2015/08/30 - 19:16~05:39 のログ
ご案内:「路地裏」にシインさんが現れました。<補足:【乱入歓迎】黒衣を纏っており、頭には二本の白い角。背には一対の白い翼。尾てい骨からは白い尾を生やしている。>
シイン > 路地裏の"借りている"空き家から離れて、のんびりと路地裏を進む。
以前は突っ掛って来る相手が存在したが、今ではそんな人物も居ない。
軽く力を見せ付けただけでなんと臆病なのだろうか。
弱者は存在自体が許されない、そんな世界そんな場所だから。
納得も出来なくはない。そして目立つのは危険だ。
昨日に仮面の男から聞いた『部活』や『グループ』の話。
アレが本当だとしたら、目立つものは処理されるだろう。
少なくとも死にはしないが、面倒だ。
ようやく自由の身になれたのだから、今はまだ影や闇でしか生きられないとはいえ、下手に絡まられるはごめんだ。
それに"赤龍"と会う約束に"グランドマスター"との対価もある。
果たすまでは死ぬ訳にはいかない。
シイン > 昨日まで着てた『きぐるみ』は当然ながら空き家に置いてきた。
あれを着てると、何故だろうか。子供達の夢を護ることに必死になってしまう。
自家製で自分で言うのはアレなのだが、不思議なきぐるみだ。
今こうして歩を進めているのは、単に暇だから、それに尽きる。
ずっと家の中で本を呼んで過ごしていると、腐るのが見に染みて感じるのだ。
読書は有意義な時間ではあるが、それだけだと如何せんながらに駄目だ。
昨日の仮面の男が一人で呟いてた"意見を聞きたい"という言葉。
それに近しいが話し相手が欲しくなるものだ。
「なんせ暇だからな…。」
試しに寮にでも行ってみるか、直ぐにその考えは否決される。
絶対に混乱を招く。
ご案内:「路地裏」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、目深に被ったフード、鋼の首輪、拘束衣めいた黒ローブ、ベルト付の黒ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (人気のない路地に、こ、と引っ掻いたような靴音。
光を含んで増幅する獣の瞳に、瞳孔の奥から自ずから光を発する金色の焔が交じる。
黒い影と影が、鉢合わせて向かい合う。
立ち止まって、相手の顔を見る)
「――これは」
(大きな口の中で、ころりと飴玉を転がすような音がした。
実際に片頬を膨らませて、面白いものを見たとばかりに笑う)
「……バロム・シインか。驚いた。
学園にはもう戻らぬと踏んでいたが……斯様なところで。
見違えたぞ。その姿、獣の身体でも移植されたか」
シイン > 「――おや」
そんな暇を持て余しながら、何処に行こうかと模索してた所に。
見知った顔が一人。
尾がゆらりと喜びを示したかのように動いた。
「これはこれは、ヨキ先生。
お久しぶりで、面と向かって話すのは初めてですか。」
此方も歩みを止めて、面と向かわせた。
教師に属してから一度だけ挨拶を交わしたが、会話の機会は無かった。
これは良い暇潰しになるだろう。
心から喜んだ。
「この姿は、まぁ事情がありまして、話せば長くなりますよ」
ヨキ > (目を細める。
相手の身体に新たに増えた部位ではなく、元からあったシインの顔を見定めるように。
瞬きのたび明滅する金色の瞳が、真っ直ぐに見ている)
「そうだな。
あればと思っていた機会はもう失われて、こうして別の形で巡ってきた訳だ」
(目を伏せて、手の甲でぐいと唇を拭う。
口の端に、目尻の紅とは異なる赤が小さく伸びる。
血の匂いがする)
「……うふッ」
(柔和な吐息を漏らす)
「ヨキには残念ながら、興味がないでな。
君がそのような身体になった経緯も……生徒を撃った理由も。
ゴシップ誌にでも売り込んだ方が、よほど真摯に話を聞いてくれるだろう。
君の部下が、学園に入る手筈を整えていると聞いた。哀れなのは彼だ。
……スクラップを免れて、君は何をするつもりで居るね?」
シイン > 真紅の瞳は逸れずに、ヨキの金色の瞳を映す。
薄い笑いを浮かべながら。
「ま、こんな場所で会うとは思いもしませんでしたがね。
貴方は此方側に来るような人に見えなかった。」
鉄の、血の、戦場で嗅ぎ慣れた匂いがした。
対面の教師から、ヨキの口からだ。
その血は眼の前の者の血か、それとも。
「興味が無いですか、残念だ。
聞けば涙を流してしまう感動話なのですが、いや、冗談ですが。」
実際は哀れな男の末路で感動なんて程遠い。
聞く気がないのならば話す必要はないだろう、話すだけ無駄だ。
「…で、やなぎが学園に?
つまりは生徒ですか、哀れかどうかは別として、いやはや行動力があるものだ。
私は私の成すべきことをするだけ、それだけですよ。ヨキ先生。」
ヨキ > 「此方側。ふふ。ヨキはどこへ行くつもりもないよ。
……二級学生の娘が、人から金を巻き上げてな。
残念だった。彼女はいい声をしていたから。
正規に昇格しようものなら、声楽部にでも入れてやりたかったが」
(口中で転がしていた塊を、前歯に柔く挟む。
血の雫も筋の肉片も舐めてこそげ取られた、白い人間の骨。
長い舌で巻き取って口へ含み、それこそ飴玉のようにばりばりと噛み砕いた)
「ヨキにあるのはどろどろの体液ばかりで、生憎と涙を持たんでな。
それに聞けば聞くだけ、ヨキの機嫌が損なわれるだけだろう」
(奥歯に挟まった骨の欠片を舌先で取り除きながら、小さく笑って)
「行動力か。……まともに人間であろうとしているだけの話だろう。
会ったときには気弱に見えたが……、芯から君の『共犯』でもなさそうだ。
彼にはまったく一本取られたよ。まんまと病院の名など伝えてしまったからな。
……成すべきこと、ね。
はは、悪巧みを明かす訳には行かんか。
それとも君の話を聞かなかったヨキへの、意趣返しかな」
(朗らかな顔をして、明るい声を漏らす)
シイン > 「はは、二級学生か、なるほど。
どうやらヨキ先生。私は貴方の事を勘違いしてたようだ。
その生徒は貴方に対して、最後にどんな声を向けましたか?」
その二級学生の事は全くと知らない。
名前も素性も声も、なにもかも知らない。
だから別に、二級学生がどうなろうと知ったことではない。
今の話からしてどのような結末を迎えたか。
用意に想像も出来た。
「機嫌が損なわれてしまいますか、それは残念です。
だけど私は聞きたい、好奇心から聞きたい。」
それでも貴方の口から聞きたい、と、笑みを返して。
「おや?まさかヨキ先生。
貴方が病院の名前を…それはそれは、貴方には御礼の言葉を送りますよ。
ま、それだけですが。
悪巧みなんて考えてませんよ。
私は約束を守り、対価を払わないといけない。
それだけです。」
嘘は付いていない。嘘は。
ヨキ > 「声?…………。さあ、どうだったかな。
最後の時間は、言葉らしい言葉をろくすっぽ交わさなかったから……」
(おとといの夕食のメニューでも尋ねられたかのように、遠い眼差しで首を傾げる)
「底辺の底の底のような学生だったから、抱くにも食べるにも肉付きが良くなくて。
公安や風紀の救いさえ待てれば、ヨキが美味いものをたらふく食わせてやったというにな」
(目を伏せる。腕を組んで、指先で顎を掻く)
「ヨキの務めは、日々の一要素に過ぎん。
……機嫌を損ねるというは、君の『身の上話』についてさ。
ヨキは後にも先にも、今だってえらく怒っているのさ、こう見えて」
(怒りとは程遠い、淡々とした語調。
片眉を上げて笑み、シインを見遣る)
「…………。
学校への忠誠には背くくせ、『約束』を守るのか。白々しいものだな。
君の部下も、『娘』とやらも、苦労するものだ」
シイン > 「そうですか、言葉も交わさずに捕食ですか。
捕食者としては何も間違ってないですが、いや、これが私の勘違いでしたら謝りましょう。」
非礼を働いたので謝りましょう、と。
「あぁ、そっちの方か。
勘違いだったようで、それに怒ってらっしゃっる。
ならば話さない方がいいでしょうな、これ以上に機嫌を損ねたら。」
"どうなってしまうのか"
小さく呟いた。何処か愉しげに。
「約束は守りますよ。約束とは守られてこそ約束ですから。
なに、苦労は掛けてしまうでしょうが、難なくと乗り越えるでしょう。
信頼をしてますからね。」
ヨキ > (くふ、とくぐもった笑い)
「ヨキは閨でも言葉を交わすのが好きなのだが、向こうがそうも行かなかったらしい。
ああとかいいとか、そんな具合で。
……ふふ、このヨキに非礼など詫びる必要もない。礼を正すべきは、ただ常世島に対してのみさ」
(楽しげに話しながら、ゆらりと首を揺らす。
蝋燭を振るったかのように、金色の残像が暗闇に伸びる)
「そう。まったくヨキは困っているのさ。
誰も彼もがこの島の在りように背き、疑念を抱きすぎては居まいか。
街は燃えるし委員会は襲われる。時計塔に忍び入る。生徒の身は害される。
どうして素直に従い続けることが叶わないのかと、ね。
君だってそうだ。
こう見えて、ヨキは信頼していたよ、君のことを。
機械ならば任に背くことはないだろうと……。
バグも同然だ」
(事情を聞かずして、“バグ”の一語に言い包める。
両手を広げると、袖口の金具や飾りが涼やかな音を立てた。
講義を行うように、こつりこつりと靴音を鳴らして、小さく一回り)
「……ふ、子を谷から突き落とすようなものか。
君の縁者は、君の罪とは直接関係がない。せいぜい可愛がってやるとしよう」
シイン > 「余程素敵だったのでしょう。
ま、私はこう見えて一度も"夜の"経験が無いので。なんとも言えないですが。」
さらりと、言うのだ。
それを恥じてるつもりは無い故に軽々と言えたのだろう。
「残念ながら貴方の言う通りですよ。ヨキ先生。
私はバグを抱えていた、だからこそ背いていた。
此処に、この島に来る前からずっと、ずっと。
学法を守らぬ生徒や暗躍する者と同じくね。
信頼を裏切ってしまったのは申し訳ない、だが私は背いたことに後悔はしてない。
それが私の道であり、導かれた道。
例えバグを抱いていた"私"が作った道だろうと。
選んだのは私だ。ならばそれに従うのが通り。」
コツコツと、ハイヒールの足が地面を叩く音。
それはヨキへ近付いていく証拠でもあり、背の翼を畳み邪魔にならぬように配慮をしつつ向かって行き。
「可愛がるのもいいですが程々にお願いしますよ。
貴方は、そう。思ってた以上に厳しそうだから。」
眼の前まで近付いて、淡々と告げるだろう。
ヨキ > (だろうな、とだけ短く答える。
シインの言葉を、細めた瞳でじっと見据えながら耳を傾ける)
「……ふうん。それが君の従う律で、君はそれに従うと。
――ヨキが怒っているのはな、シイン。
君が教師にして生徒を害したこと、それ自体ではない。
君がしたことは、いつか人びとの記憶から必ず薄れて、消える」
(歩み寄ったシインの、人ならざる瞳孔と向き合う。
低い声が、目の前の彼にだけ真っ直ぐに響く)
「……ヨキにとって、学園に通う者たちに貴賎などない。
すべて学園に従うか、そうでないか、だ」
(薄らと笑う)
「ヨキが本当に恨んでいるのは、君が投げ掛けた波紋だよ。
『異世界からやってきた、機械で造られた教師が生徒を撃った』。
……君の行いによって。
子を持つ母は怯え、異邦人を排さんとする者の心に火を点けるだろう。
一方で、『心持つ機械』を造ろうと心血を注ぐものたちは――
自分たちの発明を前にして、こういうはずだ。
『バロム・ベルフォーゼ・シインのような誤作動は起こしません』と。
……判るか。君の起こした波紋は、この島の在りようと進歩に『つまずき』を作った。
それはこの島の歴史においては、ごくごく小さな突起に過ぎんが――
後ろ向きの前進で成り立つ進歩ほど空しいものは、ない」
(笑みが消える。声が一段と低くなって、乾く)
「――ヨキはかつて、この島を子宮として産まれ直した。
この島は、母のないヨキの母だ。この島に生きる者みな、ヨキの同胞(はらから)だ。
ゆえに――君も、また。
誰が君を忘れようとも、ヨキは永劫君を記憶し、恨み続ける」
シイン > てっきり怒りの内容は害したことだと考えていた。
なんせ、今迄怒りを表してぶつけてきた者達。
その全てが生徒に銃を向けて撃鉄を起こし、重傷を負わせたこと。
だからこそ、驚きの表情を一瞬ながら見せた。
話を静かに聞いていき、決して間に入って邪魔はせぬようにと。
最後まで静かに。
真剣な眼差しを向けながら、聞き終われば一つ息を付かせて。
「――ヨキ先生、貴方はそうだな。
私よりもよっぽど機械的な人だ。
私は少々、機械と呼ぶには感情を持った時点で失格だった。」
「恨まれても結構。それだけのことを私はしたのだから。
母を害した行為を成した者に対して当然のことだ。
だからこそ、私は私が築いた罪を償おう。
例え許されなかったとしても、約束をしたからな。」
ヨキ > 「もちろん――彼女が死ぬような、あるいは障りを長く残すようなことがあれば。
ヨキは君や、君の部下や娘もろとも殺しに掛かっていたろう。
生徒を撃ったこと、それ『だけ』が怒りの原因ではないが――
それを含めて、ヨキは君を恨んでいるのだからな」
(機械的と評されたことに、ふっと笑って)
「ヨキほど人間味に溢れた教師は居るまいよ。
こんなにも博愛に満ちて、生きとし生ける者すべてを平等に愛しているというのに。
このヨキはただ、広範な視界で島の行く末を見ているだけだ」
(左手を伸ばす。
手袋に覆われてなお爪の尖った指先を、相手に突き付ける。
中指の先から、するすると音もなく金色の針が伸びて、シインの喉笛に触れないほどの距離でぴたりと止まる)
「ここは未来の規範となるべき街だ。共生、均整、融和に調和。
地球人も、異邦人も、機械も、異形も、男も女も生者も死者も、教師も生徒も。
――『みな視られている』。そう思え。
財団が、学園が、公安が、風紀が、街の人々が、このヨキが、そして君が。
互いに互いを見ている。どこで何をしようとも。
この島の空気を吸い、土に足裏が触れた時点で、ものみな常世の羊水の只中だ。
怒りは腹が減る。ヨキはこれ以上、怒ることをしたくないでな」
(冗談めかしながらでいて、にこりともせず言葉を続ける)
シイン > 「もしそうだったとしたら、私はそれを受け入れよう。
最も、ただ受け入れるだけでなく抵抗はさせて貰うがな。
抗うまでがセットの内容さ。
あとは娘のことだが、何かと娘娘と言うのはやめて欲しい。
"アレ"は、私の名を借りてるだけだ。娘と呼ぶには烏滸がましい。」
勝手に名前を借りて、勝手にやって来て、勝手に行動をしている。
そんな奴を娘と呼ぶには少々苛立たしい。
「それが機械的なのですよ、平等に生きとし生ける者の全てを愛すなど。
人間とは程遠い。人は全てを愛せない。平等に愛すなどもってのほか。
ま、此れ等の全てが私の持論ですけどね。」
くくっと笑いを見せて。
首に突き付けられた指先に動じもせずに、ただジッとして。
「視られているですか。
もし、もしもこの街が本当に未来の規範となるべき街だとしたら。
なんともまぁ。ははっ。」
笑いを抑えるために顔を手で覆い隠して。
それでも笑い声は漏れ聞こえる。
ヨキ > 「抵抗。ふふ、こちらはか弱い美術教師だとも。
寛大な手心を頼みたいものだ。
ほう、娘ではないと。
てっきり君のデータや機能を流用したものとばかり思っていたが……
別物か。それならそれで、安心していられる。
少なくとも、君の轍を踏むことはないだろうとな」
(シインの首元へ突きつけた針の指先は、彫像のように動かない。
その人とも機械とも異なるつくりの肌を、髪を辿って視線が滑る。
粘り気のある眼差しが、シインをの顎先からどろりと見上げる)
「このヨキが機械ならば、よほど全うな働きをするだろう。
誰をも愛し、誰をも叩き、誰もを愛さず、誰をも撃たん。
築かれゆく未来というのは、そうと目には見えんものだ。
学園が開かれて十年と少し――未だ揺籃の幼子よ。
地球の者とも、生物とも心身を異にするバロム・シイン。
君はこの常世島の在りようを、どう見るね?」
シイン > 「笑えない冗談だ。何処がか弱いのか。
か弱い美術教師が、そんな生徒など喰うかね?
か弱い美術教師が、私に指先の凶器を突き付けるかね?
そうだ、娘ではない。
言っただろう。経験をしてないと。
それに機械がな…子供を作れるわけがないだろう。」
至極当然のように言葉を紡いでいく。
どれもこれも当たり前で、誰が見ても、誰が判断しても当然で。
「そうか。
もし機会があるならば、なってみるといい。
本当に言葉の通りに出来るのか、私は無理だと断言しよう。
機械には無理だ。所詮は機械は"人"なのだよ。
人に創られた擬似的な。人であるが故に、決断を鈍らせ過ちを生む。」
だからこそすべてをあいせない。
だからこそすべてをびょうどうにあいせない。
「突然笑って失敬。
だがな、私はこの島がとても未来の規範となるべき街とは思えないのだよ。
未だ年月が浅いが故に、先は不透明かもしれないが思わず。
この島の闇は深すぎる。そして濃すぎる。
決して払えぬ闇だよ。
それを深めてるのは、私のような存在だがな。
その点だけは反省をしよう、二度とそのような過ちは繰り返さぬ、と。」
ヨキ > (喉を鳴らして笑う。くすくすと密やかに、誘うように)
「君は軍人だろう、シイン?こんな犬の一匹など、歯牙にも掛けないだろうに。
ヨキにあるのは、図太い神経と丈夫な身体だけさ。
機械にだって……子どもくらい作れる。世界中の事物はすべて、先人たちの発明の子どもさ。
君に蓄積されたデータは、無数の子どもを産み出しうる。
戦闘能力を持った機械。教職を務める機械。感情を持った機械……
社会に生きるとはそういうことだ。連綿たる繋がりから独立できるものなど、居ない」
(シインの首元で、小さく鼻を鳴らす。
機械油の匂いを、はたまた獣の鱗の匂いを確かめるように)
「命に貴賎はない。だが命に付随した価値に軽重はある。
ヨキが二級学生を、不法入島者を食うのはそういうことだ。
そしてシイン、君にとってもそうだったんだろう?
君が撃った『四十万君』に――軽きを、あるいは重きを見出したから。
鈍い決断力に、生徒を撃つような真似が出来るとは思わない」
(にたりと嗤う。日の差す学園ではおよそ見せない、裂けるように大きな口)
「闇が深いと?ふふ、全く心安らぐ話ではないか。
光差さぬ闇が齎すのは、深く心地のよい眠りの安寧だよ。
それこそこの島が母たる所以だ。
このヨキは母から産まれたことがない、だがヨキを産んだこの地に安らぎを覚えるならば、それは母の胎の闇に違いないのさ。
機械に愛や感情など無駄だ、バロム・シイン。
『二度と過ちを繰り返さない』と―― 目を醒ましてくれてうれしいよ。
我々はこの島の子どもにして、歯車だ。
我々がどれほど何を為そうとも、島が未来へ歩む道程で吐き捨てた計算の、一結果に過ぎない」
(指先から針が引っ込む。
シインの眼前で深く昏く微笑んで、その肩を叩く)
シイン > 「軍人は超人ではない。
時にしてたかが犬一匹に襲われて喰われてしまうのだよ。
私にはな。ヨキ先生。貴方が"犬"にはとてもじゃないが見えない。
犬と呼ぶには少々…いや、静かに刃を研ぎ澄ませ過ぎている。」
まるで犬の形をした化物と言う。
ハイヒールのおかげか、ほぼ彼とは同じ身長だろう。
同じ目線の位置する彼に、黄金の瞳を注視して。
「ヨキ先生。私は既に"機械"ではないよ。
だから蓄積されたデータは回収できない、とても残念だがな。」
なんせ今は龍になってしまったのだから。
「よくまぁ、そんな顔を見せれたものだ。
あの時の私はな、幻影を追ってた。幻影に惑わされて撃ってしまったのだよ。
何度と繰り返しに会話と出会いを重ねていく内にな。
殺すつもりは"最初"から無かった。そこに在ったのは命の軽重でもない。
いつまでも未練を残した鈍い愚か者の愚かな行為に過ぎない。」
結局自然と自分のことを話してしまったが、勝手に口から出てしまったのだ。
許せと言葉には出さずに、心の中で呟いた。
「なんともまぁ、私は私を狂ってると思ってたがな。
ヨキ先生、貴方も相当だ。闇を好む人など中々どうして居たものじゃない。
過ちは繰り返さないのは約束の一つだ。狂ってた、バグを抱えてた時とは違うのだ。
それならば再びと犯さないのが当然であろう?
――歯車、か。」
肩を叩かれ溜息を付かせた。
自分で思うこと事態が可笑しいが、よく彼が教師になれたものだ。
そう思わずにいられない。
ヨキ > 「刃。美しい形容をありがとう。
君にその刃を向けずに済めばいい。
その綺麗な靴底で薄い刃の上に立つような――
麗しく、背筋の伸びるような間柄になれたと思わんかね、我々は?」
(剣呑な言葉を並べ立てながらに、その表情はひどく穏やかだ。
機械ではない、という言葉に、眉を下げて肩を竦めてみせる)
「残念だな。その角が……翼が、そうさせたのかね。
だが人でも獣でも機械でもなくば、君はいずれでもない新しい生きものなのだろう。
この常世島に、鵺のごとき者らは多い。そうしてそのいずれもが興味深い」
(シインの独白に、我が意を得たりとばかりに笑む。
機嫌を損ねるどころか、楽しげに)
「未練、か。心を寄せた女の面影でも見たか?
そうだ、シイン。ヨキはこうやって君の言葉を望む。
ヨキから求められて語るでも、制されながら言葉を選んで語るでもなく、
君のうちから自ずと沸き立った言葉を。
……幻影か。君の顔を認識する機能が、狂っただけの話ではないのか。
相手の中に、引き金を引くほどの幻影を見た――
うらやましい。人を思うことの出来る君が」
(にやにやと緩んだ笑みのまま、すいとシインから離れる。
彼が吐き出した溜め息に、半ば感心しながら)
「息を吐くだに――本当に、『違う生きもの』になったらしい。
如何なものなのだね、生まれ変わった気分は?
シイン、君は今や、日の下で大手を振って歩ける訳でもあるまい?
ヨキは君に望むよ、君がこの落第街の秩序を守り、従って生きることを。
この落第街で、人が人を傷つけ、薬に浸して犯し、金を奪って食うことが。
光差す街には決して知られず、暗がりの中においてのみ完結する悪事――それが落第街の秩序だ。
ヨキは甚だ正気さ。この常世島に、心の底より従っているに過ぎない。
……闇に身を浸すは、何よりの安らぎよ」
ヨキ > (引いた足が、弧を描いて踵を返す。
人が舞い踊るかのような、筋力に統御された足の動き)
「――それではね。君の答えは、また次に。
愉しみとして、取っておこうではないか。
君のそのうつくしい首が落とされてしまう、その前に。
我々のこの会話を、それぞれの首の皮としようではないか。
それでヨキと君は、繋がっていられる」
(彼に放った恨み言と同質の、粘りつくような執着の言葉。
指先が、流れるようにひらりと振られる。
闇に溶けるような微笑みを浮かべて――
路地の向こうへ姿を消す)
ご案内:「路地裏」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、目深に被ったフード、鋼の首輪、拘束衣めいた黒ローブ、ベルト付の黒ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
シイン > 言葉を考えてた矢先だ。
彼は去ってしまった。少々、返事が遅すぎたか。
黒衣を引き上げて顔の半分を隠しながら、去った方向とはまた別の方へと。
彼は言った、答えはまた次に。
会話を首の皮として繋げようと。
「少し返答を練らせておこう、なに"直ぐに会える"」
歩みは始まった。
さて、どう"会おう"か。
答えは簡単だ。
彼を"追えばいい"
そして
"続けばいい"
その歩みは落第街の闇の中を追った。
カツカツとハイヒール独特の音を鳴らして。
ご案内:「路地裏」からシインさんが去りました。<補足:【乱入歓迎】黒衣を纏っており、頭には二本の白い角。背には一対の白い翼。尾てい骨からは白い尾を生やしている。>