2015/07/22 - 18:29~02:17 のログ
ご案内:「クオン先生の青空教室」にクオンさんが現れました。<補足:どなたでも乱入歓迎。全長20m以上 赤い鱗を持つオーソドックスな翼竜。>
クオン >  燦々と日差しが降り注ぐ中、常世島の授業が始まろうとしている。
もうじき始業のベルが鳴ろうとする頃合い。
巨大な翼竜が広場で身体をもたげ、広場――青空教室を風から守るようにして翼で囲む。
『オオォ――――――ン』
 遠く声を上げながら、上空に炎が吐き出された。
そろそろ授業が始まるぞ、そんな意味を備えた赤い炎。
 魔術学を担当するクオンの今日の授業は『近代魔術について』。
プリントも小洒落たスライド・ショーもない口頭だけで進められる授業だが、ウケはボチボチである。

ご案内:「クオン先生の青空教室」にミウさんが現れました。<補足:白いワンピースを着ている。白い翼が生えている神。>
ミウ > クオン先生の青空教室。
それを受けにきていた生徒の一人がミウだった。
白い翼を生やし、白いワンピースを着用した少女。
今日は『近代魔術』について、やるようだ。

ミウは、席について足を組む。
「それにしても、でかい先生ね……」
そう、誰にも聞こえない声で呟くのだった。

クオン >  鳴り響くベルとともに、古竜の炎が再び舞った。
 古竜は眼下に集まる生徒たちを見た。
まだ来ていない生徒もいるし、もう既に来た生徒もいる。
中にはどうやら、今期から取り始めた見知らぬ生徒まで居る。
 生徒たちの自主性を重んじるこの授業では、彼らの積極的な発言も取り入れている。
様々な議論が買わされることもあるだろう。
「さて」
 重く、世界に響き渡るような声。
その声を、慎重に、努めて穏やかに絞り出す。
「これより、魔術学の講義を始める」
 怯えさせぬよう、萎縮させぬよう。竜の力ある言葉が、周囲の草木をざわめかせた。

ミウ > ベルが鳴ると、竜の先生は上空に炎を吐く。
竜だけに、その迫力は十分。
その声は、とても重々しいものだった。
とは言えこちらも神、竜の声で委縮するという事はない。
そして講義が今、始まろうとしていた。

クオン > 「これまで表に知られてきた魔術とは、儀式的、占術的意味合いが強く、
今日に於ける魔術事情と大きくなる……と、いう話は先日した通りだ」
 科学技術のかわりとして生活に利用される魔術たち。
過去の文献を漁っても、魔術にそこまでの汎用性があるケースは実に少ない。
 魔術がこうして生活に密着するような形で――或いは戦闘に至るまで。
一般層が便利に魔術を利用できるようになったのは、21世紀初頭における暴露によるものだ。
「例えば…………そうだな。ミウくん。君にとって魔術とはどのようなものかな。
成績には関わらない、自由に発言してくれて構わないよ」
 ちょうど眼下で呟くワンピースの少女に、クオンが首を縮めながら問うた。
喉奥には赤い燐光が舞う、"いかにも"といった竜の双眸が彼女を見すえる。

ご案内:「クオン先生の青空教室」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。<補足:褪せた金髪 青い瞳 シャツ スカート>
日恵野ビアトリクス > 竜の翼のうちに並ぶ席。
シャツにスカート、性別の判然としない服装。
魔術師の見習いたるビアトリクスもそこに居た。
そのうちの隅のひとつに腰掛けて、ノートと鉛筆を手に、クオンの話に耳を傾けている。
話が止まったスキに、ノートの端にクロッキーを走らせる。
授業内容もさることながら、巨竜の姿がモチーフとして興味深いらしい。

ミウ > さっそく、あてられてしまう。
とりあえず、起立する。
魔術とは一体……どういったものか。
改めて問われると、中々に難しいものだ。
「そうね……。
 魔術とは、思いを実現させる潜在的な力……かしらね」
優雅に微笑んで答えるが、それはもう、無難な答え。
この授業に出席する前に、魔術とはなんたるか、ちゃんと考えてくればよかったかも。
「という解答で、よろしいかしら?」
恐る恐る、竜の先生に聞いてみる。

ご案内:「クオン先生の青空教室」に谷蜂 檻葉さんが現れました。<補足:眼鏡を掛けた口元の黒子が特徴的な少女(18) 腕の図書委員の腕章は外している。>
クオン > 「なるほど」
 ミウの返答。それに合わせるようにして古竜は大きく首を動かした。
それだけで、空気が鳴動するかのような、そんな錯覚すら覚えるスケール。
「確かに。いまや魔術とは万能の力に等しいものだ」
 筆を動かすビアトリクスの姿。それを咎めるつもりはない。
こちらが話を進めている間は真剣に耳を傾けているし――
いずれ授業を忘れてしまうならば、単位を取ることも難しい。
 それもこれからだろう、と、翼竜は目を細めた。
「しかしそれは、かつて世界を暴かれた魔術師たちが改めて編纂した近代魔術によるところが大きいのだ」
 今日はその話をしよう、と。わずかに炎を漏らす。
その炎は決して熱さを感じることなく、赤き燐光がちらちらと地面に舞い落ちる。
「近代魔術とはつまり、表に存在した魔術、そして暴露されていった魔術。
これらを再解釈して一つの体系としてまとめたものだ」
 例えば、と。古竜は視線を向ける。その先には、青空教室に直結する転送魔法陣。
「あれもその一つだ。この学園島を利用するものならば、使ったことのある者も多いだろう。
各地に点在する転送魔法陣は、同じ魔法陣が記された場所同士ならば自由に行き来することができる」

日恵野ビアトリクス > クオンの講義に小さく頷いて、改めてノートを取る。
確かに、ここ一世紀足らずの期間で、魔術の有り様は大きく変わった。
今ではまったく異なるものというのが常識である異能と魔術。
かつてはそれは同一視すらされていた。

古くはごく一部の隠棲した術師にしか扱われなかった魔術という秘法は、
黒箱は多いとは言え、だれでも学ぶことができるようになり、
市井にも便利に使われはじめている。
クオンの指し示した転移陣のように。

手を挙げ、軽く質問してみる。
「クオン先生は、魔術と科学は、どう違うとお考えですか?」
しゃがれた低い声。

ミウ > 答え終えると再び席に腰をおろす。
そして再び、足を組んだ。
魔術とは万能の力に等しいかもしれないが、それでもやはり人それぞれで才能というものがある。

近代魔術について話し始めるクオン先生。
それをただ黙して聞く。

この先生、炎を吐くのが好きなのかな?
炎を上空に吐く度、その熱が肌に伝わる。
そんな時、一人の生徒が手を挙げる。
その生徒とは顔も知りである。ビアトリクス君だ。

クオン > 「魔術と科学。それはとても難しい質問だね」
 ビアトリクスが尋ねるならば、クオンはまるでくすぐられたかのように淡い吐息を出すことだろう。
「かつての魔術師たちが、錬金術に傾倒していたように。
根本として、魔術と科学の性質は似たようなものだ。
『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』
と説いたSF作家もいる」
 だが、もちろんそこで区切るつもりはない。
そのような煙に撒くような言葉でビアトリクスや、
この講義を聞こうとする生徒たちを納得させようとは思っていない。
「そこで先程のミウくんの発言に繋がるだろう」
 ――思いを実現させる潜在的な力。
「思い。魂。精神力。魔力。これらは君たちにとって不可視の領域だ。
中にはそれを可視化できる"異能"を持つものも居るかもしれないが……」
 苦笑。
「つまりはそういうことだ。
魔術とは、科学で観測できぬ領域の存在を操る、
あらたな技術系統である……程度に考えておくのが楽だろうね。
近代魔術だけならばいざしらず、過去に存在する魔術全てを一括りに論じるのは、過去の"ロマン"への冒涜となる」

日恵野ビアトリクス > 「なるほど。未だ見えざる領域――黒箱の部分がそう、であると。
 ありがとうございます」
丁寧な返答に頭を下げ、鉛筆を走らせる。
「確かに、魔術、と一言で表現するには魔術の領域は広すぎますね」
黒魔術、精霊信仰、五行説、ヴードゥー、ルーン……etc。
また、ビアトリクスの使う描画魔術。これはいわゆる『魔術芸術』を発展させたものだ。

それぞれは似通うところはあるといえど、それぞれ違うものだ。
それを一絡げに語ってしまうのは、恒温動物をすべて同じと見做すぐらいに乱暴だろう。

ミウのほうをちらりと伺う。
(神じゃん)
神もおとなしく授業を受けるというのか。
いまいち自分の中での神イメージと噛み合わないな、と益体もないことを考える。

ミウ > この島には、あまりに科学が発展しすぎているアンドロイドというのも存在している。
クオン先生の言うように、魔術と科学の性質は、似たようなものなのだろう。
思いを実現させる潜在的な力。
いくら科学が発達したところで、例えば道具なしで手から炎は出せないものだ。
もちろん、出せる異能者はいるかもしれないが──というより、ミウ自身、炎を創造できるのでその分類という事になる。

やはり、この学園の教師からは興味深い話が聞ける。

当然、この学園の生徒である以上、神も授業を受ける。
受けないと、神でも単位をとれない。

こちらも軽く手をあげてみる。
「では、“異能”と“魔術”……この違いを先生なりにはどう考えているの?」
先程もそうだったが、教師に対しても堂々としたものだ。

クオン > 「魔導科学、なんてものを専攻していらっしゃる先生も居る。
興味があればそちらの先生の講義を受けてみるとその辺りへの違った切り口の意見が聞けるだろう」
 ビアトリクスの納得に一度補足すると、改めて向き直った。
 飛んできた質問は、"異能"と"魔術"の違い。
これはひどくデリケートな問題だ。魔術。異能。科学。
これらの仕切りについては様々な分野の人間が日夜議論を交わしている。
 "近代魔術"の領域から脱線しつつはあるが、講義として時間はまだ余裕がある。
 そこに疑問を持つ生徒も、見渡せば多いようであるし、答えておくのがいいだろう。
「異能、とは。大きく言ってしまえば未だ解明できない第三の力だ」
 端的に言ってしまえば、わけの分からない力、というのが正しい。
「ここに来たものなら分かると思うが、
能力開発の施術を受けても狙った異能を発現させることはとても難しい。
能力も、似通うことはあっても全く同一の異能に発現することはほぼ無いといっていいだろう」
 一人一人、生徒たちに目を通していく。彼らのパーソナルデータについてはある程度頭に叩き込んでいる。
だからこそ分かる。ここには誰一人として同じ色を持つ異能者はいない。
「異能とは、代償を超えた力を発揮しやすい。
そして、個人らがそれぞれ独自の力を持つ故に、
制御方法をマニュアル化することが難しい。
 魔術も科学も技術であるが、こと異能は超常だ。手に入れてしまったら、あっさりと行使できてしまう」
 だからこそ、異能を制御するべくこの学園に来たものたちもいるだろう。
そうやって古い竜は語りかけた。

日恵野ビアトリクス > りんごを調理すれば、当然アップルパイになる。これが科学。
りんごを黒箱に通せば、なぜかアップルパイになる。これが魔術。
調理方法か、通すべき黒箱か、どちらかを知っていれば、できる。
しかし、異能は――そうはいかない。
統御できない因果の地平にあるもの。
それが異能だ、というのだろう。

「前世の行いによって生得する異能が異なる、なんて考えもありましたね」
ぼくは賛成の立場には立ちませんが、と付け加え。
生まれ持つ異能。その振り分けられ方は、まったくのランダムに近い。
魔術も、科学も、法則がある。人の編んだものだからだ。異能にはそれがない。
その由来にはさまざまな説がある。遺伝説、前世説、人格説……
しかしいずれも、包括的に証明できるものではない。

「いずれは、異能も解明されるのでしょうか。
 かつて余人には触れ得ざるものでしかなかった魔術が、そうなったように」

ミウ > 「魔術と違い、異能は超常……まだ分からない部分が多いわけね」
だからこそ、制御する必要もあろう。
「まとめるならば、魔術とは科学では観測できない技術体系であり、さらにその魔術でも解明できない“超常”に異能が存在するというわけね。
 そして、異能は“超常”でありながら、それぞれが“オリジナル”な力」
こくこくと頷いてみせる。
「科学とは現実であり、魔術とは思い(夢)であり、そして異能とはそれらに属さない超常。
 確かに、慎重に違いを分ければ、分かりやすいものね」
そう言って、上品に笑ってみせる。

再び、ビアトリクス君の質問。
それに付け加える。
「もし異能が解明された時、技術体系として確定されている魔術との境界線はどうなるのかしら?」

クオン > 「近年生まれ始めた、新世代型の異能者と門の登場に関連を見出す学者も居るね。
……異能が解明されるか否か。それは非常に難しい問題だ。
真に解明できるのならば、この世界から不可能なことなどなくなってしまうだろう。
もし異能が解明された時、それが魔術か科学か、それとも別の何かか。
それを定義づけるのは我々ではなく、この世界の法を作る誰かなのではないかな」
 神にも等しい力を持つものも居るという。
 無から有を取り出すものも居るという。
 彼らの発生プロセスが理解できたとして、
それを増やすことができたならばいったいどのようなことになってしまうのか。
実は我々の知らない場所で、何か大きな代償を支払っているのかもしれない――。
 などとは口にはしない。
「しかし、これら異能に近いことを再現することはできる。先ほど紹介した転移魔法陣。
あれはいわゆる異能におけるテレポーテーションに近い現象を引き起こしているだろう。
異能を体得することは難しい。異能を制御することは難しい。
だが近代魔術は、比較的安全に、狙っただけの効果を生み出すことができる。
この技術は、異能や発達した科学に寄り添って生きることができるよう発達した魔術、とも言えるだろうね」

ご案内:「クオン先生の青空教室」に嶋野陽子さんが現れました。<補足:魔力ゼロの科学技術代表の女の子。>
ご案内:「クオン先生の青空教室」から谷蜂 檻葉さんが去りました。<補足:眼鏡を掛けた口元の黒子が特徴的な少女(18) 腕の図書委員の腕章は外している。>
日恵野ビアトリクス > 「パラダイムシフト――か」

――果たして、異能を解明することが、世界人類の幸福に繋がるのか?
パラダイムシフト。新しい秩序の到来。古い秩序の破壊。
技術の発展には、倫理の問題が立ちはだかる。
大変容以前、バイオテクノロジーの発展が、生命の意義を揺るがしたように。
いずれは対面しなければならない問題だが――
今、自分たちが考える必要もないだろう。

魔術へと、話が戻る。再び転移魔法陣へと視線を向ける。
「現実的なテレポーテーションは……
 移動先に複製を造り、移動元を削除することで成立する。
 だから人間がそれを通るには、死ななければならない。
 なんてネタが、大昔にあったそうですね」
今ではもう、笑い話かもしれない。
手にした鉛筆を指先でくるくると回す。
クオンの翼の先から付け根までをぐるり、と眺めた。

嶋野陽子 > 目立たないように、後ろの方に座る陽子。
普段ならば無駄な努力だが、魔力ゼロの彼女は魔法的
には全く目立たず、その身体も20mのドラゴンの前
では全く目立たない。
魔力ゼロの身で、魔法による攻撃からどう身を守るか
という深刻な悩みを抱えている。

ミウ > 「なるほど……ね」
クオン先生の言葉に、こくこくと頷く。
「解明できない故に、異能は超常。
 もし解明出来てしまえば、超常ではなく“別の何か”になってしまうものね」
それは科学に分類されるのか、あるいは魔術に分類されるのか、果たして──。
全知全能ではない神には、知るよしもない事だ。

「そうね、転移魔法とテレポーテーションは、一見、見分けがつかないかもしれないわね」
そういうミウも、神が習得する魔法としてテレポーテーションを扱える。
なので、その事がよく分かる。
「脱線させて悪かったわね、先生。
 それでは、近代魔術……その続きを聞くわ」
そう言って、優雅に微笑む。

クオン >  人体の複製。それに伴う転移魔術。
その話はこの近代魔術においても論じられた過去があった。
「確かに、そういった形の転移魔術は存在する。
そちらの場合、魔法陣の基礎がしっかりしているならば、
この学園内に存在する転移魔法陣より安価、かつ、確実に発動できるだろう。
"魂"の連続性が確認されたが故に、現行法でも認可の降りている近代魔術の一つだね」
 大昔に、倫理的な是非を求めてそういった転移魔法が批難された時期もあった。
今でも偏見を持つものは少なくないし、
"ちょっとしたミス"で惨事を引き起こすことはまちがいない。
 今敷設されている転移魔法陣は確実性と安全性を両立したモデルである。
「近代魔術の基本はこういった魔法陣や言語――詠唱から成るものだ。
ゲームをやったことはあるかな? 戦う魔法使い。そのイメージに近いものがこれだ」
 言いながら、クオンの周囲からいくつかのイラストが浮き上がった。
いくつかの魔法陣だ。シンプルな造形。図形と、近代魔術用に組み上げられた架空言語、或いはラテン語やルーンに至るまでいくつかの意匠が散見される。
「才能がないものでも、下準備と、相応の代償を支払うことによって可能になる技術が、今回軽く教える"近代魔術"入門編だ」

日恵野ビアトリクス > 「シビアな問題ですよね、わりと」
転移魔法陣を公共のインフラで利用するのには、まだいくつかの問題がある。
こう抵抗なく使われているのは、常世学園という土地の特殊性も手伝っているのだろう。

初歩的な魔術入門。魔術師の母を持つビアトリクスにとっては、通り越した階梯である。
しかし、拝聴することに意味が無いということは全くない。
魔術は黒箱である。故に、魔術師ひとりひとりによって、とらえ方が微妙に異なってくる。
さまざまな立場からの講釈を聴くことで、より知識は多角的に、立体的になっていく。
また、入門者用に言語化され噛み砕かれた教えは、思わぬ視点の抜けを埋めてくれることもある。
故に、気を緩めることはない。しっかりと、聴く体勢を取る。

嶋野陽子 > 「科学技術の領域でも、ワームホール
や次元跳躍の可能性は、理論としては示されてます
ね。現実にはブラックホールを操作したり、人類の
現在の科学技術力では手に余る能力を必要とします
が」。瞬間移動が魔術と異能のみの専売特許ではない
という疑問を提示する陽子。

ミウ > 人体の複製による転移魔術。
恐ろしいものだ……。
“魂”の連続性があるが、少なくとも体の連続性は失ってしまう。
転移した先の自分は、別人である、と唱える者もいるだろう。
少なくとも、ミウはそのような魔術を使いたいとは思わない。
もちろん、ミウの空間転移は、体の連続性を保っているものだ。

やはり転移魔術は安全性を伴う必要がある。
万が一、事故が起きてしまえばどうしようもない。

魔術師と言えば何を思い浮かべるだろうか?
多くの人は、魔法陣を展開して、詠唱を唱える……というイメージがあるだとうと思う。
それこそ近代魔術──。

先生の周囲にいくつもの魔法陣が浮かび上がる。
これより、“近代魔術”、その入門編が始まる。

ご案内:「クオン先生の青空教室」に嶋野陽子さんが現れました。<補足:魔力ゼロの科学技術代表の女の子。>
ご案内:「クオン先生の青空教室」から嶋野陽子さんが去りました。<補足:魔力ゼロの科学技術代表の女の子。>
ご案内:「クオン先生の青空教室」に嶋野陽子さんが現れました。<補足:魔力ゼロの科学技術代表の女の子。>
クオン > 「もちろん、科学の領域でも可能とするものはあるね。
そういった彼らの理論を否定するつもりもない。
だからこそ"発達した科学に寄り添っていける"魔術と呼んだのさ」
 嶋野陽子くん。彼女の行使する科学技術とは、
まさにこの常世島の最先端を行くものだと聞いている。
 彼女のそれを否定するつもりはない。
これが単に近代魔術の授業であるため、ある程度脱線を抑える必要があったのだ。
 さて、と。補足を終えて咳をひとつ。赤い燐光を口から漏らしながら、ことさら、翼を大きく動かして君たちを包み込む。
「まず、君たちはひとつの百科事典の上にいると考えて差支えはない。
百科辞典とは"常世島"のことを指す。
ルーン、降霊術、五行陰陽。魔術の種類に暇はないが、
その秘奥を学ばずしても、術式を行使できるのはそのためだ。
魔法陣とは"目次"だ。意味を知らずとも、常世島に刻まれた近代魔術のベースに自動的に術式を行使できる」
 転移魔法陣に乗った段階で、儀式は全て完了している。
それはつまり、あの転移が行えた段階で君たちは既に魔術師なのだ、と付け足す。
「君たちがこの学園内で学んだ近代魔術を行使するならば、
この学園が無くならない限り、島外であろうが島内であろうが、
自由にその技を行使することができるだろう。
……ここまでで何か質問はあるかね?」

日恵野ビアトリクス > 半ば背景のように感じていた翼が動く様子には、さすがに目を見張らさせられる。
クオンの巨体自体が、教室となっている、そんな錯覚。

「プログラミング用語に置き換えると、
 常世島というライブラリから、術式というモジュールを
 インクルードしているわけですね」

こう言えば、理系の人間にもわかりやすいだろうか。
特に質問するようなこともない。巨竜の翼の構造を空きページにスケッチする。

嶋野陽子 > 「初心者の質問で申し訳ありませんが、
魔方陣の術式を使用するに当たり、術者は何らかの
力を消費したり、使用する必要は無いのですか?」
と尋ねる陽子。 

ミウ > 顔見知りである陽子ちゃんも後方の席にいた。
そういえば、ミウの翼は真後ろの席についている人を邪魔していないだろうか?
多分、邪魔している……。

島を百科事典で例えているようだ。
そして、ビアトリクス君が理系的に纏める。

当然、百科事典がなくなれば調べる事もできない。
学園がなくなれば、近代魔術の行使も不可となるわけだ。

さして質問をする事もないので、喋る事もない。

クオン > 「ビアトリクスくんの言うとおりだ。
この近代魔術は時にプログラムに例えられることがある」
 的確な表現だ。先程から、着眼点も悪くはない。
古竜の授業はプリントもなにも用いることがない故に、
テストと、授業態度、そして授業の際の質疑応答などが採点の基準になる。
 そういった意味でビアトリクスの意見は実に高評価である。
――スケッチ以外は。
 もちろん、嶋野陽子。彼女の質問もまた批難されるべきではない。
これは授業だ。分からないものが理解するための場なのだから。
「いいや、構わないとも。分からないための授業なのだから」
 努めて穏やかに述べられるその言葉。世界を震わせるが如き重い音が翼に反響して響くだろうか。
そのまま、まぶたを閉じるようにしてから話が続く。
「さて、質問の内容だが……場合による。
あの魔法陣の場合、島内の魔力を消費することによって術者の消費を賄っていることになる。
うってかわり、今私が出した魔法陣はどれもが個人の魔力を消費するもの。
何を代償として、どのような魔術を引き出すのか。
シンプルに、単一の機能だけを発揮するならば、
魔法陣によって決められたパターンを記述するのが最も良い方法だ」

ご案内:「クオン先生の青空教室」にトトさんが現れました。<補足:ポシェットに白いワンピースとスパッツを着用し、腰までの緑髪を揺らす中性的な人物、乱入歓迎>
日恵野ビアトリクス > ドラゴンはもっとも美しい生物である、という主張が根強く存在する。
それを支持しているわけではないが、
目の前の壮大な生物は、少し古ぼけてはいるものの、逞しく、かつ見惚れるほどに流麗だ。
これほどの距離まで近づける機会が与えられれば、つい筆も動く。
翼と、その付け根の筋肉を丹念に描く。
これほどの巨大な身体を、滑空ならともかく、生物学的にこの翼だけでは
浮かせることはできないはずだ。
おそらくは何らかの魔術的作用が働いているのだろう、とあたりをつける。
だんだん走らせる鉛筆に熱が篭もる。なんだかんだ言って初歩的な講義は退屈だったらしい。

嶋野陽子 > どうやら、この島では魔力を使わずに
魔法を使う手段があるらしい。でも私が欲しいのは逆に
私を標的とした全ての魔法と異能を無効化する方法だ。
物理法則の支配する世界ならば、私はみんなを護る力
を手にできる。

トト > 熱心にメモをカリカリカリカリと羊皮紙のような紙に書いている、やたらとまるっこい文字で

「くおん先生、僕からも質問いいかな?
陣を書く魔術は要するに、使用者以外の力を借りる事に秀でているように思えるんだけれど
それは【契約】に似ているよね、例えばこの島は、僕らとそうする事によって、どんな対価を得ているのかな、気になるよ。」
はい、はい、と大きく手を挙げて質問を行う、その目はいたって真剣そうだ、きらきらと光っているが

ミウ > 場合による。
実に便利で、実に分かりやすい解答。
されぞ、そうとしか言いようがない。
どこから消費か、何を消費するか、それは魔術によって異なるものだ。

そして次に質問する生徒は、知らない人だった。

入門編……既に理解している人も多くいる事だろう。
だけど、色んな意見が飛び交うこの授業であるから、聞く価値は十分にある。

クオン > 「確かに、そう勘違いすることも多い。島を基盤としているのだからね」
 トトの疑問に鷹揚に頷いた。
それと同様の疑問を持っている生徒も何人か居るだろうか。
「契約しているのは、いわばこの常世学園に存在する巨大な魔導書だ。
この場所は、ある程度の量は魔力が生み出されるようになっているし、
"門"を通じて莫大な魔力が流れてきている。
君たち個人がいくら魔力を使っても、まず枯渇することはないだろう」
 それはつまり、門が全て閉じることがあれば
いずれ尽きる可能性がある消費文明であることを示唆しているが。
 今のところ魔術学研究者たちは魔力の枯渇を恐れるほどの消費量を示してはいない。
「場合による。……便利な言葉だが、魔法陣とは単一の力しか持たない。
島の魔力を使う、個人の魔力を使う。その選択すら自由ではない。ならば、どうしたらいいと思う?」
 それぞれを聴講する生徒たちにあえて尋ねる。そう難しくないはずであるが――。

トト > 「… ふむふむ、成る程、分かったよ… ある意味、すっごい混ざりものなんだね、この魔道書は ありがとう先生。」
とんとん、と軽く地面を踏み鳴らすようにしてみて、ぺこん、と頭を下げる

「だったら、どっちを使うかも、魔法陣に書き込めばいいのかな、シンプルなものはそれが強みだけど
複雑なものだってそれ自体が強みになるものね、5W1Hをしっかり決めた魔法陣だって使えるはずさ。」
5W1Hは最近覚えたばかりの言葉なのだが、間違っているか等は気にせずに、あくまでトトなりの言葉で答える

嶋野陽子 > 「単一障害点の対策は、冗長構成、
つまり同一目的の達成のために異なる手段を持つこと
です。この場合は、複数の異なる方式の魔方陣や魔法
書を用意する事でしょうか?」と手を挙げて答える
陽子。

日恵野ビアトリクス > 質問を投げられ、は、と鉛筆を止め、顔を上げる。
少し夢中になりすぎたようだ。自分のノートの記述を辿る。

「魔法陣を用途に沿うように記述を改変する必要がある、ということでしょうか」

用意されたモジュールやメソッドで足りないなら、
新しく作れば良い。作れなくとも、出来合いのものを書き換えればよい。
他の生徒と回答が少々被っているが、こんなところだろう。

ミウ > “門”を通じて流れているエネルギーは魔力だけとは限らない。
時に、あらゆる世界から、あらゆるエネルギーをこの世界に運んでいるのだろう。

「門が完全に閉じたその時、魔力が枯渇する可能性も考えられると同時に、門をくぐってこの世界にやって来た異邦人にとっては元の世界に帰る手掛かりを失う事になるわね」
落ちついた物言いであるが、ミウも元の世界に帰れなくなった異邦人の一人である。
ミウは元いた世界を創りだした創造神。
されぞうっかり、門に吸い込まれて元の世界に帰れなくなった神である。

そして先生に質問され、各々答えていく。

クオン > 「確かに。一番楽なのは、用途ごとに魔法陣を用意することだ。
しかし必要な魔法陣と、それに汎用性を持たせるための多様な付記。
これらを全て記述していたら、途方も無い時間と労力がかかるし、検索性において劣ることになってしまう」
 彼らの言葉に頷く。
だからこそ、少しだけ違うのだとクオンは続ける。
 そこで、彼の前期魔術学における、"歌"の重要性について思い出す生徒も居るだろうか。
歌とは最古の記述。本のない時代に歴史を繋いだ貴重な史料であることが述べられている。
「最初に述べた通り。近代魔術とは"魔法陣"と"詠唱"の二つの要素に分けることができる。
つまり、魔法陣で必ず使用する要素を記述し、詠唱によって細かい条件を指定する」
 言いながら、クオンが何事かを唱えた。
数。方向。花の種類。それらを示す言葉が響くと同時、
クオンが浮かび上がらせた魔法陣の一つが光り輝く。
 それと同時に、上空に向かって炎の華が舞い散った。 
 それが何回か続けられ、さながら花火のように空に何度も光が散る。
「何事も使い分けが重要だ。詠唱は非常に自由だが、一から十まで現象を定めるならば時間がかかる。
魔法陣は決められた物事しか実行できないし準備に時間が掛かるが、その分シンプルで確実だ」
 このように、己の用途に合わせた配分が必要なのだ、と。告げている。

トト > 「ああ、成る程、そういう危険はあるんだね、僕は戻る必要が無いからいいけれど、戻りたい人がいたら大変だね。」
ミウの言葉にぽん、と手を叩いて頷き、にこーっと笑いかける

ご案内:「クオン先生の青空教室」に嶋野陽子さんが現れました。<補足:魔力ゼロの科学技術代表の女の子。>
嶋野陽子 > (成る程。魔方陣と詠唱のハイブリッド
方式ですか・・・)メモを走らせながら、魔術に技術
のアナロジーを被せていく事の危険性に思いが至る。
擬人化と同じ陥井に落ちる恐れがあるのだ。

日恵野ビアトリクス > ほぅ、と感嘆の息をついて、瞬く間に咲いて散っていく華の数々を見送る。

「詠唱。なるほど、引数、か」

納得して頷き、そして、なんとも言えない表情をする。
確かに魔法陣に意識が行き過ぎていた。迂闊だ。
しかし、詠唱に考えが及ばない理由はもう一つあった。
『魔術師は極力詠唱をするべきではない』――母親の教えだ。
発声による体力のロスを避ける、など……いくつか理由はある。
ともかく、母は術に伴う詠唱を嫌っていた。

母は偉大な術師であったが、やはり複数人の教えを請わないと考えが凝り固まるようだ。
目を伏せる。この発見ができただけでも、講義を受けたかいがあった。

トト > 「… !綺麗……… これは、光の花みたいだけれど、面白いね。」
ぱぁあ、と目を輝かせてその光を眺めてから、こくこく頷いて

「成る程、魔法陣は雛形で、後はそこに記入する内容を変えればいいんだね、毎回全部準備する必要はないんだ
沢山刷った同じ内容の契約書でも、人によって記述する内容が変わるようなものかな、合理的な感じがするよ。」
楽しげにカリカリカリ、とメモを続けてから、納得したように呟く

「先生、追加で質問なんだけれど、その詠唱の部分は、他のもので代用するのはありなのかな?
声が使えない人が文字を使ったり、体の動きで表現するみたいにさ、そういう魔法もあったよね。」
とまた手を挙げて質問してみたり

ミウ > トトの言葉に深く頷く。
「そうよ。
 “門”が完全に塞がれた時、確かにこちらの世界に異邦人が飛ばされるという被害はなくなるわね。
 でも、魔力枯渇の他にもあらゆる面で、その影響を受ける事になるわ。
 希望を失った異邦人がもしかしたら、自殺したり暴れ出したりするかもしれないわね」
さすがに、そんな事をする気はないが──。

先生は何やら唱え始める。
すると、展開している魔法陣のひとつが輝き、上空に炎の花が舞い、そして散る。
近代魔術を実演してみせたのだ。
「魔法陣と詠唱ね」

そしてトトから先生への質問。
「それは『ルーン』とか、『舞』や『印』と呼ばれるものの事かしら」

クオン > 「そうだね。君は――トトくんだったか。その通り。
詠唱は最もポピュラーな要素だ。
最も幅広く、学園の基盤に最も適合している。
他のものでも代用できるし、そういったパターンも存在する」
 踊る。小さな魔法陣を更に組み合わせる。電子的な録音で声を代用する。
 そして――絵を描く。
 ビアトリクスに一瞬視線を移す。
彼の魔術は"そういったパターン"ではないが、
絵を魔術に使用するというその特異な系統は非常に目立つものといっていい。
 ――門に対するスタンスは、今のところ私語ということで片付けておきながら、話を続ける。
「巨大な百科辞典に対する翻訳辞典が、詠唱であり魔法陣だ。
しかし、身振り手振りなどの、決まった声のパターン以外の手段は"翻訳辞典"として未だ歯抜けが多い。
ここを独自の方法で解釈していく作業こそ、現在で一般的な、"魔術研究者"でない近代魔術師の現状と言えるだろう」

嶋野陽子 > 門が閉じるとき、陽子達3人もまた、
この世界に取り残される事になる。そうなる前に、少
なくとも元いた世界が彼女達の「転位」によって救われ
たかどうかだけでも知りたい。そのための陽子の入学
であり、敬一の留学である。

トト > 「つまり… 最終的にこの島に伝えたいことが伝わればよくて、その伝え方を増やす方法も、今研究されている、ということだね
それ、ちょっと興味あるかもしれないな… ありがとう先生、よくわかったよ。」
ぺこん、ともう一度頭を下げて、ぱぁっ、と笑った

「そっか… もしそれで、人が襲われるなら、動かないといけないかもしれないね、今は大丈夫みたいだけれど
うん、多分それで合ってると思う、言葉を詰めるという事は、思った以上に簡単で、奥が深い事だからね… って知ってるよ。」
うんうん、とミウに大して頷きながらそう答える、あ、はじめましてだねー、と続けてちょっと小声で言って、笑いかける

日恵野ビアトリクス > 描画魔術にも、クオンの言う『詠唱』に相当する要素は存在する。
絵を指でなぞり、その動きを以って魔力の信号として送る行為。
絵を破くことで、秘された力を解放する、という手順。
しかし何より、絵は観られることによって完成される。
術をかける相手に見せる必要は必ずしもない。
まず術者自身を絵画という術にかけることが必要なのだ。
この歪に分化した魔術体系は、オーソドックスな近代魔術とは齟齬が多い。

「魔術をより豊富なパターンで翻訳を進め、
 多くの人に実用される術へと昇華させていくことも――
 近代魔術の意義、ということでしょうか」

ノートへの写し書きが少し止まっていた。
黙して鉛筆を動かす。

ミウ > 「門が完全に閉じるような兆しは、今のところ見られないものね。
 でも、万が一の事があれば、おそらく多くの異邦人を無力化する必要があるわ……。
 はじめまして、トト君ね」
そう言って、トト君に微笑み返す。

そして先生の話に、
「他の方法も研究されてはいるけれど、近代魔術の基本はあくまで魔法陣と詠唱になるわけね。
 大事なのは、手段はどうであれ、翻訳する事にあるという事……になるわね」
そう、こくこくと頷いてみせる。

クオン > 「この近代魔術の仕組みを利用して独自の術式を作る上げようとする者達も居る。
そういった彼らは最終的に魔術研究者として、基盤を埋めるものたちになるのだろうね」
 ビアトリクスの言葉、トトの言葉のそれぞれを聞いて、再び炎を吐いた。
 教師クオンの場合、己の系統と似通った"歌"を解釈の手段として使用している。
「その通りだ。君たちがもしもより深く近代魔術について理解したい場合は、これより更に専門的な講義となるだろう。
独自の術式基盤を創りあげたいというものは、○○先生か、或いは×曜日の私の講義を受講するように」
 独自の術式。ルーンでも、五行でもない。まったく新たな神秘を生み出す作業。
それを実行できるものは、おそらく今後食いっぱぐれることはないだろうという最重要研究職につくことも不可能ではない。
「今後の授業では、私が利用する"歌"を詠唱に使用した独自解釈の詠唱の仕組みと、魔法陣の関係性について講義しようと思う」
 どうやら、授業もそろそろ終わりに近づいているようだ。
それぞれも理解が追いついているようで問題は無さそうだ。

トト > 「ふぅん… じゃあ、門が閉じなければいいね、大変そうだもの、うん、あ、後ででいいから、君の名前も教えてよ。」
にこーと笑いながら手を振って答えた

ふむふむ、成る程、歌か、歌は好きだよ、楽しいもの、と小声で言いながら、講義の日などをメモにとっているようだ
ご満悦な顔である、この授業はとても楽しめたらしい

日恵野ビアトリクス > 描画魔術も使い手が少なく、ある種独自の術式、とは言える。
しかし実用までの前提技能の修得が厳しすぎる上に、
コストパフォーマンスに優れるとも言いがたい。
社会的な意義は、薄い、かもしれない。
――これもだれでも使えるような形に『翻訳』できれば、あるいは?
(……そこまでの才覚は、ぼくにはなさそうだが)

スマートフォンで時刻をちら、と確認する。そろそろ終業のチャイムだろうか。
良い授業だった。空いた時間にスケッチもできるし。

嶋野陽子 > 「魔法によって、特定対象への全ての
魔術を無効化する事は可能ですか?それともそれは
自己矛盾をはらんでいて不可能ですか?」陽子の質
問は、講義の流れから脱線していたが、本質的な
質問だった。すなわち、魔術にも不完全性定理は
成立するのかという問いかけなのだ。

ミウ > 「わかったわ」とトト君に返す。
授業は、そろそろ終わりへと近づいていた。
先生から、興味深い意見が聞けた。
中々に、有意義な授業だったと言えるだろう。

クオン > 「ありとあらゆる魔術に対応する一つの術式、
というのは現状では不可能といっていいだろう。
近代魔術とは、あくまでも実践的で汎用性の高さ目指したものだからね」
 あくまでも近代魔術に限った話だ。
本来で言う魔術とは、不自由で、神秘の深奥に根ざした術式だ。
本来のクオンの持つ"魔術"も、それこそ限界値を示さぬものでもある。
「であるからこそ、理解が必要だ。術式への理解が深まれば、新しい対処の手段を見つけることができる、というわけだ」
 言ったところで、終業のベルが鳴る。
クオンは翼を折りたたみ、ゆっくりと身体を横たえていく。
「では、以上だ。次の講義を、私も楽しみにしているよ」

トト > 「……… 君、だぁれ?」
先生が答えたあと、陽子に向かって声をかけて、じぃっ、と見つめる
いや、単純に興味が沸いただけなのだが、彼女の問いは、明らかにその答えによる目的を持ったものに見えたから

「はい、くおん先生、ありがとうございましたー … だよね。」
と、終わりの挨拶をクオン先生にして、ぺこん、と頭を下げてみた

日恵野ビアトリクス > 「お疲れ様でした」
ノートと鉛筆をしまう。
得るものは多かった。できることなら、次の講義も顔を出そう。

去り際に、翼の内側、受講者のメンツを軽く見渡す。
妙に知ったメンツが多かった気がする。
陽子は何やら聴講しながら別のことを考えていたようだが。
自分にはおそらく関係のないことだ。

最後に、竜の教師に一礼し、
(…… なんとかうまい言い訳を見つけてウロコに触れたりしないかな)
青空教室を後にする。

ご案内:「クオン先生の青空教室」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。<補足:褪せた金髪 青い瞳 シャツ スカート>