2015/08/05 - 20:45~01:44 のログ
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」に平岡ユキヱさんが現れました。<補足:【乱入歓迎】165cm/54kg、金髪ツーサイドアップ、ショートパンツ、『非番』プリントTシャツ、サンダル>
平岡ユキヱ > 「うぉー、まさに夏。レジャーシーズンって奴ですかぁ? 人の多い事多いこと」
海の家の日かげになっている片隅、
ややバテ気味の調子でかき氷を呑気に食べている。
本来はというか流石に今日は非番なのだが、「いるだけでいいから!」と駆り出され今に至る。
「人が集まるところにトラブルは事欠かないっと…。
あー、おい、そこ音楽の音量下げろ! うるさいんだよ!!」
拡声器いらずの声で、近隣で騒いでいた団体を一喝すると、再びぷしゅーと気が抜けたような声を出して。
椅子に深々と座りなおした。
平岡ユキヱ > 「ちくせう…。 ただで海の家を使えると
勘違いしていた昨日の自分を殴りたい…」
風紀に領収書たっぷり持っていくからなあ…と、但し書き空欄で冷やし中華。と注文する。
すいませんそれやってないんですよ、と帰ってきた。
領収書の方だ。空欄渡しはダメらしい。
「かみはしんだ!」
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、拘束衣めいた袖なしの長衣、ロンググローブ、ハイヒールサンダル>
平岡ユキヱ > 「じゃあ普通にくれ! からし多目でね!」
しょうがにゃいにゃあ…と注文すると。突然なるスマホ。
なお大抵問題が起きたときにしかならない。
「…平岡です」
通話の相手が、風紀本部が襲撃されている! 至急おうえ…ぐわあああ! とか響いている。
「…がんばれよ。ユキヱさんは非番なり」
現実は残酷なり。
ヨキ > (海の家に、夏の逆光を背負ってゆらりと入ってくる。
その長身の足取りは見るからによろよろとして、日差しをたっぷりと浴びた鉄塊のごとく、全身から今にもぷすぷすと煙を上げそうだった)
「か……かき氷……えるさいず、……いちごで……」
(カウンタに弱々しい声で注文を投げる。
ユキヱが電話を済ませたその隣のテーブルに、崩れ落ちるように腰掛けて突っ伏す。ずしん。
やがて男を追い掛けるように、先生、しぇんしぇー、と、カルガモの子どもよろしく年少の一団がわらわらと入ってくる)
「遊んでて……先生、ちょっとやすむ……」
(学園の年少クラスと思しき子どもたちと、小中学生ほどのまとめ役だ。
先生起きるまで自由時間だってよお、と、またわらわらと賑やかに出てゆく……
げっそりとした顔でテーブルに突っ伏す男がひとり、テーブルに残される)
平岡ユキヱ > 新たに海の家に入ってきた陰に、さり気なく目をやる。
好奇心というよりは、単純な防犯目的だった。怪しい奴は、動きや佇まいで代替の検討がつく…
が、それを覆してぐったりな男性が先生先生と呼ばれているのを見て。毒気を抜かれる。
「あー…確か、美術のヨキ先生でしたっけ?
わははは! お疲れ様です、こんな時期にも引率のお仕事ですか?」
からからと夏の太陽のように笑いながら、そう声をかけた。
ヨキ > (眼鏡がずれるのも構わずに、テーブルに頬を押し付けた格好のまま、平岡へのそりと振り返る。
街では涼しい顔で通していたのが、顔中を真っ赤にして茹だっている)
「んう……『ひばん』、」
(笑う平岡のTシャツのプリントと、その明るい顔とを交互に見遣る。
力ない左手が、挨拶の声にへろりと応える)
「あァー……君、たしか風紀の……。平岡君と言ったか。
……うむ、絵を教えている子どもたちに……海海海と、強請られてしまってな」
(さすがに心配した様子の店番が持ってきたコップの水を、砂漠で行き倒れていたかのようにちびりちびりと口にする)
「それで……さっきの電話。やたらガヤガヤしていたようだが、何だったんだ」
平岡ユキヱ > 「…。風紀の本部に不審人物がかち込んできたようです」
そう短く、真剣な調子で告げたのち、ニヤリと笑う。
「だから我々が勝利します。ご心配なく」
自分が注文していた冷やし中華を啜りながら、子供たちをおー、と眺めている。
大人と子供の境界くらいの自分としては、羨ましいやら懐かしいやら混ざりたいやら。
「いやー、ここ最近とにかく暑いですから…。
むしろ勝手に海に行かなかった分、あの子たちは随分利発ですね」
水難事故やら何やら、ともかくルールをきちんと守っているというのは大したものだ、とほほ笑んだ。
ヨキ > (暑さにとろりと蕩けた眼差しが、しかし唇を結んで平岡を見る)
「そうか……カチコミか。
仕方ないよな、君は非番であるんだものな」
(向けられた言葉に、こちらも突っ伏したまま不敵に笑い返す。
左手が弱々しいピースサインを作って、また腕がだらりと落ちる)
「必ず勝利せよ。
これは常世学園、いずれの教師からも君らに任ずる厳命である」
(少しして運ばれてくる大きなかき氷に、ふらふらと頭を持ち上げ、眼鏡のフレームを上げ直す)
「……あの子たちは幼くして島へやってきて、身よりもなくてなあ。
みなと共に普通学級へ進むか……『たちばな学級』へ入らざるを得んか、岐路に立たされている者も居る」
(たちばな学級――他者と授業を受けることが“困難”な生徒のための、支援学級だ。
スプーンストローでかき氷をしゃくりしゃくりと口へ運びながら、子どもたちの歓声を遠くに聴く)
平岡ユキヱ > 「委細承知しました。胸すえて進むのみ」
途中でまた応援要請きたらすいません。と事前に断りつつも、
そんなことやってでもなお負けはしない、と命をしかと受領した。
「…そうですか。…『たちばな学級』、話は伺っています。
私も、この島へ来る前は本土で『そこへ転入ではどうか』という話も振られたので」
ヨキの話を聞いて、少しだけ険しい表情になって目を細める。
「先生なら私の内申書などでご存知かもしれませんが…。
まあ、私も完全に力を御しているクチではないので」
夏のセミの声や、砂浜の喧騒が少しだけ遠くなったか。
ヨキ > 「君の休暇も、仲間の助けも、同じほどに大事だ。
ヨキには構わず、君が最善と思う手を尽くすがよい」
(手にしたかき氷のカップを持ち上げ、額に押し当てながら、平岡の言葉に耳を傾ける。
見れば身体じゅう真っ赤にしているくせ、汗の一滴も掻いていないことが見て取れる)
「……君の異能について、話には聞いている。検討の末に、普通学級へ入学したと。
それから、調子はどうだ?平岡ユキヱといえば、風紀委員の中でもとりわけ真面目な働きぶりと聞くが」
(かき氷をテーブルに置いて、細めた目で平岡を見る)
平岡ユキヱ > 「爆破…いや臨界事故、一回」
ありゃあ、本土や海外の電力会社大手も絡んでいたので不問ですがね。
と、なにやらキナ臭いやり取りがあったらしいがただ不敵に笑うのみで。
それ以上は語らず。
「真面目か…あはは! いやー、本部が襲撃されてんのに
非番だからと出ないやつが真面目だと思います?」
いやしかしマジで休みたいです、とおどけた仕草を少ししてから…。
「真面目かはわかりません。だけど私は『真剣』ですよ」
スマホをとる。変な奴らが増えた! という報告に、わかった。と一言だけ返して。
「もうちょいゆっくり話せれば良かったのですが…。
ま、今度 夏季講習会の時にでもぜひ」
ゆっくりと立ち上がる。
ヨキ > (なるほどね、と言外に微笑み、目を伏せる。
何も言うことはない、と。
笑う平岡に向けて、それでも揺らがぬ様子で頬杖を突く)
「いいんじゃないか、非番?
例え襲われたとて、落とされることはあるまい。
それが常世の風紀委員だ」
(無責任なほどに軽く、それでいて磐石な信頼を寄せているらしい。
電話を取る様子を横目に見ながら、再びかき氷を味わう)
「ああ、行ってこい。
君の『真剣』を、不届き者に見せつけてやれ。
また話そう、平岡君――お疲れ様、だ」
(笑う。立ち上がる姿を、日陰だというのに眩しげに見上げる)
平岡ユキヱ > 失礼! ただそう一言述べる、とサンダルであり得ないほどの速度で駆け出す。
飛行機でなくヘリでなく自動車でなくバイクでなく、己の足の方が速いと判断したのだ。
「…会計忘れてた」
数百メートル飛んでから戻ってきた、領収書早くかけ! と騒いでいた模様。
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」から平岡ユキヱさんが去りました。<補足:【乱入歓迎】165cm/54kg、金髪ツーサイドアップ、ショートパンツ、『非番』プリントTシャツ、サンダル>
ヨキ > (平岡の背を見送る。テーブルに片肘を突いて、我関せずとばかりに。
支払いに戻ってくる様子にくつくつと肩を揺らして笑う)
「……やっぱり、真面目だ」
(本部への襲撃となれば、作戦もよほど規模が広がりゆくだろう。
それでいて今は平和なこの浜辺で、何も知らぬ子どもたちをただ遊ばせておくに限る)
(たっぷりとしたかき氷は、まだ半分残っている。
しゃくり、と音を立てて、再び食べ始める)
ヨキ > (指先についたかき氷の雫を払い落とし、懐からシャンパンゴールドのスマートフォンを取り出す。
メールと、着信履歴。左の人差し指でスクリーンを手早く操作する。
犬の形の、平たく垂れ下がった耳の下に電話機を差し入れる)
「…………、あァ。ヨキだ。
ああ。聞いた。平岡君って居たろう、風紀の。うん。
とっくに行ったよ。彼女の足なら、もう着いてるんじゃないかな。うん。
……ふは。ヨキは行かんよ。知ってるだろう?
ここで風紀を助けたら、次は公安に加担しなきゃ不公平だ」
(委員会街の緊急事態を尻目に、暢気なほどにぽつぽつとした声が会話を交わす。
小さく笑って話をしていたのが、するりと通話を切って)
「……………………、」
(一分にも満たない会話だった。
人波に背を向け、唇を真一文字に引き結んだ無表情が、冷徹な眼差しで地面を見下ろす)
ヨキ > (不意に掛けられた、せんせ、どうしたの、という声に、顔を上げる。
ヨキを見上げて立つ、幼稚園とも小学校ともつかない年齢の少女がひとり)
「……ごめんごめん。ちょっと、考え事してた。何でもないよ」
(穏やかに笑う。
少女がぴたりと寄り添ってくるのを、左腕が迎え入れる。
せんせい、あちゅい、と、少女が声を漏らす)
「………………、」
(平岡へ口にした、普通学級か、あるいはたちばな学級への入学を検討されているうちの一人。
件の『悪魔ちゃん』――星衛智鏡と似て非なる、読心術系統の異能の持ち主。
熱い、と口にしたのが、熱せられたヨキの腕のことなのか、それともヨキが無意識に心中に浮かべていた光景のことかは判然としない。
深く息をつく。目を閉じる。思い浮かべる。考え、浮かべ直す。穏やかで涼やかな、街の風景を)
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」に蓋盛 椎月さんが現れました。<補足:麦わら帽子 グラサン 白衣>
蓋盛 椎月 > 海の家に床として敷かれた板を、サンダルでカタカタと鳴らして現れる。
海水浴に来たわけでも、保健課として救護所の手伝いに現れたわけでもない。
ただの気晴らしの散策、その足の向いた先に浜辺、この海の家があった。
席を探しているうち、ヨキとその傍に立つ子供が目に留まる。
「まだ仕事中ですか。ご苦労さまです」
麦わら帽子の下で薄ら笑う。
ヨキ > (身体から顔を離した少女を見下ろす。
物憂げだった表情が、いくらか和らいだのが判る。
年長の少年が浜辺から様子を見にやって来るのと、見知った養護教諭が現れたのは同時だった)
「ほれ、迎えが来たぞ。また遊んでおいで――大丈夫、ヨキはここで見ているから」
(少女は、ん、と頷いて、再び晴れやかな日差しの中へ駆け出してゆく。
その背を見送ってから、漸う蓋盛へ振り返る)
「……予定ならば、街へ戻る時間なのだがな。延長することにした。
聞いたか?風紀委員の本部が、襲撃に遭っているんだと」
(ふっと鼻を鳴らして、小さく笑い返す)
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」に蓋盛 椎月さんが現れました。<補足:麦わら帽子 グラサン 白衣>
蓋盛 椎月 > 「あの子らを定刻通りに街に戻すのは大変そうですね」
日差しへと向かった少女。海の家に来るときに見えた年少の集団。
だいたいは察しがつく。
ヨキの近くの席へと座り、注文を考えたところで。
「へえ、本部が……っていうと、委員会街、のですか。
あたしが学園地区から出るのの入れ違いのタイミングかな。
なんでまた……どこの愚連隊なのやら」
うへえ、という表情。聞きたくないことを聞いてしまった、といった感じ。
ヨキ > 「なに、じきに遊び疲れるさ。
まとめ役らも、よく見てくれているからな。
……手は掛かるが、よい子らだ」
(半ば溶け残り、かち割りのようになったかき氷をぐびりと煽る。
蓋盛の苦い顔を余所に、平然と話を続ける)
「そうだ。『不審人物』……と言っていたから、そう多くはないのやも知れん。
あの子らを、今むやみに学生街へ近付ける訳には行かんでな」
(溶けて尚ひやりと冷たいカップで、己の額、頭、腕、頬と、ぺたりぺたりと火照りを冷やす)
「書き入れ時になりそうだな、保健課よ?」
蓋盛 椎月 > 「不審人物、ね……」
悪行を働くような存在として真っ先に思いつくのはロストサイン、
ついでフェニーチェではあるが、そいつらに今ハデに暴れるメリットは薄い。
加えて言うなら、フェニーチェの活動であればそれを派手に喧伝するはずだ。
『不審人物』という報告はありえない。
するとそれらとは関係ない在野のテロリストか何かだろうか。
風紀委員の本部ともなればそれなりの数の手練が集結しているはずだ。
そこでの騒ぎを委員会街より外に拡大させるほど、彼らは無能ではない。
だが、万が一――ということもあろう。
「仕事が増えるのもかんべんして欲しいところですが……」
肘を付いて頭を抱え、口元を笑いの形にする。
「風紀委員の本部を襲撃するってのがどういう意味を持つのか
わかってんのかそいつらは……」
声も笑っていた。笑うしかないのだろう。
面倒な思案から自分を解放するために海までぶらついてきたというのに全く。
ヨキ > (じ、と蓋盛が思案する様子を見る。
その声が笑みで震えるのに、ただテーブルの上へ目を伏せる)
「――理解なんか、しちゃいないだろう。
ひとたび行動に出る者が、自分の正義においてのみ動くときには。
風紀の側にどんな正義が、理念が、どれほどの規模であるのかを、いちいち考えもしない」
(蓋盛に反して、低い声で笑いもせずに言葉を紡ぐ。
黙って立ち上がり、淀みない足取りでカウンタへ向かう。
間を置かずテーブルまで戻ってきて――買い求めた冷たいコーラの瓶を、無言で蓋盛の頬にひたりと宛がう)
蓋盛 椎月 > 風紀とは常世の警察機関である。
その風紀が襲撃され被害を受ける、という意味。
もちろん風紀が簡単に壊滅させられるとは蓋盛も思っていないし、
犯行に及んだものが捕縛され罰されるなら大した問題ではなかろう。
しかし仮におめおめと取り逃がし、その事実が公となった場合、
風紀は確実にナメられる。
すなわち権威の失墜、治安の悪化だ。
治安の悪化が何を齎すかなど、説明するまでもないだろう。
常世の市民の安全というのはいかに薄氷の上に成り立っているのかどいつもこいつも――……
「ひょぇ」
思わず声を上げる。昇っていた熱が冷たい瓶へと吸い取られていった。
「……どーも、すいません。
真面目に怒った素振りを見せるなんて、あたしのキャラじゃあありませんね」
嘆息して、静かにいつもの軽薄な笑みを見せる。
「……イカ焼きひとつ!」
手を挙げて店員へ勢い良く注文した。こういうときはなにか食べるのがいい。
ヨキ > (受け取られた瓶を手放して、元の椅子を軋ませながら座り直す。
蓋盛が笑うと、その顔を真っ直ぐに見遣って小さく笑う)
「……いや、それでいい。怒れ、蓋盛。
ただ懊悩を隘路に詰まらせるのだけは、止せ」
(蓋盛の注文に併せて、自分も手を挙げる)
「イカ焼き、もうひとつ」
(手を降ろす)
「…………。
笑えるときには笑っていろ。大体のことは、やり過ごせる」
蓋盛 椎月 > 治安が乱れた時、そのあおりを最も受けるのは弱者だ。
今、委員会街で蛮行を働く賊は自分たちだけの戦いだとあるいは思っているのかもしれない。
そうではないのだ。
ちら、と日なた、海の家の外へと目を向けた。
「あたしにゃ大した未来の絵図なんて描けやしませんけどね。
せめて小さい子供たちが、表通りを歩ける島であってほしいもんです」
ほどなくしてイカ焼きが席へと届く。
それを貪り食らい始めた。
「へへ。笑うの、結構得意ですよ。
笑って、食べて、見過ごして、迷惑かけて……
それが小市民の生き方ってもんですかねぇ」
ヨキ > 「裏方には裏方で、やることがある。
我々は喧騒から遠く離れて、昨日まであったものを、成されゆくものを守り続けるだけだ。
時として――裏方の分際で、矢面に立つことがあろうとも、な」
(イカ焼きを取って、大口で齧りつく。
人間より荒々しげに、けだものよりは上品に)
「……それでいい。
皆がみな公安風紀のように肩肘を張っていては、保てる平穏もないだろう。
ヨキにはヨキの、君には君の笑い方がある」
蓋盛 椎月 > 「そうですね――わかってますよ。それが領分ってもんです」
咳き込むように笑う。
ひとつの物語の舞台を降り、常世へ教師として赴任した時からわかっているつもりだ。
何が起ころうと――地道に、小さな日常を、慈しみ、守っていくしかできない。
割り箸の先で、輪切りにされたイカをくるくると回す。
「……ヨキ先生は、たちばな学級に参加してどれぐらいでしたっけ。
銀貨くんが戻ってきましたよ。
学級も出たし、手のかからない子ですけど――だからこそ気をつけてあげてください」
見えるものを守り、見えないものは守らない、と同僚に憚らず言った。
再会した“奥野晴明銀貨”という子供は、その境界線上にあった。
ヨキ > (香ばしいイカ焼きを、甘ったるい色水で貪る。
銀貨。その名を聞いて、割り箸の先がぴたりと止まる)
「――ほう!奥野晴明銀貨、か。久しいな。
たちばな学級が出来て……ヨキが顔を出し始めたのは、少ししてからだったからな。
覚えているよ、彼のことも。随分と紆余曲折があったが……、そうか。
……けだものが突然二本足で歩き出すのと、同じように。
子どもが一足飛びに大人になることの危うさを、理解はしているつもりだ。
ヨキとて完全ではない……だが、変わらず彼へ心を注ぐとしよう。
……して、いかがだったね。久々に会っての印象は?」
蓋盛 椎月 > 「飛び級してる子供ばっかですけどね、ここは。
それが出来る環境でもあり、そうしなければならない環境でもあり」
ラムネの栓を開け、喉を鳴らして中身を流し込む。
「変わらず、賢く、冷静で、いい子ですよ。
一年の留学を経て知識と経験も蓄えたように見えます。
……できすぎた子ですね、相変わらず」
最後の言葉ばかりは、やや判断に迷うような響き。
測りかねているところがあるのだろう。
ヨキ > 「……ヨキは、この島の外を知らん。
そうなれば、やはり君の方がこの常世の危うさを正しく理解しているんだろう。
ここを『地獄』と呼ぶことの、正当さを」
(飲み干したかき氷のカップを、しばし指先で弄ぶ。
たちばな学級で相対した頃の、奥野晴明銀貨の姿を思い出すように)
「…………、そうか。戻ったばかりでは、やはり判断するに尚早――か。
だが……君の見立ては、信頼に足る。ヨキよりも親しげで、それでいて冷徹だ」
蓋盛 椎月 > 「島の外だって大していいとこじゃありませんよ。
あたしだって地獄じゃないところを知らない。
ただ、この世界が――かつての秩序を覚えている。
それがあたしに、ここが地獄であることを教えているんですよ」
新たな世界。新たな常識。変われないインフラ。旧秩序。
その齟齬が未だ、世界のヒビとなって引き裂くような痛みを生み出しつづけている。
「ま、干渉し過ぎも毒でしょう。ただ心構えだけは、しておいていただけると」
事実だけを告げる、淡々とした声。
生徒について語るときの自分のこの口調を、蓋盛はけして好いていない。
心臓を青銅の皿に乗せて重さを測ることを好きになれるような人間が稀であるように。
イカの尻尾を胃に収めたところで、ポケットに収めていた携帯端末が振動する。
それをすでに予見していたように、忌々しげな所作で手に取る。
そして椅子を鳴らして席を立った。
「……さぁて、呼ばれてしまったので失礼します。またゆっくりお話しましょう」
卓に紙幣と硬貨を置き、そして駆け出していく。
「釣りはいらねーぜ! とっときな!」
言ってみたかったらしい。
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」から蓋盛 椎月さんが去りました。<補足:麦わら帽子 グラサン 白衣>
ヨキ > 「旧い秩序と新しい秩序。
――しかしてここには、決して新しくなく、宛がわれただけの秩序……」
(蓋盛を見る眼差しを細める。その瞳のうちにある、自分の知らない世界を透かし見るかのように。
平坦な声を聞きながら、イカ焼きを頬張る。味を感じてさえいないような顔つきで)
「……判った。念頭に置いておく」
(小さく笑う。
先ほどの風紀委員と同じく、蓋盛にも連絡が入る様子を黙って見遣る。
再び相手を見送る形で、じっと見上げて)
「やはり苦労が耐えないな、君は。……またいずれ」
(受け取った金を掴み、軽く掲げて応える。
走ってゆく背を見送る)
「…………、さて」
(平らげて、立ち上がる。代金を支払って、釣りを懐へ捻じ込んで外へ出る)
「――ほれ、みなの者!
済まんな、身体はもう大丈夫だ……そろそろ帰ることとしよう」
(子どもたちを集める。集った顔触れを、その両腕の中に絡め取る。
人の子の親のように、母犬のように、群れを率いる長のように、教師のように)
「今日は……そうだな、来たときと違う道をゆくぞ。見晴らしのよい丘があるのだ」
(そうして守る。今日も今日とて、薄氷の上の秩序を)
ご案内:「◇海の家「竜宮城」(期間限定)」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、拘束衣めいた袖なしの長衣、ロンググローブ、ハイヒールサンダル>