2015/09/19 - 22:02~01:16 のログ
ご案内:「保健室」に千代田さんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。左目から灰色の炎が溢れる(乱入可)>
千代田 > 「……困りましたわ……」

昼間の保健室、そのベッド上に座り込んでいる、橙色に身を包んだ少女が呟く。
眼帯に覆われたその左目からは、冷気を帯びた灰色の炎が溢れ出していた。

千代田 > 昨夜の住宅街での戦闘において、その命を狙う襲撃者を討つため、
本来の人格である"畝傍"から肉体の主導権を譲り受けた彼女――"千代田"であったが、
襲撃者を討ち果たした後、畝傍の人格と交信不可能な状態に陥ってしまった。
そしてこの日、交信途絶以前の畝傍の記憶を頼りに教室へ顔を出してはみたが、
主人格たる畝傍と異なり銃を持たず、年齢相応の話し方をし、何より常に左目から灰色の炎を溢れさせている彼女を、
同級生は案じる者もいれば、その様子の変わりようを見て避ける者もいた。
こうした状況への対応に慣れていない千代田は、逃げ込むように保健室へ足を運んだものの。

「……はぁ……」

未だ畝傍と交信することはならず、ただ溜め息を漏らすばかりである。

ご案内:「保健室」に石蒜さんが現れました。<補足:褐色の肌にカーゴパンツ、Tシャツ。>
石蒜 > 昨夜以降、畝傍からの連絡は無かった。
やはり何かあったのかもしれない、と街中を探しまわってから、普段よく行く所から探すことを思いついた。
手始めに近場である学校をうろついていたところ、覚えのある匂いに気付き、それを辿って保健室までやってきたのだった。

静かに扉を開け「畝傍?」とたどってきた匂いの主の名前を呼ぶ。
「大丈夫?怪我してるの?」声量を落とした声で呼びかける。
きょろきょろと室内を見渡せば、ベッドに腰掛けた相手が見えるだろうか。

千代田 > 保健室の扉が開き、声が聞こえれば、千代田はその方向へと振り向く。
その左目から溢れる灰色の炎が、彼女――石蒜の視界にも移るかもしれない。

「……いえ。"千代田"は……大丈夫でしてよ」

少女のほうへ顔を向け、あくまでその肉体には怪我がないことを伝え。

「ただ……畝傍は」

俯き、意味深げに語る。灰色の炎は静かに揺らいでいた。

石蒜 > 「…。」畝傍の声、だがその喋り方は別人。再開の喜びは鳴りを潜め、警戒が首をもたげる。軽く腰を落とし、つま先に体重をかける、いつでも戦闘に移れる体勢。

「チヨダ……そしてその灰色の炎…畝傍から聞いています。混沌の力を嫌う、とも。」石蒜はかつて混沌そのものへと変じていた、今はその力は残っていないが、縁は残ると、とある腹黒シスターから何度も言われた。
もしかすると攻撃の対象となるかもしれない。ちらりと後方を見る、飛び退いて下がる空間があるか、確認した。

「畝傍に、何があったんですか。」警戒と、微かな敵意を覗かせながら、問う。
自分の経験からして、もう一つの人格というものは主人格を敵視するものだ、畝傍を無理やり封じて体を乗っ取っている、そんな可能性が頭をよぎった。

千代田 > 「ええ。話してくれていたようで……助かりますわ。……安心してくださいまし。千代田とて、あの子の親友を焼いたりなどしませんわ」

千代田自身もまた、視界に映る褐色の少女からはかすかに混沌との繋がりを感じていた。
しかし廃教会での一件が原因で畝傍から釘を刺されていた千代田は、混沌と繋がりのある者だからといって誰彼構わず焼く事はしない。
そもそも、いくら千代田であれ、畝傍にとって一番の親友であるこの少女を焼いてしまおうなどと考えることはできなかった。

「……わかりました。話しましょう」

顔を上げ、しばし間を置いたのち、千代田はゆっくりと口を開き。
畝傍と『黒フード』なる人物の命を狙う『星の子ら』<シュテルン・ライヒ>と呼ばれる少女たちの存在、
昨夜の住宅街で畝傍を襲撃した『星の子ら』の一員にして異能者、淀・ツェツィーリエ・ハインミュラーとの交戦。
その戦闘において、畝傍が異能の行使によって自らの正気を焼かぬよう、
千代田が代わりに異能を行使するため、肉体の主導権を譲り受けたこと。
そして淀にとどめを刺す事はなったが、それ以降畝傍の人格とは交信できていないこと。
それらすべてを、石蒜に話す。

石蒜 > 「そう、ですか。」信じるに足る要素は少ないと考えたが、あからさまに警戒していては話が進まないと判断し、体を伸ばして二、三歩歩み寄る。

「そんなことが…。」畝傍が命を狙われていたことに驚くとともに、助けに入れなかったことが少々悔やまれた。助けていれば、千代田に交代せずとも済んだかもしれないのに。

そして、話の時系列から「では、あの"めえる"はあなたが打ったんですね。」と気付く。
こちらを心配させまいと、わざわざ畝傍の文面を真似たことに、僅かに残っていた警戒を解く。おそらく悪人ではないのだろう。
適当な椅子を引っ張ってきて、座った。

「原因は何か、思い当たりますか。畝傍が出てこれなくなった原因。」
足をぶらぶらと揺らしながら、問う。「私は…サヤが出てこれないように封じていたことはありますが、出てこれない、というのは…。」
自分の場合とは全く違うパターンに、自分では特に原因に思い当たらなかった。

千代田 > 「……ええ。そうですわ」

昨夜石蒜に送ったメールは、千代田が慣れない手つきで打ち、送信したものだ。
『炎』の化身たる千代田には、自身に善性が備わっているという自覚は無い。
ただ『炎』としての本能に従い、『混沌』とそれに通じる邪悪を焼き滅ぼすことこそが自身の唯一の目的であり存在意義であると、考えるまでもなく感じていた。
千代田の視界に座す褐色の少女のような、ごくわずかな例外を除いて。

「原因……いえ、まったく……」

と続けそうになった言葉をいったん打ち切り、しばし思考する。
肉体の主導権を譲り受けるまでは、畝傍との会話が通じていたのだ。――となれば。

「……もしかしたら。千代田が表に出たのは、ゆうべの事が初めてでしたから……」

千代田はこれまで、畝傍の脳内に自身の声を響かせ、会話を成り立たせていた。
しかし、表に出ている人格が完全に交代したのは、昨夜が初めてだ。
故に思い当たる節があるとすれば、お互いに慣れない人格交代の影響ではないか、と考えるしかない。

石蒜 > 「わざわざ気を使っていただいて、ありがとうございます。あの"めえる"がなかったら、きっと私はすぐに飛び出して、あてもなく畝傍を探しまわっていたことでしょう。」軽く、頭を下げた。
落第街や転送荒野にも向かっていたかもしれない、そうしていたら何かしら危険に遭遇していただろう。
石蒜は基本的に自己中心的だが、感謝の心ぐらいは持ち合わせているし、今はそれを出すべき時だ。

「初めての交代だった、と。」顎に手をやり、親指で顎の下をこすりながら、考える。
「ううん、人格の交代か……。私とサヤの場合ですが、ええと…言葉にするのは難しいですね…。魂が別ですし、体に入っていない方は刀に宿ってますから、それを交代するというのが、近い感覚ですが…。」石蒜の語彙ではうまく言い表せず、言葉を探しながら自分の人格交代を説明する。

「千代田さんと畝傍の場合、どうなんでしょう。2人ともその体に入っているんですよね。」

千代田 > 「ええ。千代田も畝傍も……ひとつの体の中に存在しているものですわ」

石蒜から受けた説明をしっかりと聞いたのち、答える。
畝傍と千代田は、石蒜とサヤのように表に出ていない人格を収める何らかの媒体を持っているわけではない。
一つの肉体、その精神の中に二つの人格が存在している、『二重人格』と聞いて思い浮かぶ典型的なイメージに近いだろうものだ。

「もっとも……千代田は後から入り込んだようなものですけれど」

俯きがちに呟く。千代田の人格は、畝傍が自らの異能――すなわち、『炎』の力――を行使し、
正気を代償として消費することによって、少しずつ形成されていったものであった。
それが一定に達した決戦以後、千代田は初めて、畝傍の精神世界にはっきりとした姿を現したのだ。

石蒜 > 「うーん……。」両手の指先を合わせて、弄くりながら考えこむ。
そういえば、石蒜が生まれた直後は、サヤと石蒜が同時に体内に存在していた。あれはサヤの魂がほとんど消えかかっていた時だから1つの体に収まっていたのだが。
その頃を感覚を思い出そうと記憶を辿ってみるが、まだ人格が安定してない頃だったためか、うまく思い出せない。

「それを言ったら…、私もそうですよ。壊れかけたサヤの魂の欠片から生まれた、異物です。」そして邪悪であった、千代田のように主人格を思いやることなどせず、消そうとしていた。遥かに質が悪いと言っていいだろう。だから、サヤを消すか、自分が消えるかしかないと考えていた。一緒に生きるには罪を重ねすぎたから。
「でも、畝傍は私のことを好きになって、救ってくれました。サヤとも和解して、今の私とサヤがあります。きっと、今度は私達の番なんです、千代田さんと、畝傍を助けなくちゃいけないんです。負い目を感じる必要なんか、どこにもありませんからね。」励ますように、元気づけるように。

千代田 > 「助ける……」

主人格たる畝傍は、石蒜/サヤを助けるため奔走し、闘い続けていた。
それは畝傍と記憶を共有する千代田にもわかっている。
再び顔を上げれば、座っている石蒜の顔をまっすぐに見つめて。

「……分かりました。千代田も……方法は探ってみますわ」

千代田は、自身の目的のため他者を使うことに負い目を感じるほど性格が良くはない。
だが、どのみち千代田一人では事態の解決はままならないだろう。
励ますような石蒜の言葉に、どこか憂いを帯びたような表情を変えぬまま返す。

「尤も……いつまた新たな『星の子ら』の襲撃があるかわかりませんし、もし荒事が起きたなら……その時は千代田に任せて下さいまし。千代田なら、何とかできますから」

"千代田"として行使する異能――『不浄の氷炎』<イーリディーム>にもまた、支払うべき代償は存在する。
しかし、それについては石蒜にまだ告げずにいた。

石蒜 > 「私も、出来る限りのことはします。一緒に頑張りましょうね。」と人懐っこい犬めいた笑みを浮かべる。
畝傍に会えないのは寂しいが、恩を返せると思うと、少しだけ嬉しかった。

「何を言うんですか、命を狙われているんです、手助けしますよ。」心外だ、といった調子で
「私だって剣士です。確かに、不定形の相手には手を焼きますが、生身の人間相手なら遅れはとりませんよ。人刃一刀流の免許皆伝ですからね。」足を組み替えて、胸を張る。
実際その称号を手にしているのはサヤだが、記憶と経験を共有しているため、石蒜も同じ程度の腕前なのだ。極度のマゾヒストのために、攻撃をわざと食らう癖があり、勝率は芳しくないが。

千代田 > 石蒜の言葉を聞き、胸を張る様を見れば、ようやく千代田の顔は綻ぶ。

「では……その時は、お願いしますわね?」

上がった口角を保ちつつ、石蒜へと告げた後、
千代田は畝傍がしていたようにヘッドギアに触れて操作、頭上に収納ポータルを開き、その中を漁る。
やがて取り出したそれは、寮内の自室で石蒜が絵を描いていた画用紙のサイズに合わせた額縁であった。

「……っと。これ……昨日、畝傍が買っていたものなんですの。貴女が前に描かれてらした絵……それが出来上がったら、収めるためにって」

そう伝え、画材店の大きな紙袋に入ったそれを、石蒜へと両手で差し出す。

石蒜 > 「ええ、任せてください。」頼られたことが嬉しいのか、ニコニコと笑う。しっぽがあればパタパタと振っていることだろう。

相手がポータルへと手を伸ばすのを見て、何をするのかと見つめる。
一見畝傍と同じだが、僅かに違和感を覚えるその動作に、目の前の人物が畝傍ではないことを再確認して。表情には出さず、寂しく思った。

そして、紙袋を渡されれば「額縁、もう買っちゃったんだ。気が早いなぁ、出来上がってからでいいのに。」口では呆れつつも、その表情は嬉しそうだ。紙袋ごと、額縁を抱きしめる。
「ありがとう、早く完成させないといけませんね。畝傍が戻ってきたら、見せられるように。」

千代田 > 「礼には及びませんわ。……そう、ですわね。千代田も……」

可能な限り早く、畝傍との繋がりを取り戻し、人格の交代を行わねばならない。
その間に『星の子ら』の一員が襲いかかってくれば、それを打ち払わねばならぬだろう。
この日は保健室へ駆け込んでしまったが、他の生徒や教師へ事情を説明する必要もある。
『狩り』の依頼が舞い込めば、それにも赴かねばなるまい。千代田は多忙であった。
しかし、畝傍の一番の親友が千代田にも協力を申し出てくれたおかげで、どうにか希望が持てる。
それ以上言葉を続けぬまま口を閉じると、かすかに見えたその希望を石蒜にも示すように、また口角を上げた。

石蒜 > 「色々大変とは思いますが、手伝えることがあれば遠慮なくどうぞ。お手伝いしますから。」宝物のように額縁を抱き締める。
千代田のタスクがどれほど積み重なっているかを察したわけではないが、いくら記憶を共有していても、別の人間になってしまったのである、苦労は多いだろうとおぼろげに感じていた。

話が一段落して、ちらりと時計を見た。
「あ、そろそろ次の授業、ですよね。私はこの時間取ってないので、まだ居られますけれど。」サヤと石蒜はまだ日本語の読み書きが不自由なために、取れる授業は少なく、休みが多い。畝傍の時間割は把握していないが、授業があるかもしれない。

「あ、そうだ。夕飯、食べに帰りますよね…?作って、待ってますから。」事情を把握した今、家に帰らない理由はないと考えた。やっぱり一人で食べるのは寂しかったので、出来れば帰ってきて欲しかった。

千代田 > 「授業……ええ、そうでしたわ。千代田は、この後も少し」

千代田は昨晩までの畝傍の記憶を探ることこそできるものの、
畝傍との交信が途絶えている現在、千代田の見聞きしたモノについての記憶が畝傍と共有できているかは定かでない。
なので交信が戻った時に備え、少しでも多く授業に出ておく必要があった。
ベッドから立ち、扉へ向かって数歩歩くと、石蒜のほうを振り向き。

「そうですわね。事情も話したことですし……今日からは、また部屋に戻ることにいたしますわ。……では、また放課後に」

そう言って扉を開け、橙色に身を包む少女は保健室を後にせんとする。

石蒜 > やはり授業があったらしい、時計を見ておいて良かったと胸をなでおろす。

組んでいた足を下ろして、ぶらぶらと揺らしながら、相手を見送る。

「ええ、また会いましょう。」にこやかに答えた。
また、と言えることに、安らぎすら覚える。
畝傍が居なくなったわけではなくて良かった。確かに今は会えないが、いつかまた会えるのだ。

千代田が出て行って、扉が閉められれば
「大丈夫、また会える。」言い聞かせるように、つぶやいた。

ご案内:「保健室」から千代田さんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。左目から灰色の炎が溢れる(乱入可)>
ご案内:「保健室」から石蒜さんが去りました。<補足:褐色の肌にカーゴパンツ、Tシャツ。>