2015/10/19 - 21:24~01:33 のログ
ご案内:「美術部部室」にビアトリクスさんが現れました。<補足:褪せた金髪 青い瞳 男子制服の上にエプロン [乱入歓迎]>
ビアトリクス > 「なんとか出揃ったみたいですね……」
美術部部室に足を踏み入れて、部屋に並ぶ作品の数々を見渡す。
常世における学園祭である常世祭が翌日に迫っていた。
普段は作業机や画材、放置された作品などで猥雑に散らかっている部室だが、
常世祭では作品の展示場所としても使われるため、今は多少整理されている。
一人で二桁以上の数の作品を制作した者もいるらしく、
ここ以外にも展示場所はある。
部屋の隅で煙草を吸っている針金のような男を見やる。
そういえば、この男は学祭用の出展物を部員にも見せようとはしなかった。
内緒にして驚かせようとか思っていたのだろうか。
「針金先輩は何作ったんですか? あと煙草やめてください」
『これ』
と指し示したものは、どう見ても木彫の熊だった。
「北海道土産かよ!」
ビアトリクス > 『ん~? なんだその言い草は。
熊彫は百年以上の歴史がある由緒正しい民芸品だぞ。
それにこれは魔法の木彫熊でな。
こうやって血を垂らすと、ほら……人を襲い始める!』
「うわっ! それ一般に展示していいものじゃないですよ
ワ――ッこっちに噛み付いてきた痛い痛い」
『2XXX年、人類は熊の真の恐怖を知る――』
というやり取りの末にビアトリクスは針金の男を美術部部室から叩きだした。
木彫熊も今はおとなしい。
改めて制作物をチェックする。
水彩画や油彩画、版画はもちろんのこと、先ほどのような彫刻、木工などジャンルは広い。
明らかに締め切り前に3日で済ませました系のチープな代物から、
数ヶ月以上を掛けて完成させた力作まで、質もピンキリである。
ビアトリクス自身の創作物の前に立つ。
青垣山の廃墟モチーフとした油彩画だった。
ようやくニス塗を終わらせられたところだ。
現実のスケッチと違うのは、妖精や妖怪、精霊を思わせる影が
苔むした卓を囲んで茶会に興じているところだろうか。
針金先輩には『ハニーらしい絵だねぇ』とかなんとか言われて鼻で笑われたため、
偶発的な事故で尻から口まで針金で貫かれてほしいと思った。
ビアトリクス > あまり見られるということに関心はない。
さすがに数ヶ月を費やしたこの油絵には多少の愛着はあるが、
完成した作品というのは基本的に興味の外だ。
それは今までもこれからも変わることのないことだろう。
ただ、昔とは少し違う。
ごく日常的とも言える創作行為の結実が、
常世祭という一大イベントの賑やかしとなる。
その特別さには、ほんの少し胸の高鳴りを覚える。
(……母は、)
母は喜んでくれるだろうか。
そんなことを、目を伏せて考える。
昔から、自分がコンクールの類に作品を提出して、
それがどんな結果になろうとも、何の反応も示さない人物だった。
ご案内:「美術部部室」にヨキさんが現れました。<補足:人型/黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡/197cm/鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (常世祭前日。メイン会場とも言える学内を、一部屋ずつ回っていた。
覗き込んだ美術部の部室に、ビアトリクスの後ろ姿を見つける。
ハイヒールの底をこつりと鳴らして、室内へ足を踏み入れた)
「やあ、日恵野君。これだけ作品が揃うと……やはり壮観だな」
(飾られた作品をぐるりと見渡す。
ビアトリクスが前にしたキャンバスを、彼の隣に立って見遣る)
「こちらが、君の作品かね?」
(微笑んで、小首を傾ぐ)
ビアトリクス > 「こんにちは。お疲れ様です」
馴染みの教員の姿に振り返り、目礼する。
ヨキが隣に立てば、見易いようにキャンバスから少し離れて。
「ええ。……まだ、タイトルが決まっていないんですけどね」
緑に包まれた廃墟に、朧な像たちが集い歓談する油彩画。
ビアトリクスの言葉が示す通り、他の展示物にはついている
タイトルと作者を示すプレートがない。
どうやらこれから付けるところだったらしい。
流石に美術教員に見られると緊張を覚えるらしく、
手持ち無沙汰そうに、今は卓の上でおとなしくしている木彫りの熊(接触フリーらしい)を指でつついた。
ヨキ > (今ばかりは、作品を批評する教師ではなく、鑑賞者のひとりとして。
目にした作品について、特に講評を行う様子はない)
「これから名付けられる作品、か。
どんなコンセプトで描いた絵なのか、解説をお願いしても?」
(絵の全体を眺め、それから細部のひとつひとつをなぞるように見てゆく。
生徒の遠慮した風というのは、何となく肌で感じるものだ。
ビアトリクスがつついている熊を横目に一瞥して、『マスコットか』と笑って呟いた)
ビアトリクス > コンセプトを問われ、顎に手を当てて、少しの間考えをまとめた。
「この現代、特に常世島においては……
妖精や怪物と呼ばれる存在も、そう遠いものではありません。
けれど、変容前の世界の住民にとっては、違います。
彼らに取って幻想存在がどう見えるか、という想像……ですね、そこに描かれているのは。
ああいったものたちは、かつては見えないところに棲むものでしたから。
青垣山の麓にある温室の廃墟を描いたものでもあるんですが……
ぼく自身が廃墟という場所に対して抱いている幻想でもあります。
……こう、都合よく話し相手になってくれるような、心地良い何かが
住んでいるのではないか、という」
すらすらと答えたが、後半は少し気恥ずかしそうに、早口になる。
熊が襲い掛かってくる気配がないと確認し、大胆に手でひっくり返して眺め始めた。
どう見ても北海道の民芸品である。違うのは鮭を咥えてないところだ。
針金……刺原先輩のなんですけど、やる気があるのかないのか
判断しかねますね、などとぼやいた。
ヨキ > (ビアトリクスが語る作品のコンセプトを、静かに聞き入る。
耳から聴き取った言葉と、目の前の絵とを結びつけるように。
彼の言葉が終わるのを待ち、少し考えてから口を開く)
「……廃墟と幻想存在、か。
今はもう朽ち果て、荒れる前の名残だけを辛うじて残す廃墟には、
人はどうしたって今や見ることのできない過去を視てしまうものだ。
それらの幻視と、夢想の中にしか居ないはずだと考えられていた者たちとは、
順応性があるのやも知れんな。
廃墟や、夜の暗がりや。
見えぬ気配の予感を恐ろしいと感じさせる一方で、安らぎを感じることもある。
その心地よさを筆に乗せて描いたことが、よく分かる。
さびしいようでいて、温かい」
(かつて目にした無機質なスケッチを思い、異なる色味に柔らかく笑い掛ける)
「刺原君は、あれでいて器用だからな。
その熊にもまた……もしかすると、素っ頓狂なギミックでも隠されているのではないのかね。
彼には、良くも悪くも驚かされる点があるから」
(ビアトリクスが無造作に持ち上げる熊を見ながら、自分もまた歩み寄ってその彫り跡をしげしげと眺める)
「それで……君にとって、都合のよい話し相手というのは、どんな存在かな。
日本語が通じること?それとも、君の話すことをすべて受容し、認めてくれること?」
ビアトリクス > ヨキの感想と笑顔に、こちらも微笑んで頷く。
「……ありがとうございます。
ヨキ先生は、よく見てくださいますね。
……なんて言えば、逆に失礼になるかもしれませんが」
卓の上にギザギザなポップが倒れ伏しているのに気づき、手で立ち上げてみる。
蛍光ペンで色鮮やかに、
『熊害をミニマムに再現!! 生き血を与えてみると…!?』
無言で再び倒した。
「……後者、ですかね。
ぼくには昔から親しくできる仲が少なくて。
この学園で……少しは変わりましたけど。
こういううらぶれた場所には、友達になってくれる何かがいる……
なんて、そこまで具体的な願望を抱いていたわけじゃ、ありませんけど」
照れくさそうに目をそらし、頬を掻いた。
ヨキ > 「ふふ。人の作ったものには、人の考えや人柄が出るからな。
相手に面と向かうことと同じように、作品にも真摯に向き合わねば失礼になる」
(気を害した様子はない。
ビアトリクスが引き起こした刺原のポップに、渋い顔で目を逸らした)
「…………。流血沙汰はいかんぞ……」
(ごほん。小さく咳払い)
「何もない空間に、何かが居るかもしれない、と空想してしまうことは、人間の性質のひとつだからな。
それが恐怖ではなく、何らかの期待めいた形で表れる分には、それが君の支えであったということだろう」
(腕を組む。ビアトリクスへ身体ごと向き直る)
「いかがかね。
見たものを見たまま描くばかりだったことから、何かしら抜け出したものはあったか?
作品に、何も教訓めいたものを含める必要はない。
それでも、ただ技術や『描かねばならぬ』という焦りからしか生まれぬものは……
どうしたって、硬くなってしまうからな。この絵は随分と……和らいだように思うよ」
ビアトリクス > 「……そうですね。
きっと捉え方によっては、同じものを描いても
別の趣を持つものとなったでしょう。
それはそれで、価値のあるものでしょうが」
キャンバスにあるのは、薄暗くもどこか牧歌的な光景。
人の寄り付かぬ場所で饗宴を繰り広げる怪異。
それがどう映るかは……まさしく、それぞれ異なるのだろう。
「ええ、少しは。まだまだ精進の足りない身ですが。
枷が創作に必要なことはありますが……
ぼくの痩せた身体には、少し重すぎたらしく」
棚から白い札とサインペンを取り、少し考えあぐねた様子で。
「……ヨキ先生なら、この絵に、どんな題を付けます?」
そう問うた。
ヨキ > 「ヨキは元から、人ならざる者であったからな。
だからこそこの絵に対しても、温度を先に感じ取るのだろう。
違和感や不自然さを感じ取ってしまう者も、きっと少なからず居るはずだ。
だがそうした異界が、何気なく飾られること……
絵を描くことも、明日からの常世祭も。それらが全く自由なことの表れだ」
(歩み寄る。ビアトリクスの傍らで、木彫りの熊を取る。
自分の手に『生き血』を滴らすような傷がないことを確認してから、その細部を眺めた。
『腕は確かだ』と一言評して、そっと机上に戻す)
「枷を科することは、元来合う者と、合わぬ者がある。
もちろん、枷で縛られることによってこそ、自由に想像を広げられる者もあるだろう。
しかし君は……そうではなかった、と。
学生である、ということは、それだけで芸術家にとっては制約たり得るものさ。
……題?」
(ビアトリクスに問われて、キャンバスへ目を向ける。
口元に手を添えて、少し考える。
温室の廃墟と、そこで歓談する存在のあえかな者たち……)
「……そうだな。
ヨキがこの絵を名付けるとしたら……
――『カンバセーション・ピース』、といったところか」
(『conversation piece』。
和やかな群像――団欒画。転じて、話題となるもの、話の種。
非現実の怪異こそが現実たる、常世島の日常)
ビアトリクス > 「……あるいは、もう少しぼくに合う枷が、他にあるのかもしれませんが……
少なくとも今は、それを必要とはしません」
先ほど伏せたポップを、どうしようか迷って……
やはりそのままでも悪いと思ったのかやっぱり立てる。
小洒落た出来なのが微妙に腹立たしい。
ヨキの提案した題に、ほう、と感嘆の息を吐いて、目をしばたたく。
「ヨキ先生らしい感じ方ですね。……とても素敵です。
……ぼくは、きっと、この常世島のことが好きです。
特別、何かを伝えたくて筆を取ったわけではありませんが、
この絵を見た人が、この島のことをもっと好きになってくれたらいい……
とも、思います」
素朴に、素直にそう口にする。そう言えるようになっていた。
『頂きますね』と、サインペンを走らせ――
自らの名と、題――『conversation piece』を札に記し、絵に取り付けた。
幻であり、しかし同時に現でもある――その相反する事実を、示す題。
「お話ありがとうございました。
それでは。
次は常世祭でお会いしましょう、先生」
エプロンを取り、絵に埃よけをかぶせ。
にこり、と微笑みかけて一礼し、部室を後にしていく……
ヨキ > 「学生を終えれば、次なる枷は自ずとやってくる。
芸術家が芸術によって生きるということは、いつの世もサバイバルめいているものだ」
(ペンを走らせるビアトリクスへ、悪戯っぽく目を細める。
自分が口にした通りの題が、絵に添えて飾られる)
「ほう?それはそれは……タイトルの使用料でも、頂いておきたいところだが。
君に免じて、サービスとしておいてやろう」
(全くの冗談。
ビアトリクスの表情が柔らかく変化し、言葉に明るい豊かさの増していることに、
ヨキもまた充足感に満ちて微笑む)
「…………。他者へ伝える力のないものに、名前を与えることは出来ない。
ヨキが題を与えることが出来たのは、ひとえに君の考えと筆とが、それだけの力を持っていたからさ。
安心するがいい。賑わいのない祭りに、人は惹かれなどせん。
この絵は立派に――常世祭の一部として、見た者の心に残るだろうよ」
(ビアトリクスへ首肯を返す。
去ってゆく背を見送り、翌日の目覚めを待つかのようにしんと眠る作品たちを見渡して――
ヨキもまた、静かに部屋を後にする)
ご案内:「美術部部室」からヨキさんが去りました。<補足:人型/黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡/197cm/鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ご案内:「美術部部室」からビアトリクスさんが去りました。<補足:褪せた金髪 青い瞳 男子制服の上にエプロン [乱入歓迎]>