな」
(平然と言って、首を振った)
「不幸は必要とされないが、その『原因となるもの』は求められるよ。
太刀打ちできない不幸を、幽霊の仕業……悪魔の仕業とすることで、人々はそれを払い、安息を得る。
取り交わされた信仰は、やがて実体を得る。教会、聖典、護符に神木、さまざまの形を取って。
自他の心身が害されることのない限り、信仰を持つこと自体は、非難されるべきではない」
蒼穹 > …ふふ、ほんとに…。
そういう意味じゃ、覚えていてくれるっていうのもとても嬉しいって思う。
アドリブってやつかな。
慣れない言葉を口にすれば、確かに本質が出る。何を言おうと思っているか、その場で考えなくちゃならない。
自分を飾ることが出来ないから、…そう、だね。
あっはは、いやぁ…勝てないね。
馴れ馴れしく話しちゃったけど、随分と智慧の溢れる人と御話している気がする。
(こういう時間もまた素敵だよと、爛々と蒼い目は細く弧を描く。)
あっはは、私の持つ女性特権ってやつ?
男の中でもかっこいい、紳士ってのに属する性質だね。
そういった振る舞いを…目指しているってわけじゃなさそうだ。
あはは…成程…。そう言う考えもあるか。
そうだね、真っ直ぐだ。曲がりくねったりしない。ただそれを破壊せんと、面と向き合う。
(丁度、先生の視線の様にね、と先程からの真っ直ぐな視線を拾い。)
中々友人に困る日々だけど、いつしかそう言った人が味方に付いてくれれば…。
良いのかなぁ…?あはは…分かんない。
(元々、壊して喜ぶような輩だったから。果たして育みの心を持つ者を味方につけて、それから彼の言う"本当の悪"になり下がるのを防げて…それで、万事解決なのだろうか。)
過ぎたるは猶及ばざるが如しなんて言うけど…。
勿論、強い力は人を魅了し、ひきつける…その通りだって思う。
けれど、強大過ぎる力って…ある一線を越えちゃうと忌避されるものにもなりえる。
だから私は難しいと思うんだ。どこまで力を示せばいいか…。
…なんて、贅沢で慢心した悩みだよね。
(そんな話を、蛇足的に跡付けるする。ただの薄い記憶を辿って話す過去の自分語り。今更話してどうともないが、彼のような人間からなら、きっと何かの智慧…もとい、面白い話が得られる気がして。)
あっはは…私も丸くなったって事かな。
互いこうして話し合えるのは良い事…そう、心が、ね。
そうだね、壊してばかりだと、きっと心は荒んでる。
話すことで心に豊かさを得られる…こういう事も、また素敵だって思うね。
"邪神"に"悪魔"。"悪鬼魔神"なんて総称もあったっけ。…それはさておきとして。
人に害をなすものをそうやって呼ぶんだよね。
少なくとも、地球ってところでの神は空想上の物でしかないだろうけれど。
異界と繋がった今、それに近しい者は流れ込んできてるみたいだし。
まぁ…大変だろうね。信仰を損なわない様に偉ぶりながら、大きな力を行使する。平等に、平等に。
そんな事、幾ら力があったって…出来っこないよね。
(当然の事だよ、と言わんばかりだったが、何処か同意を求めているような口ぶりだった。)
何かにすがって生きて行く。
それは本質が善でも悪でも何かの所為にしなきゃ人間は気が済まなかったんだね。
世界を作ったのは神で、死んだ誰かが見えたら幽霊。
御祓いするって言ってみたり、何かを祀ってみたり、通過儀礼としても、儀式としても…色んな形で、本当にいろんな形で残ってるね。
へぇ…それが、ヨキの意見って事なんだ?因みに、そういうヨキは何か信仰を持ってるのかな?
色々、考えだしたら奥が深いね。…はぁ、頭がパンクしちゃいそう。
(うう、と冗談半分だが頭を抱えてみる。)
(けれど、大分と沢山の奥深い話をやり取りした気がして。それを理解でき切っているのか、己の中でも分からない。)
ヨキ > 「ヨキの言葉は、みな人々との交わりから生まれたに過ぎんよ。
その本質が君にとって快いと思えたならば、それはヨキを育んだものたちが持つ、徳から来るものだ。
なに、馴れ馴れしくともよい。
君の本質は慣れない言葉に滲むものだが、飾らぬ本音には君の気持ちが表れる。
どちらとも、ヨキにとっては心地よいものだ」
(腕組みの格好から、左手で顎を撫でる。紳士ね、と呟いて)
「もし君が、ヨキから退くことを良しとしない女性であったり、あとは自分を男性と考えているならば、それによっても君との付き合い方を変えるさ。
目指しているものがあるとすれば……そうだな。先生でも、紳士でも、何でもいい。
人の心に、人間としてのヨキの姿が残ってくれさえすれば」
(片眉を上げてみせて、ならば、と笑う)
「ヨキが君の友人となろう。人間の精神は、善と悪のみによって計り切れるものではない。
ヨキとて、はっきりと答えが出せんこともある。だが、君が進むべき道の手掛かりくらいにはなるやも知れん。
考えることさ、味方との在り方も、自分の力の扱い方も。
もし……忌避されようものなら、住処を変えればよい。
人間の世代など、すぐに移り変わるものだからな。
かつて忌避されたものが、時代が変わって受け入れられたとするならば、その価値観も人々の中で自然に発生したものだ。
人が成すすべなく神に縋るのと同じように、力を持つ者はその強大さに合わせて、その分寛容でなければならんよ。
壊すなら壊す。壊して困るなら、待つ。君の言うとおり、『永遠の繁栄なんてあり得ない』。
人の中に生きていれば、必ずや時代の伏し目には出会えるものだ」
(蒼穹の言葉に耳を傾けながら、時おり相槌を打っては頷く。
答えを探しながら言葉に変換するように、ゆっくりと口を開く)
「神に近しい者にとって、幸いはここが日本という国であることだ。『やおよろずのカミガミ』とは、よく言ったものでな。
ひとつの神しか知らぬ者は、他の神との分裂を生む。知ればよいのさ、この国がどれほど自然にカミと生きてきたかを。
過ぎたる力は軋轢を生む。だが考えてもみたまえ、君は日本という寛容な国で、この寛容なヨキという友人を得たのだぞ。
君の望むとおりに生きてゆくチャンスは、いくらでもある」
(蒼穹の口ぶりの真意を知ってか知らずか、穏やかに諭すように。相手の様子に、楽しげにくつくつと笑って)
「さまざまな形を取った信仰は、さまざまな形で用いられるよ。あるときは純粋な慈善として、またあるときは戦いの火種として。
それらの用い方もまた、ひとりひとりが選び取るものだ。個々が信念を持つことは歓迎されて然るべきだが、それらの信念が害し合ってはならぬのだ。
……ヨキは何も、信仰を持たぬでな。人間について考えていたら、こうなった。
信ずるものがあるとすれば、それは他ならぬヨキ自身だ」
(やがて窓の外が暗くなったのを見遣り、)
「……ああ、これはまた、随分と。説教のみならず、長話に付き合わせてしまったな。
蒼穹君、と言ったな。有難う、面白い話をさせてもらった。
――君の力の在り方について。またいずれ、このヨキに聞かせてくれ」
(机上の本をまとめて立ち上がる。並んでみると、随分と細長い。
ではね、と朗らかに別れを告げて、ひらりと手を振る。そのまま美術室を後にする)
ご案内:「教室」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、拘束衣めいた長衣、ハイヒールブーツ>
ご案内:「教室」に嶋野陽子さんが現れました。<補足:222cmの スポーツビキニ姿>
嶋野陽子 > 保健室の戸締まりを終えて帰る途中、
美術室から教師らしき人影が出てくるが、灯りがまだ
点いているので、電気の消し忘れでないか、様子を見
に入る。中にまだ一人、生徒らしき人影が美術室内に
残っている。
蒼穹 > …あっはは、謙虚な考えだね。確かにその通りだけれど、そう言う考えもあるんだって思う。
それでも、そういった人徳を持ってるっていうのは凄い。
その考え方を聞いて益々そう思うようになったよ。
そう…心地よく感じてもらったら私としても幸いだね。
何にしたって、こうやって何となく話しているうちにも、うそ偽りが無いなら好ましいよね。
(気付けば概ね同意するばかり。)
私は見たまんま乙女ですー。
…ふぅん、そう。"人間として"か。
私には紳士的に映るけどね。…それにしても、少し人間であることに拘ってるね。
何かあったのかな。
(最初の彼の呟きを聞いていたわけではないのだが。)
へぇっ?あっはは…嬉しいねっ。それはとっても。
うん…是非とも頼むさ、お友達になってくれるなんて願ったりかなったりだよ。
味方、なんて得られたことは今しばらくなかったからね。
よろしくお願いするよ…きっとヨキなら私の力についても考察を述べてくれるでしょ?
成程…そういう事か。
ああ、…そっか…そういう事だったんだね…。
私には寛容さが足りなかった、のかもしれない。
(何かを思い起こすようにふとして述べる。)
待てば、良いんだね…はぁ。あっはは、どれだけ待ったらよかったのか…なんてね。
全ての物には神々が宿ってるって、そう言う考えだったっけ。
…ふふ、本当に、先生は寛容だよね。
少なくとも、今は、私はこの状況を喜ぶかな。
そして、先生が言う様に、知って、考えよっか。私が望む生き方を目指すために…ね。
(いつの間にか軽い調子が無くなって。それから、彼が諭す心算なら甘んじてそれを受け入れるかの様な口調。それは、教師と生徒の図であるといって間違いがない光景だった。)
地球上じゃ、一番多い争いは信仰が発端だって聞いてるけどね…。
そうそう、自由に用い、自由に選ぶ。それだけだよね。
他人に考え方を強制しちゃいけない。
勧めるのはいいけれど、線引きはしっかりしないとね。
…人間について?またまた、凄いこと考えてるね。
良いじゃん、それ。
私も、結局信じるものがあるとしたら私自身ってなりそうだよ。
うん…こちらこそ。
うん、うん…!是非またお話してよね。気楽に、御友達としてさ。
何でも聞いてほしいな。聞かれなくっても話しちゃうけど。
今度は突っ伏した状態じゃあイヤだよ?
それじゃーね。御疲れ様。
(同じく、緩く大きく手を振る。)
(時間は既に夜。彼を見に行ったらいつの間にかこんな時間だった。)
(己も消灯すれば出て行こうか。)
(―――と思ったが。)
おつかれー?
(誰か来たみたいなので擦れ違いに挨拶をかける。それから、改めて出て行った。)
ご案内:「教室」から蒼穹さんが去りました。<補足:PCNo:53/気紛れな邪神様。>
嶋野陽子 > 「お疲れ様でした」
残っていた生徒もどうやら用事が終わったらしく、
入れ違いに美術室を出ていった。
補習とか特訓でもやっていたのかな?
と思いつつ電気を消してから美術室を出る。
最初に出てきた先生らしい人は、ずいぶんと大きい
人だったけど、もしあんな人が倒れたら、保健委員
で運ぼうにも大変だったかもと思う。
まさかそのために保健室に詰めるよう言われてい
るのかと、今さら気付く陽子だった。
ご案内:「教室」から嶋野陽子さんが去りました。<補足:222cmの スポーツビキニ姿>