2015/11/07 - 21:28~00:17 のログ
ご案内:「学園地区/学生街 学園祭会場」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、グレーのつなぎ、黒カットソー、首に白タオル、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (晴れた午後。学生街にある広場のひとつ。
出店やパフォーマンスのために開放された空間は、今日も変わらず賑わっている。
二日かけて絵を描き上げた巨大なパネルの前で、晴れ晴れとした顔のヨキがしゃがんで赤子に笑いかけていた。
おむつで尻を膨らませたよちよち歩きの子どもが、絵本とも見紛うほど派手な極彩色で描かれた獣の姿を、ぽかんと見上げている。
ヨキの背丈を超えるほどの高さの横長のパネルいっぱいに躍る、狼めいたしなやかな四足の獣。
空に日が照り、花が咲き、水が流れ、鉱石が光り、木々が朽ち、大地はひび割れ、岩が風化する。
幅広の刷毛や太筆、ペインティングナイフで叩きつけたような絵具の跡が、ヨキの手の動きをくっきりと残していた。
黄金色の光に満ちた画面の下、ブルーシートの上には色とりどりの絵具がこびり付いている。
母親とともに歩いてゆく子どもに向かって、ばいばい、とこれまた絵具のくっついた顔で笑って手を振る)
ヨキ > (四本指用の軍手を嵌めてつなぎを腕まくりした姿は、実技の授業をやっているときと同じ格好だ。
そこで知った顔の生徒たちが広場を訪れて、ブルーシートの上に置かれた画材を跨いで移動する。
パネルの傍らで生徒たちと喋っている間、通りがかった見物人が写真を撮ったり、眺めてはまた立ち去ってゆく。
異能でパフォーマンスを披露する者、魔術の実演を行う者、それらの能力を使わずして負けず劣らず、身一つで芸を見せる者。
ちょっとしたアートイベントの様相を呈する昼下がりの広場は、和やかな空気に満ちていた)
ヨキ > (生徒たちと別れ、軍手を脱いで自作の前から離れてゆく。
広場の中の通りを歩いて、立ち並ぶ出店を眺め回す。
フレッシュジュースの店を見つけて一杯を買い求め、日差しの下でぐびりと煽る。
陽光は暖かだが、吹き渡る晩秋の風は些か冷たい)
「……――ッぷはァ」
(うまい。顔中が活き活きとしている)
ヨキ > (カップを片手に絵の前まで戻り、見上げる。
明日の常世祭最終日いっぱいは飾られて、閉会後には撤去される。
この制作を元にしていくつかの縁が出来、中には仕事に繋がりそうなものもある。
片手をつなぎのポケットに突っ込んで、再びジュースを一口。
部屋に籠る芸術家かと思っていた、という言葉を思い出す)
「……パトロンは、自ら見つけに行かんとな」
(絶えず動き、活動し続けねば、研究費は出ない。
次から次へと湧き上がる創意を形にし続けなければ、窒息してしまうような気がしていた。
今もヨキの脳裏には、絵や金属や、そうでないものが浮かび膨れ上がってゆく。
『人間でないこと』は、ヨキが息つく間もなく動き続けるための最大の武器だった)
ヨキ > (最後のジュースを煽って、プラスチックのカップを小気味よい音を立てて握り潰した。
さて、と手のひらを擦り合わせ、画材の片付けに入る。
生徒たちに劣らず、ヨキも常世祭の思い出の多さには些かの自信があった。
楽しいから存分に見て回れ、と触れ回るだけのことはあるつもりだった。
作品を冷やかす生徒たちに向けて四本指のピースサインを向けながら、歯を見せて笑う。
まるで生徒のひとりのように――いつまでも、成り得なかった生徒であり続けるかのように。
夕暮れへ近付く広場は、未だ賑わいを鎮めることがない)
ご案内:「学園地区/学生街 学園祭会場」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、グレーのつなぎ、黒カットソー、首に白タオル、黒ハイヒールブーツ>