2015/07/15 - 20:50~01:19 のログ
ご案内:「円上神社の夏祭り」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:男性用浴衣装備。(乱入不可)>
ご案内:「円上神社の夏祭り」に三千歳 泪さんが現れました。<補足:金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。浴衣姿は秘色の帯と。>
桜井 雄二 > 浴衣を着た桜井が三千歳泪との待ち合わせ場所で携帯の時計を見ている。
時間はちょうどよし。後は彼女を見つけるだけだ。

「……やっぱりいつものスーツじゃないとちょっと落ち着かないな…」

三千歳 泪 > おかーさんのおかーさんの、そのまたおかーさんが着ていた浴衣。今は私がそれを着て、待ち合わせの場所へと急ぐ。
帯は秘色のとっておき。桜井くんとはじめて会ったあの日の夜に使ったものだ。

「いたいた! グッドイブニングだよ桜井くん!! 待った? お待たせしちゃったかなー」

桜井 雄二 > 「ああ、待ったよ。夏祭りを泪と一緒に行く日をな」
「……こういう台詞が女性的にグッとくると男性ファッション誌で読んだんだが、どうだろうか」
No.9と書かれたメモ帳の最後のページを開く。
このメモ帳ももう終わり。次のメモを開く時だ。

「浴衣、似合ってるよ。帯はあの時と同じなんだな…俺たちが、出会った日の」
「さ、行こう。ようやく蟻人にやられた傷が癒えたんだ、今日は泪と遊びたい」

三千歳 泪 > 「え、私も待ってたけど? ひっさびさだもんねー。前にきてからいろいろあったし、なんか懐かしい感じもしちゃってさー」
「ほんとはね、デートしよう!って誘ったらもっと慌てるかと思ってたんだ。でも君は平然としてて、ちゃんと付きあってくれたりもして」
「はじめはほんの冗談のつもりだったのに、ふと気付いたらデートっぽいことしてたんだよ。びっくりだよね」
「桜井くんは大まじめで、意味をよく知らないだけだった。結局それでよかったのかも。半端に知ってたらこうはならなかったでしょ?」

左の腕に抱きついて、空いた左手で自撮りを一枚。いい笑顔で映りこんでるけど浴衣がちょっと見切れてる? むずかしいなー。

「見て見て! お祭りモードのレア桜井くんだよ!! でも男の子ってさー怪我して帰ってくるものだしさー。だから心配してあげないんだ」
「私の知ってる君なら平気。ちゃんと帰ってきてくれるってわかってたから。おかえりなさい桜井くん。さてさて! まずは何して遊ぼっか?」

桜井 雄二 > 「そうだな……円上神社に来るのは、出会った時以来だからな」
「……そうだったのか? 冗談からこの関係が始まったとは…」
「…お、俺だってデートの意味くらい……知らなかった………な…」
口ごもりながら、記念の写真。照れて少し赤い桜井の顔も映っている。

「それを言ったらモンキーレンチのない、浴衣姿の泪もレアだぞ」
ふと、両手で自分の口の端を持ち上げて。
「ありがとう、ただいま泪」
笑顔のつもり。
「前回とは当然ながら出店の数も規模も種類も違うみたいだ…まずはあの射的からいかないか?」
「そう大きなものを取らなければかさばらないだろう」

三千歳 泪 > 「うん、びっくりするかなって。しなかったけどね!! びっくりしたのは私の方だったよ!」
「あの時はさ。いい感じに盛り上がってるカップルとか茶化したりなんかもして。今思えば悪いことしちゃったねー」
「こういうの何て言うんだっけ? ミイラ取りがミイラになる! うーーーーーん?? そう…かなぁ? そんな感じ?」

「ふっふっふ。でっしょー? たまにはおめかししないとさー!! いつもはすぐに汚れちゃうから、こういう時くらいはせめていいカッコしたいんだ」
「私のひいおばーちゃんが若い頃に着てたのを送ってもらったんだよ。おばーちゃんもおかーさんも、今の私くらいの時に着てたのだから…」
「あ。あー。そっか。そういう? なるほどなー。どおりで。えへへへへ。射的かー! やったことないんだよね。うまくできるかなー」
「桜井くんはどうなのさ? お手本が見たいなー。だれか見せてくれないかなー」

何段にも分かれてずらりと並んだ景品と、はなれたテーブルに並べられた玩具の鉄砲。小さな頃には近寄らせてもらえなかった出店のひとつ。
地元の男の子たちがわいわい楽しんでる姿を遠くから見ていることしかできなくて、心底うらやましかった思い出だけが焼きついていた。

桜井 雄二 > 「あの時はデートというものを感情的に理解していなかったんだ……!」
「………そうだな」
ふと、視線を下げた。今日、ここで彼女に何かしらアクションを起こしたい。
今まで彼女からの行動が多かったから、こちらから踏み込みたい。
そう考えると、口数が減るし、胸が高鳴った。

「……そうか、だから泪に似合っているんだな」
「ひいおばーちゃんの時代から、連綿と受け継がれてきたものだから…」
「う、お手本か……俺、これやったことないんだよな…」
「いや、違う。そうじゃないな……『任せておけ』だ」

メモ帳を開いて何かを書き込むと、代金を支払って玩具の銃を構えた。
「………ここだ」
と、適当なことを言いながらなるべく軽そうな獲物を狙う。
パチン。キャラメルが倒れた。
「は、ははは……まさか上手くいくとはな…」
「というわけで、泪。パスだ」
彼女に玩具の銃を渡した。コルクの弾は残り2発。

三千歳 泪 > 「気付いちゃったんだけどさ。いいものは長く使えるからとか、そんなありがちな理由じゃなくて」
「この浴衣は伝家の宝刀だったんだよ!!」

な、なんだってー!!って言ってくれるとうれしい。

「ひいおじーちゃんもおじーちゃんもおとーさんもこの浴衣にやられたのかもしれない…」
「そういう究極兵器を送りつけてきたってことはさ、殺れって意味なんじゃないかな」
「田舎のカルチャー舐めちゃいけないよ桜井くん。今日君を陥とせなかったら一体どんなことになるか…」

なにかが間違ってる気がするのだけれど。殺るって何だろうね。陥とすって何さ!

「おぉぅ。ちょっと見直したよ桜井くん! あ、あと二発あるけど?」

いいのかな。よし。練習のつもりでやってみよう。
ライターはふだん使わないし意外に重そうだよね。お菓子はかさばるから今はいいや。
あれは…お祭りの時にみかけるブリキの金魚!!…のとなりのブリキロボにしよう。
理由? 掃除子ちゃんに似てるからだよ!

パチン。コルクの弾は右斜め上をかすめてバックヤードに消えていく。むむむ…。

「……ヘルプ!! 助けて桜井くん! さっきのどうやったの!?」

桜井 雄二 > 「な、なんだってー!!」
お約束。それは守らねばならないものだ。
様式美。美とつくからにはきっと美しい。

「そ、それじゃ………俺は殺られるのか…! もしくは陥とされる」
「くっ……俺は負ける気はないぞ、俺だって」
俺だって? そこから先の言葉は口を突いて出ない。

「そうだな……俺もあんまり狙ってなかったのがバレるが」
「この銃、癖があるんだよ。少し左下を狙えばちょうどいいんだ」
「こんな風にな」
そっと彼女が持つ銃に手を添えて、二人で銃口を動かす。
「これくらいかな? いや、もうちょっと左かな……?」
近づく距離、近づく鼓動。意識するな、意識するな。

三千歳 泪 > 「純な男の子だけを殺す浴衣。まさにリーサルウェポン。殺るか殺られるかだね桜井くん!」
「なになに?? ひみつの大作戦とか? ルシファーくんが今日のことを知ってたら手ぶらで来させるはずがない…」

「エウレカーーー!! まっすぐ飛ばないなんてひどいなー。とんだ落とし穴だよ!」
「でも、それなら納得。なるほどなー。えっと、これくらいでいい?」

肌が重なって、むずむずする様なくすぐったさに耐えながら狙いをつけなおす。
うっわー顔近いなー。すこしはだけた襟元から桜井くんの胸板が垣間見える。待って。私は何を。

呼吸をとめて、引き金を絞る力は淡雪が空の高みから舞い降りるように。
パチン。―――ガキンッ。
見た目以上に軽い金属音をたてて、掃除子ちゃんの親戚みたいなブリキロボが宙を舞った。

「わ。当たった! 当たったよ桜井くん!!」

桜井 雄二 > 「殺されるだけが人生ではないことを見せてやる」
「ん? ああ、まぁ……な。色々、川添孝一にも相談して決めたんだ」
無表情に肩を竦めて。
「でも今は内緒だ」

今、ようやく気付いたけれど。泪は良い匂いがする。
でもそこを考えたらダメだ。きっと意識して近づけなくなる。それはダメだ。

「おー、やったじゃないか泪!」
「掃除子さんに似ているロボだよな、名前はどうする?」
射的屋の兄ちゃんに袋で渡されて、その中にキャラメルも入れて荷物は俺が持つ。
「さ、次は食べ歩きだ。俺はリンゴ飴が食べたいところだな…」
「今日は甘いものって気分なんだ」

三千歳 泪 > 「後でのお楽しみ? なら聞かないよ。ルシファーくんはそういうのくわしいのかなー」

「射的ってね。危ないから近づいちゃダメだって言われてて、男の子しかできないのかと思ってたんだ」
「よくあるじゃんさー? 小さい頃にそういうものだって思い込んでた謎ルール! こうして私はまたひとつ過去を乗りこえたのだった…」
「掃除子ちゃんMk.II? それかペトロニウス! 掃除子ちゃんを発明したパパが飼ってた猫の名前。英語でいうとピートかな」

よくよく見れば、出店のレイアウトも前回とは違ってる。カップルの数もこころなしか増えてるような。
参道をはさんでひしめく屋台の食べ物のにおいにつられて、キョロキョロと目移りがして。

「リンゴ飴ってさ、自分でつくると意外に大変そうだよね。ちょっとずつ買うわけにもいかないだろうし」
「むっ! カルメ焼きだ。焼いてるとこはじめて見たよ!! ほら見て桜井くん! 途中からぶわー!って膨れるから!!」
「両方買って半分こしよう。それならおいしい思いが二度できるはず。私はこっち。君はそっちをお願い!」

桜井 雄二 > 「そう、後でのお楽しみだ。……川添孝一は彼女いたことないと聞いたが…?」
真実は残酷だ。明るい未来が待っているかも知れないのだから、恐れてはならないが。

「なるほど……そういうことなら、射的ができてよかったな」
「それじゃこいつの名前はピートだな。掃除子さんと後で会わせてやろう」
荷物に視線を移す。ピート、お前の先輩は立派に人の役に立つロボだぞ。

人の流れに逆らわず、でも見たい出店は見逃さず。
そっと手を繋いで、二人で祭を楽しんだ。

「カルメ焼き……芸術的な膨れ方だな、興味深い」
「わかった、それじゃ俺はこっちだ」
大き目のリンゴ飴を買う。二人で楽しむなら、これくらいは。
「ん……歩きながら食べよう、この人の流れ、花火が見れる場所に近づいていくみたいだぞ」

花火。それは今回の夏祭りの目的のようなもの。
きっと、そこで一歩を踏み出せる。自分を奮い立たせた。

三千歳 泪 > 「笑っちゃうよね。今思うと何でもないんだけど、その時は男の子たちがすっごくうらやましくてさ」
「そうでなくても三千歳の子は神楽の奉納に借り出されるし。覚えてるかな。『トロイメライ』の! あの衣装で射的はちょっとねー」

「いいかな。半分食べたら交換だよ! !?……これは…砂糖の味のほかになにかある!」
「屋台のおじさん謎の白い粉入れてたよね。見てた? あれは一体…」

カルメ焼きはとびきり甘くて、ビターな感じはあんまりしない。でも砂糖を舐めているのとは何かが違う。うまく説明できないけど。
見た目はおせんべいにも似てるけど、もっと脆くて崩れやすいみたい。きれいに分けられる自信がなくて、そのままかじってしまった。

「んふ。ふんふん…ん。そうそう。花火大会! ポスター貼ってあったもんねー」
「みんなそれ目当てかー。あ、いいよこれ。もってっちゃってくださいな。全部あげる!」

リンゴ飴をかじってる桜井くんを激写してカルメ焼きの半分を渡す。両方抱えてるとあまいもの大好きな食いしん坊みたいで面白いよね。
参道からはなれた場所の暗がりで、花火大会の夜空が見えそうなポイントにはだいたい先客がいるみたい。
因果はめぐって、今の私はあっち側。気恥ずかしくて、ずっとそわそわしっぱなしで。人の流れに身を任せながら、そっと手をつなぎなおした。

桜井 雄二 > 「ああ、あの衣装か……確かに射的という感じじゃあないな…」
「あの時も祭りに行ったから、一ヶ月に三回祭を楽しんだ計算になる。どんな祭好きだ、俺たちは」

「……重曹と砂糖以外に何か入るものがあるのか…?」
なんだか怪しい白い粉。でも美味しいのだったらいいのか?
「ああ、それじゃこのリンゴ飴は泪のものだ」
「お主も悪よのう」
無表情かつ棒読みで言いながら交換。Win-Win。
「あ、確かに砂糖だけじゃないなこのカルメ焼き」
二人でわいわい言いながら、人の流れに沿って歩く。
それも、手を繋いだまま。二人の距離は今までと同じ?

花火が始まる。大輪の花が次々と夜空に咲いては散っていく。
轟音と、美しさと、儚さと。
「なぁ、泪」
花火が鳴る。
「好きだ、正式に俺の彼女になってくれ」
手を繋いだまま、彼女の横顔を見て微笑んだ。

三千歳 泪 > 「私にとっては毎日がお祭だよ! どこかの誰かのハレの日で、一世一代の大舞台ならそれはお祭に違いないはず」
「君がいたから迷子にならずに楽しめた。一緒についてきてくれるなら、どこへだって行けそうな気がする」

君と私はそういう関係。危ない時には手を引いて、危険から遠ざけてくれる。
なんて呼ぶのかよくわからない、何だか都合のいい関係。今まではそう。
私は君の好意に甘えていたのかも。ううん、まだまだ甘えていたい。飾らない言葉で許してくれたから。

リンゴはまだ少しだけ青い味がしたけれど、赤い色をした糖衣が溶けてフォローを入れてくれた。

遠い爆音につられて夜空を仰ぎ見れば、文字どおり満点の星々が落ちてきた。全ての花火は道を譲れって感じです。
網膜に焼きつくほどに色彩が溢れ、綺羅星のごとく降りそそいで。視界が歪み、震えて一筋の雫をこぼした。
大輪の華が咲き乱れるたび歓声が上がって、会場のボルテージは最高潮まで高まっていく。

声が、聞こえた。歓声の渦の中でもはっきりと。朴訥に。飾り気もなく。
――――あれ。泣いてるの? なんでさ。ヘンなの。おかしいよ。理由もなく泣くなんて。

「………あっ、は。ごめっ…あは、はははは。えっと!……え、と……ね…」

こんなにたくさん人がいるのに、泣き出したのは私だけ? どうしよう。どうしようもなくて余計おろおろしてしまう。
君に甘えるのは簡単だけど、今は私ひとりで答えないといけない。
みっともなくしゃくりあげながら、そっぽを向いて手のひらで泪を拭った。
人が見てる? いいよ。減るものじゃなし。

「―――――ああもう。もう!! 私はずっとそのつもり。だったのに、今更だよ。そんなこと言われちゃったらさ!」
「わかんないんだ……私はどうしたらいいのかな、桜井くん…待って、駄目。今のなし。言わないで!!」

「答えがいるなら、答えてあげる。したい様にするから、これでおあいこだよ」

とっさにストップをかけて、ぐいっと手を引いた勢いのまま唇を当てた。

桜井 雄二 > 「……そうか、それなら俺は泪にどこまでもついていかないとな」
「お前は結構、危なっかしいところがあるからな」

綺麗な花火。美しい星空。可愛い三千歳泪。
そのどれに目を向けていいのか、わからなかった。
どれもとても良いものだと思ったから。

でも、今は彼女を見るべきなんだ。
彼女は今、泣いているのだから。

「お、おい泪……………?」
ひょっとして、断られるパターンかと心臓がぎゅっと握られたような感覚に陥る。
だが違うようだ。

「……俺は、二人の関係をもっとはっきりさせたかったんだ」
「それがお前を泣かせることになったのだろうか」

「答え…………?」

その時、唇に柔らかい感触が当たった。
リンゴ飴と、涙の味がした。


それから二人はどうしたのかは、今日は語るのはやめることにする。
ただ、二人で花火を見てから一緒に帰っただけだし。
劇的に何かが変わるわけではなかったから。

ただ、確かなものを二人の間に築いた。それだけの話。

俺はNo.10と書かれたメモ帳の1ページ目に、一文を書いた。
『大切な人ができた』と。

ご案内:「円上神社の夏祭り」から三千歳 泪さんが去りました。<補足:金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。浴衣姿は秘色の帯と。>
ご案内:「円上神社の夏祭り」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:男性用浴衣装備。(乱入不可)>