2015/09/11 - 21:22~04:04 のログ
ご案内:「ロビー」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (夜。非常灯と、最低限の照明だけが残されたロビー。自動販売機の隣のベンチに深く腰掛けて、缶コーヒーを飲む姿がある。
 残業と、夜間の見回りを終えて一息ついているところだった。左手の缶を口許に添えたまま、右手に持った紙に目を落としている)

(――『今回、調査により。保険医として潜入していたサイエル・ミラー 39歳 男性を反逆――内乱罪として指名手配するものとする。以上』)

(風紀委員会から発された、簡潔な布告だ。
 その顔に、眼差しに、然したる感情を浮かべるでもなく、たった一文を繰り返し見ている)

ヨキ > 「反逆ねえ」

(しんとしたロビーに、ぐび、と喉を鳴らしてコーヒーを飲み込む音がする。
 ここは日本で、常世島で、常世学園だ。そうしてお触れを出したのは、風紀委員)

「……いったい、何をしたことが。――誰に対しての?」

(限りなく低い声は、この広い廊下にあっても響くことはない。
 零れ落ちて、そのまま消える)

ヨキ > (紙がはためく小さな音を立てて、掴んだ右手をそのまま膝の上に下ろす)

(元はといえば――ヨキは、人を信じる、ということをしなかった。
 自分で見聞きしたことをあるがままに受け入れ、従い、倣っているに過ぎない。
 人から下される命に。人が見せる意志に。人が露にする欲望に。

 良心だとか、信頼などという礎のあやふやなものに、ヨキは従わない。
 だから期待することもなければ、裏切られることもない。
 ただ自分に、周囲の人間に、負担が増える。それだけが――少し疲れる)

「……また、蓋盛の仕事が。増えてしまうな……」

(目を伏せる。
 未だ晩夏の余韻を残して生温い夜気に、缶の表面がしっとりと濡れる。
 手にした布告の端を、事もなげに湿らせた)

ご案内:「ロビー」にライガさんが現れました。<補足:銀の鎖が巻かれ、獣の爪に似た形をしたナックルダスターを装備。ふだんは武器を収納した制服姿。に、眼鏡>
ライガ > すっ、すっ、と布の擦れる音がわずかにして、灯りの乏しいロビーを長身の人影が横切ってゆく。
そのシルエットはいささか慌てた様子で、ベンチを気にも留めず、教室へ通じる階段を上がってゆく。
……また少しして、同じような足取りで戻ってくると、途方に暮れたように頭を掻いた。
と、そこでベンチの人影に気付き、静かに歩み寄ってくる。

「あー、と。暗くてよくわからないけど、たぶん金工のヨキ先生…?
教室に忘れ物したみたいなんだけど、鍵持ってないですよね?」

実は髪の毛先までしっかりと見えているが、まあ、そういう視力は一般の生徒じゃないよなぁ。

ヨキ > (廊下を横切ってゆく影を、じっと見るでもなしに一瞥する。
 獣の目は、それが学生の姿であることをよく察した。
 委員会によって自治が行われている常世島のこと、夜間にも校内へ入る学生はあるはずだ。

 何も言わず様子を見ていたのが、投げられた声にいよいよ相手へ目を向ける。
 金色の双眸が、蝋燭のように微かに光ったように見えた)

「こんばんは。そう――ヨキだ。君は確か公安の……ゴルバドコール君だったか。
 鍵?ああ、今ならちょうど……」

(元より獣人の視力のこと、視えていることを隠し立てはしなかった。
 点けるぞ、と言い添えて、壁のスイッチに手をやる。
 自分たちの頭上の蛍光灯だけが、ふっと明かりを灯す。
 眩しげに目を眇めてから、ライガへ笑い掛けた)

「見回りを終えて、帰る前だった。運がいいな。一緒に行ってやるぞ」

(左手に、巡回のための鍵束。
 右手にコーヒーの缶と折り畳んだ紙切れを手にした姿だ。
 その髪の毛先まで見通す目ならば、畳まれた紙から覗く『風紀委員会』の文字も察せられよう)

ライガ > 「あ、ライガでいいですよ、長い名前なんで。
そっちの姓を呼ばれたのはあんまりないですけど」

仕事かと聞かれると、手を振って訂正する。

「いや今は仕事じゃなくて、眼鏡ケースどっかに置き忘れちゃって。
……仕事は、最近また、個人単位で挙動の怪しい人増えたもんですから、困ってるところなんですよね。生徒だけならまだ何とかなりそうですけど、それ以外となると。
といっても個人であちこち出張るほど、資金的に余裕あるのなんかそうそう多くないでしょうけど。
……資金出してるケツ持ちが判れば、すこしは楽なんですが」

やや遠い目をしながら、ぽつりとつぶやくように話す。
口座割り出して凍結したりとか、外交的な繋がりをたどってくとか。
グローバルな繋がりがあった場合のために、外国への『留学』制度を活用していたりもする。
まぁこの辺りは知っててまずい情報でもない。相手は教師であるし。

天井の一部が明るくなれば、助かります、と表情を明るくし、
あそこなんですけど、と階段を上がってすぐに見える教室の扉を指さす。
ヨキ先生が手に持つ紙切れからちらりと文字が見えると、顔をわずかにしかめた。

「あ、その掲示、僕も読みましたよ。
もしホントだとしたら、サイエル先生、なにやらかしてたんですかね……
以前公園で会ったことがありますけど、サボり魔スターってくらいしか印象わかなかったんで」

ヨキ > 「はじめに姓を呼ぶのがヨキの慣わしでな。それでは遠慮なく、ライガ君と」

(ライガの話に、ふん、と鼻を鳴らす)

「公安といい、風紀といい、苦労が絶えんな。
 狼藉者らときたら、『郷に入らば郷に従え』という言葉を全く知らんらしい。
 この島では他ならぬ君が、君らこそが法だと言うにな。労いのひとつや二つでは、とても足りんよ。
 ……よくやってくれているとも」

(励ますように、ライガの背を軽やかに叩いた。
 示された教室へ、相手を先導して歩き出す)

「ん……ああ、これか。サイエルの報せ、君も見たか。
 ……さあ、ヨキも彼のことを、詳しくは知らんでな。
 ヨキは彼と一度酌み交わしたが――悪党にはとても見えなかったとも。
 果たして利用されたか……よほど狡猾だったかの、どちらかだ」

(全く残念だ、という言葉が――些か無感情に冷たく、廊下に低く響いた。
 靴音を微かに響かせて階段を登った先、目的の教室に辿り着く。
 開錠し、扉を引く。ライガを顎先で室内へ促した)

ライガ > 意を得たように、手を小さくポンとたたく。

「ああ、そう言う慣習だったんですか。
たしか、姓、ファミリーネームを優先させるのは、戦争やら何かしらで名声を上げる機会に、一族郎党全員がその恩恵を受けられるようにした結果だって、そういう説があるらしいですけど」

「僕なんかは、勝手に召喚された異邦人の身で、そう言うのとは微塵も関係ないですし、
何より、ゴルバドコールってのは、向こうで信仰してた雷帝の名前なんですよね、元は。
忘れないようにつけてるだけで姓は遠来の方ですよ」

肩をたたかれると、
ありがとうございます、と素直に頷き。

「前線で戦ってる方々と違って。
仕事がハッキリ成果に表れるわけじゃないですから、
時々、摘発にも顔出さずに何やってるんだって、言われるんですけどね」

手を顎に当てて考え込みながら、
足音をほとんど立てずに、すすす、と歩く。

「ま、あまりこの段階でこういう事は言いたくないんですが。
……もし、サイエル先生が本当にクロで、保健医をやってたことが、何かしら関係あるとすれば、ですけど。
怪我人病人の詳細な身体情報、自傷か・事故によるものか・事件に巻き込まれたか、
その辺からアプローチはいくらでもできるでしょうから。
他の一般的な教師より、警戒される可能性も低いでしょうし。
その紙には潜入ってだけ、書かれてますけど。
仮に情報でもひっこ抜かれてるとしたら、結構厄介ですね」

扉を開け、中へ促されれば、いそいそと早足で机の一つへ向かう。
引き出しを開けてひっくり返し、中を改め始めた。

ヨキ > 「ほう……神の名を付けていたのか。遠方には、始祖たる神の名を冠する氏族も少なくないと聞く。
 難しいな、人間の名というのは。どれが個人を指し、家族を示すのかがなかなか見当もつかん。
 まあ、慣わしというに少々大げさではあるがな。癖のようなものさ」

(無人の校内を歩きながらに、視線は右左と警戒して動く。
 ライガへは向かず、そのまま話を続ける)

「案ずることでもないだろう?君は君の仕事をこなしているのだからな。
 人にはそれぞれ、領分というものがある。
 『サボり』を標榜するでもなく、きちんと務めを果たしているなら、何も責められるべきことはないとも。
 元よりヨキにとって、公安は高嶺に座する身分さ。
 知り合いこそ少ないが……みな真面目にやっている。感心なことだ」

(顔だけで振り返り、肩越しににんまりと笑う)

「サイエルの人好きのする性質が、彼の暗器だったという訳だ。
 ……ふん、情報が抜かれたからとて何になる。
 本土が財団を取り潰しに掛かるか?
 もはや『門の向こう』とあまりに近しいこの時世――
 この常世島そのものを抜きにして、異能も異邦人をも語れるものか。

 何があろうと、ヨキは財団に従うに過ぎん……
 財団に、この島にとっての敵か味方か。判ずべきことはシンプルだ」

(教室の入口に緩く凭れ、ライガが探し物をする様子を眺める)

ライガ > 始祖っていうほどのつながりもないんですけどね。と、
そう、苦笑する。

「ただ、雷帝に関しては、こっちの世界に来てから、
祈りが届きにくくなってるんで、
ちょっと心配になってきてはいるんですけど」

「この一番奥になかったらあきらめるしかないけど…いや、あった」

やがて引き出しの奥から、紺色の眼鏡ケースを取り出す。
中にクロスが入っていることを確認してひとつ頷くと、ポケットにしまいこんだ。

「よし、へこみも傷ももない、と
あとは終わりです」

教室の扉から出て、入り口付近にいたヨキ先生へ向かって答える。

「どうでしょうかね……敵対するわけでもなく。
得た情報を誰かに売りわたす、そういう可能性も考えられるでしょう。
見る人が見れば、この常世島は潰す対象でなく、むしろ宝の山でしょうから」

流出した情報をもとに、例えば異能者目当てでおしかけ、学生に危害を与えるような連中がやってきては困る。

ヨキ > 「――ふむ?祈りを届ける、と。
 届いたかどうかが感知できるのか、君の神は。
 その恩恵が、君の力の源にでも?」

(『届きにくくなる』ことをも察せられるという、雷帝なるもの。
 小首を傾げて尋ねる。

 無事に失せ物を見つけたらしいライガが教室を出たのを確かめて、再び施錠する。
 紐に繋がれた鍵束を、戯れにじゃらりと鳴らす)

「斯様に雑多な、坩堝のごとき常世島の情報が……どれだけ有用やら。
 異能も、魔術も、異邦人も、そして怪異も、個々があまりにユニークに過ぎる。

 ……ふ、その『宝の山』の番人こそが、君ら公安の仕事ではないのか。
 揺らいでもらっては困るな。異能とは元より――解析さえ果たすことの叶わない、超常の力よ。
 売られるほどの情報で、その全貌が明かされるとは思わんな」

ライガ > 「まあ、僕も半分くらいわかってないので、あまり偉そうなことは言えませんが。
要は“祈り”とか“信仰”を糧にするので、その手の感知や察しは難しくはないんではないでしょうか」

指摘されれば、表情が固まり、やがて息を大きくはいた。

「……そうでしたね、
ちょっと弱気になってました」

思えば、異能の先生相手に何言ってたんだろう。

「僕は異能、使えませんけど、『宝の山』を狙う『盗賊』くらいは撃退しておきたい、そう思うこともありますし」

施錠を目視した後、もう一度、頭を下げる。

「それじゃ、わざわざありがとうございました。
あとは今夜は帰ります、たまに休まないと」

ヨキ > 「祈りや信仰を糧に……それもまた、異能と同じほどにブラックボックスのようだな。
 判っていないにせよ、名に冠するほどの信仰を抱けるのならば。人間の信心とは、全く力強いと思うよ」

(息をつくライガに、ふっと笑い掛ける)

「公安ともなれば、この島で最も多忙な人間の集まりだ。
 近ごろは、とみに騒ぎも多いからな……心に陰りが差したとて、おかしくはない。
 ヨキはいつでも力になろう。撃退するにも、人手は必要だろうから」

(会釈を向けられて、緩く手を振り返す。
 たまには休息を、と口にする彼の顔を覗き込む)

「どう致しまして。
 気を付けて帰るのだぞ。……休めていないのならば、尚更だ。
 こなせる仕事も、こなせなくなってしまうでな」

(おやすみ、と短く挨拶の言葉を投げて、踵を返す。
 職員室へ向けて歩き出し、やがて廊下の暗がりの向こうへ姿を消す)

ご案内:「ロビー」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ご案内:「ロビー」からライガさんが去りました。<補足:銀の鎖が巻かれ、獣の爪に似た形をしたナックルダスターを装備。ふだんは武器を収納した制服姿。に、眼鏡>