2015/07/21 - 23:10~02:57 のログ
ご案内:「大時計塔」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、拘束衣めいた長衣、ハイヒールブーツ>
ヨキ > (夜の見回り。立ち入り禁止の扉を抜け、上へ続く階段を登ってゆく。
申し訳程度の懐中電灯を携えているのは、暗がりを照らすためというより、自らの存在を知らしめるためだった。
夜目が利く獣の瞳は、わずかな光を吸い込んで金色の光を淡く返す。電灯の光がいっそ煩わしい。
規則的な足音だけが、遠く反響する。
ヨキにとって、『生徒の立ち入り禁止』は絶対の掟であった。
見敵必殺と言わんばかりの冷たい眼差しが、塔の上下左右をくまなく見渡している)
ヨキ > (今宵ここへ入り込んだ生徒の姿は、まだ目にしていない。
鐘楼の天辺にに続く扉を開けると、物言わぬ鐘の代わり、扉が重たく軋んだ。
階段に滞っていた風がたちまち流れはじめ、ヨキの背を押すように吹き抜けてゆく。
波打つ黒髪が躍るのを、空いた左手がぐいと掻き上げた。
――外へ出る。
巨大な鐘の下、島を見渡す。
夜の地と海とはその輪郭をおぼろげにして交じり合い、街の灯が鏡写しの星めいて密集し、浮かび上がっている。
瞼を落とすのではなく、上下の瞼をいっぺんに引き上げる、どことなく獣めいた深い瞬き。
ぱちん、とスイッチの小さな音を立て、ひととき懐中電灯の光を消す)
「…………、たしかに。
心が誘われる場所――では、ある」
(左手の指先が、鐘を取り囲む重厚な壁の縁をついと撫でた)
ヨキ > (島を見下ろす背は真っ直ぐに伸びて、傍目にもおよそ飛び降りるような気配はない。
黙して佇み、眼窩の風景をじっと見下ろしている。
外套の裾が風に舞う。
獣の姿を取るとき、身体の内側から沸き起こる熱の噴出を思う。
街の光の向こう側、遠く広がる闇に目を向ける。
拓かれることのない森と荒野――生活委員の朽木が言っていた、削られつつある獣道。
空高くにありながら、その目は地面を歩いているかのように島のかたちを辿ることができた。
この十年と少し、どれほど歩いて過ごしたか知れない。
流れる黒髪を最早そのままに、風に遊ばせておくことにする)
ご案内:「大時計塔」にヘルトさんが現れました。<補足:188cm/超重量の鎧を着込んでいる短髪の若者。>
ヘルト > 「おや? おやおやおやァ?」
無骨で分厚い鎧を着込んだ短髪の若者が素っ頓狂な声を上げた。
大時計塔で気分転換してやろうと思い来てみたところ珍しい事に先客が居るではないか。
物珍しげに視線をやりつつ、とりあえずヨキに声を掛けるのだ。
「やあやあ、これはどうも。」
ヨキ > (背後からの声に、肩で振り向く。
現れた頑健な姿を見遣って、ふっと笑った)
「ああ……ヘルトか。ごきげんよう」
(剣術教師として籍を連ねる男の名を呼ぶ)
「立ち入り禁止の塔に、教師が二人とはな。
今宵のヨキは見回りをしているが、教師を咎めよとは言われておらん」
(任を終えたかのような、消したきりの懐中電灯に指を添える。
さながら杖のように鐘楼の縁に立てて突き、悪いやつらだ、と、冗談めかしてくつくつと笑った)
ヘルト > 「ああ、こんばんはだ。」
同じ教師として働くヨキの隣まで金属と金属がぶつかり合う音を立てつつ移動しつつ軽く手を挙げ挨拶を交わした。
くつくつと笑う彼に視線をやり、ニヤリと人が悪そうに笑みを浮かべ
「なあに問題は無いさ。俺も見回りをしていたんだ。」
息を吸うように嘘をつくのである。
ヨキ > (俺も見回りをしていた、と、ヘルトの返答に目を伏せてふっと笑う。
身体ごと相手へ振り返り、腰を背後の縁に預ける)
「ならば君もまた、このヨキを咎めることはないな?」
(『結構』。ヘルトへ不遜に投げる声は、古老のように低く鈍い。
しかし老いてしわがれた音はなく、ヘルトと変わらない年の頃を感じさせる)
「君は……父君もまた、教師であったか。
この島へ来てどれくらいが経ったね、ヘルト? 常世の暮らしには、もう慣れたか」
ヘルト > 「はっはっはっ……咎めるも何も俺達はここを見回っているだけ、そうだろう?」
ヨキと同じように縁に身を預けようとして、やめた。
この鎧の重量を支えるには少々心許無い。流石にこんな時間に飛び降りなんてやらかそうとは思っていないのだ。
「そうさな……1年近くは経つか。いやはや、時が経つのは早いものだ。いい加減慣れた、と思いたいね。」
遠くを見るように視線をやりつつ言うヘルト。
ヨキ > 「もちろん。それに加えて、ヨキはここで休憩をしているだけだ。
獣の足に、二本足で歩き回るは少々難儀でな」
(ヘルトと対照的に、ヨキの言葉にあくまで嘘はない。
金色の瞳がちらちらと幽かに瞬きながら、ヘルトの闊達そうな顔を見ている)
「一年か。君の指導の評判は聞いている。
異能溢るるこの島とて、君のしかと骨の通ったわざは、生徒のうちにも豊かに染みよう。
異邦人街は、多少なりとも君にも馴染みがあろうが……市街はなかなか、慣れぬことも多かったろう。
だがその顔、退屈はしていないようだな?」
ヘルト > 「それならば誰にも咎められはしないだろう!」
別に威張る場面でも無いが、無駄に踏ん反りかえって高笑いをしている。
「いやいや、俺程度じゃまだまだ……親父の授業の方がまだ有意義だろうよ。
それにアンタの評判の方が良く耳にするぜ、ヨキ先生?
まあ、親父お抱えの騎士団共々郊外に屋敷を構えてるしな。別段苦労は無い。
退屈が最大の敵なもんで、時々街に出かけるが退屈しなくて良いな、ここは。」
ヨキ > (高らかなヘルトの笑い声に、愉快げに笑みを深める。
懐中電灯の紐を手首にぶら下げ、腕を組む)
「この島で意義のあることは、『それまで誰もやらなかったこと』すべてだ。
異能と異邦とを認め、それらの融和を是とするこの島にあっては、特にな。
ヨキの評判は……何しろ、この学園に長く籍を置いているからな。
それだけ自然と、このヨキの話が君の耳へ届くに過ぎんよ。
ヨキ自身の研鑽なくして、生徒を教えることはできん。
芸術には絶対的な答えのない代わり、間違ったことは教えていないつもりだ。
……君とて生徒らを教えるときに、そうした信念はあろう?」
(屋敷という語に、ほう、と感心して)
「大人数で住むには良さそうだな。その鎧の意匠と相まって……さぞ暮らしよい場所なのだろうな。
良くも悪くも、出来事はさまざまだ。美味いものにも、美しい女にも苦労はしない」
ヘルト > 身体が僅かに動くだけで金属同士が擦れ音を立てる。
それがヘルトの気持ちを表しているような、そう思わせるリズムで。
「まあ確かにな。それにしても生徒達は良き師を得たものだ。」
心より感心するような声色で言うヘルト。純粋に尊敬の念が瞳には込められている。
そして肩をほぐす様に軽く回しながら続けた。
「ああ、良いところだぞ。ところどころ装飾は歪で床は傾いているからな。その内来ると良い、歓迎するぜ?
ああ、本当に退屈しない。異文化交流というのも悪くは無いな。ただ平和すぎるのが玉に瑕だが。」
ヨキ > 「生徒らにとって良い師であれたら、ヨキも捨てたものではないな。
……詰まるところヨキの教えが、後世にどれほど誤りであったと断じられても構わんのだ。
生徒らの目を開き、その生を豊かにする一助となれたならばな。
君た父君の教えるわざもまた、やがて少しずつ姿を変え、のちの世に馴染みながら、島に長く残ってゆくに違いあるまいよ」
(ヘルトの言葉を聞きながら、視界に広がる島の夜景を見下ろす)
「ふふ、是非とも邪魔をしてみたいものだな。
君に父君に騎士団に……このヨキまで加わって、無用な吹き抜けが増えなければいいのだが。
この島が平和であることは、常世学園の誇る――我らがかわいい生徒らの働きによるものだ。
公安や風紀、生活委員に、彼らは日々忙しなく動いているからな。
瑕ではないさ。この常世島は――美しい、ひとつの玉であるべきだ」
(食と女を語ったその口で、子を愛でるように島を見、ヘルトへ視線を引き戻す)
ヘルト > 「であれば、こうしておちおちと休んではいられないな?
アンタや俺にも待っている生徒どもが多く居るようだからな。」
首を左右に傾けバキバキと鳴らし、ヨキへと視線を向ける。
そしていたずらっぽく笑いかけ言った。
「アンタだったらいつでも歓迎するとも。親父殿もたいそう大はしゃぎするだろうさ。
生徒の働き、ねェ。そりゃあそうだろうよ、何てたって俺達が教えてやってんだからさ。」
そして『お先に』とヨキに一声掛け出入り口へとゆっくりとした動きで歩き出すのだ。
ヨキ > 「なに、教師同士とて語り合うは必要だ。ヨキはといえば、休憩などとうに終えてしまった」
(そうして、この会話のひとときを過ごしたのだ、と。嘯いて笑む)
「君の父君も?光栄であることだ。
異邦に雷名を轟かせていたと、話には聞いている。
このヨキの軽薄が、はたして斯様な武人を『大はしゃぎ』させられるかどうか。
……我々の教えた子、か。その通りだな、――半分は。
どうしたってヨキには、彼らの異能を、そして異能を超えた力を避けて語ることは出来ない」
(踵を返すヘルトを見送って、)
「――ではな、ヘルト。
気をつけて帰りたまえ、……君の瑕を埋めかねん怪異が、君を襲わぬように」
(ヘルトが去ってしばらくのちまで、独り鐘楼の上に在った。
時計など見ていない。
空の星に目をやって小さく首肯し、再び等間隔の足取りで塔を去る)
ご案内:「大時計塔」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、拘束衣めいた長衣、ハイヒールブーツ>
ご案内:「大時計塔」からヘルトさんが去りました。<補足:188cm/超重量の鎧を着込んでいる短髪の若者。>