2015/08/17 - 22:13~02:40 のログ
ご案内:「落第街大通り」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、鋼の首輪、黒Tシャツ、モスグリーンのカーゴパンツ、革の突っ掛けサンダル、シルバーネックレスとバングルとリング>
ヨキ > (大通りに面したビルの隙間。ごく細い路地にほんの一歩入ったところで、壁に背を預ける形でしゃがみ込んでいた。
 郷に入らば郷に従え、の服装で、美術教師ともなればその顔に気付く者は今のところなさそうだった。
 自分の足に頬杖を突き、もう片方の手にはシャンパンゴールドのスマートフォンが握られている。
 頬に添えた手には吸いさしの煙草が抓まれている。持ち慣れた仕草で煙を呑み、ふっと吹き出す)

「……何度吸っても」

(この煙草というものは、よく分からない。
 別段咳き込むでもなかったが、浮かんで消えてゆく煙をぼんやりと眺めた)

ヨキ > (徐にスマートフォンの画面を開く。会話形式のメールアプリにメッセージを打ち込む。
 『異状なし』。‍ささやかな乱闘が散見されたにはせよ、今のところ取り立てて派手な出来事は、ない)

「…………。はあ」

(腕を下ろし、苦い顔で溜め息を吐く。
 常世公園で発生した、女子生徒に対する銃撃事件。
 その容疑者としてバロム・ベルフォーゼ・シインが出頭したと聞いたのだ。
 シイン。異世界からやってきた軍事講師――そして、『やなぎ』の上官)

「はあ……」

(先週、カフェテラスでやなぎと出会ったときのことを思い出す。

 『そうですっ!何か他に知っていますか?例えば……』
 『…その女学生がどこで入院しているとか。』

 何も疑いはしなかった。何ひとつ。
 『常世保健病院』。自分が彼に伝えた名前。

 やなぎが常世学園の一員として、四十万静歌と繋がろうとしていたのだと。
 そればかりを思っていた。その間にシインが介していたことを――知る由もなく)

ヨキ > (紫煙を呑む。吐き出す。また呑む。
 無為な考え事に浸るツールとしては、この煙草という嗜好品は悪くない。
 ずるずると滑るように、膝に顔を埋める)

「……ちくしょう」

(膝の隙間から、くぐもった声が漏れる)

「畜生めが……」

(男と女だとか、大人と子どもだとか、機械と人間だとか、教師と生徒だとか。
 今このときばかりは、その程度の身分はどうでもよかった。
 この島においては、もっともっと大きな括り)

「……異邦人が地球人撃って、……どーーすンだよ……」

(自分が『室長補佐代理』へ言って聞かせたように。
 この常世島の秩序は、薄氷の上に成り立っているに過ぎない。

 自分が獅南蒼二へ言って聞かせたように。
 自分たち異邦人は、いつまで経っても“招かれざる『まれびと』”に過ぎない。

 薄氷の上でステップを踏むように、異邦人たちは島のコミュニティへ恐る恐る足を踏み入れてきた。
 ときに歓迎されながら、ときに忌避されながら。

 いつその信用が欠けてしまうとも知れない日々を、手探りのうちに――
 学園の創設から、十年と少し)

「………………」

(有体に言って、落ち込んでいた。怒っていた。
 その一件がどんな影響を及ぼしたか、あるいは及ぼさなかったか。
 実際に見て聞いて確かめるには、この島はあまりにも広い)

ご案内:「落第街大通り」にサイエルさんが現れました。<補足:サボる保険医。灰色の短い髪、蒼い瞳、無精ひげ、白衣が特徴の40近いおっさん>
サイエル > 帰り道――

今日も上等な嗜好品を求めて
ふらふらと歩いていた。ゆっくりと湿気たタバコを咥えて
ゆらゆらと、煙を漂わせながら。

その時に聞こえた、うめき声。
いや、うめき声というにはもっと”小さかった”が。
しかし、この男の耳に届くには”十二分過ぎた”。

なにかおもしろい見せ物、だろうか――
それとも……?

「おや、どんな女の子が鳴いてるかと思ったら
 予想は外れて、立派な男性じゃないですかぁ」

やれやれと首を振りながら。
あっはっはっと、笑ってじょりっと顎を擦る。

「……どうかなさいましたかー? 具合が悪かったりします?」

白衣を揺らめかせながらゆっくりと――近づいて

ヨキ > (上から降る声に、呻き声を漏らす。
 んん、と低いその声は不機嫌に過ぎて、どう聞いても酔っ払いめいていた。
 じろりと顔を上げる。幽鬼のように暗い顔。
 眼鏡のフレームを押し上げる……
 そうして、やってきた男の顔に気付く)

「……ッあ、……。――サイエル」

(学園の保険医。顔を拭う。頭を振る。揺らめきながら立ち上がる。
 仕事中とはまるきり異なる、落第街のための服装。
 スマートフォンを尻のポケットに捻じ込み、頭を掻いて小さく笑う)

「君か。いや……具合は悪くない。
 街の見回りをしていて、今はその休憩を」

(教師相手に話をしながらに、構わず煙草を吸う。
 その煙たい匂いに交じって薄らと立ち上る、異国調のスパイシーな香水。
 手首に重ねたバングルがじゃらりと鳴った)

サイエル >  
「おや……誰かと思えば――」

くすりと笑う。別段どこにでもあるような目立たない顔だ。
静かに目を細めて、くつくつ、喉を鳴らした。

「そぉですかぁ? 身体が頑丈そうなのは知ってますが――
 こころはどうだかわかりませんしねぇ?」

お勤めご苦労様ですと、告げて。タバコをもみ消し、新しいのを口に。
ライターをカチッと鳴らす……火が出ない・
あれ? とか言いながら何度もカチカチ。

「……ひぃ、アリます? もらえたりしません?」

すみませんっと、頭を掻きながら。

「随分気合の入った格好ですね。いやぁ、おしゃれな事で」

ほぉっと関心したように

ヨキ > (サイエルの言葉に、眉を下げて笑う)

「ご明察。心は大時化だ。
 ……知ってるか。教師がひとり、女子生徒を撃って風紀に出頭したらしい。
 彼は異世界から派遣されてた。異邦人全体の評判に係わるとも知れん」

(それだけ言って、また溜め息。
 火を求められると、ポケットから取り出した金属製のオイルライターをかちんと開く。
 点った火を、サイエルの煙草へ向けて差し出す)

「気合は……それほどでも。
 落第街に入るならそれなりの格好をせねばならんと考えたのが二割。
 あとの八割はヨキの趣味だ」

(ほぼ趣味であるらしい。
 咥え煙草でサイエルを見遣って)

「そう言う君は?サイエル。
 このようなところにまで、往診でもしに来たのかね」

サイエル > あぁ――すみませんと

顔をそっと、火に寄せて灯す。
強い、きつい香り。きっといまどき吸ってないような
古い古い、銘柄。一行に改良もせず、貫いて。”まずい”と
時代に、乗れなかった故に評されてしまった――

「あぁ、あれですか。ええ、ええ。知ってますよ。入院患者は
一応、耳に入れてますからねぇ」

いいライターですね、なんてお世辞を口にしながら。

「――異邦人の評価。あぁ、それを口火に差別とか出ちゃうかもしれませんね。確かに」

事も無げに、さらりと。
へぇ、趣味――すごい趣味だ。おしゃれな男……

「いやぁ、モテる男は違いますね。私は、見ての通り……」

タバコを数点。もう売ってないような銘柄ばかり。
そして度数が強い酒も、数点。

「往診なんてとてもとても。サボりですよ、サボり
サボるのに必要な品を求めてはるばると、です」

ヨキ > 「だろう?
 我々『善良な異邦人』の努力が、水泡に帰したとしてもおかしくはない。
 ……さておき、あとの懲罰は財団と、風紀が是非を下すだろうからな。
 ヨキに出来るのは、変わらず善良な隣人で在り続けることだけだ」

(すん、と小さく鼻を鳴らす。
 『好い趣味だ』と呟いて、にやりと笑う)

「何しろ、モテた方が心地の良いのは当然だろう?
 ヨキは元々が犬だ。人間と、誰より女にモテるためなら、相応のことはする」

(サイエルの買い物を覗き込む。
 感心した声を上げて)

「君こそ、随分と上質なサボり方を心得ているようではないか。
 これはこれで、堪らぬ女も居るのではないかね?
 サイエルはカウンセリングの腕が、なかなか立つと聞いているからな」

サイエル >  
「あっはっは。ええ、ええ。そうでしょうとも
 我々教師にできるのは、変わらないですよ。いつまでも
 どこまでも――この島の中では……」

ふーっと、空に煙を吐いていく。
静かに静かに、揺蕩わせて。
そっと、善良な同僚に視線を合わせた。
嫌いじゃないようで何よりなんて、肩をすくめて。

「水泡にきそうが、そこで何かを起こしてしまえば
 それこそ、軋轢になるでしょうしね。理性的で――少し心配ですね?」

ゆったりと、目尻が緩む。
じょりっと再び顎をさすりながら――

「えぇ、それはそうですが。そのためにキッチリできるというのは
 なかなか難しいものですよ……? ほら見て下さいよ。
 思ってはいますが、できてない前例が目の前に――」

そこで、世辞だかわからぬ言葉を投げかけられれば。

「よしてくださいよぉ、仕事は嫌いだし女は商売でしか寄って来ませんって。何も出ませんよ? あ、酒飲みます?」

ヨキ > 「……そうだな。
 君のように親切な地球人の在ることが、異邦人にとっては救いだ。
 異邦人同士が手に手を取り合って身を守り続けるには、聊か限界があるでな。

 …………。まったく途方に暮れるものだ。
 この一件を意にも介さず、地球人と異邦人の関係は揺らがずに済んだと……
 我々異邦人は、既にそれだけの地盤を固めてきたのだと、せめて信じたい」

(粗悪なネオンの派手な光に照らされた顔で、ふっと笑った。
 煙草を吸い終え、次の一本に火を点ける)

「勿体ないな。若い娘には、きっと君の造作の良し悪しが判らんのだろう。
 ヨキは美術教師だからな。下手な世辞は好かんよ。

 …………、酒。いいのか」

(抑えきれない笑いが、にやあ、と漏れる。
 ちらちらと酒瓶を見下ろして、取り分け強い一本を指差す)

「……それ。開けないか。
 つまみでも煙草でも女でも、いくらでも払う」

サイエル >  
「あっはっは!!!!」

大きく大きく笑って、タバコを噛み潰した。
何がおかしいのかお腹を抱えて。

「――数は、暴力。よく言ったものですね
 えぇ、もしかしたら私のように人種などというのに”無関心”である人間は少ないのかもしれません
 とりあえず、親切ではないですよ。私は。そんなものの以前に――」

”命”のほうが大事ですのでね

なんて告げて。にぃっと。鮫のような表情で。

「むしろ――壊れてもいいくらいの気持ちが必要かもしれませんよ?
 なんでしたっけ? 破壊と創造は表裏一体でしたっけ?
 壊れたものを直す力があるのだと、私は”今の異邦人”を信じたいですな
 よりよくしてくれると――」

壁に背中を預けて。静かに静かに。
そう願うように。

「あっはっは。ではありがたくお褒めを頂戴して
 その代金に、酒を出すことにしましょ?」

指された酒を、開ける。あいにく、上等な切子やグラスは持ってない。
だから――瓶のまま、渡した。

「どうぞ? モヤモヤとした気持ちを飲み干す感じで飲めるところまで」

ヨキ > 「権力も、秩序も、法も、『暴力』が知恵を得、姿を変えてきたものに過ぎない。
 ……命あっての物種というやつでな。
 命を乞う姿勢が結果的にヨキへの親切と映るならば、その真意は問わん」

(息継ぎをして、煙草を吸う。
 宙へ向かって煙を吹き出し、頬を掻く)

「……異邦人の流入と、異能の顕在化によって、一度壊れたようなものさ。この地球は。
 今はそれを築き直している段階なのだと、ヨキは考えている。

 壊れる前の地球の姿を、ヨキは知らん。
 ただ異邦人を信じているがよいと、さもなくばヨキのみぞ信じておれと――それだけだ」

(差し出された瓶を受け取る。
 片手に煙草、片手に酒瓶――見るからに裏通りの住人のような様相)

「ありがとう……馳走になる。
 だが独りというのは、どうにも寂しいな。
 ……『一緒にいかがかね』?」

(銀のリングを嵌めた左手の指先を、くるりと一回し。
 すると若葉が芽吹くかのように、手のひらにむくりと銀色が湧き出でる。
 銀色は円を描いて――猪口ほどの大きさの、二つの小さな酒器に変じる。
 そのひとつを、ほれ、とサイエルへ差し出した)

サイエル >  
「まぁ、そうでしょうな。知性がなければできなかったことでしょう……
 ほうほう――では……」

――先生を信じるとしましょう。そのほうが面倒じゃない

指で、タバコを咥えとんとんっと灰を落とす。
出てきた酒器――……

「そのほうが、サボれて。実に楽です」

それを受け取り便利ですねぇっと、目を見開く。
ではご相伴に預かって。なんて告げながら。

「まま、では一杯」

とかいいながら、器に清水を注ごうとする。

「みんなにして、仕事しすぎ何ですよねぇ。もっとサボればいいのに」

ヨキ > 「君がサボれて、それが君のウィットを富ませるのならば、ヨキはいくらでも君をサボらせてやりたいね。
 学園の運営に支障のない範囲――でな」

(笑いながら、注がれる酒に愉快そうに笑う。
 煙草を消し、サイエルに酒を注ぎ返してやりながら、乾杯もせずに自分の杯を煽り出す。
 猥雑なネオンの下、昼間の陽光でも浴びているかのように笑う顔は、至って自由だ)

「人間には煩いが多すぎる。
 獣にあるのは、ただ営みばかりだ。
 この十年と少し、ヨキは一度も『仕事』をしたことはないぞ。
 生徒を教えるのも、街を見回るのも、女に睦言を囁くのも――みな日々の営みに過ぎん。
 君がサボりを善しとすることと、たいした違いはないのさ。 

 我々はどうやら、自由の御旗の下にあっては同志らしい。なあサイエル」

(愉快そうに笑いながら、瓶と酒器を手にした両手を大らかに広げる)

サイエル >  
「やったー……って、えー……運営に支障出たら働かせるんですか……」

舞い上がって、バンザイしようとしてこぼしそうになった酒器を
おっとっとと、口をつけて啜る。
危ない危ないと内心冷や汗を書きつつ。
喉がいい感じに焼ける――

「いやいや、そんな。そこまで高尚なものではないですよ
 ええ。実に、先生らしくて素敵なお言葉だ。そんな風に
 飾って言えればいいんですけどね……私はそこまでこの口が動いてくれないもので」

相変わらず先生は、とても口が達者ですね……
と零しながら――
美術をしてるってかんじですと、付け足した。

「勉強になりますねぇ……」

ヨキ > 「はは、何を言うか。ヨキは学園に仕える忠犬ぞ。
 何事も程ほどにしておくがよい」

(杯を傾けながら、にんまりと笑む。
 ぺろりと唇をなめる舌は。正しく犬のように平たく大きい)

「ヨキの言葉は……嘘を吐かぬ代わり、辺り構わず火を点けて回るだけだ。
 奮い立つ者あれば、煩わしさを感じる者も居るだろう。喧嘩を売られたと感じる者も。
 いずれも正しい。ヨキは繋がっていたいんだ、この島や、島の者たちと。
 それがどんな形であれ」

(手酌で酒を注いで、また煽る。水のように)

「君だって、生徒たちの話を聞くのが役目だろう?
 ヨキはカウンセリングの手管を知らんのでな」

サイエル >  
「役目を果たしてるじゃないですか……同志ならもう少し、こう――
 甘くしてくださいよぉ?」

がくんっと肩を落としながら。
あぁ、困った困ったなんて、適当に言葉を吐いて。

「いいじゃないですが。孤高を気取っているよりもよっぽど
 いきものらしいですよ? 強くもあり、弱い感じが出てる先生――
 いやぁ、もてるなぁ。こりゃ、女が放っておかないなぁ……」

なるほどなるほどと頷いて。
実際、美術を嗜む男性として、寄ってくる人々もいるだろう。
そしてその才能に、胸躍らせるものもいるだろう。
しかし、女性の、人の心をつかむのはこの――

「いえ、サボるのが役目です、間違っちゃ行けませんよ?
 生徒たちの話をきくことなんかこれっぽっちも経験アリませんから
 片手で数えるくらいじゃないですかねぇ」

なんて、からからと喉を鳴らして。
同じように、煽って自分で継ぎ足した

ヨキ > 「ふふん。ヨキはサボりではなく、『自由』に対する同志だからな。
 学園に従うことが、ヨキの最たる習性であるぞ」

(ほとんど屁理屈だった。
 目を細め、嘯くように)

「女だけでは全く足りないな。
 ……いや、惚れた腫れたの話ではなくてな。
 男も女も、もろとも魅せねば満足出来ん。
 ヨキは我が侭な性分なのでな」

(冗談めかすようなサイエルの眼差しを、街灯に照らして透かし見るように覗いて)

「サボりを至上としながらに、それでいて学園に籍を置き続けている君だ。
 どこに爪を隠した鷹とも知れん。
 この学園の保険医は、どうにも油断がならなさそうであるからな」

サイエル >  
「……うげぇ……」

うんざりとしたように悲鳴を出した。
口でも勝てそうにない。

「ひぃ、そっちのケは全くありませんからね! いいですかー……
 ってあぁ、なんだそういう意味で。たまにじゃあ一緒にサボりますか―?
 バレたら大目玉ですけども。まぁそのへんはこっそりと」

なんて、誘ってみて。はぁ、参ったなぁと頭をかく。
いや、どうしてこうも男だろうが女だろうが
綺麗どころが多いんだか――

「やめてくださいよぉ……ほんと、そんな若く無いですから……
 突かれてもなにも出ませんって。ええ、出ませんともさ
 酒くらいしか!」

いやぁ、お酒美味しいなぁって言いながら速度が上がって
ごくりと喉をテンポよく鳴らして

ヨキ > (げんなりとした様子のサイエルに、くつくつと楽しげに笑う)

「当たり前だろう、ヨキとて男を好く趣味はない。
 サボるかどうかは別にしても……君は随分と好ましい。
 君の保健室は、さぞ居心地が良さそうだ。
 そのうち邪魔させてもらうとしよう」

(量を減らしつつある酒が、瓶の中で揺れてたぽんと鳴る。
 頬が赤くなることはないが、口調は常より僅かに明るんでいる。
 残りの酒をちょうど半分ずつ、互いの杯へ注いでやろうと)

「酒が出るなど、えらく羽振りが良いではないか?
 それならばヨキは、君をいくらでも褒めてやる。
 君の美点を、余すところなく見つけてやろうぞ。
 この異界のごとき常世にあって、老いも若きも関係あるものか」

サイエル >  
「はいはい……歓迎しますよ、我が城に
 しかし、あれですよー? 働けとか野暮なことはなしでおねがいしますよ
 私は今ので少し先生が苦手になりました」

注がれておっととと受け取って。
軽口を叩きながら、静かに立ち上がって。

「褒め殺しって知ってます? いいことだけでも人間は死ぬんですよ
 異邦のそれは知りませんが、地球では死にます。間違いなく」

ふぅっと、空を見上げて。
そろそろ、いい時間か。

「……大分、落ち着きました?」

にぃっと、笑みを深めて顎をじょりっとさすった

ヨキ > 「なに、ヨキとて持て成され方くらい心得ている。
 興を削ぐようなことは言わんよ……」

(『多分?』と、わざとらしく小首を傾げてみせる。
 最後の酒をいやに勿体ぶって飲み干して)

「褒めに褒めて高みに登らせ、いつの間にか崖の上よ。
 見晴らしがよいと喜ぶか、足を踏み外して死ぬかは、ヨキの知ったことではないなあ」

(平然として、悪びれもせずに。
 『旨かった』と礼を告げて、互いの酒器が空っぽになったことを確かめる。
 もう一度指を一回しすると、銀器は魔法のようにするりと縮み、氷が解解けたかのように忽然と掻き消える。
 顎を擦るサイエルへ向けて、半眼になって笑い返す)

「ああ、随分と気が晴れた。
 有難う、サイエル。ヨキの愚痴に付き合ってくれて」

サイエル >  
「もてなしもお忘れなく
 この国では、最中の下に小判をいれて差し出したそうですよ?」

くつくつと笑い。
続く言葉を聞けば、またうなだれて

「ひぃ、おっかない……子供を崖から落とすライオンですか
 実は獅子の類のそれだったりするんですか? 先生」

皮肉を交えて返して。
器が消えれば――

「いい、器でした。こちらこそ、酒がうまく飲めるものを
 貸していただけて、助かりましたよ――では……また学校で?」

ひらひらと、手を振りながら。短くなったタバコを灰皿に入れて。
そっと、シガレットを口にはさみながら。

「たまにはいいですなぁ、こういう日も」

ヨキ > 「任せておきたまえ。
 大判小判も思いのままだ……サボって横たわる君を、存分に扇いで心地好くしてやろう」

(獅子の類、と言われれば、犬の形をした肌色の耳をぴらぴらと摘んで揺らして笑う)

「さあ……少なくとも、ネコ科であったという意識はないな。
 それもまた、単なるヨキの趣味だと思うぞ」

(再び、にやり。
 ぱ、と耳から指を離して)

「どう致しまして。せっかく二人で居るに、独りで飲むのは忍びないからな。
 また付き合ってくれ……酒でも、煙草でも、それらを抜きにした会話でも」

(手を振り返す。
 職員寮と研究区、方角の異なるそれぞれの住居へ向けて)

「……必要さ。こんな日こそが。
 不穏と怪異に満ちるばかりの、現世に在りながら『常世』と銘打たれたこの島には」

(笑い掛ける。ではね、と短い挨拶を交わして別れる。
 歩き慣れた様子で――落第街の人波を刺激せぬほどの、軽い足取りで)

ご案内:「落第街大通り」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目。197cm、鋼の首輪、黒Tシャツ、モスグリーンのカーゴパンツ、革の突っ掛けサンダル、シルバーネックレスとバングルとリング>
ご案内:「落第街大通り」からサイエルさんが去りました。<補足:サボる保険医。灰色の短い髪、蒼い瞳、無精ひげ、白衣が特徴の40近いおっさん>