2015/07/18 - 22:07~02:24 のログ
ご案内:「常世保険病院・サヤの病室」にサヤさんが現れました。<補足:黒髪の少女。薄緑色の病衣。>
サヤ > 出入口を塞ぐ堅牢な扉に、鉄格子のはまった窓、幾つもの監視カメラが天井から伸びている。
病室というより監獄に近い印象をあたえる。
その部屋の真ん中に置かれたベッドで、サヤは食事を取っていた。
食器は特殊な素材でできているらしく、力を入れて持つとふにゃふにゃと柔らかくなってしまうらしい。
武器にならないようにしてあるらしいが、食べづらいのは少し困った。
窓から夕日が差し込む中、で重湯のようなとろみのある液体を少しだけ掬い、口に含む。
舌に感触と味が伝わる。かすかな甘味、美味しい。味わいながら飲み込む。

サヤ > すぐに次を食べたいが、しばらく待つ。がっついてまた戻してしまったら大変だ。
壁に埋め込まれた時計を見る。一分……三分……。大丈夫…かな?
もう一口だけ食べてみよう、もう一口……もう一口……。
瞬く間に器は空になった。どうやら相当お腹が空いていたらしい。
石蒜で居た一月ほどの間、飲まず食わずで平気だったし、むしろ食べ物を体が受け付けなかった。
だから空腹という感覚を忘れていたようだ。
胃が縮みきっているのか、僅かな量だが満腹になった。ゲップが出そうになって、こらえる。一人とはいえはしたない。
食器と器をベッドテーブルに置いた。

サヤ > そろそろ退院出来るかもしれない、と医師に言われた。私の回復力は驚異的で、ほとんど怪我は治っているらしい。
左腕や、右足首の動きはまだぎこちないので、"りはびりてえしょん"のために通院する必要はあるので、完治とはいかないそうだ。
もう包帯は全て外れた、右腕にかすかに火傷の跡が残っているが、それもそのうち消えるらしい。
右腕を持ち上げて、火傷の跡を見る。まるで炎をそのまま描いたように、赤く踊っている。
全ての傷が消えても、あの夜のことはなくならない。大丈夫、忘れたりなんかしない、沢山の人が私に手を差し伸べてくれたことを。
ぱたり、と腕を布団に落とす。「大丈夫。」確認するように、小さく呟いた。

ご案内:「常世保険病院・サヤの病室」に畝傍さんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿>
畝傍 > 橙色に身を包んだ少女は、常世保健病院のとある病棟を訪れていた。
先日の決戦において救出し、ここに搬送されてきたサヤを見舞うためである。
その左手には普段畝傍が持つ狙撃銃の形を模したキーホルダーをしっかりと握りしめていた。
今いるこの場所のように、銃を持ちこめない所に長時間留まる必要がある場合、彼女はこのような手段をとる。
受付であらかじめ受け取っていたカードキーを装置に通すと、厳重に閉ざされていた扉が少しずつ開いていく。
やがて扉が開ききると、橙色に身を包んだ少女は、そこから一歩足を踏み入れ。
「……きたよ。サヤ。ごめん……おくれて」
ベッドの上のサヤに静かに声をかけ、そして詫びる。

サヤ > 扉が開く音に気付いて、そちらを見る。
食器の回収だろうかと思ったが、違った。
「畝傍さん…!」ぱぁ、と顔が明るくなり、上半身を起こす。
「いいんですよそんな、来ていただけただけで嬉しいです。さぁ、こちらへどうぞ。」と、ベッドの傍に固定された椅子を勧める。
「どうですか、お元気でやっていらっしゃいますか?」嬉しそうに、問いかける。

畝傍 > 「ありがと」
サヤから示された椅子にゆっくりと腰掛けると、彼女の方を向いて問いかけに答える。
「うん。ボクは……げんき、だよ。ケガもなおってきてる」
微笑む。事実、畝傍の肉体的な傷はほぼ快方に向かっていた。
だが、精神的にはそうではない。先日の決戦において、異能を行使した代償として『正気』が支払われているためだ。
先日も女子寮に居た際、今まで畝傍を責め苛んでいた幻聴が、これまで以上に鮮明に聞こえてきた。
しかし、畝傍はその事実までは伝えなかった。サヤに余計な心配をかけまいとしたためだ。
「サヤは、どう?」
こちらからも、問うてみる。

サヤ > 「そうですか、良かった。」安心したように、微笑む。
畝傍の異能が正気を代償にしているのは知っている。
あの決戦の時に使った影響が出ていないか心配していたが、どうやら大丈夫らしい。

「私はええと……りはびりてえしょん、のために通院はまだ必要らしいですけど、もう怪我はほとんど治っていて、もうすぐ退院できるそうです。そしたら、家を探して、見つかればまた学校に行けると思います。」その時が待ちきれない、という風に、今後の予定を話す。
石蒜であった間に犯した罪が、正当とは言えない理由でほぼ免除されたことは、言わい。友人を巻き込みたくなかった。

畝傍 > 「家……かあ。サヤって、ここに、おうち……なかったんだっけ」
そういえば、住居に関する話は石蒜の口からも聞いていなかったはずだな、と思い出す。
仮に住居があったとしても、指名手配中の身では戻ることもままならなかったであろうと推察する。
「ボクは、常世寮の女子寮にすんでるんだけど……今はひとりだから……あっ、でも……だいじょうぶ、かな」
畝傍は、入院中のサヤに起こった出来事の一切を知らない。まだ風紀委員が彼女を追っている可能性はありうる。
安易に学生・教職員居住区の方へ向かわせるのは、サヤの事を考えるとよい考えとはいえないのではないか、と考えていた。

サヤ > 「異邦人街で長屋を借りていたんですが、石蒜が風紀委員の方たちと揉め事を起こしてしまったので、多分契約は解除されてるかと、家賃も石蒜は払ってなかったですし。」だからもう一度同じところを借りるのは難しいだろう。少し困ったように右手で額をかく。

寮の部屋について相手が言及すれば。「あ、ええと……説明が難しいんですが、私の罪に関しては……まぁ、色々あって……お咎めは受けないことに、なりました。その、情状酌量の余地がある、とかで……。」慎重に、言葉を選びながら、嘘を吐く。公安の手駒となることで、罪から逃れたのだ。そうしなければ消されたとはいえ、後ろめたい気持ちはあったし。やはり詳しく事情を説明して巻き込むことを恐れた。アルフェッカには話してしまったが、言わなくてすむなら言わない方がいい。

畝傍 > 「そう……なんだ。うん。よかった」
サヤの様子を察すると深く詮索はせず、素直に納得した素振りを見せる。
「じゃあ、退院できたら……ボクのへやに、きてみる?女子寮はルームシェアもできるみたいだから、サヤがよければ、その……いっしょに」
畝傍の頬が赤らむ。特にやましい気持ちはないとはいえ、こういうことを自分から言い出すのは、少し恥ずかしかった。

サヤ > 「ええ、そうなんですよ。だから、大丈夫です。」少しぎこちなく笑う。あまり嘘は得意ではなかった。


「え、あ、えと……。」相手が頬を赤らめれば、石蒜が畝傍と初めて会った時のことを思い出してしまう。それに石蒜が今後『そういう関係』になろうと考えていたことも。
「そ、その、ええと。わ、私はその、畝傍さんのことはとと友達と思っていますがそれでもよ、よろしいですかっ?」こちらとしてもそんなやましい気持ちはないが、自分の体を使っていた存在がやましい気持ちバリバリだったので、勘違いされてないかと思い、確認した。

畝傍 > 「うん、いいよ。サヤがそれでいいなら、ボクもだいじょうぶ」
頬を染めたまま、明るい笑顔で答える。
「あ、でも……サヤがくるなら、今のへや、ちゃんとかたづけとかなくちゃ。いすとか、ベッドとか……そういうのも、いるかな」
現在、寮内の自室で生活しているのは一人であるため、家具や内装は畝傍自身が使用しやすい形に合わせている。
もし本当にサヤとのルームシェアを行えることになったならば、
家具などもそれに合わせて購入しなければならないだろう。ベッドも一つだ。

サヤ > 「ええ、よろしくお願いします。」こちらも何か頬が熱くなってきた気がする。ああ、もう、石蒜め!
「あ、そっか……家具とか必要ですよね、長屋は家具込みで借りられたから……。」べっど、確か寝具のことだ。それが1つで2人住むとなれば……。顔が赤くなるのがわかる。違う、そういうことを考えるな。
「ま、まぁ……私は床でも寝られますから、そんなに急いで準備されなくても大丈夫ですよ。」赤くなったのをごまかすように、少し早口。

話題、話題を変えよう。家具ぐらい後でなんとかなる。
「多分退院したら刀も戻ってくると思うので、石蒜と話せるかもしれません。今は刀は病院が保管していて、石蒜もずっと一人で閉じこもってるみたいです。多分畝傍さんに会えば、気分も変わると思いますよ。」多分相手が心配しているだろう、石蒜について話す。剣の絆も切れてしまって今はどうなってるかわからないが、多分元気だろう。精神的には、落ち込んでいるかもしれないけれど。

畝傍 > 「うん、わかった。あとでかんがえとくね」
急いで準備しなくてもよい、とのことなので、今急いで家具について考える必要はなさそうだ。後でゆっくり考えることにしておく。
「そっか。シーシュアン……ぶじで、よかった」
サヤの口から石蒜の無事を知ると、畝傍はほっ、と息を吐き、安堵する。
幾度となく石蒜に呼びかけ、そして彼女の魂が封じ込められた刀が折られないよう、必死に守り抜いた甲斐があったと感じた。
「退院できたら、またおはなししたいな」
石蒜は畝傍にとって、一番の親友。畝傍の交友関係が広がった今でも、それは変わることはない。
彼女を再び解き放つことになれば、サヤにとっては複雑な心境かもしれないが。

サヤ > 「ええ、石蒜は畝傍さんが大好きですから、慰めてあげてください。あの人……鳴鳴を失って、きっと悲しんでいると思いますから。」優しく、微笑む。
鳴鳴と石蒜について、自分の中でまだ答えが出ていない。恨んでいる部分もある、鳴鳴には恩があるし、石蒜は私を守るために鳴鳴に従っていた。単純に好きとも嫌いとも言えない。
「私は、大丈夫です。皆さんが石蒜を、私を受け入れてくれたように。私も石蒜を受け入れようと思います。」

畝傍 > 「うん……そうするよ」
サヤの言葉を聞いた畝傍は俯く。サヤ/石蒜を救うためには仕方ない部分もあったとはいえ、
『生きている炎』を召喚し、鳴鳴に対して間接的に手をかけてしまったのは自分だ。
自分が、石蒜の悲しむ原因を作ってしまった。そう思うと、涙が一粒、頬を伝う。
「(やっぱり、ボクは……ひとごろしだ。ひとごろしでしか、ないんだ)」
サヤに気付かれないよう、涙をそっと拭い、顔を上げると。
「サヤがそうしてくれたら……ボクも、うれしいな。サヤとシーシュアンは、もともとひとつだったんだし……きっと、なかよくなれるよ」
そう言って、微笑む。

サヤ > 「石蒜がどう考えているのか、まだわかりませんが。ええ、私もそう思います。」目を閉じて、右手を胸に当てる。「彼女とは、どこかまだ繋がっているように、感じるんです。今は石蒜が閉じているから、伝わってこないですけれど。」

人の顔色を伺い、嫌われることを恐れて生きていたサヤは、感情の機微に敏感だった。畝傍の涙に、拭う仕草にも気付く。
「すみません、軽率な発言でした。」悲しんでいるなどと、それを殺した張本人に言うなど、なんというウカツ。

「でも、畝傍さんは正しいことをしました。鳴鳴は確かに私を救ったし、石蒜の主人でしたが。紛れも無い悪です。きっとあの人に、石蒜を真に幸せにすることは出来なかったでしょう。」じっと、目を見る。その言葉に嘘偽りや、ごまかしは一切ないつもりだ。

「そのことを石蒜もきっとわかっています。だから石蒜は一度、鳴鳴を裏切ろうとしたんです。」だから、あなたを恨んでは居ないのだと、罪を覚える必要はないのだと、そう伝えたい。相手の手を握ろうと、手をのばす。

「私は、私達は畝傍さんに感謝しています。何度も差し伸べられた手を拒み、あまつさえ刃を向けても、畝傍さんは諦めなかった。そして、やり遂げたんです。感謝すれど、恨むつもりはありません。だから、泣かないで下さい。その方が、石蒜も私も、悲しいです。」

畝傍 > 「ううん……いいんだ。ボクは……むかしから、ひとごろしだったから。それは、かわらない、から」
サヤの顔を見たまま、わずかに俯いて呟く。
石蒜には語った、畝傍の過去。祖国において、狙撃手として多くの人間の命を奪った。
どれだけの時が流れようと、その事実は消えない。
「そう……だったんだ。シーシュアンが、あのひとを……」
あの石蒜がかつて一度、鳴鳴を裏切ろうとしていた。
畝傍が知り得ていないその事実に、こちらをじっと見ているサヤの目を見ながら素直に驚く。
その後、差し出された手を握り。
「そうだね……ボク……なかないよ。ボクがわらってなきゃ、シーシュアンもしんぱいしちゃうよね」
そうして、再び笑顔に戻った。

サヤ > 「私も、人を殺めたこと、ありますよ。」ぎゅっと、両手で手を握る。手が温かい、私の体温も伝わっているはずだ。

「石蒜として、4人殺しています。ただ殺したいという欲望だけで。私も人殺しです。」一旦、言葉を切る。その4人、恐怖に震え、命乞いする相手を無慈悲に切り捨てたあの瞬間は、今でも夢に見るし、思い出す度に右手が震える。今も、震えている。
「自分を責めないで下さい。一緒に、罪を償う方法を探しましょう。畝傍さんだって、幸せになって……幸せに生きていいはずです。私が居ます、石蒜だってあなたを否定しないでしょう。だから、過去に囚われちゃ駄目です。今度は私に、あなたを助けさせて下さい。」心から願う、あなたに不幸になってほしくないと、自分を傷つける必要はない、と。

「ええ、笑顔のほうが素敵ですよ。石蒜は私より子供ですから、畝傍さんが悲しんでたら、きっと泣いちゃいます。」冗談めかして、少し笑う。石蒜の畝傍に対する対応は母親に対するそれに近い、というのがサヤが一緒にいて感じたことだった。きっと甘えられる相手が欲しいのだろう。

畝傍 > 「いっしょに、つぐなう……」
サヤの口から出た言葉を、反復する。握られた手からは、サヤの体温が伝わってきていた。
――そうだ。たとえ過去に起こった出来事は変えられずとも、過去の罪と向き合い、償っていくことはできる。
これから二人――否、石蒜も含め三人で、少しずつでも。そう、思えた。
「そっか……ボクも、しあわせになって……いいのかな」
その言葉に、どこか安心する。心の中にあった不安が、少し取り除かれたような気がした。
「じゃあ、もしボクがほんとうにこまって、どうにもできなくなったりしたら……そのときは、よろしく……ね」
今度は私に――その言葉に対して、お願いをしてみる。

サヤ > 「ええ、頑張りましょう。もう過去に怯えなくていいように、幸せになれるように、私と、畝傍さんと、石蒜も。それに風間さんやアルフェッカさんだって居ますよ。みんなで、一緒に。」安心させるように、微笑む。
自分も、一人で抱え込むのはやめたのだ、だから、あなたにもそうしてほしい。

「ええ、頼って下さい。恩返しできるように精一杯頑張りますから。」もう一度、手を握る。震える右手と、ぎこちない左手。頼りないかもしれないが、これが今の私だ。嘘も飾りもない、本当の気持ち。

「私が退院したら、一緒に家具を買いに行きましょうよ。私この世界のことほとんど知らないんです、だから一緒に来てください。」楽しそうに、これからを話す。過去ではない、これからのことを。

畝傍 > 「うん……みんなで、いっしょに」
今の畝傍には友人が、仲間がいる。もう、あの頃のように一人ですべてを抱え込む必要は無いのだ。そう、再確認する。
「もちろん、いっしょに行くよ。家具だけじゃなくて、いろんなもの、いっしょに買お。ふたりでいろんなとこ、行こうよ。このしまのこと、このセカイのことも、ボクにおしえられることは、いっぱい、おしえてあげる」
これからについてのサヤの提案に、一番の笑顔で応じ。
「おみせ、どこがいいかな……商店街になら家具が売ってるおみせもいっぱいあるし……あと、異邦人街にも、変わった家具が売ってるおみせがあったきがする」
行ったことのある商店街の記憶をもとに、畝傍が知っている家具店について話す。
もっとも、知識として存在を知ってはいるが、実際に行ったことはまだないという場所も多い。なので場所の選択によっては、サヤと行くのが初めてになるかもしれない。

サヤ > 「お願いしますね。本当に何も知らないので、色々聞くとは思いますが、うんざりしないでくださいね?」冗談混じりに笑う。新しいことを知るのは好きだ、きっとこの世界には知らないことが山ほどある。期待できる。

「私の国の家具……ええと、和風って言うんでしたっけ。それはもう知ってるので、こちらで使っている家具を使ってみたいと思いますね。色々見て回りましょうか、休日で時間があるときに。楽しみだなぁ。」子供のように、目を輝かせる。友達と出かける予定を話し合う。こちらに来て初めてのことだ、そんな話が出来る友達が出来たことが嬉しかった。

畝傍 > 「うんざりなんかしないよ。サヤ、トモダチだもん。ボクにできることなら、するから」
そう答え、しばし考える。
「こっちのセカイの家具なら……やっぱり学生街のほうかな。そうだね、なつやすみも近いはずだし、たくさん見てまわれるとおもうから」
常世島を訪れるまでは祖国で任務に生き、友人といえる友人もいなかった畝傍にもまた、出かける予定を話し合うなどといった機会はなかった。
しかし、今はこうして話す事が出来る。
血腥い世界と縁のない人間からすれば、ごく当たり前のような『日常』の体験。それが、畝傍にとっては尊く、幸せだった。

サヤ > 「うふふ、良いですね。友達、友達かぁ。」余韻を楽しむように、繰り返す。友達が出来て嬉しくてたまらないといった様子だ、布団の下で足をバタバタさせる。子供っぽい。

予定を話し合いながら、手を包むように握る。「畝傍さん、私今本当に幸せです。だから、お礼を言わせて下さい。私を、石蒜を助けてくれて、本当にありがとうございました。」今の自分があるのは、畝傍の、助けてくれた人達のおかげなのだと思うと、お礼を言いたくなった、確かまだ、ちゃんとお礼をしてなかったはずだ。

畝傍 > 畝傍は嬉しさを大きな体の動きとしては出さず、そっと微笑んでいる。
「ううん……お礼なんて、いわれるほどのことは」
サヤから感謝の言葉をかけられると、思わず謙遜する。
「ボクはただ……じぶんのしたいことを、しただけだから。それは、おんなじだよ。ボクも、シーシュアンも……あのヒトも」
かつての石蒜に加え、今はもういない鳴鳴をも思う。だが今度は、涙を流さない。

サヤ > 「でも、結果として私達は助かりました。だから、受け取って下さい。受け取られなかったお礼は、行き先を失ってしまうんですよ。」師匠から教わった言い回し、だから相手のためにも、お礼はちゃんと受け取れと教わった。

「そうだ、一緒に住んだら、家事は私に任せて下さい。部屋のお掃除出来ますよ、料理だって多少は出来ますし。洗濯もやってましたから。」元の世界で家事全般は教わっている。だが、もちろん家電の使い方は知らない。本当に任されたら、箒や竈、洗濯板などを使おうとするだろう。

畝傍 > 「うん……わかった。うけとっておくよ」
そう告げ、サヤの気持ちを素直に受け止めることにする。
「そっか。サヤがてつだってくれたら、ボクもうれしいな」
畝傍は掃除や洗濯こそ最低限レベルでこなせるが、自分で料理をすることは少なく、出来合いの食品や外食で済ませてしまうことも多い。
なので、サヤが料理を作ってくれるならとても嬉しい、と考えていた。
もちろん、部屋に居ないときに掃除や洗濯を手伝ってくれるというのであれば、それもありがたい。

サヤ > 「一緒に暮らすんですから、助けあいましょう。それで、ええと……服も、私の私服も買いに……私、服いつも着てるのしか持ってないから……。」喋りすぎたのか、急に疲れと眠気が襲ってきた、船を漕ぎ始める。
「海、海も…行きたいな……この世界の…水着、どういうものなんでしょう……。」眠そうに目をこする。もっと話していたいのに、この時間を楽しみたいのに、体がいうことを聞いてくれない。

畝傍 > 「服も水着も、いっしょに見に行ってみようよ。ボクも、水着はクトといっしょに買いにいったんだ」
そう話したところで、サヤが眠たそうに船を漕いでいる様子を見ると。
「サヤ……ねむいの?なら、むりしないで……ゆっくり、ねてていいよ。サヤがねるなら、ボクはもういくから」
サヤの身を案じ、問いかける。畝傍も話していたい気持ちはあったが、何より大事なのはサヤが早く退院できることだ。
そのためには、睡眠もしっかりとらせておかなければならない。

サヤ > 「ねむ、ねむいでふ」回らない舌で肯定、どうみても眠りに落ちる直前だ。もう上体を起こす力もなく、ベッドに横たわる。

握る手の力も弱々しい「約束れすよ、いっしょにあそびましょう。たのしみにひてまふから……。」もう目も開けていられない。ゆっくりとまぶたが下りて行き、完全に閉じる。
「やくそく……。」それだけ言うと、眠りに落ちたようで、規則的な寝息を立て始める。

畝傍 > 「うん……やくそく、だよ」
眠りについたサヤに微笑み。
「……じゃあね、サヤ。またくるから、きっと」
そう言い残すと、畝傍はゆっくりと椅子を立ち、扉の方向へ歩き出す。
やがて橙色の少女の姿は、その向こうへと遠ざかってゆくだろう――

ご案内:「常世保険病院・サヤの病室」からサヤさんが去りました。<補足:黒髪の少女。薄緑色の病衣。>
ご案内:「常世保険病院・サヤの病室」から畝傍さんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿>