2015/08/24 - 20:54~23:48 のログ
ご案内:「食堂」に倉光はたたさんが現れました。<補足:『瞬間排撃』Tシャツ あたまがよわい 翼状突起 [乱入可]>
倉光はたた > 今日は居候先のヌシがいなかった。
どうしていないのかは、はたたの知る由もない。
ともあれ不在なら仕方ないし、こうして一人で食堂に来てみた。
どうやらここではおかねをつかうとご飯を食べられるらしい。
はたたは賢いのでそういうことも知っている。

きょろきょろと周囲を見渡しながら、カウンターへ。
おばちゃんが話しかけてくる。
そう、こういうとき注文するには、作法があるはずだ。
はたたは賢いのでなんて言うべきかしっている。

ばし、と自信満々に硬貨をカウンターにたたきつけた。

「めにゅーにあるものここからここまでぜんぶ!」

間違っていた。

倉光はたた > 『いやそれはないから』
とパートのおばちゃんに突っ込まれたので困ってぐるぐると頭を回していると、
お品書きを見せられたので、適当なものを指さす。
そうすると素うどんが出てきたので、それを持ってテーブルへと移動した。

だいぶはたたの歩く姿も堂に入ってきた。そろそろ人間を名乗ってもいいかもしれない。

「…………」
テーブル席に一人で座る。目の前にあるのは素うどん。
そして割り箸。
どうやらこの割り箸というのをつかって食べるらしい。
しかしこれでどうやって食べるというのだろうか。
ためしに割り箸を割らないまま丼に突っ込んでみる。
当然すくえない。

「…………????」

思わず背中の翼状突起がピンと立った。

倉光はたた > しかし。
ここでビリビリしてはいけない。
居候先の主にもむやみにビリビリしてはいけないみたいなことを
言われた気がする。
しゅん……と翼状突起が垂れ下がった。

がたん。
割り箸を手に立ち上がる。
そして他の席で食べている生徒へと接近していった。

『何あの子……?』
『この寮にいたっけ?』
『自販機と戦ってるの見た』

そんな囁き声も知らぬ顔で、箸を使って食事をしている生徒を
ガン見して回るはたた。
相手はかなり迷惑そうだ。

倉光はたた > 数分後。
はたたは素うどんの置かれた自分の席へと戻る。

「…………わりばし」

とりあえずこれが割り箸という名前のものであるということはわかった。
そして観察の結果、これはどうやら割って使うものらしい。

「…………!」

両手を割り箸にかける。
つまりこれを……こう!

  ベキッ!

「…………!!!!」

割れた。
もちろん失敗した。
片方の端が片方にくっついたまま、というだけではない。
片方が稲妻の落ちた若木のように真っ二つに避けている。
真似しようとしてもなかなかできないたぐいの過ちだった。

「う、うう……!!!!!」

ご案内:「食堂」にサヤさんが現れました。<補足:カーゴパンツ、Tシャツ、足袋と草履。>
サヤ > どうしよう……。今日は畝傍さんの分の夕飯は要らないということだったので、自分の分だけ料理するのも手間に思い、普段使わない食堂にやってきたサヤである。
そしてサヤは先程から、見慣れない、肩から突起の生えた少女をじっと観察して、迷っていた。
明らかに、割り箸の使い方というか、食事の作法を知らない様子だ。教えてあげたほうがいいのだろうか……。

おせっかい……にはならないと思う、このままではうどんも伸びてしまうだろうし……。
勇気を出して、そっと歩み寄り、声をかけた。
「あの……お箸を使うのは、初めてですか?よければ、お教え、しますけど……。」

倉光はたた > そもそも食器を使ってこの長くてのびのびしたものを
食べる必要などどこにもないのでは――?

はたたは唐突に悟った。
もう知らない! とばかりに手を丼の中に直接突っ込――
――もうとしたところで、歩み寄る存在に気づく。

「ん」
振り向く。

「オハシ……」
ぎゅっと引き絞られた唇。
無残な姿になってしまったそれを未練がましく両手で持ったまま、
近づいた少女へと懇願するような目で見つめた。
ちゃんと割れていたとしてもうまく扱えていたかどうかは怪しいところだ。

サヤ > 拒絶の言葉もなく、こちらを見るその目つきで、肯定の返事と判断する。

「あ、えと…その、今お持ちになっているのが、お箸です。」単語を繰り返されると、それの説明。自分もわからない単語が会話で出てきたら、それを繰り返すクセがあるので、同じと考えたのだ。

「ええと…でも割るのに失敗なされてますね、ちょっともったいないですけど、新しいのを…。」と、テーブルに置かれた箸立てから新しい割り箸を取り出す。
「いいですか、別れている方を持って、裂くように引っ張るんです。」パキリ、と軽い音を立てて割り箸が正しく2つに別れる。
拒否されなければ、無残な割れ方をした、相手の持っている箸を受け取って、自分が割った方を手渡すだろう。

倉光はたた > 「おはし……」
がくがくと首を縦に振って頷く。これはおはし。わりばしでもある。理解。

「…………!!」
見事に割れる箸。それを受け取って、魔法を目撃したかのように、目を見張る。
割り箸がちゃんと割れるのを間近で観察できたのはこれがおそらく初めてだった。

「はたた、も、やる」
今のを忘れまいとばかりに、はたたも箸立てに手を伸ばし、更に新しいのを数本手にした。
そして両手で持ち、今のサヤの手つきを模倣した。

  パキッ。

「おぉ……!」
割れた。見事に綺麗にふたつに。

  パキッ。
  パキッ。
  パキッ。
  パキッ。

「ぉぉぉ……!!」
どんどんどんどん割っていく――。

サヤ > 「お上手お上手」と相手が割るのを見て、小さく拍手をするが、次々と割り始めたのを見て
「あ、あ、一膳…ええと…ひ、一組で大丈夫ですよ。」慌てて、だがやんわりと止める。

「割るのは出来ましたね、次は持ち方ですけど……ええと、教えてたらうどん伸びちゃいますね……。」割り箸の割り方も知らない相手が箸の持ち方をすぐに理解して食べ始められるとは思えない。

「あの…お嫌でなかったら、私がうどんを持ち上げますから、それを食べるのはいかがですか、ちゃんと熱くないようにはしますから。」つまり『はい、あーん』の申し出、それが恋人同士でやるような行為だとはサヤは知らない、うどんが伸びる前に食べさせる方法が他に思いつかなかっただけだ。

倉光はたた > 「だ、だいじょうぶ」
何が大丈夫なのだろうか。ともあれサヤの制止には応じて、またがくがくと頭を振る。
非現実的な白色の髪が揺れた。
卓上には二つに割れたたくさんの箸が広がっている。

「ん……」
きっと箸はこう使うのだな、と思っているのかどうかはわからないが
割れた箸のうちの一膳を“グー”の形で握って食べようとしていたが、
サヤのさらなる提案に、ぽかんとした何も考えてなさそうな表情を向ける。

「(サヤを指差す)……が、はたた(自分を指差す)に、?」

サヤがそうするなら――ぱくぱくと口を開けて
持ち上げられたうどんに食らい付こうとするだろう。

サヤ > 「そうですそうです。あ、申し遅れました、私はサヤと申します。」やはり握り箸で食べようとしていた。私より身長も高いし、見た目は年上なのに、まるで小さな子供のようだ。何者なのだろう?

「お箸はこうやって持って。」先ほど自分で割った割り箸を正しく持って、見せる。
「こうやって食べ物を挟んで持ち上げます。」と分かりやすいようにゆっくりと、うどんを挟み持ち上げる。
「ふー、ふー。」まだ湯気を立てるうどんの息で冷ましてから「はい、あーん」はたたに食べさせる。

倉光はたた > 「さや」
もう一度サヤを指さして、名前を繰り返す。おぼえた。

「んっ」
差し出される箸の先に食らいついてングングとうどんをすすり、咀嚼し、嚥下する。
少女同士がうどんを食べさせあう微笑ましい光景――というよりは、
餌を投げられたコイが水面でパクパクがっついている情景が近いかもしれない。

「……」
その一連の所作が終わったら、今度は自分でも箸を手に取る。
サヤの手をじっと観察しながら、指を一本一本動かして、形にする。

「……あ、」
少し待つと、手がサヤと同じ形で箸を握る。
「…………!」
たし、たし、と、箸の先が合わさる。
「こう……!」
そこから先は早かった。
ひどくなめらかな動きで箸を持つ手が動く。
そうして、もともとそう量の多いわけではなかった
残りのうどんをどんどん平らげていく――。

サヤ > 「はい、サヤです。そちらは…はたたさん、でよろしいですか?」先ほど自分を指さしてはたたと言った。おそらくそれが名前なのだろう。

「あら……。」覚えが早い、たった一度見ただけで箸を使いこなしている。
あっけにとられて、瞬く間にうどんを食べつくす相手を見ている。

「す、すごい…!お見事ですはたたさん、こんな短時間で箸の使い方を覚えるなんて。」パチパチ、と小さく拍手。
感心しながらも、再び疑問があがる、一体この人は何者なんだろう。

「とても覚えが早いんですね、生まれつきですか?それとも、そういった異能をお持ちで?」

倉光はたた > 「くらみつ、はたた」
がく、と頷くように小さく首を前へ曲げ、かたい口調でそう発する。
自分がそう呼ばれる存在であることを、白い髪の少女は知っていた。
これでも、この常世学園に在籍する女生徒である――一応。

「?」
なぜそんなに覚えるのが早いのか、というサヤの疑問に――
はたたは、こて、と首をかしげる。
そしてしっかりと箸を握る自分の手を見る。
何か知らないものがそこにあるように。

「はたた、おぼえて、いた……たぶん」
首をかしげたまま、どこか他人事のように、自分の名前を言った。

サヤ > 「くらみつはたたさんですね、よろしくお願いします。」にこりと微笑み、軽く頭を下げながら、その口調に違和感を覚える。まるで、その名前に実感が無いような……。何か特別な事情がありそうだ。

「覚えていた、ですか……。」過去形の言い方、ということは、忘れていたのを思い出した、ということか?

「ええと……もしかして、はたたさんは、記憶喪失か何か…つまり過去の記憶を失くされているんですか…?」事情に踏み込む質問に、少し語気はが弱くなり、恐る恐るといったように聞く。
記憶喪失だとすれば、子供のような振る舞いも、すぐに箸を使えたことも、名乗る口調の違和感も納得できる。

倉光はたた > 「きおく……」
記憶そうしつ。
おぼえていたことをうしなうこと。
うしなう?

「なくしてない、ちがう」
子供がだだを捏ねるように首を振る。
じぶんは何もうしなってはいない。
「もらった、ばっかり」
こうして、いろいろ教えてもらって、得るものばかりだというのに。

はたた。倉光はたた。

そう呼ばれる存在は誰だというのか。

「…………」
無言のうちに丼を持って、口をつけてつゆを啜る。
他のテーブルの生徒がそうしているのを真似たのだ。

サヤ > 「そうですか、では失礼な質問でしたね。すみません。」目を閉じて、頭を下げる。
本人がそう言うのなら、きっとそうなのだろう。
こちらが知っているのは名前ぐらいのもの、否定する材料はないしそのつもりもない。
そして目を開けて、つゆを飲み始めた相手を、何も言わずに見守る。
この話はこれで終わり。

飲み終わりそうなのを確認したら「食べ終わったらあちらの棚へ食器を返すんです。その時、ごちそうさまと言うと礼儀正しいですよ。あと、食べ始める時はいただきます、です。」ルールと、マナー。先ほど見ていた限りでは、両方知らないようだ。だから教えておこう。口調も自然と、子供に教えるようなものになる。

倉光はたた > 「ん」

器を置く。つゆは飲み干され、すっかりカラになっていた。
頬にネギがついている。

「ん、ん、……ごちそうさま……ごちそうさま!」
言われるまま、がくがくと頷いて。真顔で、サヤに向かって繰り返し言った。声がでかい。
理解はできたらしい。
そして立ち上がり、丼を持って返却口へと向かった。
割りまくられた箸はそのまま放置してしまった。

一度サヤのほうを振り返る。
「サヤ、……あー――……」
その声に続く言葉を思い出せないまま、頭をバタンと一度下げて、そうして食堂を去っていく。
記憶そうしつの話はきっとすっかり心の見えない場所に追いやられてしまっていた。

ご案内:「食堂」から倉光はたたさんが去りました。<補足:『瞬間排撃』Tシャツ あたまがよわい 翼状突起 [乱入可]>
サヤ > 「ふふ」少しズレた理解が微笑ましい。口元を抑えて、小さく笑う。

「どういたしまして」あ、だけで終わった言葉。言いたいことを察して返す。
しかしいちいち動作が大きくて危うい、いつか頭をぶつけたりしないか心配だ。

去っていく相手の背中を見送ると、テーブルに散乱する箸を集める。とりあえず一膳は自分で使うとして、残りは持って帰って使おう。このまま捨てては木がもったいない。

そして、注文するために、カウンターへと向かって歩いて行った。

ご案内:「食堂」からサヤさんが去りました。<補足:カーゴパンツ、Tシャツ、足袋と草履。>