2015/09/04 - 20:23~01:28 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に鏑木 ヤエさんが現れました。<補足:濁ったクリーム色の髪に鮮やかな紫色の瞳。七分袖の赤いワンピースに薄いタイツとストラップシューズ。>
鏑木 ヤエ > (ずー、っと。
音を立てて残り少なかったアイスミルクティを啜った。
ストローは随分と噛まれて楕円を描く。噛み癖があるらしい)
「あ、お替わりいただけますか。
スティックシュガー3本も一緒に。ハイ。オネガイします」
(夜過ぎのカフェテラス。
柑橘系の美味しいこの店は桃のパフェを新商品として売り出していた。
秋の訪れを感じさせる。季節がひとつ、切り替わり空気もやや明朗として。
読書の秋。食欲の秋。その両方を楽しみに足を運んだ。
甘味の新商品となればメニューの変わる初日に訪れるのが甘党の嗜みだと思う)
(濁ったクリーム色のもこもこの羊のような髪。
ボルドーの秋色の七分袖のワンピースに薄手のタイツ。
それから鮮やかな紫水晶を思わせるような瞳を爛々と輝かせて彼女はそこにいた)
鏑木 ヤエ > (───なるほど)
(二人席の並ぶ列。
自分の両隣には女の子同士とカップル。
自分の前には当然誰もいない一人寂しいおひとり様だが、それ以上に。
彼らの話が彼女にとっては非常に興味深かった。
盗み聞き。お世辞にもマナーがいいとは言えないがそれを知る者は誰もいない)
(自分のCTFRAランクが上がった、だとか魔術の評価がそこそこよかった、とか。
そんな他愛もない世間話。されど彼女にとっては一生できないであろう話。
故に、非常に興味深く。注意深く聞くに至った)
(異能と魔術。
変革を始めた世界の中では幾らかアタリマエと判断されるようなもの。
この常世島に於いてはその水準は更に上がる。
当然それを専門に教える教師陣も、優れた能力を持つ人間が多ければこれもまた当然か。
───それと同時に。
持つ人間もいれば持たない人間もいる、という話。玉石混淆とは上手い話で。
異能が天性の才だとすれば、神様から送られた贈り物であれば魔術はそれと対照的に。
獅南蒼二の述べたとおりに誰でもその贈り物に手を伸ばすことが出来る。
いうなれば宝石の原石とその宝石の人造物。
同じなのは、)
(やえは原石にも模造品にすらなれねー訳ですけれども)
(ただそれだけ。
鏑木彌重は異能方面に於いても、魔術方面に関しても。
才能というものが紛れもなく皆無であり、救いようがないということのみ)
ご案内:「カフェテラス「橘」」にリビドーさんが現れました。<補足:黒い髪に、アメジストとエメラルドのような紫と緑のオッドアイ、黒いカーディガンを羽織り、頬に妙な模様。>
リビドー >
「仕事が長引いてしまったから此処で済ませるか、と思ったが……
はて、何かフェアかイベントでも有ったかな。」
(周囲を一瞥する。
夜過ぎだと云うのにも関わらず、混雑の兆しが伺える。
店員もその兆しを嗅ぎ取っているのだろう。ある店員が別の店員に支持を飛ばしている姿も見える。
近寄ってきた店員の一人お一人様と告げれば――
――"ご相席でも宜しいですか?"、と、声が掛かる。)
「……ん、ああ、ボクは構わない。」
(その旨を告げれば、店員の一人がヤエのもとへ。
――ご相席をお願いしても宜しいでしょうか? と尋ねただろう。
たどたどしい調子なのは、経験の浅い従業員なのだろう。あるいは性格故かもしれない。
そして断れば、別の席を探すのだろう。)
鏑木 ヤエ > 「相席?あぁ、構いませんよ」
(店員に言葉を返せばゆったりとした所作で自分の目前の席を示した。
存外混雑している店内にそういえば花金ですね、なんてどうでもいい思案を巡らせる)
「あ、白桃パフェもいっこ追加してもらっていいですかね」
(店員が寄ったついでに、と本日2杯目のパフェを注文する。
怪訝な顔を浮かべられたが構わないのだろう、特に気にする様子はない。
くすりと横の座席の少女が笑ったのに気付けば堂々と、かつ華麗に舌打ちをひとつブチかました)
リビドー >
(そう言えば、明日は土曜日か。
遊び倒す学生が小腹を満たすには丁度良いのかもしれないな。)
(……そんなとりとめもない事を考えながらも店員に連れられ、ヤエの座る席へ同席する。
途中で聞こえる盛大な舌打ちが一つ。原因は何だと考えれば、やはり自分か。
別の座席に座るヤエの事を笑う少女は意に介していない故に、そうなる。)
「む……混雑故の相席とは言え、邪魔をしてしまったのならすまないね。
出来る限りおとなしくしているから、大目に見てくれると嬉しいよ。」
(ヤエの眼を見て、軽い苦笑を返して告げればすぐに視線を外してメニューを取る。
オイルサーディンパスタとしようと手早く決めれば、近くに居た店員に声を掛け、注文を通す)
鏑木 ヤエ > 「ああ、スイマセン。
やえは別にアンタが嫌いだとか超鬱陶しいな一人でパフェ食いてえとか思ってませんので。
完全に癖みたいなモンですから気にしないでくださいね」
(生まれてしまった盛大な勘違いと全速力で勘違いが加速をし続けるその珍妙怪奇な空間に弁解を。
実にわざとらしいものだが構わない、一応謝ったし、と頬杖をついた)
「………、どーっかで見たことあるような気がするんですよねえ。
実は芸能人の方面だったりしません?やえにサインいただけません?」
(ジイ、と彼の色の違った双眸に視線を向けた。
「オイルサーディン中々うめーですよね」、とぼんやりと言葉を紡ぐ。
無表情のままカラコロと言葉を並べ、小鳥が囀るように加速度的に言葉の量は増えた)
リビドー >
「それは良かった。初対面で嫌われたらどうしようかと思ったよ。」
(態とらしくも気にするなと素直に受け取る事にする。
彼女がそう言っている以上、疑るものでもないし、そう言える胆力があるなら大丈夫だろう。)
「ははっ、芸能方面と言われたのは始めたかな。
そう見てくれる事は嬉しいけれど、残念ながらただの教師だよ。
お金にもならなければ、ステイタスにもならないさ。」
(宝石じみた双眼に視線が向けられれば、苦笑めいた微笑みを見せた。
「このダイレクトな油っぽさと塩気が好みでね」。紡がれた言葉には調子良く返す。
ヤエがそれに乗るのならば、他愛も無い談話に華が咲き始めるのだろう。)
「見たことがあるとすれば、教師をやっているからそれじゃないかい。
古代哲学を中心にした哲学やコミュニケーション学にあたる分野を講師のリビドーとして、担当させて貰っているよ。」
鏑木 ヤエ > 「なるほど、センセーでしたか」
(その言葉を聞けば納得したように幾度となく頷く。
他愛もないオイルサーディン談義は此処はさて置き次の言に継ぐ)
「やえも哲学はちょー好きですよ。
生憎取ってないんですよねえ、先ず取らなきゃいけない必修単位が中々に多いものでして。
2年連続留年のラクダイセーなんでね」
(「取りたい授業は多いんですけどねー」、とストローを噛みながら話を聞く。
運ばれてきた白桃のパフェに舌鼓を打ちながら、ふと思い出したように目を見開いた)
「リビドーってのは仮名でいやがるんです?
欲望、たあ中々に趣味のいいオナマエですが。本能でも構いませんがこれまた随分。
………、あ。やえです。どうぞよろしく」
リビドー >
「それは仕方ないとも。必修も多ければ異能や魔術に関連する科目も多い。
加えて異能や魔術中心とは言え底辺の学園と云う訳でもなければ学生として必要な学問を軽視している訳でもない。
そうなれば生徒も教師も中々哲学までは手が回らないものだ。だから、ボクが居れるのかもしれないな。」
(「時間割と身体には限りがあるからな。」軽いぼやきに一つ返して、烏龍茶でオイルサーディンの油味を濯ぐ。
口の中の不快感が消えれば、満足そうに軽く息を吐いた。)
「ん……ああそうだな。仮名だよ。
とは言え、此処では其れ以外の名前を持たないし、そう呼ばれ続けている。
本名の様なモノでも有るかもしれないな。名前ってのは、案外そんなものかもしれないな。
芸能人にしたってそうだ。芸名の方が本名より通りが良かったら、どっちが仮名か分かったもんじゃない。
……ふむ、やえか。確かに覚えたとも、宜しく頼むよ。」
鏑木 ヤエ > 「まあそんなモンですよねー。
やえはやえでありそれ以上でもそれ以下でもありやしませんが」
(口に白桃を運ぶ。異能や魔術中心、と聞けば幾らか苦い顔をした。
んー、と再び頬杖をつく)
「異能と魔術の所為で永遠にやえは二回生なんですよねえ。
それさえなければってたぶん二千回は思ってますよ、たぶんですけど。
まァ異能と魔術に長けたニンゲンのガッコウですからそんなモンだとは思いますけどねえ。
やえからしたら異能も魔術もバッチコイ、みたいな人らは全くの別の生き物に見えますよ」
(困ったように肩を竦めながらぼそり、と言葉を溢す。
完全に一方的な偏見。
異能を持たない人間と持つ人間。魔術の才がない人間とある人間。
両方とももたない──正確には持つもののメリットに成り得ない──人間からすれば。
努力で覆すことのできない差異はまず前提として彼女は受け入れた。
まったく別種のニンゲンだ、と。そうしていれば特に困ることも成績以外ではなかった故に)
「自分で名乗り始めたんなら中々に好い趣味してると思いますよ。
嫌いじゃねーですそのセンス」
(重く、何よりも深い溜息)
「………異能ってなーんなんですかねえ」
(ぼそり、また一つ疑問が転がり落ちた)
リビドー >
「そりゃまあ、キミはキミに違いない。
禅問答のようになってしまうが、やえがやえをやえと認識したのだからな。
やえのことを一番見ているやえが定義したものは、やえにとって一番正しい。
キミしかいない世界でも、キミ以外がいっぱいいる世界でも、きっとそれは変わらないかもしれないよ。」
(……甘そうな白桃を苦そうに食す。
その抑圧されたような光景を、ずっと眺めていた。
味覚よりも勝る感情、とでも云うべきか。
接すれば無意識的に感じる事の出来るような甘味は強い苦悩によって書き換えられている。
……今、彼女が食したパフェはどんな味だったのだろうか、と、興味が湧いた。)
「せめて魔術や異能の研究に興味が持てればな……
……その様子だと、あまりそのものが好きそうではないが、ふむ……」
(転がり落ちた疑問に相槌を打ち、少しの間を置く。
思考を回す。置いた間を使って、ゆっくりと疑問を拾い上げた。)
「ボクも色々考えた事はあるが、中々答えを絞れなくてね。
……炎を操る、心を読む、生物を創る、非生物を操る。果てには異界を開く。
引き起こす現象だけ見れば、キリがない程に多種多様だ。まるで魔法のような力だ。
更に言ってしまえこの学園に於いて多くの研究者が異能の研究をしているものの、打ち出す結果は割りとバラバラだ。
でも、そうだな――
――"コイツがこの異能を持っているのは何か納得できる"って思った事は、ないかい。
だからボクは、異能を『その人物の"空きや欠損を埋める機能』。具体的に言えば、心理的な渇望や欲求を満たす機能ではないか。
……そう考えた事があるけど、キミはどう思うかな? 良かったら、聞かせておくれ。」
鏑木 ヤエ > 「ははん」
(それはそれは楽しげに感嘆の溜息を洩らした。
そして問われたことに関しては自分なりに、それまたゆっくりと思考を巡らせる)
「………"コイツがこの異能を持っているのは何か納得できる"ですか。
解らなくはないですよ。人間不信で寂しがりなニンゲンが相手の心を読む異能を持っていたり。
飢えや渇きを満たす機能とあれば納得は出来るんですよね。
寂しいから人の胸中を知りたい。
情熱的な熱さを持つニンゲンが情熱じゃ飽きたらずに質量を持った熱を操る。
嘘吐きでニンゲンが怖い臆病者はそれを隠すためにいつしか本当のことしか言えなくなったり」
(異能《堕落論》。
ある種ただの自己暗示の究極形。
ただ「自分に正直になれる」だけの異能。
あってないようなものであると同時に、全く以て利益が存在しない異能。
空を飛べなければ相手の気持ちをわかる訳でもない。
「欲するところを素直に欲し、いやな物はいやだと言える人物である」というイメージを自分に植えるだけ。
それが鏑木彌重の、異能と呼ばれるものの正体。
ぼんやりぼんやりとした曖昧な言葉で彼に自身の異能をそれとなく伝えて)
「でもそうですねえ。
やえは何のクソにも役に立たない異能ですけど、それがやえの渇きを満たすっていうのは否定したいですよ。
やえは異能があって得をしたことは今迄の人生の中で一度もありませんし。
………、寧ろ乾きやがりますね」
(アイスクリームを口に含んだ。
ひんやりとして、未だ少し暑さの残る時期には中々悪くない。
掛かったストロベリーソースをぺろりとひとつ舐めた)
「異能というのは普通のニンゲンと比べて優位性を作りだすモノである、と思っています。
ほら、あるじゃないですか。CTFRAだとか、そういったモノの基準。
アレの判断基準って『異能をどれだけ自在に、かつ安定して長時間制御できるか?』
『異能を用いて、人間そのもののポテンシャルをどれだけ上回る事ができるか?』
────、だったりするんですよ。だから異能そのものは優位性、だと思ってます」
(されど、それと相反する例が身近にひとつあった。
幾ら異能学の授業を受けたところで似たような異能を持つ人間は非常に稀だ、というのも学んだ。
───紛れもなくモデルケースは自分。鏑木彌重の《堕落論》)
「やえは制御なんてできやしねーですし『そういうもの』ですし。
ニンゲンのポテンシャルを上回るどころかフツーのニンゲンの出来るであろう
リップサービスができねー訳ですから。
優位性が存在するどころか寧ろマイナスのデメリットなんですよねえ……。
異能が存在しやがるせいでニンゲン以下なんですがなんとかならんモンですかね」
(周囲の人間にとって異能は行使するものだとすれば。
自分──鏑木彌重にとってはそれは全く違っていて、それも含めて自分の異常性が見える。
彼女にとっては異能は行使するものではない。故にただの枷だ。
治ることのない、治療不可能な不治の病と同等だ)
リビドー >
「そうとも。大抵、異能を得た人間はそれをこよなく愛しその力を己の一部として表現する。
居ない奴も要るが、それでも手足のように"活用"しようとするだろう。
何れにせよ、大なり小なり欲求を満たしている。寂しがりやは人の心を確かめて安堵する。
情熱家は己が信念の炎に転じて表現する。
裏切られる事を嫌う者は約束そのものを"私"だと表現し遵守させる。
罵られるような嘘吐きは己を隠す為に本当の事しか言えなくなる、か。益の薄い異能だな。」
言葉を反芻し、満足そうに 頷く。
・・・・・・・
最後の異能は聞き覚えがあるようなものではない。そして、やけに具体的だ。
続く言葉で"やえの異能"と見せるあたり、きっとそういうこととして扱っていいのだろう。
少々身構えたものの直ぐに調子を戻し、一通り聞いて、答えを返す。
「――空きを埋めるのでは無く、
過酷な環境に適応しようとして"付け足す"様に開花された異能もあるかもしれないな。
嘘吐きと思われるのが嫌だけど普通にやってもそれが出来ないから、
半強制的に正直を吐き出せるような機能を得る。と思えばそれらしく見える。
何故、益のない異能が生まれるのか。それを証明するとしたら、此れかもしれないか。」
ぼんやりと伝えられたものを受け取り、自分の考えをそれとなく返す。
だから何をすれば良い――のような説教じみた言葉は、出来るかぎり排した。
「必要なだけで欲望を満たすものではないから、乾きは満たされない。
環境に適応する為の"必要"を得る機能だから、使わないと行かず制御が出来ない。
だけどそいつにとって必要なものだから、歪に得てしまう異能もある。
生じるマイナス色が強いのは、必要だからと言った後ろ向きな理由であり、
そして空きを"埋める"ものではなく、付け足す為に歪になってしまうから――
――先程の論に、付け加えるとすればこうなるか。
あくまでも、ボクの経験や研究から今考えたものであるから、話半分に受け取っておくれ。」
異能そのものについては軽く締めくくるように言ってみせ、疑問や質問を投げ掛けない。
この話に踏み込めば、否が応にも彼女の信条やトラウマ――深い部分に足を踏み入れる事となる。
真っ直ぐ踏み込まず、迂回路を探す。
「おっと、そう言えばCTFRAだったか。
アレはもともとどれだけ社会貢献出来るか、みたいな側面もあるからな。
エリートによりエリートの利益の為に造られたエリートの基準みたいな所が有るから、どうしても優位性を見るものになってしまう。
――ボクとしては、ディレル・レモンシードのレモンシード・メソッドの方が好きだったりするぜ。
CTFRAよりは表現性重視だからな、アレ」
鏑木 ヤエ > 「やえは自分が何故此処にいるのか。
やえはなぜこんなクソほどツマンネー異能を抱えているのか。
やえにはそれを知る術は何一つ存在してやがらねーんですよ。
キオクソーシツだとでも言えば聞こえはいいですが何一つその理由を知らねーんです。
だから例え話の一つですよ。可能性自体は幾らでも存在しやがりますから。
あくまで一つの可能性を示しただけです。
でもそのハナシをそのまま丸のみするんならやえはとんでもなくツマンネー奴ですね。
過去のやえがどんなだったかなんて知りやしませんが」
(淡々と、なんでもないことを───現になんでもない話だが───を語る。
実に益の薄い異能。寧ろ不利益を生み出してくれるであろう異能。
それを抱えた、それに縛られ枷を嵌めた少女は小さく口元に三日月を浮かべた)
「ま、やえもほかの人みたいに便利な異能が欲しかったところですよねー。
人の心を読めるってなんですか。コミュニケーションを愚弄しすぎなんですよ。
炎を操る?───、縄文時代の人たちに謝れってハナシですよ。
羨ましいことこの上ねーですね」
(少々溶けだしたアイスクリームを口に含みながら会話は続く。
どろりと白いアイスクリームとストロベリーソースの描くマーブルは中々に幻想的で)
「やえの異能は行使するようなモンじゃねーですから。
世の中には制御できない一方的な胸中情報の受信や発信があるらしいですからね。
それもそれで不便そうですが、行使しない異能と行使する異能は大きく別だと考えますよ」
(もし目に見えて行使出来る異能であれば自分は数ある異能犯罪の一端にいたのだろうか。
前提として、自身は紛れもなく何らかの理由で二級学生である。
それでいながらも委員会街のラウンジで働き、また学費も稼ぐことが出来ている。
落第街の同じ二級学生はどうか。風紀委員の引き上げで正規学生に昇格した者もいれば様々。
異能犯罪の一端に席を置いていることも多々ある。
もし、自分が他者に影響を及ぼせる異能であるとすればその片棒を担いでいたのだろうか)
(ないものがあったとしたら、なんて想像は下らない以上の感想を抱けなかった。
ないものはないんだからいくら想像したところで手に入る訳もない。
故にこんな下らない話に時間を割くのは些か頭が悪いと言える。
思わず氷が溶けて水の混ざったミルクティを気分転換に啜った。またず、と音がした)
「ディレル・レモンシードのレモンシード・メソッド………?
どんなんでしたっけ、それ。
あんまりやえはベンキョー得意じゃねーんですよね。なんか聞いた覚えはありますが」
(故に、二年も連続で留年していることなぞ彼女は知る由もない)
リビドー > 「それでもつまんなくはないとも。
少なくとも、ボクは嫌いじゃないぜ。」
ちょっと格好を付け、冗談めかして告げる。
結局、自身も(恐らく)彼女も過去について何も知らない。
故に何とも言い難い。都合の良い風に想像した結果、の言葉だ。
「全く、それには同意をするよ。努力も無しに、とは言わないが――色々な要素をスキップしてスキルを習得するに近い行為だ。
心理学者や縄文人とは言わないが、おまんま食い上げと妬んでしまうマトモに努力した奴もいるかもな。
とは言え、何故こんな能力が世に溢れだしたんだろうな。丁度門が開いたり、魔物が現れたり、魔術が表に出たり――
色々思い浮かぶとは言え、全く、こればかりは哲学ではどうにもなりそうにないな。」
哲学と云うよりは、空想科学やトンデモ論説の領分か。
そう思えば、再び困惑気味な苦笑いが漏れる。
彼女が食すマーブル色幻想めいたパフェよりは、甘くない理由な気はするが。
「ああ。ボクも話には聞いた事があるな。常に周囲から胸中情報を受信、あるいは自身の胸中を発信する異能。
酷く使い勝手が悪そうだが強いな、強度が高ければ欲しがる奴はごまんと居そうだ。
確かに、行使しない異能と行使する異能は大きく別かもしれないか。」
"行使出来る"のなら、如何に使い勝手が悪くとも引き金を引くタイミングを見定め、効率的に運用する事は出来る。
それが出来ないともなれば、不本意な局面や意図しない局面の於いても行使される。
それが"機能"に因るものだとすれば、機械のバグや生体の癌に近しいような感想を抱く。
「不完全なもの、正しくないもの。ふむ……」
思考の一部が言葉として漏れる。
それにはた、と、気付けば気を取り直した。
「と、すまない。やえが居るのに関わず少々没頭していた。
レモンシード・メソッドはレモンシード博士考案のランク付けだな。
異能を好意的に見る傾向にあり、個性や強度を重視する傾向にあるからCTFRAより甘いと聞いたよ。」
鏑木 ヤエ > 「ははん」
(無遠慮に鼻で笑った。
本人は何ら気にした素振りも見せずにただ笑った)
「やえはやえの異能が嫌いですよ、こんなオニモツ。
異能がある種の病気であるならばこんなのはさっさと治してやりてーくらいです。
面倒臭い。これをやえの象徴として語るのは中々に嫌なモンです」
(続いた言葉にもしっかりと耳を傾ける。
反芻、咀嚼などという丁寧な表現でなくその言葉そのものを食らうように聴いて)
「まァ、妬んでしまうまともな努力したニンゲンが案外犯罪に手を染めるモンですよ。
───、教師陣にもいるんじゃねーですか。
異能よりも努力で手にすることが出来る魔術が大好きな中々ご機嫌なセンセーも居た筈です」
(あえて名前は出さない。されど伝わるかもしれない。
先日授業の終わりに少しだけ言葉を交わした教師。獅南蒼二をぼんやりと指して)
「だから異能を嫌う人たちがビョーキって言う気持ちも解るんですよ。
やえは未だ自身の異能が『有用』で『振るう』モノなニンゲンばかり見てきたものですから。
便利な異能を持たねーヤツの単なる妬みですけどね。
いや、先ずやえは別に異能も魔術もなくってよかったですね。男はステゴロですよ」
(既に空っぽのミルクティが注がれていた筈のそれを啜る。
相も変わらずにずずず、と音がするだけであるが)
「構いませんよ、思考するのはニンゲン含む知的生命の特権ですから。
存分に享受すればいいと思います。
甘いパフェは好きですけど甘ったれる心算はないので、やえは───」
(にこり。珍しく表情が動いた)
「やえは無能だと、持たざる者だと判定された方が些か気持ちいいですね。
それからなんでしたっけ。不完全に正しくねーものですか。
これまた哲学思考だ。欲望の君はどうお考えですか、知識欲が刺激されました」
リビドー >
(鼻で笑う彼女に見咎める素振りは見せない。)
(むしろ、笑ってみせるのならば上等だ。思慮深さとある種の胆力を彼女から見て取れば、こっそりと口元を緩めた。)
「異能が病気とは面白い事を言うじゃないか。
しかし、ふむ、そう云う見立てもあるのかもしれないな。
能力を持たない一般人が健康な人間の基準に置かれるのならば、
健康な人間にはない能力を持つ異能者は確かに病気だ。」
(やや真面目に、反芻するような口ぶりで言葉を紡ぐ。)
(また少し考え込んだものの、続く言葉にすぐ意識を戻す。)
「かもしれないなぁ。努力が報われなかったから何をしてもいい。
俺たちは酷い目にあった、だから酷いことをして良いんだ。そんな正当化をしてしまう輩も居るかもしれないな。
――ん、そういや確かにいたな。さいこが模擬戦をしたアイツか……獅南蒼二だったな。
ボクはあまり彼を知らないが、異能者には絶対しない講義があるって話は聞いたぜ。素敵に徹底しているものだ。」
(軽く笑ってみせて、そう評する。)
(逸話に関しては又聞き故に大した事は知らないが、確かにそのような教師が居た事は記憶している。)
(さて、今度会ってみようか。)
(同じ教師仲間だ。会えなくもないし、異能を持たなければ話し易くも在りそうだ。)
「有能且つ行使するからこそ病気、ってのも中々面白いものだ。その根拠を、もう少し詳しく聞いてみたいとも。
先にボクは異能が確かに病気とも共感したが、同時にキミが言及するような有益なものを齎す"増強"が病気と言う事には興味がある。
二言三言でも構わないから、聞かせて欲しいぜ。」
(人が異常を病気と評するのでなく、)
(人が"有益"の行使こそを病気と評する。その思惑が、少々気に掛かった。)
(妬みとも彼女は言ったが――)
「ははっ、キミはしっかりしているな。
ボクは結構甘えたくなる事もあるものでね、耳が痛い。
――ん、ああ。不完全に正しくないものか。纏まってない言葉だが良いかい。
まず、何を以って完全とするかもあるが、これは省こう。とは言え行き違いを感じたら言ってくれ。
とは言え、簡単っちゃ簡単だ。やろうとしてることは分かるんだが努力の方向性が間違っている、みたいなものだよ。
狙いや目的はある。が、それを達成する手段がおかしい。確かに機能こそは完遂するが、明らかに不利益や存在を出すと言えばいいのかな。
役に立たない異能だってそうだ。
或いは腐敗や平和を正す為に犯罪に手を染めて強引や誘拐や実験をしたり、落第街のような淀みと思う物を焼き払おうとする。
そう云う奴かな。完全に間違ってる訳ではないが、何処か間違ってる、みたいな奴さ。」
(思考を即興でまとめて、語る。)
(少々雑味が残ったが、仕方ない。)
(……口が乾いたのだろう、烏龍茶を飲み干した。)
「男はステゴロかい。それも同意っちゃ、同意だな。
最後には徒手がものを言うし、どうしようもなくなれば結局闘争なのは仕方がない。
哲学者としてそのくらいは出来ないとな。」
(冗談めかし、一つ加えた。)
鏑木 ヤエ > (もう少し詳しく聞いてみたい、と。
また「なるほど」、と聞いているんだか聞いていないんだかも解らない相槌を打った)
「別にね、異能を持ってること自体が悪いともいいませんよ。やえは。
やえの異能がただ単にやえにとってはビョーキなだけですから。
有能且つ行使するからこそビョーキってのはですね。
───異能の存在自体は別にビョーキだとまでは言いません。
それを振るって、それに依存して、それが自分の存在証明になってしまえばそれはビョーキになるんですよ」
(曖昧に言葉を並べる。
もしかしたら当の本人もよくわかっていないのかもしれない。
整理するように、論理を立て並べるようにして言葉を紡いでいく)
「やえはやえです。
誰に何を言われたところでやえであることに変わりはありません。
異能を持たないやえはやえではなくなっちまうのでしょうか。ンな訳ねーでしょう。
異能があれどなかれどやえはやえ。これがやえです。
けれど異能を振るって依存して、それがない自分を本当に自分だと認識できなければどうか。
異能がない自分を自分じゃないとまで思ってしまったら?
これはショーシンショーメイにビョーキですよ」
(「上手く言えねーですけど」、と付け足した。
当然それは上手い言葉でもなんでもないが、それ故にひどく真っ直ぐで。
異能があれどなかれどの心からの本音だった)
「幾らなんといおうがニンゲンなんですよ。
カミサマみたいな大それたモンじゃあないんです。
だからそんなカミサマに愛されただか知りやしませんけどそんな異能を振るうのは
───ニンゲンがやっていいことを超えてると思うんですよ。
魔術も然り、ですけども」
(幾らかの間を置いて店員を呼んだ。
ミルクティのお替わりをひとつ)
「不完全に正しくない、っての自体が中々にやえ好みですね。
完成されきってるとツマンネー、って思うやえからしたらとってもオモシロいものです。
なんです、言いかえるとすりゃあ曲がった正義とか歪んだ正義、ってトコですかね」
リビドー >
「そう云う事かい。
キミが持つ異能をキミが病気と思うのと、
異能どうこうではなく――異能に執着してそれが自分の存在証明になり、異能に執着してしまえば病気か。確かに、頷ける。」
(相槌を打つ。
問いに答えてくれる点、確かに話こそは聞いているものの
聞いているかいないか分からないような相槌を見るに、少々の疲労ないし飽きが見えたような気がした。
思えば、大分長く話している。そろそろ締めに持って行こう。)
(とは言え、先程は別けて理解したが。
やえにとってのやえの異能が病気であることと、その後に続く言葉が地続きならば――
――いや、考え過ぎか。前提として有能である異能の行使のハズだ。
確かに一度、切り上げたほうが良さそうだ。)
「……違いない。
"異能がなくなれば自分ではない"。"異能が無い自分は自分ではない。"
異能が喪う事で全てを喪ってしまうと思ってしまうとすれば、
異能改め病魔に全身を蝕まれ、巣食われ、乗っ取られてしまったのだろうな。
――それが消えれば、人間としての資質はほぼ全て残っているのに空っぽな人間の誕生か。
確かに病気だ。自殺を以って死に至るかもしれない。あるいは、異能を求める為に犯罪に手を染めてしまうかもしれないな。
自分の立場すら忘れて何でもする。生き延びる為に何でもする。――死んでいないのにも、関わらずだ。」
(続く言葉を聞くに、先程の妄想は的外れだっただろうと再認する。
異能に依存し、それが消えた人間を想像して語る。
(成る程と呟き、口元を軽く釣り上げる。興味深いものを、聞いた、と。)
「魔術や異能は人の領分を超える、と。
確かに違いない。とは言え、異能や魔術が無ければ門から現れた魔物や侵略者に攻められ世界は滅びていたと思うと、中々に感慨深い。
上手く言葉に出来ないが、少々皮肉なものを感じるよ。完全だったものが不完全な完全になる様な零落だ。
……ああ、不完全に間違っているってのもそんな所だ。本来正しく在れるものが、どっかで描き方を間違えて不完全になる。
哲学者の中には世の中に完全なものなど何もない、なんて言う奴もいるが……ま、この辺りは今度にしよう。
大分話し疲れたんじゃないかい? 思えば結構な時間、話に付き合って貰った気がするよ。
むしろボクが疲れてきたと言うべきかな。話し続ける事こそ出来るが、雑になってしまうのは少々自分にもやえにも申し訳なくてね。」
鏑木 ヤエ > (続いたのは肯定の言葉だった。
病気、とまで形容すれば咎められるかと思ったがそうでもないらしい。
どこまでも彼の奥深いところが覗ける気がしない。
彼が先刻彼女に踏み込むのを躊躇ったのとは対照的に彼女はいつだって誰かの
パーソナルスペース3歩内側に入り込む。信条、信念、信仰を垣間見る為に)
「とはいえ"異能がなくなって初めて自分が完成する"こともあるかもしれません。
これは魔術にも等しく同じことが言えるでしょう。
そうですね、いうなれば───……"超常の喪失"、とでも言いましょうか。
それはえらくショッキングな出来事かもやしれねーですが、ある種の完成だと思いますね。
異能ありきで、異能がなければなんていうならばそれはもうニンゲンとは認めない。
ただの道具とイコールなんですよ、そんなのは。ツマンネーです。
自分が一番自分のことを愛してやれるのに自分を定義できなくなればそれはもう」
(小さく口元を歪めて)
「それはもう、ショーシンショーメーに生きてる価値がねーですよ。
ただの異能を入れておく器に間違いねーです。
そんな異能を入れておく器がニンゲンだけ、であるとは未だ決まってねーんですよね。
ほかに器を、外部に器を得ることが出来てしまったら?
地球上のモノ全てが異能を入れておける器なんだったら?
その辺の紙コップが何時でも再生するんだとしたら?スチール缶が人を殺せるようになったら?」
「考えられないニンゲンは優位性を全て失います」
(「つまりやえの言いたいことはそういうことです」、と最後に付け足した。
ゆっくりと伝票を手に立ち上がれば、会計を済ませる為にスカートを揺らした。
会計を終えて戻ってくれば小さめの鞄を手に、普段の無表情を彼に向けた)
「少しばかりでもあなたの渇きが満たされたことを祈っておきますよ、欲望の君。
何をあなたは知りえるか。何をあなたは為さねばならないか。何をあなたは希望しうるか。
そういうことなんですよ、つまるところは。
それでは、お付き合いありがとうございました、どうも。
───……鏑木彌重、二回生です」
(ぺこり、小さく頭を下げて背を向けた)
ご案内:「カフェテラス「橘」」から鏑木 ヤエさんが去りました。<補足:◎乱入歓迎 濁ったクリーム色の髪に鮮やかな紫色の瞳。七分袖の赤いワンピースに薄いタイツとストラップシューズ。>
リビドー >
「勿論久々に充足したとも。嬉しい限りだ。
ああ、またな。此方こそ感謝するぜ。鏑木彌重。また会おう。」
(軽く手を振って見送る。)
(さて、この場を去る前に、最後の彼女の言葉も少し反芻していこう。)
「異能がなくなって完成する、か。
――空きを埋める。必要を満たす。そう言った意味では、確かに"異能が不要になり、失う事で自分が完成する"
と、言えるな。満たされる事で失う訳だ。自転車の補助輪なんかも、その例と言えば例か。」
(足りないから。
必要だから。
それ故に異能があるとすれば、確かに消失を以って完成だろう。
言外に、それらは本来余分なものと評す事でもある。
……それに関しては、どちらかと言えば肯定だ。彼女の意図が、そのような意味で在るかは別として。)
「一方で、"異能を入れるだけの器"と来た。
且つ、それは人間だけでないと。そのあたりは良く分かるとも。
異能を用いた兵器の製造。それは当たり前の様に研究されているし、ぼちぼち研究成果も出している。」
(何が、とは言わない。
そもそも独り言の類だ。)
「……そう言えば、彼女はあまり表情を動かさなかったな。
さて、動かした時はどんな時だったか。それを思い返してみれば、彼女を知れるかもしれないな。
しかし、ボクは何を知り得て、何を行いし、何を渇望するか。……ちゃんと"考えて"おかないと、彌重に悪いな。」
(苦笑を以って反芻を締めくくる。
席を立ち、自身の分の伝票を手に取り、その場を後にした。
その顔は、珍しい程に満足そうであったとか。)
ご案内:「カフェテラス「橘」」からリビドーさんが去りました。<補足:黒い髪に、アメジストとエメラルドのような紫と緑のオッドアイ、黒いカーディガンを羽織り、頬に妙な模様。>