2015/08/28 - 21:02~23:37 のログ
ご案内:「大時計塔」にケイさんが現れました。<補足:白の配色が多い三毛猫>
ケイ > 「にゃあ」
猫が一声。
いつもの、だれか。白いフードを被った少年が、いつも通りに。
胡坐をかいて座る場所へ我が物顔で座り込み。
誰もいない、時計塔の屋上。
どうやって入り込んだのか、分からないそこで。
空に花が咲く時間を。
悠々と待っていた。
ケイ > 3日目。
しいていうなら、この状態は、3日目である。
以前にように、半強制的になったものでなければ。
自分の意思で。自ら。この状態になった、という話。
まぁ、この島であれば。――が猫に変わるなど。
そこまで驚くような話ではないのかもしれないが。
まるで猫。ほぼ、猫。
見た目からすれば、それは猫だが。
どことなく。人間臭さを感じる、そんな仕草で。
後ろ足で、顔の辺りをかいた。
ケイ > 理由なら、少しだけある。
あの時の、屋上での会話。
自分は猫ではない。猫でないなら――猫になったら、それは、猫であるのか。
哲学的なものでもなんでもない。
結論から、言ってしまえば。
――やっぱり、自分は猫にはなれない、というだけ。
何処にいこうとも、結局ここに帰ってきてしまう。
3日間、何も食べていなかった反動か。
少し。いや、大げさに言ってしまえば。
とてつもなく、お腹がすいていた。
ケイ > 自らの、袋小路――いや、それは本当に、外に出ようとしているのか?
な悩み――いや、それは本当に悩みに値するのか?
なんて、一瞬で置き去りにされるような。
ただの肉体的欲求。
だから、少しだけ。
また、気分が楽になった。
「…………………にゃ」
今鳴いた声に。
お腹がすいた、そういう響きがあらわれていることを。
否定できそうにないぐらいに。
ケイ > その鳴き声と同時に。
光。遅れて音。
小さい体では、その光でさえ痺れるような。
鳴き声は音にまぎれ。花が咲き。
一人満悦気に、ひどく人間臭い動作で、頷いた。
この特等席に近い場所に、誰も来ないなんてもったいないな、とでも思いながら。
ご案内:「大時計塔」に奥野晴明 銀貨さんが現れました。<補足:《軍勢》を操る物憂げな少年。夏の制服姿>
奥野晴明 銀貨 > ぱ、と夜空に大輪の花火が咲き誇ると真っ暗だった時計塔一体も一瞬明るく照らされる。
その瞬間先ほどまでいなかったはずの人影が花火に照らし出されるように現れた。
花火が空に上がるたびにその少年の影が後ろにするりとのびる。
猫からは少し離れて目を細めて夜空を見上げる。
「こんばんは、きれいだね」
花火の破裂する音の合間にそう小さく猫に呼びかけた。にゃあお、とからかうように鳴きまね。
ケイ > 色鮮やかな花。この瞬間に置いて、先程の。空腹感すら置き去りにして。特等席。一歩、二歩、駆けだせば空へ飛び出しそうな位置。
耳がピクリと揺れる。
ひどく人間臭いその猫は。
ひどく人間臭い動作で体をゆらし。
そして、ひどく。それはとても。猫の声で。
「…………にゃー」
振り返りながら、それは、まるで笑った、かのように。
奥野晴明 銀貨 > 「隣、いいかな」
そっと猫に歩み寄る。人ひとり分開けたそこに座り込むと同じように空を見上げる。
猫の人間臭いしぐさには相変わらず整いすぎた笑みを向ける。
猫の視力ならこの夜闇でも見えるだろうか。
「君は花火が好きなのかな。猫はみんな、ああいうひどい音がでるものを嫌うかと思っていた」
相手が猫なのだから会話なんてできるはずもないのにまるで人間のようにそう聞いてみる。
ケイ > 「み」
知らない人だ。
そして、この3日間は、誰とも話していない。――それはそうだ。だって、猫――じゃない――んだもの。だから、気分良く鳴いた。
この姿は猫であるならば。
整いすぎた笑みに警戒を持つ必要はない。
「にゃ」
花火が好きだ。ともいえるし。ただ、そういう気分だった、ともいえる。
人ではないし、猫でもないのだから。言葉を発せない不便さを、心地よく思いながら、否定か、肯定か。そのどちらとも。言葉が通じてるとも見える様に。ゆらゆらと、首を横に振った。
奥野晴明 銀貨 > 愛想よく鳴いて相手をしてくれる猫に口元を緩める。
そう、とだけうなずいて相手の言葉、鳴き声に相槌を打った。
別に動物の言葉が話せるわけではないし、何を言っているかなんて想像でしかわからないがなんとなくこうだろうという感覚だけで。
「中途半端なのだね。僕と同じだ。
花火、僕も好きだとも言えるし嫌いかもという時もある。
今日はなんとなく観に行きたい気分だったからついここまで来てしまったよ。
君もそんな気分だったのかな。猫ならここに立ち入っても怒られはしまいしね」
羨ましいな、などと茶化しながらまた一つ上がった花火にたまやーとゆるんだ声をあげた。
ケイ > 「み?」
相手の言葉の雰囲気に、少し首を傾げた。
まるで、この少年の雰囲気のように。
そう。自分が居なかったら、一人で、これを見たい気分だったのか、とでも。
――まぁ、人のことを言えないのだろうが。
そも。こんな、ただの猫の姿では、伝わるものも伝わるまい。
「みゃふ」
少し、悪戯気な雰囲気を出して、笑うかのように鳴く。
そう、キミとは違って、今の自分は怒られない、自由なのだと誇示せんとばかりに。
奥野晴明 銀貨 > 「生きているものにとって一人でいる時間は当たり前のように長いし、それが普通なのにね。
なぜか時折、こうやって人気がない場所に引っ込んでは一人になりたがる。
その癖一人では生きていくことすらままならない。生きるということはかくも不自由だね。
今日は素敵な先客がいてくれたから、それはもういいんだけどね。
君が人間じゃなくてよかった、”今は”猫だものね」
首をかしげるしぐさにいちいち人間臭さと親しみを覚える。
「自由が好き?いいことだね、自らを由しとするのはなかなか勇気がいることだから」
そっと細く白い指先を猫の顎の下へと伸ばす。
軽くかいてやろうとでもいうしぐさ。
ケイ > 「みっ」
まるで、見透かされたかのような言葉に、少し身をはねさせた。
この場において。ある種。この姿、だからこその時間。
別に、人の姿であっても、それは変わらないのかもしれないが。
結果はひとつ。予測は無限大。とぼけるかのように。
「み」と一つ鳴いた。
――一人と一匹。または一人と一人。
そういう意味では、この両人とも。この場には、1つずつなのだろう。
まるで拒絶する様子もなく。
だからと言って、あるがままを受け入れるでもなく。
その指は、顎の下へ触れた。
本能的なものか、はたまた。それは、先程のそれより。
猫のような反応で。くすぐったそうに目を細める。
――か、と思えば、まるで、人間臭く。
小さく、本当に幽かに。花火の音に、一瞬で溶けてしまいそうな音で。
まるで、空腹を示すかのように、お腹をならせたのだった。
奥野晴明 銀貨 > 猫がびくりとはねるのを面白そうに眺める。
どうせ相手だって猫なのだ。まともな返答は今は期待していない。
相手にとぼけられればこちらもさぁ?という調子でそれ以上は触れないでおいた。
素直に触らせてくれたことに感謝をしつつ、のど元をあやすように撫でる。
こうしていれば本当にふつうの猫にみえる。もし先ほどのように人間臭さがあったら少し残念だったかもしれない。
花火の合間に聞こえた空腹を訴える音。おやと片眉を動かして猫を見つめる。
「困ったな、僕は普段食べ物を持ち歩いていないから今君に挙げられるものが何もない」
水ならあるんだけどね、と口元に手を寄せて考え込む。
「この花火が終わったら一緒に塔を降りて、コンビニに寄ってくれる?
そうしたら何かあげられるけど」
覗き込むように猫の顔を見てそう尋ねてみた。まぁでも猫は気ままな生き物だから一緒に来てくれるとは限らないけれど。
ケイ > どうやら。
相当この相手は、自分より色々な意味で、上手、なのだろう。
まるでため息をつくかのように一つ息を吐いた。
それならばきっと。――元に戻った時にだって、やり込められるのかもしれない。それは、それで。
次の、その時の再会。――また、あるならば。
是非にとも。
とでも言いたげな。首を大きく縦に揺らした。
現金な物、気紛れを気取ろうが、苦悩に彩られようが。
――空腹には勝てないのだ。
一つの、ある意味。絶対的な、くだらない結論。
愛想よく。もしくは――。
「にゃぁ」
一声、ひどく。機嫌よさげに、尻尾を揺らした。
もう一つ、ひときわ大きく。夜空に花が咲く。
奥野晴明 銀貨 > 「決まりだ。キャットフードが置いてあるかどうかは知らないのだけれど
現代の文明の行き着いた先、コンビニなら何でもあるだろうね。
好きなものを選んでいいよ、店員が君を見逃してくれたらだけど」
いたずら気にそう微笑んで、また視線を夜空に戻す。
それから先は黙って最後まで花火を観続けた。さまざまな色や形の花火が夜空に照らし出されては猫と少年の目を楽しませる。
そうして最後の一つが打ち上げられて、それきり空にしばらく何も打ちあがらなくなってからよいしょと名残惜しそうに腰を上げた。
「終わったかな。そろそろ行こうか、ええと……三毛猫だから”ケイ”でいいか」
名前がないのも不便だしね、なんて言いながらまったく論理が通じていない仮の名前を付けてみる。
時計塔から降りる階段へ向かい、猫へ手招きする。
それともいっそ、猫を抱いたままここから宙へとダイブして直接降りてしまおうかなんて考えたりもしたが、やめておこう。
暴れて取り落としてはかわいそうだ。
ケイ > 猫の姿故の、言葉の不自由さ。
やはり、それも――なんだか、一つの心地よさ。
だが、しかし。それすらを超えて見透かされているような感覚もまた。
「にゃは」
任せろ。そう鳴き声に込めたつもりで、空を見上げた。
ナツノオワリ。それはまだ先だろうが、一つの区切り。
そんな、一つの終焉である静けさを体に浴びた。
「……………みー」
本当に、見透かされてるのでは。とでも言いたげに、胡乱げな目つき。
猫では、それも形無しだろうが、手招きされて行かない道理もない。
だから。
一つ。
「みゃ」
――君のお名前は?
そうやって、鳴き声に込めながら。
奥野晴明 銀貨 > 頼りがいのありそうな鳴き声にうなずいて笑う。
「名前?」
そう聞かれたような気がしたから、足元まで歩いてきた相手を見下ろして静かに言った。
「銀貨だよ、おくのせいめい、ぎんか。長い名前だから猫みたいにシンプルではなくてごめん」
苦笑しつつ緩やかに階段を降り始める。時々後ろを振り返りながら猫がついてこれているか確かめながら、疲れたら抱いて下してやろう。
地上へと戻ったら最寄りのコンビニに入る。店員の目を鮮やかにごまかしながらケイを招き入れ、中ほどにあった陳列棚のキャットフードから彼自身に一つ選ばせる。
それをレジで支払ってから、外に出てしばらく歩いたのち一緒に買った紙皿に餌を入れて与えた。
「それじゃあね。また逢えたら餌をねだりに来ていいよ。
でも君は自由そうだから、きまぐれじゃないと逢えないかも」
そっとそうつぶやくともう夜もふけた道をのんびりと歩いて去ってゆく。
点々とともった街灯が、にわかに点滅し始める。
数度の瞬きののち、明るくなったそこに彼の姿はなかった。
ご案内:「大時計塔」から奥野晴明 銀貨さんが去りました。<補足:《軍勢》を操る物憂げな少年。夏の制服姿>
ケイ > 「み」「む」「みゃ」
無理やり、猫の、その声で名前を言ってみる。
屹度覚えた。ならば――まぁ、今度は。
空腹感にさいなまれ。猫の姿であるから、一つの自由を覚え。
だからこそ、ここ最近の鬱屈とした思考は、少しばかり奥へ。
花火はきっと綺麗だった。
気遣われている、と分かりながら。自信ありげに、堂々とついていく。
此処への道は、ある意味。家に帰る、それとも似ている。
それが、猫の姿でなければ、とはつくが。
一つのスリルを覚えながら。食べたことがない、キャットフード。
興味本位に、選ぶと。まるで、わらう。猫が笑いかける様に。
銀皿に乗ったそれ。初めて食べるそれ。
案外……悪くはなかった。
「にゃ」
「みゃ」
尻尾を一つゆらし。まるで、人間臭い猫で。猫のような猫で。
ありがとう。
そして、また会おう。
彼とは。正反対の向きに歩きだし――。
ご案内:「大時計塔」からケイさんが去りました。<補足:白の配色が多い三毛猫>