2015/07/21 - 12:46~12:52 のログ
ご案内:「学園街の通り」にサヤさんが現れました。<補足:黒髪に巫女装束の少女。>
サヤ > 「ふぅ……。」先ほど、常夜保険病院を無事退院したサヤは、ベンチに腰掛けてため息をついた。
財布や学生証の類と、袋に入った黒漆塗りの打刀が一振、そして一番大事な、ガーベラの造花、それが今のサヤの所持品であり、全財産だった。
少ししか歩いていないのにもう疲れてしまった、これは大分体が鈍っている、早く取り戻さないと。
サヤ > 「石蒜、起きていますか?」打刀に、そこに封印されたもう一人の自分である石蒜に声をかけるが、返事はない。
あの夜の決戦以来ずっとこうだ、外界を遮断し、一人で閉じこもっている。
きっと殺される気でいるんだろう、確かに私も最初は彼女を殺す気だった。
体を奪われ、心もズタズタにされた、純潔すら奪わされた、殺しても余りあるほど憎んでいた。
だが今は違う、憎んでいないといえば嘘になるが、石蒜も私の一部なのだ。
双子のような、あるいは一枚の金貨の裏と表のように感じている。だから、殺せない。
サヤ > しかしそれを伝えようにも、石蒜は完全にこちらを遮断している。仕方ない。
「本当にわがままですね、あなたは。」もう一度ため息をついて、ベンチの上で座禅を組む。
膝の上に刀を置き、精神を集中する。絆を結ぶ容量で、刀の中に自分の魂を少しずつ移して行く。
いくら語りかけても答えないなら、直接行くしか無い。
サヤの精神が、深く深く、刀へと潜っていく……。
ご案内:「学園街の通り」からサヤさんが去りました。<補足:黒髪に巫女装束の少女。>
ご案内:「石蒜の精神世界」にサヤさんが現れました。<補足:黒髪に巫女装束の少女。>
サヤ > 全てが漆黒に染まった世界、空には唯一、ワイヤーフレームの多面体とその傍で薄紫色の星が輝いている。その世界で、石蒜は胎児のように丸まって、泣いていた。
『さようなら、さようなら、鳴鳴様。さようなら……。』止めどなく涙を流しながら、壊れたレコードプレイヤーのように、それだけを繰り返す。
その目は何も映しておらず、耳や鼻も含め、全ての感覚器官は何の働きもしていない、外界からの刺激を全て拒絶して、ただただ悲しみと過去に浸り続けていた。
『(私は死ぬだろう、サヤは私を許さない。いつ死ぬのかな、出来れば何の前触れも無い方がいい。覚悟するのは怖い……。)』
もう何度目になるかわからない思考、死ぬ時を知らされて、みっともなく喚きたく無かった。命乞いをして、万が一受け入れられるのが嫌だった。
死ぬのは怖い、だが自分は死ななくてはならない、それが石蒜の思いだった。自分のような悪が生き残ってはならない。
サヤ > 『……!』近づいてくる何者かの気配に気付き、体を起こす。
『(誰だろう、いや、こんなこと出来るのは一人だけだろう、私に直接死刑宣告をしに来たか……。)』
『(何も知らずに死にたいなんて、虫が良すぎる話だった、サヤは私が命乞いをするのが見たいのだろう。)』
そこまで憎んでいるなら、万が一にも自分が生き残ることはあるまい、と、石蒜はある種の安堵を覚えながら立ち上がり、来訪者を迎えた。
サヤ > 全てが漆黒に染まった空間に、サヤは降り立った。「ここが……。」万物斉同、絶対無差別。鳴鳴の歪んだ思想を石蒜なりに理解した世界がそこに広がっていた。
「石蒜」
『サヤ』
互いの名を呼ぶ。2人はまるで双子のように同じ顔をしている、だが片方は決意を秘めた表情、白い肌に清廉なる巫女装束。
もう片方は全てを諦めた薄笑いに、褐色の肌、穢れた漆黒と血のような紅。
陰陽の白と黒めいて、対照的な2人であった。
サヤ > 『いつですか?』最初に、石蒜が口を開いた。『いつ、私を殺すんですか?』
「聞きなさい石蒜、私はあなたと話に来ました。あなたを殺すつもりなんかない。」目を見て、告げる。
『嘘が上手になりましたねサヤ、私を殺さない?ならどうするんですか、永久に封じますか?死よりも辛い孤独を味わえと?』いつもの嘲るような笑み。
「あなたを、受け入れに来ました。2人で共に生きましょう、一緒に罪を償うために。」毅然とした態度で言って、手を差し伸べる。
サヤ > 『何を言ってるんです、私を受け入れる?一緒に罪を償う?冗談も休み休み言いなさい。私は悪だ、あなたも含め多くの人を傷つけ、命すら奪った相手も居る。
罪があるのは私だ、私だけだ、何故あなたが一緒になる必要がある。私に死を以って償わせてそれで終わり、それ以外に何がある。
こちらは覚悟を決めていたんだ、今更惑わすな。』怒りを滲ませた声。
「あなたが生まれたのは私が弱かったから、現実に耐え切れず、壊れてしまったからです。だからあなたの存在は私に責任があり、罪も私が共に負うべきです。」
『違う、悪いのは私だけだ。全てを私に押し付けなさい、そしてあなたは潔白の身になればいい。』
サヤは一度、目を伏せた。この島の正義がそのように単純明快であればよかったのに。
「あなたは優しい人ですね、石蒜。でも、あなたが死んで全て解決とは行かないんです。
アルフェッカさん、あの時風間さんを助けた女性が言ってましたよ。"死ぬ事は何よりも簡単なこと。本当に大変なのは、罪を背負って尚生きる事。"と。
あなたは罪から逃げている、向き合うことを恐れ、安易な答えをそれしか無いのだと信じ込んでいる。」歩み寄る、もう一人で苦しまなくていいのだと、そう伝えるように。
サヤ > 『なら、ならどうすれば良いんです。あなたまで罪を被れば、牢獄暮らしじゃないですか。』うろたえるように、一歩下がる。
空に1つ、朱色の星が灯った。石蒜がそれに気付き、驚く。
「それはもう大丈夫、咎は受けなくて済みました。けれど、罪が消えたわけじゃない。だからもう一度言います、一緒に償いましょう、と。」鼻がぶつかるほどまで近づき
「もういいんですよ石蒜、あなたは一人じゃない。あなたの主人はもう居ないけど、最後まで私達のことを想っていましたよね?
畝傍さんも風間さんも、あなたのことも助けようとしました。あなたも生きていて、いいんですよ。」抱きしめた。
サヤ > 『私が……生きていて、いいんですか……?』信じられない、という風に呆然とする。
『私、あなたに散々……酷いことを……。罪も、沢山犯したんですよ……。』ためらいがちに、腕を背中に回す。
続いて橙、青、の星が点る。
「大丈夫、皆受け入れてくれますよ。一緒に生/行きましょう、石蒜。」抱きしめたまま、安心させるように背中を叩く。
サヤ > 『ごめんなさい、サヤ……ごめんなさい……ありがとう……。』そして2人は抱きしめ合った。
まるで本物の夜空のように、世界に無数の星が灯った。ワイヤーフレームの多面体の輝きは薄くなり、消えていく。
『(さようなら鳴鳴様、さようなら。本当に、本当にお世話になりました。)』消え去りつつある多面体を見上げて、石蒜は涙をこらえて笑った。
別れの涙は辛いかもしれないから、最後に見て欲しいのは笑顔だったから。
ご案内:「石蒜の精神世界」からサヤさんが去りました。<補足:黒髪に巫女装束の少女。>