2015/08/30 - 19:16~05:39 のログ
ご案内:「路地裏」にシインさんが現れました。<補足:【乱入歓迎】黒衣を纏っており、頭には二本の白い角。背には一対の白い翼。尾てい骨からは白い尾を生やしている。>
シイン > 路地裏の"借りている"空き家から離れて、のんびりと路地裏を進む。
以前は突っ掛って来る相手が存在したが、今ではそんな人物も居ない。
軽く力を見せ付けただけでなんと臆病なのだろうか。

弱者は存在自体が許されない、そんな世界そんな場所だから。
納得も出来なくはない。そして目立つのは危険だ。
昨日に仮面の男から聞いた『部活』や『グループ』の話。
アレが本当だとしたら、目立つものは処理されるだろう。

少なくとも死にはしないが、面倒だ。
ようやく自由の身になれたのだから、今はまだ影や闇でしか生きられないとはいえ、下手に絡まられるはごめんだ。

それに"赤龍"と会う約束に"グランドマスター"との対価もある。
果たすまでは死ぬ訳にはいかない。

シイン > 昨日まで着てた『きぐるみ』は当然ながら空き家に置いてきた。
あれを着てると、何故だろうか。子供達の夢を護ることに必死になってしまう。
自家製で自分で言うのはアレなのだが、不思議なきぐるみだ。

今こうして歩を進めているのは、単に暇だから、それに尽きる。
ずっと家の中で本を呼んで過ごしていると、腐るのが見に染みて感じるのだ。
読書は有意義な時間ではあるが、それだけだと如何せんながらに駄目だ。

昨日の仮面の男が一人で呟いてた"意見を聞きたい"という言葉。
それに近しいが話し相手が欲しくなるものだ。

「なんせ暇だからな…。」

試しに寮にでも行ってみるか、直ぐにその考えは否決される。
絶対に混乱を招く。

ご案内:「路地裏」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、目深に被ったフード、鋼の首輪、拘束衣めいた黒ローブ、ベルト付の黒ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (人気のない路地に、こ、と引っ掻いたような靴音。
 光を含んで増幅する獣の瞳に、瞳孔の奥から自ずから光を発する金色の焔が交じる。

 黒い影と影が、鉢合わせて向かい合う。
 立ち止まって、相手の顔を見る)

「――これは」

(大きな口の中で、ころりと飴玉を転がすような音がした。
 実際に片頬を膨らませて、面白いものを見たとばかりに笑う)

「……バロム・シインか。驚いた。
 学園にはもう戻らぬと踏んでいたが……斯様なところで。

 見違えたぞ。その姿、獣の身体でも移植されたか」

シイン > 「――おや」

そんな暇を持て余しながら、何処に行こうかと模索してた所に。
見知った顔が一人。
尾がゆらりと喜びを示したかのように動いた。

「これはこれは、ヨキ先生。
お久しぶりで、面と向かって話すのは初めてですか。」

此方も歩みを止めて、面と向かわせた。
教師に属してから一度だけ挨拶を交わしたが、会話の機会は無かった。
これは良い暇潰しになるだろう。
心から喜んだ。

「この姿は、まぁ事情がありまして、話せば長くなりますよ」

ヨキ > (目を細める。
 相手の身体に新たに増えた部位ではなく、元からあったシインの顔を見定めるように。
 瞬きのたび明滅する金色の瞳が、真っ直ぐに見ている)

「そうだな。
 あればと思っていた機会はもう失われて、こうして別の形で巡ってきた訳だ」

(目を伏せて、手の甲でぐいと唇を拭う。
 口の端に、目尻の紅とは異なる赤が小さく伸びる。
 血の匂いがする)

「……うふッ」

(柔和な吐息を漏らす)

「ヨキには残念ながら、興味がないでな。
 君がそのような身体になった経緯も……生徒を撃った理由も。
 ゴシップ誌にでも売り込んだ方が、よほど真摯に話を聞いてくれるだろう。

 君の部下が、学園に入る手筈を整えていると聞いた。哀れなのは彼だ。
 ……スクラップを免れて、君は何をするつもりで居るね?」

シイン > 真紅の瞳は逸れずに、ヨキの金色の瞳を映す。
薄い笑いを浮かべながら。

「ま、こんな場所で会うとは思いもしませんでしたがね。
貴方は此方側に来るような人に見えなかった。」

鉄の、血の、戦場で嗅ぎ慣れた匂いがした。
対面の教師から、ヨキの口からだ。
その血は眼の前の者の血か、それとも。

「興味が無いですか、残念だ。
聞けば涙を流してしまう感動話なのですが、いや、冗談ですが。」

実際は哀れな男の末路で感動なんて程遠い。
聞く気がないのならば話す必要はないだろう、話すだけ無駄だ。

「…で、やなぎが学園に?
つまりは生徒ですか、哀れかどうかは別として、いやはや行動力があるものだ。
私は私の成すべきことをするだけ、それだけですよ。ヨキ先生。」

ヨキ > 「此方側。ふふ。ヨキはどこへ行くつもりもないよ。

 ……二級学生の娘が、人から金を巻き上げてな。
 残念だった。彼女はいい声をしていたから。
 正規に昇格しようものなら、声楽部にでも入れてやりたかったが」

(口中で転がしていた塊を、前歯に柔く挟む。
 血の雫も筋の肉片も舐めてこそげ取られた、白い人間の骨。
 長い舌で巻き取って口へ含み、それこそ飴玉のようにばりばりと噛み砕いた)

「ヨキにあるのはどろどろの体液ばかりで、生憎と涙を持たんでな。
 それに聞けば聞くだけ、ヨキの機嫌が損なわれるだけだろう」

(奥歯に挟まった骨の欠片を舌先で取り除きながら、小さく笑って)

「行動力か。……まともに人間であろうとしているだけの話だろう。
 会ったときには気弱に見えたが……、芯から君の『共犯』でもなさそうだ。
 彼にはまったく一本取られたよ。まんまと病院の名など伝えてしまったからな。

 ……成すべきこと、ね。
 はは、悪巧みを明かす訳には行かんか。
 それとも君の話を聞かなかったヨキへの、意趣返しかな」

(朗らかな顔をして、明るい声を漏らす)

シイン > 「はは、二級学生か、なるほど。
どうやらヨキ先生。私は貴方の事を勘違いしてたようだ。
その生徒は貴方に対して、最後にどんな声を向けましたか?」

その二級学生の事は全くと知らない。
名前も素性も声も、なにもかも知らない。
だから別に、二級学生がどうなろうと知ったことではない。

今の話からしてどのような結末を迎えたか。
用意に想像も出来た。

「機嫌が損なわれてしまいますか、それは残念です。
だけど私は聞きたい、好奇心から聞きたい。」

それでも貴方の口から聞きたい、と、笑みを返して。


「おや?まさかヨキ先生。
貴方が病院の名前を…それはそれは、貴方には御礼の言葉を送りますよ。
ま、それだけですが。

悪巧みなんて考えてませんよ。
私は約束を守り、対価を払わないといけない。
それだけです。」

嘘は付いていない。嘘は。

ヨキ > 「声?…………。さあ、どうだったかな。
 最後の時間は、言葉らしい言葉をろくすっぽ交わさなかったから……」

(おとといの夕食のメニューでも尋ねられたかのように、遠い眼差しで首を傾げる)

「底辺の底の底のような学生だったから、抱くにも食べるにも肉付きが良くなくて。
 公安や風紀の救いさえ待てれば、ヨキが美味いものをたらふく食わせてやったというにな」

(目を伏せる。腕を組んで、指先で顎を掻く)

「ヨキの務めは、日々の一要素に過ぎん。

 ……機嫌を損ねるというは、君の『身の上話』についてさ。
 ヨキは後にも先にも、今だってえらく怒っているのさ、こう見えて」

(怒りとは程遠い、淡々とした語調。
 片眉を上げて笑み、シインを見遣る)

「…………。
 学校への忠誠には背くくせ、『約束』を守るのか。白々しいものだな。
 君の部下も、『娘』とやらも、苦労するものだ」

シイン > 「そうですか、言葉も交わさずに捕食ですか。
捕食者としては何も間違ってないですが、いや、これが私の勘違いでしたら謝りましょう。」

非礼を働いたので謝りましょう、と。

「あぁ、そっちの方か。
勘違いだったようで、それに怒ってらっしゃっる。
ならば話さない方がいいでしょうな、これ以上に機嫌を損ねたら。」

"どうなってしまうのか"
小さく呟いた。何処か愉しげに。

「約束は守りますよ。約束とは守られてこそ約束ですから。
なに、苦労は掛けてしまうでしょうが、難なくと乗り越えるでしょう。
信頼をしてますからね。」

ヨキ > (くふ、とくぐもった笑い)

「ヨキは閨でも言葉を交わすのが好きなのだが、向こうがそうも行かなかったらしい。
 ああとかいいとか、そんな具合で。

 ……ふふ、このヨキに非礼など詫びる必要もない。礼を正すべきは、ただ常世島に対してのみさ」

(楽しげに話しながら、ゆらりと首を揺らす。
 蝋燭を振るったかのように、金色の残像が暗闇に伸びる)

「そう。まったくヨキは困っているのさ。
 誰も彼もがこの島の在りように背き、疑念を抱きすぎては居まいか。
 街は燃えるし委員会は襲われる。時計塔に忍び入る。生徒の身は害される。
 どうして素直に従い続けることが叶わないのかと、ね。

 君だってそうだ。
 こう見えて、ヨキは信頼していたよ、君のことを。
 機械ならば任に背くことはないだろうと……。

 バグも同然だ」

(事情を聞かずして、“バグ”の一語に言い包める。
 両手を広げると、袖口の金具や飾りが涼やかな音を立てた。
 講義を行うように、こつりこつりと靴音を鳴らして、小さく一回り)

「……ふ、子を谷から突き落とすようなものか。
 君の縁者は、君の罪とは直接関係がない。せいぜい可愛がってやるとしよう」

シイン > 「余程素敵だったのでしょう。
ま、私はこう見えて一度も"夜の"経験が無いので。なんとも言えないですが。」

さらりと、言うのだ。
それを恥じてるつもりは無い故に軽々と言えたのだろう。

「残念ながら貴方の言う通りですよ。ヨキ先生。
私はバグを抱えていた、だからこそ背いていた。
此処に、この島に来る前からずっと、ずっと。
学法を守らぬ生徒や暗躍する者と同じくね。
信頼を裏切ってしまったのは申し訳ない、だが私は背いたことに後悔はしてない。

それが私の道であり、導かれた道。
例えバグを抱いていた"私"が作った道だろうと。
選んだのは私だ。ならばそれに従うのが通り。」

コツコツと、ハイヒールの足が地面を叩く音。
それはヨキへ近付いていく証拠でもあり、背の翼を畳み邪魔にならぬように配慮をしつつ向かって行き。

「可愛がるのもいいですが程々にお願いしますよ。
貴方は、そう。思ってた以上に厳しそうだから。」

眼の前まで近付いて、淡々と告げるだろう。

ヨキ > (だろうな、とだけ短く答える。
 シインの言葉を、細めた瞳でじっと見据えながら耳を傾ける)

「……ふうん。それが君の従う律で、君はそれに従うと。

 ――ヨキが怒っているのはな、シイン。
 君が教師にして生徒を害したこと、それ自体ではない。
 君がしたことは、いつか人びとの記憶から必ず薄れて、消える」

(歩み寄ったシインの、人ならざる瞳孔と向き合う。
 低い声が、目の前の彼にだけ真っ直ぐに響く)

「……ヨキにとって、学園に通う者たちに貴賎などない。
 すべて学園に従うか、そうでないか、だ」

(薄らと笑う)

「ヨキが本当に恨んでいるのは、君が投げ掛けた波紋だよ。
 『異世界からやってきた、機械で造られた教師が生徒を撃った』。

 ……君の行いによって。
 子を持つ母は怯え、異邦人を排さんとする者の心に火を点けるだろう。
 一方で、『心持つ機械』を造ろうと心血を注ぐものたちは――
 自分たちの発明を前にして、こういうはずだ。
 『バロム・ベルフォーゼ・シインのような誤作動は起こしません』と。

 ……判るか。君の起こした波紋は、この島の在りようと進歩に『つまずき』を作った。

 それはこの島の歴史においては、ごくごく小さな突起に過ぎんが――
 後ろ向きの前進で成り立つ進歩ほど空しいものは、ない」

(笑みが消える。声が一段と低くなって、乾く)

「――ヨキはかつて、この島を子宮として産まれ直した。
 この島は、母のないヨキの母だ。この島に生きる者みな、ヨキの同胞(はらから)だ。

 ゆえに――君も、また。
 誰が君を忘れようとも、ヨキは永劫君を記憶し、恨み続ける」

シイン > てっきり怒りの内容は害したことだと考えていた。
なんせ、今迄怒りを表してぶつけてきた者達。
その全てが生徒に銃を向けて撃鉄を起こし、重傷を負わせたこと。
だからこそ、驚きの表情を一瞬ながら見せた。

話を静かに聞いていき、決して間に入って邪魔はせぬようにと。
最後まで静かに。
真剣な眼差しを向けながら、聞き終われば一つ息を付かせて。

「――ヨキ先生、貴方はそうだな。
私よりもよっぽど機械的な人だ。
私は少々、機械と呼ぶには感情を持った時点で失格だった。」

「恨まれても結構。それだけのことを私はしたのだから。
母を害した行為を成した者に対して当然のことだ。
だからこそ、私は私が築いた罪を償おう。
例え許されなかったとしても、約束をしたからな。」

ヨキ > 「もちろん――彼女が死ぬような、あるいは障りを長く残すようなことがあれば。
 ヨキは君や、君の部下や娘もろとも殺しに掛かっていたろう。

 生徒を撃ったこと、それ『だけ』が怒りの原因ではないが――
 それを含めて、ヨキは君を恨んでいるのだからな」

(機械的と評されたことに、ふっと笑って)

「ヨキほど人間味に溢れた教師は居るまいよ。
 こんなにも博愛に満ちて、生きとし生ける者すべてを平等に愛しているというのに。

 このヨキはただ、広範な視界で島の行く末を見ているだけだ」

(左手を伸ばす。
 手袋に覆われてなお爪の尖った指先を、相手に突き付ける。
 中指の先から、するすると音もなく金色の針が伸びて、シインの喉笛に触れないほどの距離でぴたりと止まる)

「ここは未来の規範となるべき街だ。共生、均整、融和に調和。
 地球人も、異邦人も、機械も、異形も、男も女も生者も死者も、教師も生徒も。

 ――『みな視られている』。そう思え。

 財団が、学園が、公安が、風紀が、街の人々が、このヨキが、そして君が。
 互いに互いを見ている。どこで何をしようとも。
 この島の空気を吸い、土に足裏が触れた時点で、ものみな常世の羊水の只中だ。

 怒りは腹が減る。ヨキはこれ以上、怒ることをしたくないでな」

(冗談めかしながらでいて、にこりともせず言葉を続ける)

シイン > 「もしそうだったとしたら、私はそれを受け入れよう。
最も、ただ受け入れるだけでなく抵抗はさせて貰うがな。
抗うまでがセットの内容さ。

あとは娘のことだが、何かと娘娘と言うのはやめて欲しい。
"アレ"は、私の名を借りてるだけだ。娘と呼ぶには烏滸がましい。」

勝手に名前を借りて、勝手にやって来て、勝手に行動をしている。
そんな奴を娘と呼ぶには少々苛立たしい。

「それが機械的なのですよ、平等に生きとし生ける者の全てを愛すなど。
人間とは程遠い。人は全てを愛せない。平等に愛すなどもってのほか。
ま、此れ等の全てが私の持論ですけどね。」

くくっと笑いを見せて。
首に突き付けられた指先に動じもせずに、ただジッとして。

「視られているですか。
もし、もしもこの街が本当に未来の規範となるべき街だとしたら。
なんともまぁ。ははっ。」

笑いを抑えるために顔を手で覆い隠して。
それでも笑い声は漏れ聞こえる。

ヨキ > 「抵抗。ふふ、こちらはか弱い美術教師だとも。
 寛大な手心を頼みたいものだ。

 ほう、娘ではないと。
 てっきり君のデータや機能を流用したものとばかり思っていたが……
 別物か。それならそれで、安心していられる。
 少なくとも、君の轍を踏むことはないだろうとな」

(シインの首元へ突きつけた針の指先は、彫像のように動かない。
 その人とも機械とも異なるつくりの肌を、髪を辿って視線が滑る。
 粘り気のある眼差しが、シインをの顎先からどろりと見上げる)

「このヨキが機械ならば、よほど全うな働きをするだろう。
 誰をも愛し、誰をも叩き、誰もを愛さず、誰をも撃たん。

 築かれゆく未来というのは、そうと目には見えんものだ。
 学園が開かれて十年と少し――未だ揺籃の幼子よ。

 地球の者とも、生物とも心身を異にするバロム・シイン。

 君はこの常世島の在りようを、どう見るね?」

シイン > 「笑えない冗談だ。何処がか弱いのか。
か弱い美術教師が、そんな生徒など喰うかね?
か弱い美術教師が、私に指先の凶器を突き付けるかね?

そうだ、娘ではない。
言っただろう。経験をしてないと。
それに機械がな…子供を作れるわけがないだろう。」

至極当然のように言葉を紡いでいく。
どれもこれも当たり前で、誰が見ても、誰が判断しても当然で。

「そうか。
もし機会があるならば、なってみるといい。
本当に言葉の通りに出来るのか、私は無理だと断言しよう。
機械には無理だ。所詮は機械は"人"なのだよ。
人に創られた擬似的な。人であるが故に、決断を鈍らせ過ちを生む。」

だからこそすべてをあいせない。
だからこそすべてをびょうどうにあいせない。

「突然笑って失敬。
だがな、私はこの島がとても未来の規範となるべき街とは思えないのだよ。
未だ年月が浅いが故に、先は不透明かもしれないが思わず。

この島の闇は深すぎる。そして濃すぎる。
決して払えぬ闇だよ。
それを深めてるのは、私のような存在だがな。
その点だけは反省をしよう、二度とそのような過ちは繰り返さぬ、と。」

ヨキ > (喉を鳴らして笑う。くすくすと密やかに、誘うように)

「君は軍人だろう、シイン?こんな犬の一匹など、歯牙にも掛けないだろうに。
 ヨキにあるのは、図太い神経と丈夫な身体だけさ。

 機械にだって……子どもくらい作れる。世界中の事物はすべて、先人たちの発明の子どもさ。
 君に蓄積されたデータは、無数の子どもを産み出しうる。
 戦闘能力を持った機械。教職を務める機械。感情を持った機械……
 社会に生きるとはそういうことだ。連綿たる繋がりから独立できるものなど、居ない」

(シインの首元で、小さく鼻を鳴らす。
 機械油の匂いを、はたまた獣の鱗の匂いを確かめるように)

「命に貴賎はない。だが命に付随した価値に軽重はある。
 ヨキが二級学生を、不法入島者を食うのはそういうことだ。

 そしてシイン、君にとってもそうだったんだろう?
 君が撃った『四十万君』に――軽きを、あるいは重きを見出したから。
 鈍い決断力に、生徒を撃つような真似が出来るとは思わない」

(にたりと嗤う。日の差す学園ではおよそ見せない、裂けるように大きな口)

「闇が深いと?ふふ、全く心安らぐ話ではないか。
 光差さぬ闇が齎すのは、深く心地のよい眠りの安寧だよ。

 それこそこの島が母たる所以だ。
 このヨキは母から産まれたことがない、だがヨキを産んだこの地に安らぎを覚えるならば、それは母の胎の闇に違いないのさ。

 機械に愛や感情など無駄だ、バロム・シイン。
 『二度と過ちを繰り返さない』と―― 目を醒ましてくれてうれしいよ。

 我々はこの島の子どもにして、歯車だ。
 我々がどれほど何を為そうとも、島が未来へ歩む道程で吐き捨てた計算の、一結果に過ぎない」

(指先から針が引っ込む。
 シインの眼前で深く昏く微笑んで、その肩を叩く)

シイン > 「軍人は超人ではない。
時にしてたかが犬一匹に襲われて喰われてしまうのだよ。
私にはな。ヨキ先生。貴方が"犬"にはとてもじゃないが見えない。
犬と呼ぶには少々…いや、静かに刃を研ぎ澄ませ過ぎている。」

まるで犬の形をした化物と言う。
ハイヒールのおかげか、ほぼ彼とは同じ身長だろう。
同じ目線の位置する彼に、黄金の瞳を注視して。

「ヨキ先生。私は既に"機械"ではないよ。
だから蓄積されたデータは回収できない、とても残念だがな。」

なんせ今は龍になってしまったのだから。

「よくまぁ、そんな顔を見せれたものだ。
あの時の私はな、幻影を追ってた。幻影に惑わされて撃ってしまったのだよ。
何度と繰り返しに会話と出会いを重ねていく内にな。
殺すつもりは"最初"から無かった。そこに在ったのは命の軽重でもない。
いつまでも未練を残した鈍い愚か者の愚かな行為に過ぎない。」

結局自然と自分のことを話してしまったが、勝手に口から出てしまったのだ。
許せと言葉には出さずに、心の中で呟いた。

「なんともまぁ、私は私を狂ってると思ってたがな。
ヨキ先生、貴方も相当だ。闇を好む人など中々どうして居たものじゃない。

過ちは繰り返さないのは約束の一つだ。狂ってた、バグを抱えてた時とは違うのだ。
それならば再びと犯さないのが当然であろう?

――歯車、か。」

肩を叩かれ溜息を付かせた。
自分で思うこと事態が可笑しいが、よく彼が教師になれたものだ。
そう思わずにいられない。

ヨキ > 「刃。美しい形容をありがとう。
 君にその刃を向けずに済めばいい。
 その綺麗な靴底で薄い刃の上に立つような――
 麗しく、背筋の伸びるような間柄になれたと思わんかね、我々は?」

(剣呑な言葉を並べ立てながらに、その表情はひどく穏やかだ。
 機械ではない、という言葉に、眉を下げて肩を竦めてみせる)

「残念だな。その角が……翼が、そうさせたのかね。
 だが人でも獣でも機械でもなくば、君はいずれでもない新しい生きものなのだろう。
 この常世島に、鵺のごとき者らは多い。そうしてそのいずれもが興味深い」

(シインの独白に、我が意を得たりとばかりに笑む。
 機嫌を損ねるどころか、楽しげに)

「未練、か。心を寄せた女の面影でも見たか?
 そうだ、シイン。ヨキはこうやって君の言葉を望む。
 ヨキから求められて語るでも、制されながら言葉を選んで語るでもなく、
 君のうちから自ずと沸き立った言葉を。

 ……幻影か。君の顔を認識する機能が、狂っただけの話ではないのか。
 相手の中に、引き金を引くほどの幻影を見た――
 うらやましい。人を思うことの出来る君が」

(にやにやと緩んだ笑みのまま、すいとシインから離れる。
 彼が吐き出した溜め息に、半ば感心しながら)

「息を吐くだに――本当に、『違う生きもの』になったらしい。
 如何なものなのだね、生まれ変わった気分は?

 シイン、君は今や、日の下で大手を振って歩ける訳でもあるまい?
 ヨキは君に望むよ、君がこの落第街の秩序を守り、従って生きることを。

 この落第街で、人が人を傷つけ、薬に浸して犯し、金を奪って食うことが。
 光差す街には決して知られず、暗がりの中においてのみ完結する悪事――それが落第街の秩序だ。

 ヨキは甚だ正気さ。この常世島に、心の底より従っているに過ぎない。
 ……闇に身を浸すは、何よりの安らぎよ」

ヨキ > (引いた足が、弧を描いて踵を返す。
 人が舞い踊るかのような、筋力に統御された足の動き)

「――それではね。君の答えは、また次に。
 愉しみとして、取っておこうではないか。
 君のそのうつくしい首が落とされてしまう、その前に。

 我々のこの会話を、それぞれの首の皮としようではないか。
 それでヨキと君は、繋がっていられる」

(彼に放った恨み言と同質の、粘りつくような執着の言葉。
 指先が、流れるようにひらりと振られる。
 闇に溶けるような微笑みを浮かべて――

 路地の向こうへ姿を消す)

ご案内:「路地裏」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、目深に被ったフード、鋼の首輪、拘束衣めいた黒ローブ、ベルト付の黒ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
シイン > 言葉を考えてた矢先だ。
彼は去ってしまった。少々、返事が遅すぎたか。

黒衣を引き上げて顔の半分を隠しながら、去った方向とはまた別の方へと。
彼は言った、答えはまた次に。
会話を首の皮として繋げようと。

「少し返答を練らせておこう、なに"直ぐに会える"」

歩みは始まった。

さて、どう"会おう"か。
答えは簡単だ。
彼を"追えばいい"

そして

"続けばいい"

その歩みは落第街の闇の中を追った。
カツカツとハイヒール独特の音を鳴らして。

ご案内:「路地裏」からシインさんが去りました。<補足:【乱入歓迎】黒衣を纏っており、頭には二本の白い角。背には一対の白い翼。尾てい骨からは白い尾を生やしている。>