2015/07/18 - 21:05~04:37 のログ
ご案内:「転移荒野」にヨキさんが現れました。<補足:獣型/成人男性ほどの体高、金目、黒い毛並み、呪いの傷、焔と邪気>
ヨキ > (見渡す限り重たく沈み込む夜に包まれた荒野を、一匹の魔獣がゆく。
 その口元には丸太のような塊を咥え、口の端から昂ぶりを帯びた呼気を漏らしている。

 魔獣は徐に足を止めると、何かを探すようにぐるりと辺りを見渡した)

「(………………、逃げたか。だが、長くは保つまい)」

(がふる、と忌々しげに荒い息を吐き、咥えていた塊を咀嚼しはじめる。
 牙に破られるごと赤黒い断面を晒したそれは、人間の腕だ。
 肥え太り、縮れた毛の生えた肉塊を地面に落とし、鋭い爪で押さえ込んで食い荒らす)

 肉片は、嚥下されるごとに首の、そして胸の傷という傷から、ばたばたと零れて落ちる。
 いったいどれほどの量が、胃まで届いているかは怪しかった)

ヨキ > (腕の持ち主は、異能にも魔術にも関わらずして、不法に島へ入り込んだ男だ。
 島外から持ち込んだ『何か』を、生徒に売ろうとした。それがいったい何であったのかは、ヨキの知るところではない。
 男が不法に島へ立ち入ったこと、不法な何ものかを持ち込んだこと、それによって生徒へ魔手を伸ばそうとしたことは、ヨキにとって命を奪う理由とするには十分すぎた。

 噛み切った腕に乱暴に齧りつく様には、獲物を食べている、というより、明確な害意がある。
 骨までやわらかな若木のようにばきばきと噛み砕き、やがて首を上げた)

「(ここはヨキの島ぞ。ヨキの――学園の子らのあいだに、易々と交わろうなどと思うな)」

(不遜なまでの呪詛に煽られて、まばらな黒の毛並みが舞い立つ。
 その眼差しから、口から、傷口の奥から、金色の焔が躍る)

ヨキ > (牙に絡みついた肉片を、人間のように吐き捨てる。
 腕だったものがその原型を失うと、いっぺんに興味をも失くしたように顔を逸らす。
 骨を踏みつけ、再び荒野を歩き出す。
 自分にとっての獲物を、あるいは学園にとって有益となる来訪者の姿を探しながら)

「(……………………)」

(汚れた口元をべろりと舌で嘗め回す。
 肉付きの薄い腹を上下させながら、切れ切れの喘鳴を繰り返している。

 金の瞳、黒くうねる毛、鋭い牙、赤く彩られた目元、張り詰めた筋肉に覆われた細い足――
 それぞれの要素は人の姿のヨキと全く同じでありながら、その魔獣はヨキの在りようとひどく異なっていた。
 その身は汚れ、所作は荒々しく、獣の臭いが鼻を突く)

ヨキ > (――やがて眼前に姿を現す湖は、地面に開いた大穴のように深く、暗い。
 前足が雨上がりのぬかるんだ泥を踏む。
 その汀に足を止め、月が覗く雲を映し出す水面を見下ろす。
 頭上の月より暗い金の光がふたつ、目元にぼうと浮かぶのが見えた)

「(……討たれても、文句は言えんな)」

(身を屈める。鼻面を水につけ、ばしゃばしゃと飛沫を立てて漱ぐ。
 世辞にも清潔とは言えない、泥やちぎれた草の浮かんだ水を構わず飲み下す。
 穴の開いたホースのように喉元から水が漏れ出し、体毛と隙間に見える皮膚を濡らした)

ご案内:「転移荒野」にトトさんが現れました。<補足:ポシェットに白いワンピースとスパッツを着用し、腰までの緑髪を揺らす中性的な人物>
トト > ぱしゃん、ぱしゃ、と水音がヨキのそばから聞こえる
そちらのほうを向くと、ワンピース姿の人影が、濡れるのも気にせずに泳いでいる

「………  ふぅ、こんなものかな、一人の練習は隠れてするのが美徳らしいからね。」
と、濡れたまま湖から身を起こして陸に上がってくる… どうやら本気で練習していたらしい

ヨキ > (水音に気付き、顔を上げる動きは素早かった。ぴりりとした警戒が、獣の体表を駆け巡る。
 鼻を小さく鳴らし、その人物が立てる音や声に耳を澄ます。

 ――耳に届いた声は、この転移荒野という土地に似つかわしくなく、暢気だ、と思った)

「(………………、何者だ?)」

(特に呼びかけるでもなく、疑念を脳裏によぎらせる。
 無言の代わり、獣の低い唸り声が、ううふ、と零れた。

 相手の目と鼻の先では、ヨキ――傷だらけの黒く巨大な猟犬が、身を潜めるでもなく邪気と焔とを発し、じっとトトの姿を見ているのが分かる)

トト > 「?………  こんばんは、見られちゃってたかな? ええと… そうだ、いい夜だね。」
その唸り声か、気配か、どちらかに気づいてヨキのほうを見つめ返す顔は中性的なものだが
水に濡れた服から見える肢体は、どちらかといえば女性のものだろうか、細いのは確かだ、腰や足首何かは細すぎるくらい

「はじめましてだね、あ、でも僕は大体の相手がそうだけど… あれ、怪我してるの?平気?」
ぺたぺたと濡れた体のまま、ヨキの姿が傷だらけなのを見ると、少し心配そうに呟いて近づいてくる
ごく自然に挨拶をして近づく、その動きに警戒や恐れは微塵も感じられなかった

ヨキ > (向き合った相手の顔に、犬の瞼がぱちぱちと瞬きを繰り返す。
 トトより少しばかり高い位置にある顔が、暗闇に浮かぶ顔を見分する。
 怪我を心配されると、ふるりと伏せた首を振る)

「(………………、君)」

(発するのは、獣の荒い呼吸のみ。その脳裏で明確な人語を浮かべ、呼び掛けを試みる。
 異能や魔術といった、超自然的な能力の持ち主ならば、多少なりとも感じ取れるやも知れない。
 低く通るような、人間の男の声が)

「(――君、聴こえるかね。この、ヨキの声が?)」

(傍目には、犬が言葉を話そうとしている――そんな息遣いが、断続的に漏れ聞こえるだけにしか見えない)

「(平気だ。死にはしないし……痛くもない。それほどには)」

トト > 「……… 。」
声掛けに対して、きょとん、とした顔で一度立ち止まる、少し考え込むように、指を唇に当ててから、口を開く

「ん……… 応急処置くらいなら、出来るけど、いらない?かな?
うん、聞こえるよ、僕はこういう能力は未だ持ってないはずだけど、君の力なのかな
… あ、そうだ、僕はトトだよ、ヨキはどうして此処にいたんだい?僕は泳ぎの練習中だったんだけど。」
まさにその、異能を介して声が伝わってきた様子で、ふんふん、と何度か頷きながら答えを返してくる
ヨキが教師なら、最近編入した一年生に、そんな名前の子がいたのを覚えているかもしれない、種族は、自称だがゴーレムだったか
そんなトトは肩に下げていたポシェットから缶のポカ○を取り出すと、ぷしゅり、と開けて飲み始めた

「……… あなたも、いる?お近づきの印、だよ。」
トト的には半ば習慣になっているドリンクプレゼントを試みる、手に持っているのは、こちらはペットボトルのスポーツドリンクだ

ヨキ > 「(……ありがとう)」

(トトの心遣いに、ゆったりと首を振る。
 その荒れた幽鬼のような姿に反して、伝える声は穏やかで、所作は落ち着いている。
 トト君、と、相手の名を呼ぶ。時期を問わず増える学生の名は、それほど明確には記憶されていなかった)

「(トト君、か。君は……常世の、学生かね?
  ヨキは……)」

(少し考えてから、隠すのも誠実でないと判断したか、意を決したように)

「(教師だ。……学園の。
  今はこんななりをしているが、普段は人の姿を取っている。
  あまり清潔な姿ではないのでな。
  人目につく場所では、晒さぬようにしているのだ)」

(差し出されたペットボトルにきょとんとしてから、徐に顔を近付け、鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。
 暫しののち、牙に覆われた口でむんずと咥えて受け取る)

「(…………、頂こう)」

(二本の前肢のあいだに、ボトルをそっと下ろす。
 表情のないはずの犬の顔が、ふっと笑ったように見えた)

トト > 「うん、最近一年生に入ったんだ、学生だよ………ふむ、図書館で見た、【世を忍ぶ狩りの姿】と言う奴だね、知ってるよ。」
話を聞いて、その内容に納得したように頷いた

「教師、じゃあ先生だったんだね、じゃあ、夜の見回り、みたいなものなのかな?危ないところもあるらしいものね。」
他人事のようにそう言いつつも、飲み物を受け取ってもらえたのを見ると笑顔が浮かんで

「この飲み物、疲れた時にはいいらしいんだ、此処の水はいい感じに【混ざって】いるけど、飲んで体力がつくかは別だしね
ちょっと疲れているように見えたし、丁度いいかなって思ったのさ、受け取って貰えて嬉しいよ。」
ぱぁ、と顔をほころばせながら、ヨキにその飲み物を勧めた理由も説明してくる

ヨキ > 「(そのようなものだ。島の人間たちに受け入れられてきているとはいえ、ヨキはここでは未だ『異邦人』だからな。
 ……無用な混乱の種は、増やしたくない)」

(見回りと訊いて、大きな頭がこくりと頷く)

「(ああ。島の中には、不届き者も多いからな。見回りは教師の大事な務めぞ。
  ……君も遅い時間に転移荒野などうろついていては、悪者に目をつけられてしまいかねん。
  どうやらその表情を見るに……、肝は据わっているようだが。
  君は、未開区が怖くはないのか?)」

(明るむトトの顔に、ふっと目を細める。
 犬では人と同じには笑えず、くしゃりと歪めたような顔)

「(そうか、……気を使わせてしまったな。
  ヨキの身体は、初めからこのようなものだ。
  どれほど食っても肉は増えず、何とも燃費の悪い身体よ)」

トト > 「異邦人、ああ、僕も登録では確か、そうなっていたような… 【ほかの世界】から来た存在の事だね。」
こてん、と首をかしげてその言葉を飲み込み

「この世界の悪者かぁ… 僕は未だ会ったことがないや、襲ってくる人たちの事かな?七生達が襲われるならちょっと怒っちゃいそうだけど
うん、僕は、元々此処から来たからね… ほら、遺跡群?って所だよ、あそこも面白い場所だよね。」
んー、と首をかしげながら考えている様子、友達が襲われるかも、と考えたのか、ちょっとだけ唇尖らせたり

「成る程、そういう身体なんだね… あ、それちょっとわかるよ、僕も【栄養】で体躯が変わる体質じゃないからさ…。」
うんうん、と頷いてぺたぺたと濡れている自分の体を触っている

ヨキ > 「(そうか、君も……異邦人であったか。
  そうなっていたような、ということは……、不確か、ではあるのだな)」

(トトの言葉を真っ直ぐに聞きながら、時おり頷いて相槌とする)

「(ナナミ……というのは、君の友人か。
  そうだな、運が悪ければ襲われるか……襲われるよりもひどい目に遭うやも知れん。
  生徒たちには、そのような目に遭わぬことと……遭ったときに、無事で居られることと。
  それを教え、同時に君ら生徒を守るのが、このヨキや、教師たちの務めだ。

  ほう……遺跡群。ああ、ヨキも足を運ぶぞ。
  あすこから来たということは……トト君の故郷の遺跡と共に、やってきたのだろうかな。

  ……『門』はどこでどのようにして繋がれたものか、未だ判然とせん。
  そのような者たちとこうして言葉を交わせることは……、面白いし、楽しいよ)」

(トトが自ら触れる身体を一瞥する。
 ほかの人間と表面上は大差ないように見えて、すぐに視線を戻した)

「(栄養で変わらぬならば……食物を摂る以外に、その姿が変わることはあるのか?
  出自のみならず、見た目の年齢も千差万別であるからな。

  この姿で人里に暮らすには、何かと不便も多くてな。
  人の姿とて同じことだが……不便と不便とを比べて、人間を選んだようなものだ)」

トト > 「うん、余りそういう書類をしっかり見たわけじゃないからね、でも、多分それであっていると思うよ。」
こくこくと頷いて

「うん、七生は大事な友達だよ、ほかの先生に、こっちでは友達を作るといい、と教えてもらったのさ、おかげで楽しいよ
そっか、やっぱり先生達は大変なんだね、こういう時は  あ、そうだ、いつもお疲れ様です。」
ぺこり、と頭を下げてみたり

「遺跡、か… ううん、多分、送られてきた、んだろうけれど、そこら辺の記憶、正直曖昧なんだよね、僕。」
どうやってきたか、という言葉には、少し言葉を濁して、そう告げる、ぷー、と何処か不満げに唇を尖らす

「それでも、うん、いろんな人に会うのは楽しいものだね、この間は海に行って、泳ぎとスイカ割りを教わったんだ
それで、こうやってこっそり泳ぎを練習して、次に会った時に驚かせようと思ってね。」
楽しそうに自身の目的を告げて、ぱしゃぱしゃと足先で水を跳ねさせる

「うん、ある、あるはずなんだけど… それも忘れてるんだよね、僕、ある、ということは覚えてるんだけど
成る程、やっぱり、人型が多いんだね、それは僕も感じたよ、そうやって【適応】できるなら、それが一番、という事だね。」
自分の変化についてはそう告げる、思い出したいんだけどなぁ、と呟いて

ヨキ > 「(なに、君ら生徒を思えば苦労はないとも――何ひとつな。
  友は宝ぞ。良いことも悪いことも、そのナナミ君、や他の友人たちと分かち合うがよい)」

(トトの一礼に併せて頭を下げる。人であればくすくすと笑うところで、ぷすぷす、といびつな鼻息を漏らした)

「(……ふ。思い出せぬのが不満かね。無理に思い出そうとすると、余計に頭が痛くなるだけだ。
  恐らくは……君の心のなかで、『思い出すべきとき』がまだ来ていないのではないかな。
  思い出したい、という心さえあるならば、いつしか時は来る。……きっとな)」

(トトの不満げな様子に、ぎこちない固さで小首を傾げてみせる)

「(泳ぎとスイカ割り、か。ヨキはこのような身体ゆえに……人型でも、海にはあまり強くなくてな。
  生徒たちがいちばん楽しそうにしているのは、やはり夏だ。
  君にとっても、きっとかけがえのない季節となろうよ。
  練習の成果はどうだ。少しは上達したのかね?)」

トト > 「…  えへへ、ありがとう先生… あ、そっか、成る程、そういう考え方もあるんだね?
今はまだその時ではない… そう考えてみることにするよ、考えても思い出せるとも思えないしね、流石先生だ。」
素直に感心したのか、こくこくと頷いて目を輝かせてお礼を言う

「うん、大分コツは掴めたと思うよ、元より僕と水分は友達のようなものだからね
底を歩くわけでも、上を歩くわけでもなく、間を流れる、そんな動きがこんなに楽しい何て知らなかった。」
成果はあったらしく、そういって笑顔をみせてぶい、とピースサインを作ってみせる

ヨキ > 「(そうだとも。何しろヨキは、物忘れも多くてな。
  たくさんの物事を忘れるうちに、いつしかそう考えるようになったと……それだけだ。
  君にとって本当に大事な記憶ならば、沈んでいても浮かび上がってくるはずさ)」

(トトのピースサインに倣って、左の前足を軽く掲げる。
 指は不器用に動いただけで真似は叶わず、乾いてひび割れた肉球で地面をとんとん、と二度叩く)

「(水分と友だち……とは、単に君の身体が水分からなるもの、という単純な話ではなさそうだな。
  何か異能や魔術、君の持つ性質に関係があるのかね。

  ふふ、練習が順調ならば何よりだ。
  本当ならば……もう少し安全で明るく、綺麗な水で鍛えてもらえれば、ヨキも安心できるのだが)」

(安心できる、と言葉にしつつも、そうせよ、と強いる語調ではない。
 金色の眼差しが、上から下へ、前から後ろへ、ゆっくりとトトの姿を見定める)

トト > 「そっか、これも経験、というやつだね、生き物には大事なことだって、僕は知っているよ。」
ふむふむ、と興味深げにヨキの話を聞いていて

「うん、僕の能力は【そういう物】を変化させる力だからね、混ざりものが多いほど、色々できるんだよ?
例えば… 傷口を固めて、かさぶたみたいにしたり、とかね。」
指を立てて説明する、さっきはそれで怪我を塞ごうとしたんだ、と言いたげだ

「綺麗な水、かぁ、逆に綺麗すぎる水はちょっと苦手かな、生き物が全くいない水じゃ、余り変えられないもの。」
所謂【純水】の事を言っているのだろうか、だから海や、此処の水は【混ざりもの】が多くていい感じだよ、と続ける

ヨキ > 「(トト君の中にも、いずれ気付かぬうちに経験が降り積もっていることだろうよ。
  ふとしたときに、生活の中で得たものが君の『養分』になっているんだ。
  ほら――『ナナミ君』や、その泳ぎの練習のようにな)」

(トトの異能について、口を引き結んで聞き入る。
 ふむ、と頷いて)

「(液体の性質を変化させる能力、か。ならば……ヨキの身体は、さぞかし弄りやすかろう)」

(自身を見下ろす。身体を曲げた拍子に、血が再び雫となって落ちた。
 鉄の匂い――を通り越して、錆めいた臭いですらある。
 ありふれた生き物の血液よりも粘っこく、より黒い)

「(混ざりものだらけなのだ。君の力がどのように作用するか……、少し恐ろしくさえある。
  だが、君の気遣いの気持ちには感謝するよ。支えとなれる相手のために、正しく使える日が来るとよいな)」

(湖の水面に目をやる。
 夜更けの水はあまりに暗く、透かし見ることは叶わない。
 トトの言葉から、相手の異能のかたちを測るよう、じっとその顔を見る)

「(水が君に合ったとて……、『水の外』のことさ。
  君にとって、ヨキのような味方ばかりがうろついているとも限らない)」

トト > 「成る程、七生との事も、立派に僕の【養分】になっているんだね…  えへへ… そっか…。」
何だか嬉しそうに笑顔を浮かべてそわそわしたり

「うーん、どうだろうね?あなたも、それを【弄る】力はありそうだし、そういう場合は、意思同士、干渉のしあいになると思うよ
この前、ちょっと似た感じの子に出会ったしね、その子とは友達になったけど、別に僕だって、戦いがしたいわけでもないからね。」
ぺたん、と座り込んで、さらさらと水辺の泥混じりの水をすくい、溢す
溢れていくそれらが、ヨキの瞳と同じ金色の砂となって流れていった

「ふふ、先生として、心配してくれてるんだよね、大丈夫、気をつけるようにはするよ。」
注意を喚起する言葉に、こくこくと頷く

ヨキ > 「(嬉しそうだな。ナナミ君……というのは、君にとってよほど大事な相手なのだな。
  ナナミ君が学園の者ならば、いつかヨキとの縁もあろう。
  そのときにはきっと、君の顔も思い出すだろうから)」

(トトの手のひらから水が変じた砂が流れてゆくさまを見ながら、その隣にずしりと腰を下ろす。
 細く引き締まった猟犬の身体は、しかし見た目より重たげに見える。
 まるで鉄の彫刻が、自ずから動くかのような)

「(……ヨキの身体は、金属に親しい。美術の、金工の教師をやっているのも、そういうことだ。
  この骨に、血肉に、ありとある細胞に金気が交じりこんでいる。
  毒の水が満ちたような身体となれば……あるいは、干渉の予知もないのやも)」

(それでも構わない、とばかりに目を伏せる)

「(そう。心配するのも、叱るのも、見守るのも……すべては教師の仕事だからな。
  だが――それ以前に、ひとりのヨキとしても、君を気遣う。
  先生と生徒という、垣根を越えてでもな)」

トト > 「… うん、大事なトモダチだよ、七生は、もしあったら、よろしくね?勉強、最近大変だって言ってたもの。」
少し頬が赤くなっていることに自分でも気づいていないようで

「ふむふむ、ちょっと興味深いかも、いつか試してみるのもいいかもしれないね、研究、とかもしているらしいし。」
ぽふぽふ、と拒否されなければ力を使わずにヨキの体、背中をなでるように触れてみたりする

「そっか… 何だろう、嬉しいよ、そうやって心配してもらえる、というのは良い事だね
言うならば、単純に守る、守られるというものを超えたものを感じるな。」

ヨキ > 「(――ああ、頼まれた。君と、ナナミ君と。科目が科目だけに、生徒との縁もなかなか広がらなくてな。
  四年か、それに満たず学園を離れる者が居るならば、ヨキが顔も名も知らず、出会うことのなかった生徒も少なくはないだろうから。
  こうして新たに知り合えることは、何より嬉しい)」

(背中をトトの手が這う。両目がくるりと丸くなって、ほんの一瞬、身体が強張った。
 それもすぐに和らぎ、ふっと心地良さそうな顔を見せる。
 薄い皮膚の下、骨のごつごつとした凹凸がある。体温は生を燃やしてあたたかく、鼓動は死にかけたように鈍い)

「(興味深いか?……この身体に、支障のない程度であればな。
  …………、あとできちんと、手を洗うのだぞ。
  いかなる病が君に伝染するか、判ったものではないからな)」

(トトの手のひらに併せて、術に掛かったようにとろとろと瞼を落とす。
 すぐにぶるぶると首を振って、我に返る)

「(人との付き合い、というのも、単純なものではないからな。
  ヨキは人の姿を取ってまだ間もない――が、それだけはよく判っているつもりだ。
  君とて守られるばかりのか弱きものではないと、ヨキはそう信じているのだ)」

トト > 「うん、わかった、僕も今度あったら、ヨキ先生の事話してみるよ、ふふ、楽しみだなぁ。」
そういってくすくすと、楽しげに笑う

「暖かい… うん、ふふ、他人の身体というのは、不思議と暖かく感じるものだね、僕の手はどうかな?」
トトの手は水に使っていたためか少し冷えているように見えるが、震えなどは感じられない

「この匂いも、流れ落ちる赤も、あなたを表すものなんだね、うん、僕は嫌いじゃないよこういう空間は。」
とぽつぽつと声をこぼしながら笑って

「そうだね、僕は本来【守る側】の存在と言ったほうがいいだろうし…… ここでは生徒だけどね
うん、友達よりも、もっと【深い】関係があることも知ってるし、僕は僕に出来ることをするつもりさ。」
うんうん、と同意するように頷いている

ヨキ > 「(ヨキのことを?ふふ、それはヨキの、『本当の姿』――をも見てからにしてくれたまえ。
 斯様な姿ばかりが、ヨキではないからな)」

(言葉とは裏腹に、楽しげに。
 トトから手の感触を尋ねられると、浸るように目を伏せて確かめる。小さく頷いて)

「(…………、ああ。ヨキにとっても、君の手は温かいものだよ。
  この姿では、人から触れられることも久しく無かった。

  ……そうだとも。獣のヨキも、人間のヨキも、すべてがこのヨキだ。
  この島にあっては、知られることは恐ろしい。だが知られたとしても、こうして受け入れられるならば)」

(隣のトトへ顔を向ける。切れ長の瞳が見つめる)

「(守る側の存在、か。
  そうした記憶や自覚は、確かなものとして君の中に在るのかね?
  使命や、役割のようなものが?)」

トト > 「あ、そっか、先生としてのヨキ、といえばいいのかな?美術部に行けば見れるんだよね。」
ぽん、と手を叩いて、納得したように頷く

「そうなんだ、ふぅん、確かに、何でもかんでも話せばいい、というわけではないんだよね、大人の対応… かな?」
少しずれた答えに思えるが、そんな事を言いながら首をかしげたり

「ん… 細かくは、言えないけどね、僕の種族はゴーレム、【命令】と【使命】を果たすもの、だからね
だから… この世界で出来た【約束】は好きだ、双方向での決まりごとは、僕にとっては新鮮なものだから。」
言えない、という事は【その関連の自覚】はある、という事を言外に語りつつ、彼の目を見返して、微笑みながら説明する

ヨキ > 「(いいや、美術部はやっていないんだ。放課後は、自分の制作に使いたいからな。
  その代わり、授業は幅広い学年や内容を見ているし……職員室にも、カフェテラスにも、どこにでも居るさ。
  いつでも遊びに来るといい)」

(目を三日月のように細める。
 澄まし顔で撫でられて、けれどトトへ擦り寄るようなことはしない)

「(例え大人と呼ばれずとも、ヨキは話したいことを話していたいと、そう思うよ。
  その代わり君にも、君の言葉で話し続けていてほしいと、な)」

(ゴーレムの語に、ほう、と関心深げな目を向ける。
 犬らしからぬ瞬きをゆっくりと繰り返しながら、)

「(土人形……には見えないな。あるいはフレッシュゴーレム、の類だろうか。
 ……いや、ゴーレムの身体の話は、それだけで致命的になりかねん故に、答えずともよいが。

 約束……か。厳密さなしに取り交わされ、ときに破られ、しかして守られるを是とするもの。
 ……君はゴーレムでありながら、さながら人間のようだ。
 使命を果たす、という堅苦しさもなく、人の営みに応じようとしている。
 友人を作ることや……人と朗らかに話すこと。それもまた、君に適応されつつあるのだな)」

トト > 「そっか、じゃあいつか遊びに行くよ、僕、芸術というものにも、というかやれることはなんでもやろうと思ってるからね。」
ぐぐっ、と拳を握り締めるようにしてみせたり

「土、泥人形とも言うね、ふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ… ふむ、僕が【何】で出来ているか、かぁ
【僕は僕で出来ている】としかいいようがないけれど… ごめんね、ちょっとよくわからないや。」
ぱたぱたと両手を振るうようにして首をかしげる【】内を強調するように、確かめるようにゆっくりと話して


「そう、そんな不確かな、でも、だからこそ相手の心が見えるようだろう?約束は、だから、僕は好きだよ
そうかな、僕はタダ、僕の好きなように動いているだけだよ、それが許されているようだしね… でも、ありがとう
そう言ってもらえると、何だか嬉しくなる気がするよ、そうだ、これで僕とヨキもトモダチ… 生徒と先生でもトモダチでいいのかな?」
そういってヨキの前足ときゅっきゅと握手しようとしている

ヨキ > 「(有難う。それでいい。芸術に触れてさえくれるならば……、ヨキはいつでも君を出迎えよう。
  芸術を、終生の友としてくれなくとも構わない。ひとときの楽しみとなれば、それで十分だ)」

(確かめながら話されるかのようなトトの言葉を、ひとつずつ耳に拾い上げてゆく。
 トトの黒い瞳の中に、さながら彼自身さえ知らない真実の片鱗を探るような、真っ直ぐな眼差し)

「(ヨキの知識は、伝聞や書物の中から拾い上げたものに過ぎんからな。
  今は……君とともに、『君の本当』を探しているような気分さ。
  唇が尖ってしまうような不確かさではなく……僕はこうであった、と、君が晴れやかに語れるような『本当』を)」

(前脚にトトの手が触れると、ぴくりとして。
 握り合う前に、草の上でその大きな手のひらを拭った。その爪にこびりついた、不穏な――死の気配を落とし去るように。
 改めて繋いだ手を、上下に揺らす)

「(このヨキは、何でも許す。
  ヨキが自分の考えを守り、それを君に語ることを許してくれるのと、同じようにな。

  ……ふ。生徒と先生の垣根は保たれるべきであるが、壁になってはならないと考えているよ。
  積まれた壁は朽ち、いつかは倒される。

  それよりは……やわらかで、季節を経るごと、自由に花や果実で飾られる垣根で在りたいと。

  だから――トト君と、ヨキとは。友人として居よう)」

トト > 「… おお、なんだろうね、それも先生っぽい言葉な気がするよ。」
くすくす、と楽しげに

「僕の本当… か、確かに、僕もそれは知りたいかもしれないな、そのほうが………
うん、良さそうだ、心の中に、それは置いておくことにするよ、これも中々目的としては楽しそうだ。」
と、自分の中で結論付けて、ヨキに対して頷いた

「じゃあ、友達、だね、先生の友達は、ヨキが初めてだよ、仲良くしようね、握手………♪」
ぱぁ、と笑顔になって、拭ったヨキの手と手をつないで、ぶんぶんと大きく振って、離す

「よし、僕はそろそろ、寮に戻る事にするよ、目的は、思った以上に果たせたみたいだからね… あ、そうそう。」
よいしょ、と立ち上がって伸びをする仕草をし、ポシェットを肩から提げてから、思い出した、といった風にぽん、と手を叩いて

ヨキ > 「(だろう?この十年と少し……ヨキは毎日、常に教師であったよ。
  だが、だからといって凝り固まるようなヨキでは居たくない。
  何しろ――『まだ』十年しか経っていないのだ。このヨキが、人間となってから)」

(トトが得たらしいひとつの手掛かりに、こちらもしかと頷いてみせる。
 顔を伏せ、幼子を見守る旧い賢者のように。あるいは友の道行きを応援する、ひとりの男のように)

「(……君のはじめてとなれたことを、ヨキは光栄に思う。
  ヨキと同じ常世島に暮らすトト君の、気持ちが晴れる一助となれたのならば)」

(相手に倣って、ゆっくりと立ち上がる。身を屈めて伸びをしたのち、トトの声に顔を上げる)

「(ああ。ヨキもまた、街へ戻るとしよう。もう朝がそこまで近付いている――、む?……どうしたね、トト君?)」

トト > 「ふむふむ… なるようになる、まさに、それって感じだね、僕もそうなりたいものだな。」
そんな彼の話を見て、少し尊敬の眼差しを向けた

「うん、ありがとう、これでまた、明日から頑張れる気がするよ、ああ、そうなんだよ
ヨキはケータイ… メール持ってる?それだけ、教えてよ、僕登録しておくからさ。」
と、ケータイを構えて、ヨキのアドレスを教えてくれるなら直接入力してみたり

「じゃあ、今度こそ本当にバイバイ、だね、ヨキ、今日は楽しかったよ、また会おうね!」
本当に嬉しそうな笑顔を見せながら、ぶんぶんと手を大きく左右に振って離れていく

ヨキ > 「(なれるさ、君ならば。
  君がいま見ているのは、『そう在りたかった』という轍ではなく、『そうなりたい』という先へ続く道なのだから。
  もしいつか……その道をいっとき見失ってしまうこともあるにせよ、君にはいつだって、そこへ戻れる手掛かりがある)」

(何の疑いようもない、とでも言わんばかりに、ふっと息を零す。
 トトからの頼みには、しばし目を丸くして、やがて可笑しげに笑い出す)

「(ふッ……ふふふ。ふふ。いったい何事かと思えば。良いだろう。
  学業のズルを乞うでもない限り、何でも連絡してくれたまえ)」

(トトの隣で、アルファベットを読み上げて、犬の手で文字を指し示す。
 もちろん、今は電話など持っていない。
 この姿で尋ねられるとは思わなんだと、心底から愉快そうな様子を見せた)

「(ではな、また……学園で、人の姿で会うとしよう、トト君。こちらこそ、とても有意義な時間を過ごさせてもらった)」

(手を振る相手を最後に見遣り、背を向け、地を蹴る。
 次第に白みつつある野の中にあってさえ、光を余さず吸い尽くすような黒の毛並みが――岩陰に紛れて消える)

ご案内:「転移荒野」からヨキさんが去りました。<補足:獣型/成人男性ほどの体高、金目、黒い毛並み、呪いの傷、焔と邪気>
ご案内:「転移荒野」からトトさんが去りました。<補足:ポシェットに白いワンピースとスパッツを着用し、腰までの緑髪を揺らす中性的な人物>