2015/09/19 - 21:40~02:54 のログ
ご案内:「廃ビル」に鏑木 ヤエさんが現れました。<補足:部屋着。>
鏑木 ヤエ > (落第街をずっと奥に進んだ先にある廃ビル。
 それは何時もと何ら変わらず、ただそこに建っていた。
 取り壊す資金もなかったビルの持ち主がビルを置きっぱなしにして夜逃げしたその後。
 元々はラブホテルであったそれは4階建てで中途半端に整った生活設備。
 その2階の203の札の引っ下がった部屋の室内。傍迷惑な不法滞在者が堂々と住んでいた)

「──、」

(誰に語る言葉もない。
 自分ひとりであれば騙るものも何もないのだから当然であるのだがただ無言。
 204号室の不法滞在者の隣人は今日も女を連れ込んでいるらしい。
 異邦人だと話には聞いていたがあまり話したことがない。
 元来ラブホテルだったのが関係しているのか隣人と顔を合わせるのは気まずいものがある)

(ごろん、と大きなベッドに横になった)

鏑木 ヤエ > (アンアンと艶やかな嬌声が響く。
 あってないような防音設備を恨めしく思いながらひとり物思いに耽る。
 異邦人の隣人が連れ込む女は毎回違うような気がする。
 そう大して顔が自分の好みでないからかもしれないが恰好いい男性、ではないように思えた。
 そういうコトが上手いのだろうか。知ったことじゃあない)

(傍らに置かれた大きなテディベアをベッドに寝かせた。
 何かを模すように、そのテディベアに跨った)

「やえはね」

(テディベアに語り掛ける。
 見るからにそれは不審者極まりないのだが見ている者は誰もいやしない。
 転がされたテディベアの足に入った刺繍)

(───Sto lat Agnieszka 0909)

鏑木 ヤエ > (ひどく歪んだ笑顔を浮かべた。
 誰に見せることもない生き生きとした表情。
 薄いワインレッドのネグリジェがひらりと舞った。
 そして、)

「……大好きですよ、やえは」

(ぎゅう、と力のままにテディベアの首を絞め上げた。
 テディベアは声を出さなければ動かない。当然であるがそれにまた愉悦の色の濃い笑みを)

鏑木 ヤエ > (子供の誕生を祝うのにテディベアを贈るのは欧州ではままあること。
 そのテディベアの右足に祝辞と子供の名前を刻むことも。

 Sto lat,Agnieszka───誕生日おめでとう、アグニェシュカ)

「やえは大好きで大嫌いですよ、ねえ」

(誰の名前が刻まれているんだか知らないテディベアの首をきつく、きつく。
 ぎゅうと、人間であれば蛙を轢き潰したような声が洩れそうなほど。
 アグニェシュカ。ポーランドではよくある女性の人名のひとつ)


「ねえ、アグニェシュカ」

 
 

鏑木 ヤエ > (時間にして5分やそこら。
 その間、ひたすらに狂ったようにぎゅうと握り続けた。
 勿論テディベアはものを言わない。ゆっくりと手を離す。
 ぼとり、落ちる)

「───Dobranoc」

(じわりと、ただ笑みを浮かべた)

ご案内:「廃ビル」から鏑木 ヤエさんが去りました。<補足:部屋着。>