2015/08/11 - 21:07~23:52 のログ
ご案内:「研究区道路」に倉光はたたさんが現れました。<補足:女子制服 切りそろえた黒い前髪>
倉光はたた > 「あーやばいやばいやばい雨降ってきた」
空は真っ黒い雲で覆われている。
研究区、殺風景な道路をマウンテンバイクで走っている女生徒の姿。
三年の倉光はたたである。
夏季休暇。実習区で行われていたある魔術系科目の実習……の補習から
女子寮のある学生居住区へと帰らんとしていたのだ。自転車で。
この研究区は、その途中にあるのだ。
普通は島中を走っている鉄道を利用するのだが、
倉光はたたという少女はそうしなかった。
最近新しく買ったばかりの自転車にはしゃいでいたのだ。
今月は電車使わない月間だ! と鼻息荒くしていた。
今日ぐらいは電車使っておけばよかったかなと思っている。
倉光はたた > 「あたしだけ全然できなくて遅くなっちゃったよほんとにも~……」
ぶつくさぶつくさと愚痴りながらもせっせと脚を動かしてペダルを漕ぐ。
倉光はたたは魔術がさっぱりできない。
一般的な才能の生徒が一抱えできるほどの火球を生成している側で、
マッチでつけたぐらいの火をようやく灯せるぐらいのレベルなのだ。
では異能はというと、持っていないし発現しそうなきっかけもない。
常世学園は異能者や魔術師が大量に集まる学園都市である。
とはいえ。イノセント、ノーマルマン、愚者……
はたたのような完全な無能力者もそれなりにはいる。
はたたは異能や魔法にあこがれていた。
だからこの学園の門を叩いた。
マッチ程度の火しか灯せない魔法であっても、彼女にとっては大奇跡だった。
他の生徒に比べて大きく劣っているからといって、
羨むことはあれど悲しんだり妬んだりはしない。
そういう少女だった。
倉光はたた > 「なんかすごい疲れちゃった……。
寮に帰ったら水ようかん食べようっと」
値の張るとっておきのやつが冷蔵庫で冷やしてあるのだ。
それを口に含んだ時のことを想像するだけで頬が緩む。
ゴロゴロ……。
上空から不穏な音がする。
見上げれば、黒い雲の内側で白く光っているのがわかった。
「…………あれ、これヤバいやつだな?」
雷、落としますよ、というやる気満々な気配が見て取れる。
あっちゃー、という表情に。
あたりを見渡すが隠れられそうな場所はない。一面の更地だ。
雷は高いところに落ちやすい。
しかし周囲にそれはない。
「エリア51かよもぉ~」
文句を垂れる。
しかし表情にそこまでの深刻さはない。
――『自分だけは大丈夫』、そういう誰しもが抱く油断があった。
たとえば、自転車を停めて離れ、屈んで姿勢を低くする……なんて選択肢もあるかもしれない。
しかしそれはそれで風邪を引くだろう。
ともかく、はたたはそうせずに、雷雲の下を走り抜けるという選択肢を取った。
倉光はたた >
白光。
倉光はたた > ふっ飛ばされたマウンテンバイクがガードレールに激突した。
そこに、
なんの異能もなかった。
なんの魔術もなかった。
どうしようもない凶運。
どうしようもない一撃。
すさまじい光量があたりを包み込んだ。
(まぶしいな)
なんて感じるいとますら、はたたには許されなかった。
わずか1/1000秒の間にすさまじい量の電磁パルスが流れる。
それに常人が耐えられるはずもない。
心臓と、脳が、焼き切れる。
17年の生の記憶が、その一瞬の間で、すべてがぐしゃぐしゃに砕かれた。
倉光はたたは死亡した。
倉光はたた > ――数時間後、通りがかった研究員が
倒れている倉光はたたを見つけ、通報し、すぐさま病院へと搬送される。
もちろんとっくに彼女は息を引き取っていたため、すみやかに死亡と診断された。
――しかし、彼女の通夜も葬式も告別式も催されることはなかった。
ご案内:「研究区道路」から倉光はたたさんが去りました。<補足:女子制服 切りそろえた黒い前髪 眼鏡>