2015/07/17 - 22:13~22:52 のログ
ご案内:「ロビー」に畝傍さんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。狙撃銃を携帯>
畝傍 > 夜。女子寮のロビーにある、大きなソファ。橙色に身を包んだ少女は、その隅に腰掛け休息をとっている。
放課後、畝傍はかつての異邦人街の祠における戦闘で失ったものと同じ狙撃銃を島内の銃火器店で新しく購入。資金は決戦以前に行っていた『狩り』の報酬からカバーした。
その後、訓練施設に置いて試射を行ったのち、寮に帰ってきたところなのであった。
購入した狙撃銃はすでに彼女のみが物を出し入れできる便利な収納ポータルへと仕舞い込んであり、
今その腕に抱えられているのは、彼女のボディスーツと同じ橙色のマズルを持つレプリカである。
左手には、このロビーの自動販売機で購入したオレンジ味の炭酸飲料。彼女の好物であるそれに、ゆっくりと口をつける。穏やかなひととき。

畝傍 > ぐい、とジュースを一口飲んで。
「……ぷはあ」
と、一息。
畝傍の眼前には、備え付けのテレビ。常世島、および本土のニュースや流行を主な内容とするバラエティ番組が放送されている。
ジュースを飲みつつも、時折それに目をやっていた。その安らぎの時間を阻むかのように、『声』は聞こえてくる。

――赦されない。お前の罪は赦されない――
――焼け。その力でお前の身を全て焼き滅ぼせ――
――お前がその身を焼き滅ぼすまで、お前の罪は決して赦されない――

先日の転移荒野での決戦において、畝傍は自らの異能『炎鬼変化』<ファイアヴァンパイア>を今の自分に出せる最大の火力で使用し、多くの『正気』を代償として支払った。
その影響により、以前はかすかに聞こえるのみだった、自身の罪の意識につけ込み責め苛む幻聴が、今はより鮮明に聞こえてきてしまう。

畝傍 > 手足が次第に少しずつ震えはじめるのを感じ、ジュースの缶を机の上に置く。
「いや、だよ」
独り言。以前ならば、聞こえてくる声にただ怯えるばかりだったであろう。
しかし今の畝傍には、その声にはっきりと抵抗する意思があった。
「……ボクはもう、『炎』のちからはつかわない。じぶんをぎせいにしたりなんか、しない……」
自らの他に聞く者もいないであろう、静かな宣言。
畝傍にとって一番の親友――石蒜/サヤを救い出し、さらには『生きている炎』を呼び出したことで、邪仙・鳴鳴も退けられた。
ならば、もうこの力を使う理由は、自分にはない。
たとえ再び大きな戦いに臨む必要があったとしても、その時は自らの体と銃を信じ、『炎』の力に頼らず戦うのみだ。
今の畝傍には親友が、仲間がいる。自らの身を焼き滅ぼし、彼らを悲しませるわけにはいかない。

畝傍 > 黒いサインペンの文字で「くすり」と書かれた赤いピルケース。そこから錠剤のようなものを一つ取り出し、口に入れて飲み込む。
それは一見すると錠剤によく似た形ではあるが、本物の薬ではなく、一種の偽薬である。
ピルケースの中にはそれらと仕分けられる形で本物も入ってはいるが、
こちらは1日2回の用法に従って服用せねばならないとされており、畝傍はそれを厳守していた。
無論、このような事をしても、代償として持って行かれた彼女の『正気』が戻ってくるわけではない。
狂気の表出を少しでも抑えるための、即席の儀式のようなものだ。
偽薬を口にし、深呼吸。すると次第に、畝傍を責め苛んでいた声は小さくなり、遠ざかっていく。それと同時に、四肢の震えも退いていった。
「…………ふー」
やがて声が完全に遠ざかり、震えが収まると、畝傍はソファに深く腰掛け、安らぐ。左手でジュースの缶を持ち、残りの分を飲もうとした。

畝傍 > 再びぐい、とジュースを飲み、ぷはー、と息を吐いた後。
「サヤ……シーシュアン……どうしてるかな」
憂いをまとった声で、呟く。
決戦後の畝傍は戦闘による負傷を癒したり、養護教諭の蓋盛から借り受けていたショットガンを返却したりと、何かとばたばたしていたため、
保健病院へと搬送されて以降のサヤ/石蒜の様子について未だ知り得てはおらず、見舞いに行くこともできていない。
それが今の畝傍にとって、最も気がかりなことであった。

畝傍 > 済ませておかねばならない予定はあらかた済ませた。
なるべく早いうちに、できれば明日にでも、サヤを見舞いに行かなければ。
そう強く決心しつつ、残りのジュースを一気に飲み干した後。
「…………おふろ、はいろ♪」
その声は明るい調子に戻っていた。
橙色の少女はソファを立ち、暗くまとわりついていた感情を振り切ったような笑顔と足取りで歩き出す――。

ご案内:「ロビー」から畝傍さんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。狙撃銃を携帯>