2015/11/06 - 22:17~03:06 のログ
ご案内:「学生街 学園祭会場」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:やや顔色の優れない、無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。乱入歓迎。>
獅南蒼二 > 学園祭に浮かれムードの学生街に、似つかわしくない白衣の男。
周囲を気にしてか煙草を吹かすことはせず、通りの真ん中を静かに歩く。
顔色が優れないようにも見えるが、それに気づくものは少ないだろう。
露店の客引きもチラシ配りの学生も、彼に声を掛ける者は稀だった。
「……だんだんと大掛かりになってきたものだな。」
露店を順に見ながら、特に感情の籠らない掠れた声で小さく呟いた。
特に目的があって来たわけではない。今、この瞬間も研究は進んでいる。
第三研究室では、魔力の高効率変換と魔術出力の向上に関する術式による損失率の変化を、コンピュータが計算しているところである。
……思った以上に空いてしまった時間をどう使うか悩んだ挙句、男は気まぐれで、自身に最も縁の遠い場所を訪れることにした。
それだけの事だった。
獅南蒼二 > 魔術学に関する発表、出し物や、魔導具の露店も出ていると聞いた。
そういった意味では、縁の遠いものばかりでもないだろうか。
……とは言え、こういった学園祭において、学術的な出し物はどうしてもマイノリティである。
無論、楽しむことを否定するわけではないが……学園生活とチョコバナナやフランクフルトがどう関わるというのだろうか。
所謂キャリアデザインの一環として考えればいいのか?
「…いっそのこと、酒でも売ってくれればいいんだがな。」
流石に学生街、表立って酒を売る露店はそうそうない様子だ。
獅南蒼二 > 適当なベンチに腰を下ろす。
ついでに、場所代というわけではないが、近くの出張カフェで珈琲を買ってきた。
味には期待できないかもしれないが、この際それはどうでもいい。
「……………。」
珈琲を啜り、小さく息を吐く。
こうして外の空気に触れるのさえ、久しぶりであるような気がする。
けれどこの瞬間も、頭の中ではまだ魔導触媒の構成を考えている。
もはや、思考している方が自然で、そうでない時間のほうが落ち着かない。
ご案内:「学生街 学園祭会場」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、グレーのつなぎ、黒カットソー、首に白タオル、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (特注の軍手で覆った両手にひとつずつぶら提げた塗料の缶が、規則正しい歩調に揺られている。
作業着姿のヨキが、広場を抜けて露店の並ぶ通りへ歩いてくるところだった。
後ろ腰のウエストバッグには何本もの刷毛や太い筆が差されて、色とりどりの汚れに塗れている。
その頬にも赤や黄色の絵具が伸びていて、いかにも今しがた作業を終えた様子である。
流行りの鼻歌などを口ずさみながら街路を歩く足取りはいかにも軽い。その軽い足取りのまま――
ごく自然な様子で、獅南の前をすっと通り過ぎて行った)
「………………、なッ」
(獅南の前から一メートルほど距離を離したところでようやく振り返り、二度見した。
まるで幽霊でも目撃したかのような顔で、獅南へ向き直る)
「……こんなところで会うとは思わなんだ、獅南。君、よもや生霊ではあるまいな」
獅南蒼二 > 思考に囚われている獅南は、道行く学生には意識を向けていなかった。
それは外観からして周囲と一線を画しているヨキが通り過ぎても同じ事。
二度見したときにヨキが声を漏らさなければ、気付きもしなかっただろう。
「……随分と酷い恰好だな。」
ヨキへと視線を向ければ、僅かに目を細めてそうとだけ呟く。
それから、珈琲を飲み干して、
「私も同じだ、こんな場所に来ようとは30分前までは想像もしていなかった。
恐らく生霊ではないと思うが、本人が死んだことに気付いていないという例もある…あまり自信は無いな。」
ヨキ > (獅南の前へ歩み寄り、絵具の缶を足元に置く。
軍手の甲で小鼻を軽く擦ると、鼻先に緑色の跡が小さく残った)
「絵を描いていた。向こうの、広場で。今はその休憩時間だ」
(獅南の顔を見下ろす。
晴れ間の中でも陰が濃くなったように見える顔に、小さく眉を顰める)
「……紀要で君の名を見た。そちらこそ、酷いツラをしておるぞ。
その様子では、えらく根を詰めているようではないか?
作業か中断したか、あるいは誰かと待ち合わせ……そんなところか」
獅南蒼二 > 示された広場の方へ視線を向けてから、ヨキの鼻先の、緑色のアクセントを、分かりやすく目を細めて見つめ…
「なら、その顔も芸術作品の一環か?」
小さく肩を竦めて、笑った。
それから、カップをベンチの横にあるゴミ箱に放り込んで、
「酷いツラは元からだが、授業が無くては他にやることも無くてな。
お陰で、アンタを焼く炎が完成するまでもう一歩だ……果てしなく遠い一歩だが。
それに作業はまだ進行中だ…私の代わりに、研究室の机に置いてある天才が計算しているよ。
……思ったより難問だったらしく随分時間がかかっているがね。」
ヨキ > 「は。あれが――(広場の方角を一瞥し、)――完成する頃には、ヨキもますますカラフルになっていることだろうよ。
君の術式に通ずる色彩を織り成しているやも知れん」
(軍手を雑に脱いで、腰の鞄に突っ込む。
見れば作業着のあちこちにも絵具やペンキや、洗っても落ちることのない粘土の跡が染みついている。
獅南の隣へどっかりと腰を下ろして、一息吐く)
「『特別講義』でも一席弁じてみてはいかがかね。
常世学園が誇る獅南蒼二の教えに、魔術学に目覚める者が居るとも知れん。
……ふは。君と『天才』が組んでは、ヨキも一溜まりもあるまいな。
このヨキには、弱点がさまざまに多いでな……どんな魔術とて、イチコロにされてしまうよ」
獅南蒼二 > 「私の術式に?
残念だが、凡人でしかない私は色彩などと認識したことも無いな。
尤も、完成品は楽しみにするとしよう…一つ、ここを訪れる理由ができたな。」
本心とも、社交辞令とも取れる言葉…表情は変わらず、読み取るのは困難だろう。
隣にヨキが腰を下ろしても表情は変えず、首を僅か、横に振り、
「私は退屈な話をするのが得意なようでな…外に向けた講義なら、この学園にはもっと適任な者が居るだろうさ。
それに、目覚めてからこっちに来てくれたほうが、話が早くて面倒が無い。
……残念ながら埃を被っていたくらいの老体だ。
それに……」
視線をヨキへ向けて…静かに目を閉じてから…開き、
「……アンタ1人を焼いても、アンタの理想は焼けないだろうからな。」
ヨキ > 「ヨキとて、君の式は何が書いてあるのかさっぱりだ……辛うじて感じ取れたのは、『きらきらして綺麗だ』とだけ」
(言いながら、広場の方角に向けて右左と首を伸ばす。
屋台の隙間を行き交う人通りから、ようやく何か描かれているらしい大きなパネル……の、端っこが見える)
「ライブペインティングというやつでなあ。
明日には完成させて、最終日に撤去する。忘れぬうちに見ておくがいい」
(売り言葉に買い言葉とばかり、平坦な調子で口にする。
顔を正面へ向け、唇を緩く引き結んだまま、視線だけが隣の相手を見る)
「…………。君は本当に根っからの研究者気質だな、獅南。
もし君のペンや魔導具が絵筆であったなら、そのまま芸術家として通用するぞ。
たとえ他の人間の方が、話をするのが巧みであろうと……君の頭の中にあるものは、他に並ぶ者もないはずだ」
(自分一人を焼いても、という言葉に、く、と喉で笑って)
「そうだ。いつかヨキが焼かれても、この島には、そして本土には、ヨキの育てた子らが居る。
ヨキはこの命ある限り、自分の教えを広め続け――
ヨキ滅びた後も、ヨキの子らが永劫この理想を生かし続ける」
(獅南の目を、じ、と見る)
「君にとっては、ヨキの他にも『焼きたい』と思う相手がさぞ多そうだな。
…………。強すぎる火は、君をも焦がすぞ」
獅南蒼二 > 「聞いた事くらいはある…その場で描き、変化させていくのだろう?
部屋に籠る芸術家かと思っていたが、案外とパフォーマーでもあるのだな。」
釣られるようにして視線を向けたが、何が描いてあるのかまでは分からない。
それどころか、端っこしか見えていないので全体像も大きささえも分からない。
後で見に行ってみるか、と、内心で確かにそう思った。
ヨキの言葉には、それが賞賛であろうとも顔色を変えることは無い。
他人に賞賛されることの少ないこの男だは、それを渇望しているわけでもなかった。
「並ぶ者が居ないのなら…やはり、私が魔術学を昇華しなければならないだろう。
それを広めるのは私でなくてもいい。私にも教え子は…恐らくアンタ以上に、多く居るだろうからな。」
獅南は毅然と、それこそ侮るかのように、その目を見つめ返す。
愚直で破滅的なまでに魔術学に傾倒した男は、相応の自信と覚悟を持っているようで…
「私の炎は人を焼くだろうが…私が本当に焼きたいものを焼き尽くすのは“魔術学”だ。
潜在的なものも含めて、全ての異能者を焼くことなど到底不可能だが……魔術学が異能を凌駕しさえすれば、私の理想は達せられる。
この身が焼き尽くされようとも、薪になれるのならばそれでいい。
…炎がより大きく燃え上がるのならば、な。」
くくく、と楽しげに笑ってから、視線を外す。通りを行き交う学生をぼんやりと眺めながら…
「いつか、私を生かしておいたことを後悔する日が来るかも知れんぞ?」
ヨキ > 「ヨキは、やりたいと思ったことには何でも手を付けるクチだからな。
絵を描いて、粘土を捏ねて、木を彫って……
広場で絵を描けば、展示場に作品も飾る。美術館にも並べたし、図録にも寄稿した。
頭の中に描いたものは、余さず吐き出さねば気が済まんよ」
(遠目には、何か派手な色彩が見えるばかり。
自作のパネルから目を離し、獅南へ顔を引き戻す)
「『凡人教室』……凡人とは名ばかりの、有能な者が集まっているそうではないか。
……いや、集ったのではなく……君の道について行けている者たち、と言った方が正しいか。
教えを乞い、また自ら進む力のある生徒は……強い」
(前髪の陰が落ちる金色の眼差しは、灼けつくような光を湛えて渇いている。
笑みを消したヨキの目は、どこまでも黙して座する犬に似ていた。
学生を眺める獅南の顔を見据えたまま、小さく呟く)
「君が生き延びることについて、ヨキは何一つ後悔などせんよ。
もしもヨキが悔いることがあるならば、それは――君の道が、望まずと断たれることだ。……」
(獅南と同じく往来へ顔を戻し、しばし黙る。漸う口を開き、)
「……なあ、獅南。『異能を凌駕した魔術学』は――
異能による魔術の欠陥を補い、『魔術学そのもの』を高める礎とはならんのか。
君の理想に達した魔術学が、『異能の欠点を補ってやった』と……
そんな傲慢は、認められてはならんのか?」
獅南蒼二 > 「アンタこそ、その情熱をそのままに研究者にでもなれば大成しそうだな。
…尤も、アンタがまともな発明をするようにも思えんが。」
楽しげに笑いながらも、視線をヨキへ向けることは無い。
この場所なら大丈夫かと、ポケットから煙草を取り出して…
「私の理想を、私の亡き後も生かす者は少ないかも知れん。
だが、種は撒いてある…それに、魔術学の知識は各自の努力と研鑽によって確実に積み上げられていくだろう。
いつの日か必ず、芽吹く日がやってくる……私の道が断たれようとも、だ。」
ごく自然と、ライターで火をつける…それからペルメルの箱をヨキにも差し出して、
「異能が単なる害…アンタの言葉を借りれば“花粉症”のようなものなら…それを抑える魔術は編み出されるかもしれない。
だが…異能は“害”でありながら“力”でもあるだろう?」
「凌駕するということは、異能の“力”さえ取るに足らんと言えるほどに魔術学を昇華させるということだ。
そうなれば、異能の欠点を補う必要など無い…どころか、異能の有無など……しかしまぁ、ただの夢物語だよ。」
紫煙を燻らせながら、とりとめもなく語る。
少なくとも異能と魔術の融和は全く考えてもいないようだ。
「……しかし、アンタは何故そうまでして“共生と融和”に拘る?
私に言わせれば、特殊な者たちが凡人を緩やかに支配するような共生と融和に、どんな価値を見出しているんだ?」
ヨキ > 「くはッ。ヨキが研究者として籍を置くならば……そうだな、生活委員会にでもしておくか。
発明のアイディアだけならば、いくらでも出てくるぞ。採算度外視の、賑やかしに過ぎんがな。
……まったく、ヨキはヨキで、スタンドプレーが性に合うものだ」
(差し出された煙草の箱から、一本を引き抜く。
そのままライターの火を貰い受け、自身の膝に頬杖を突いて煙草を抓む)
「芸術も魔術も、あるいは医学も数学も、道を求むるならば種蒔きは必要だ。
だからヨキは、『君の理想』が途切れることなく続くことを望んでいる。
それがいつしか、ヨキ自身の凋落を招くことになろうともな」
(息継ぎ。煙を呑む)
「……ヨキは異能や魔術が顕れる前の世界も知らぬし、魔術学の領域にも疎い。
異能が霞むほどに魔術が深化し、誰しも余さず魔導具や魔力によって、魔術を行使できるようになった世界……
異能者が世に溢れることと、何の見分けもつかんようにも思うが」
(続く獅南からの問いに、黙って口をぽっかりと開く。
輪になった煙がふわりと上がって、やがて掻き消える。霧散するのに併せて、うん、と小さく漏らす)
「君や、世界中の少なくない人びとにとって、我々異能者は世界を侵す存在に見えるやも知らん。
だがヨキにとって――ここは、『平凡な人びと』が『非凡を阻害する』世界であったよ。
異能を行使するどころか、在ることそのものが害なのだと……
…………。ヨキは異能者で、異邦人だ。
相手が『望まぬ隣人』に見えるのは、何も地球人や無能力者に限った話ではない。
居心地が悪い者同士……気が楽になる道を求めるのは、自然なことだ」
獅南蒼二 > 煙草の箱を引っ込めて、ポケットにしまい込む。
それから、ヨキの言葉に肩を竦めて、苦笑を浮かべた。
「まったく、今のアンタがどういう存在なのか知らんが、気楽なものだな。
まぁ、この間の話でも随分長いこと山に籠っていたとあったな…そういう性格なのか。」
そして、ヨキの純粋な疑問に対する答えは、殆ど間をあけずに語られる。
「2つの点において決定的に異なる。1つは誰もが平等に力を得ることができるという点。
もう1つは魔術学は異能と異なり、細分化しているとはいえ系統立てられているという点だ。
正体不明で実体の掴めない力が溢れているのとは、だいぶ違うだろう?」
そして、ヨキの言葉を静かに聞いた。言葉を挟むことなく、最後まで……そして、小さく頷く。
「歴史上の魔女と同じ、異能者など最初は怪物扱いだったさ。
それがここまで溶け込んだ…魔女よりよほど早く、な。
…アンタが来るのがもっと早ければ、酷い世界を見ることになっただろう。」
「ははは、アンタにとっては残念な事実だが、多くの場合は“害”であり、世界にとっては“毒”なのだから仕方あるまい?
まぁ、アンタの言葉も尤もだ……だが安心し給え、昇華した魔術学という“猛毒”の前には、その小さな“害”など誰も気にしなくなる。
………共生の形としてはだいぶ歪だがな。」
ヨキ > 「よほど気が長いのだろうよ。
一瞬の気の緩みでうたたねをしたつもりが……実際は暦が巡っていたと知ったことも、よくあった」
(は、と笑った顔は緩かった。
微笑んだ形のまま唇を閉じて、獅南の明快な答えを聞く)
「秩序と平等、系統化……まったく人間が望む学問のかたちの通りだな。
不条理で不明瞭な力を排し、蒙を啓くか。
速度が高まり時間が早まり、世界の距離が縮む当世にあっては……
それに比例したスパンで、かつての歴史を繰り返すのだろうよ。排斥に弾圧――教化を経て受容」
(煙草を指先に取り、獅南へ笑い返す)
「強烈な毒とは、あるいは甘やかなものだよ、獅南。
ヨキは人を誘い、誑かし、自らの理想のうちへ取り入れる悪党だが……
それと同じほどに、巨大なものに凌駕され、圧倒されることをも望んでいるのさ。
……それが芸術家というものだ。
他者を呑むことも、他者に呑まれることも、同じほどに甘美であると知っている。
歪であることは、ダイナミズムの本質のひとつだ」
獅南蒼二 > ヨキの言葉に苦笑して、煙草を携帯灰皿へと入れた。
それから、ぱたりとその蓋を閉じて…静かに立ち上がる。
「…やはり、我々は相容れないようだ。
芸術家たるヨキが、研究者たる獅南の猛毒に倒れるその日まで。」
冗談じみた笑いと共にそう告げて、広場のパネルへと視線を向ける。
それから小さく頷き、ヨキを横目に見て…
「覚えておくといい…私はこの身を薪にしてでも、全てを飲み込む炎を、猛毒を、必ず作り上げる。
そうなれば…異能者も異邦人も、すべて“消滅”することだろう。」
「もちろん、“ヨキ”も例外ではない。」
両腕を軽く広げて演技じみた言葉を吐けば、男は静かに歩きだした。
相変わらず顔色は優れず、足取りも重い。けれど、その歩みが止まることは無い。
振り返らずに小さく手を振って、白衣の男はあるべき場所へと、魔術学部棟へと戻る。
…自らが猛毒と称した、魔術学の高みを求めて。
ヨキ > (立ち上がる獅南の背を見遣る。
追うことも、身じろぎひとつしない。薄らと笑って、声を投げる)
「ヨキは……本当に待っているのだぞ、獅南。
君の夢見るものは――とりわけ大きい。
かつて、言葉を知らぬヨキがはじめて触れた『美』に感電し、今もなお焦がれているように。
純化された美学は、つねに人の心を巻き込んで灼き払うものだ。
……君の炎が、無碍な焼夷で終わらぬことをただ願うよ。
突き詰めることが叶うならば――少なからず、その“消滅”は“浄化”と呼ばれるんだろう」
(筆洗用の水のボトルに吸殻を落として、火を消す。
徐に立ち上がり、今日もまた獅南と道を違えるかのように背を向けて、踵を返す)
「……君自身の信ずるところから、外れてさえくれなければいい。
それだけで獅南、君の在りようはまったく正しく、美しいものだ」
(時計を見上げれば、休憩の時間は獅南との会話にのみ終始したらしい。
画材を拾い上げて、再び元の歩調で広場へ戻る。
ヨキの背丈を超え、横長に伸びるパネルには――
観る者へ向けて身を躍らせる、巨大な獣の姿があった。
しなやかな四肢から伸びる毛並みを、数多の色彩の中に溶け込ませている。
植物を、人間を、魚を、鉱物を、人工物を。
活き活きと生きとし生けるそれらと、朽ちて滅びたそれらとを等しく纏わりつかせ、
喜びに舞うように――あるいは苦悶に悶えるように、光り輝くキャンバスの中に身を翻していた。
まるで獅南へ向けるかのように、刷毛を握った手を高々と突き上げる。
彼に見られずとも構う風はなく、観客の拍手を浴びて――
向き合う。自分ひとりのうちに渦巻く創意を、人びとへ広く知らしめるために)
ご案内:「学生街 学園祭会場」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:やや顔色の優れない、無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。乱入歓迎。>
ご案内:「学生街 学園祭会場」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、グレーのつなぎ、黒カットソー、首に白タオル、黒ハイヒールブーツ>