2015/07/20 - 21:21~00:58 のログ
ご案内:「異能研究区画 試験室」に神宮司ちはやさんが現れました。<補足:巫女舞の少年。私服姿>
神宮司ちはや > 常世財団より援助を受ける異能研究の施設、その一室に数名の白衣を纏った研究者とちはやは居た。
研究者は年齢様々な男性がやや多いものの男女ともにいて5名ほど。
それぞれが紙媒体やタブレットをもち真ん中のテーブルと椅子に座るちはやを取り囲む。
あるいは壁際に設置されたパソコンの前に座っているものもいる。
部屋は明るく、落ち着いた象牙色の壁をしている。
ただここで話すことを漏らさぬように防音になっているし出入口は電子キーで管理されている。
またマジックミラーとなった壁を通して隣では別の研究者たちがこの光景を見守っている。
腕に電極やコードを繋がれながら何らかの計器に測定されているちはや。
その間に目の前に座るメガネを掛けた穏やかな研究者に幾つか質問を受けた。
先日海水浴場の浜辺で遭遇したクラーケンとの一戦のあと、
入院中に検査された項目に関してと
あれからの自覚症状、特に異能力の影響などについてだ。
神宮司ちはや > 病院で検査され、治療された後は身体に不都合などは起こっていない。
怪我もなく毒の後遺症もないという診断だった。
数日ずっと眠っていた期間があるがそれだって能力の反動のようなものできっと体力を回復するに必要だったものだという見方がちはやの中にはある。
異能についてはあの後使ってみたことがないので分からないと素直に首を振ると、研究者が別の白衣へ指示を出す。
しばらくすると厳重な入り口がスライドして開き、中には首から何らかのカードを下げた3人の人々が研究者に連れられて入ってきた。
男女年齢容姿など様々なその人々は一列に並んでちはやを見た。
ちはやも不思議そうな顔で彼らを見る。
目の前の研究者が座ったまま彼らを紹介する。
『彼らはいずれも異能力や魔術を持っている人達だ。
能力の個体差はあるものの力量はみなだいたい一様。
ここで君の異能をテストするために協力してくれる被験者の人達だよ。』
神宮司ちはや > 被験者、そう紹介されて物怖じする。
なんだかそれだと実験動物みたいな響きがあってちょっと苦手だ。
やや臆したような表情を見せるちはやに研究者は穏やかに笑って和ませようとする。
『早速だがAさんとまずは手をつないで君の異能、《人身供犠》を使ってみて欲しい。
強化の程度はレベル3、君の生命に別状がない、少しつかれたかなぐらいで構わない。』
言われてちはやは頷き椅子をどけて立ち上がる。
テーブルも端に片付けられスペースが確保されるとAと呼ばれた男性が隣に立った。
白人の背が高く肩幅も広い青年だった。
まずは小手調べとばかりに青年が右手でぱちんと指を弾く。
指先にライターほどの小さな火が灯った。
これが彼の異能、それも限界らしい。
タバコを吸う時になんか便利だな、とちはやは思った。後はお線香を添えるときとか。
神宮司ちはや > 次に言われたとおり、相手と手をつなぐ。
太い指と広い手のひら、大人の男性の手だと触れてわかる。
青年はにこりともせずただ丁重にちはやの手を握った。
研究者が頷く、異能を使う合図。
ちはやは目をつぶり、相手の手を感じながらそこに意識を集中させる。
自分の中に流れる何か相手に届け、繋げるイメージを描く。
次に男性が握っているのとは反対の手で指を弾いた。
今度の炎は花火のようにぱっと大きく舞い散ったあと、まるで地獄の釜にくべられるような大きく熱い火柱となった。
慌てて青年が手を遠ざける。少し前髪がこげてしまったようだ。
研究者たちがざわめき一斉に記録を取り始めた。
特に異能に衰えがないことが確認されると次の試験にうつる。
神宮司ちはや > 次の被験者はBと呼ばれた女学生だ。
ちはやより少し大きい、ショートカットをした元気の良さそうな女の子だ。
研究者たちの声にハキハキと答える。
その子の能力はどうやら身体に磁力を帯びるものらしい。
最初は地面に落ちたパチンコ球を拾い上げるぐらいでしかなかったが
ちはやの異能をもって強化すれば端に寄せたはずのスチールテーブルががっつりと彼女の体に吸い寄せられた。
Cと呼ばれた被験者は落ち窪んだ目をし、血色の悪そうな顔の中年の男だった。
彼は魔術師らしく、タロットカードを使った占いの術を持っているそうだ。
だが的中率は3割程度、本当にそれは魔術なのかも正直怪しい。
これもちはやがその背に触れて異能を発言すると的中率は9割まで上がった。
神宮司ちはや > 『では次の段階だ。今までは接触によって異能を発現していたが、
件のクラーケンとの戦いにおいて君は神なる存在とは特別接触せずに異能を使ったそうだね。』
研究者の言葉にちはやは頷く。
『今度はそれと同じように、今この場にいる3人へ離れた位置にて異能の効果が出るかどうか試そう。
もしそれが可能なら、次は君の特殊能力が同時に発動できるかどうかを検証する。いいね』
いいねといわれてもちはやに選択の余地はない。
指示された場所に被験者の三人とちはやが立つ。
お互いに距離は数メートル離れていて、到底触れられる距離ではない。
実験のスタートが告げられる。
取り出した扇を開き、自分の異能と舞へと集中していく。
その場で軽く、ゆるく、自分の力を三人へ伝えるようにゆっくりと舞い始めた。
試験室に神気が満ちる。華やかな空気とどこか落ち着く花の香り、あるいは花びらの幻想。
研究者たちは目を奪われそうになるも計器やパソコンのデータを追い始めた。
被験者たちが指示に従い、それぞれの異能や魔術を発動する。
果たして効果は上がった。
先ほどと同程度の火柱があがり、磁力はより強力に椅子や机を吸い上げる。
研究者たちに判定された占術の的中率も落ちることがなかった。
神宮司ちはや > 次の段階、つまり《人身供犠》と《神楽舞》の同時発動を促される。
これは初めての経験だ、失敗するかもしれないと思う気持ちがよぎるも
もしこれが上手くいけば、ビアトリクスや楓たちを守る力になれるかもしれないと考えなおす。
クラーケンでの戦いにおいて無力感を感じていたのは何もビアトリクスや陽子たちだけではない。
ちはやもまた、自分にもっと何かが出来ればと思っていた。
大きなことは出来なくとも、なにか少しだけ、もう少しだけ前へ進めるなら。
ちはやは目をつぶりながらその気持を舞にて表現する。
本来神に捧げるべき舞は自己をなるべく押さえ、トランス状態に近しい域にまで持っていかねばならないのだが
今この時は自身の想いが形となって表れてしまう。
舞に鼓舞されるように被験者たちの能力がより強力になっていく。
発火の能力は青白く吹き上がり、もはや眩しいほどに高温に燃え上がる。
磁力はちはやたちを測定する機器が狂い出すほど強力になってゆく。
占術はこれから先の未来の出来事を詳細に伝え始めた。
被験者たちはみな一様に力が湧き出る、もっと自分はやれる気がするなど口々に自身の高揚感を訴えた。
神宮司ちはや > そうしてくるりと最後の型を決めれば異能も神楽舞も静かに消え去った。
後には確かに強化されたことを受けた被験者たちの驚きの顔と、騒然とする研究者たち、少し騒々しく荒れた室内があった。
ちはやは額に汗を浮かべながらはぁと深呼吸する。
息が荒い、やはりここまで何かしらを引き出そうとすると疲労感が強いのだ。
だが確かにひとときとはいえ自分は他者を少しだけ強く支えることが出来た。
我知らず口元が緩む。満足感に目を細めた。
『おめでとう、異能の強化が確認された。
これから何を契機に進化したかを突き止めなければならないが、
ひとまずは今日の実験は終了しよう。お疲れ様』
リーダーの研究者が興奮した目でこちらを労う。
ちはやも満足そうに頷いてお疲れ様でしたと頭を下げた。
今の気持ちを表すのは難しい。嬉しいことは嬉しいのだが
これが取り払われた時に自分に何が残るのだろうという疑問を常に抱いていたのだ。
そのちからが強くなったということは、つまり自分はこれに拘ってしまうのではないか。
あるいはちはやという人間は、この能力だけによって定義させられてしまうのではないだろうかという不安はある。
神宮司ちはや > だがそれでも自分が欲した強さや力だ。
それが手元にあることの重みを改めて考えながらちはやは研究者たちに連れられて部屋を出た。
少しの休憩の後、研究へのちはやの献身が認められ幾らかの報奨金が支払われる。
その代わり、ちはやのデータや遺伝子情報はこの研究施設預かりであり、他者に気安く開示してはならないことを教えられた。
よくは分からないがとりあえず祖父のもとにもその情報と常世財団への協力要請に応えたこと、ちはやの働きによって幾らかの有利な条件や報奨金が渡されるらしい。
それは素直に嬉しかった。祖父に自分が頑張っていることを間接的に伝えられるからだ。
そのうち両親へもこの事は伝わるだろう。
なかなか会えないが、手紙のやり取りは頻繁にしている。褒めてもらえるだろうか。あるいは呆れられるだろうか。
どちらにせよ、自分が何か出来たということが今この瞬間ちはやにとっては嬉しい事だったのだ。
ご案内:「異能研究区画 試験室」から神宮司ちはやさんが去りました。<補足:巫女舞の少年。私服姿>
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