2015/09/25 - 14:36~15:36 のログ
ご案内:「図書館」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (未だ日の高い午後、図書館の奥。
 低いパーティションに区切られた座席のひとつで、パソコンに向かっている。
 机上には書類と書籍。図書館所蔵のものと、持ち込んだ私物と。
 その顔は活き活きとして、晴れやかだ)

(仕事の話が舞い込んだのは数日前。
 島内の美術館で近く開かれる企画展の、図録。
 その執筆者のひとりとして指名された)

「………………、」

(異能を用いた美術作品の展示。その解説と論考。
 取り分け自身の専門分野に通ずる異能を持つことと――
 『ヨキ自身、異能を用いて作品を制作していた時期があったこと』。
 これらの経験を加味し、常世学園教員としてのキャリアを見込まれた上での抜擢だった)

(キーボードを叩く指先にまで、痺れるような充実感がある)

ヨキ > (知る者はあまりない。知られてもほとんど印象に残らない。
 金属を操る異能によって生み出されたヨキの作品――
 そのうちほんの二つが、『国立常世新美術館』に収蔵されていること。

 ヨキが島を訪れてまもなくの頃。
 異邦人や異能者をテーマにしたグループ展で発表されたものだ。
 写実と抽象を綯い交ぜにしたような、畸形めいた植物のオブジェ。

 当時は異邦と異能、それぞれについて未だ受容の揺籃期だった。
 反響も反応も薄い、ごく小さな催しに過ぎなかった。

 が、)

(今度は違う。今や常世島には、人が増えた。
 異邦人と異能者を囲う敷居は、『それなりに』低くなった。
 鼻つまみ者として排される理由も、肩を窄めて生きる道理もない。

 堂々と書けばいい。示せばいい。

 その横顔にあるのは、怒りにも似たよろこびだ)

ヨキ > (胸中に座すヨキの野心は、ヨキ個人を引き上げるためだけのものでは全くなかった。
 島に、財団に、学園に従い、その範疇からなる一矢。
 まるで常世島の理念が、そのまま人のかたちを取ったように。

 平穏に暮らしたいという異能者を呑み込み、
 元の世界に帰るべきだと嘆く異邦人を絡め取り、
 旧くから世界があった通りに、すべては隔たれて然るべきだと論ずる保守主義者を灼き払う。

 ヨキは進む。
 踵のない獣の二本足が、ヒトのように地と親しく立ち止まれない様に似て。

 とくと御覧じろ。
 言葉が、感性が、手わざの妙が煌く瞬間を。
 街に火を放つよりもずっとしたたかに、それらが人の世を広く冒すものであることを知っている)

(キーボードを叩く。
 淡々とした解説文の行間に、常世島と学園の確かな十余年がそこに在る。

 恥じて屈するべきことは、何もない)

ご案内:「図書館」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、黒縁眼鏡。197cm、鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>