2015/11/27 - 21:48~02:47 のログ
ご案内:「委員会街」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > (用事のために訪れた委員会街。
 ラウンジで知った生徒がアルバイトをしているという話を思い出して、帰る間際に足を向けた。
 十一月下旬の寒い午後。晴れてはいるが、風がひどく冷たかった。
 青褪めた肌をますます冷やしながら、暖かなラウンジの屋内へ足を踏み入れる。

 普段あまり訪れることのないカフェ。
 幾人かの顔見知りの生徒と挨拶を交わしながら、働く面々をぐるりと見渡した)

ご案内:「委員会街」に鏑木 ヤエさんが現れました。<補足:腰まで伸ばしたミルクティ色の髪。 鮮やかな紫の瞳。エプロンスカート。>
鏑木 ヤエ > (ひゅうと冬風吹く外とは打って変わって暖かい店内。
 店内といえども、彼女の着込んだ飲食店特有の寒々とした半袖は夏とも変わらず。
 何も普段とは違うことはない。過酷な学生アルバイト。
 高給に釣られて厳しいトレーニングを乗り越えたその先)

「っらしゃいませー、何名様で?
 2人? えーと、それじゃああの窓際の――」

(いつもと何ら変わらぬローテンション。
 やる気のない接客はトレーナーに叱られてばかりだのに変わらない。
 ミルクティ色をした長い髪を揺らして君の元へ)

「おや、珍しいじゃねーですか。ご注文をどうぞ。
 先に言っておきますがやえのお持ち帰りのテイクアウトはサービス外ですよ」

(ふん、と鼻を鳴らして、ボールペンをカチャリとノックした)

ヨキ > (小柄な明るい癖毛がふわふわと揺れるのが見えた。
 お、と小さく笑って、そちらへ足を向ける。
 ヤエが案内した二人組のあとに続いて、軽く手を挙げて挨拶)

「やあ、鏑木くん。
 少々委員会街に用事があってな。
 そのついでに、君の顔を見に来てみた」

(二人掛けのテーブル席に着いて、それでは、とメニューも見ずに)

「あすこに書いてあった、マロンパフェをひとつ。
 持ち帰りがサービス外なら、君の休憩時間まで大人しく待とうかな。
 労いのケーキならば馳走するよ」

(ヤエが鼻を鳴らすのを気にも留めず、にっこりと笑った)

鏑木 ヤエ > 「年頃の女子学生は多感ですからね。
 顔を見に来たと言われればまあ悪い気はしないでしょうて」

(さらりさらさら、メモ帳に綴られる汚い字。
 接客業の基本のキもガン無視くれてやるような接客を)

「ははあん、アレ結構ぼったくりなんですよねー。
 値段の割にはそんなに量がな――んでもねーですよ。ええ。
 マロンパフェひとつ、直ぐお持ちしますよ」

(メモ帳をポケットに突っ込んで、ふわりとエプロンドレスを揺らす。
 唯一店員らしいことといえばこの制服が良く似合うことくらいではあるが唯一だ。
 踵を返す)

「それからやえのハワイアンパンケーキをひとつ。
 やえ今日休憩取ってねーんですよ。ご指名入りましたーって言ってきます」

(囁く声音)

ヨキ > 「そう言ってもらえるならば、ヨキも悪い気はせんよ」

(売り言葉に買い言葉。
 軽薄な言葉が重なって、ユルい。
 マロンパフェの真相には、テーブルに手を突いて)

「……おい。おいおいおい。鏑木くん。
 興を削ぐようなことを言わないでくれたまえ。
 まあ、君に会うための席料と考えれば安いものだ」

(苦い顔で笑ってみせるジェスチャ。
 ついでにヤエがすかさず滑り込ませた注文に、傍らのメニューを捲った。
 そこそこのいいお値段)

「…………、安いものだ。指名料だな」

(ふっと笑って、ぱたりと表紙を閉じた)

鏑木 ヤエ > 「……お待たせしました、本指名嬢の鏑木です。
 センセ、来てくれて……アリガト」

(冗談口遊みながらてこてこ両手にパフェとパンケーキを抱えて歩み寄る。
 エプロンドレスから普段のコルセットスカートにカーディガン。
 赤色は暗い服の目立つ店内では一際明るい)

「さて、少しばかり休憩を貰ってきたので。
 そうですねー、改まってこういう場で話をするとなるとドキドキしますね。
 ね、センセ。やえのこと好き? ね、ダーリン。
 愛してるって言って?」

(無表情で捲し立てるそれは風情もなにもなく。
 冗談ならばもう少し表情を緩めたほうがいいだろうに。そんな表情。
 カラコロ転がすような軽口は彼女の機嫌が中々によい証拠で)

ヨキ > 「フフン。どう致しまして、鏑木くん。
 さて、お待ちかねだな」

(両手を合わせる。深々と笑った口はご機嫌だ。
 パフェのグラスを受け取ると、金色の目がきらきらと輝いた。
 向かいの椅子へどうぞ、と促しながら、軽口にたじろぎもせずヤエを見返す)

「お疲れ様だ。ここの勤務はなかなかハードと聞いている。
 ヨキが来るまでに、君が辞めずに居てくれて安心したよ。

 君のことが好きかって?勿論さ。
 心の底から愛しているとも」

(目を細めて身を乗り出し、いかにも尤もらしい低い声で囁く)

「君の労働に乾杯」

(身も蓋もない台詞で笑って、お冷やのグラスを相手に寄せた)

鏑木 ヤエ > (ぽすん、と椅子に収まった。
 相も変わらず彼女の身長は小さい。軽々と収まった。
 無論、成長期はとうのn年前に終わっている故に当然といえば当然だ)

「ウワア、最高に軽い男ですね。
 何人女生徒引っ掛けて遊んでるんですかね」

(自分が言いだした癖に散々な物言い。
 君が差し出すグラスにコツリ自分のグラスを当てる。
 グラスとグラスの冷たいキス。ツウと唾液代わりの水滴が垂れる)

「かんぱーい」

(労働後の一口は例え冷やしただけの水道水であっても心地いいものだ)

ヨキ > (対するヨキの長身もぴったりと収まって、客の中でも随分と大きく目立った。
 グラスを傾けて喉を潤しながら、にいと笑う)

「失礼な。ヨキはいたずらに婦女子の心を弄ぶ真似はしておらんぞ。
 愛しているというのは誠心誠意、天地神明に誓って本当さ」

(黙りはすれど嘘はつかないというのがこの教師の定評であったが、
 それにしてもチャラかった。
 スプーンを取って、パフェのマロンクリームとバニラアイスを突き崩す。
 掬い取って大きな一口。んまい、と咀嚼する顔は大型犬に似ていた)

「で?最近は他の授業にも、きちんと出席しているかね?」

(口端のクリームを器用に舐め取る。
 仮に腐っても教師。現に腐っていても教師だ)

鏑木 ヤエ > 「ひゅう。
 そんなことじゃあ何人だって引っ掛かりますね。
 今のもやえじゃなかったらキュンッキュンのドッキドキですよ」

(ねえダーリン、と言葉を継いだ。
 実にやる気のない光景であり、中々に誰かに聞かれでもすれば噂が立ってもおかしくない。
 傍から見れば頭のゆるい脳髄ゆるふわのクソ女がデレデレと)

「人並み四分の一くらいには。
 このチョーシならきっと来年も2回生ですよ。
 まあ、悪い気はしませんけども」

(困ったように肩を竦めた。
 全く以て本人は困っていないのだが、言葉上それに合うジェスチャーを添えた。
 ザクザクと切り分けるパンケーキ。
 黙々と口にはこ――ぼうとして)

「ダーリン、一口いりますか」

(ずい、と君に突き出した)

ヨキ > 「何だ、君は『キュンキュンのドキドキ』になってはくれんのか?
 まったく教師の愛情というものは一方通行であることだな」

(一方のヨキもヨキで、つれない女生徒にモーションを掛けているようにしか見えない。
 ヤエの出席状況については、は、と吹き出して)

「仕方がないな、君は。
 授業に出さえすれば面白い切り口で考察するくせ、そもそも出ないようではな。
 ヨキとて君と話が出来るのを楽しみにしているのだが」

(差し出されたパンケーキに、ぱちりと瞬く)

「いる」

(即答した。一片の淀みも迷いもなく、平然と顔を突き出す。
 牙の並んだ大きな口で、フォークの先からぱくりと頬張る)

「んむ。こちらも旨いな……
 ありがとう。君にもやろう」

(新しいフォークを取って、パフェの上の丸々とした栗に突き刺す。
 マロンクリームやアイスや黒蜜をくるりと掬い取り、ほれ、とヤエの前へ差し出した)

鏑木 ヤエ > 「やえは燃費がわり―んですよ。
 授業に出て給料がもらえるようになったら多分出席しますよ。
 それに存外この島もガッコーも居心地がいいんです。
 学生でさえいればずうっとこうやっていれますからね」

(一瞬で消え失せたパンケーキの刺さっていたフォークを見遣る。
 ここで頬を染めさえすれば存分に可愛げのある女子生徒なのだが、)

「あ、いりますいります。
 やえ、栗は好きですよ。美味しいですよねコレ。
 一番おいしいとこ頂いちゃってスミマセン。
 さすがプレイボーイ、レディの扱いがなってるってモンですよ」

(もっきゅもっきゅと栗を小さな口で頬張る。
 そういえば、と無言の間をかっ裂いて咀嚼しながら口を開く)

「切り口は大して面白くもなんともねーですよ。
 別にやえは思った通りに喋って思った通りのことを言ってるだけですし。
 世間のイイコとは違うんですよ、イイコとは。
 プロのイイコなのでセンセー好みの回答はできねーんです」

ヨキ > 「ヨキに会うことが給料代わりであってくれればいいんだがな。
 あまり長居をして、除籍されてしまっても知らんぞ。
 ヨキが優しくしてやれるのは、君が真面目に働いて、学園に籍を置いている間だけだからな」

(ヤエの小さな口が栗を頬張る様子に、満足げに微笑む。
 アイスを食べ、コーンフレークにクリームを混ぜて口へ運び、もぐもぐと咀嚼する)

「君はぼったくりと言うが、値段に見合うほどに美味いではないか。
 可愛い生徒のためならば、栗くらいいくらでもくれてやるわい」

(パフェを食べ進める手を止めて、水を飲む)

「その目の付け所が、聞く側にとってはユニークだからな。
 君のようにひねくれている方が、ヨキにとっても好みさ。
 ヨキもそのような教師で在りたいとは思っているがね。
 せっかくの生徒らに、枠に嵌られてしまっては困るのだ」

鏑木 ヤエ > 「ま、枠を外れるのもきっと彼らにとっては怖いんですよ。
 フツーにこだわってフツーに憑りつかれて。
 ……いつの話だかは忘れちゃいましたけど。
 期待しすぎちゃいけねーですよ、期待は裏切られるモンですから」

(もくもくと頬張るパンケーキ。
 ナイフとフォークをべたべたにしながら咀嚼し、)

「除籍されたらされたときですよ。
 されねーことを願いますがまあされたら仕方ないでしょうて。
 やえには何も出来ないので真面目に学費を納め続けるのみですね。
 その口ぶりじゃあ籍を置かなくなったら優しくしてくれないみたいじゃねーですか。
 ねえダーリン」

(真っ直ぐと君の犬の双眸を見つめて、薄く嗤った)

ヨキ > 「君は度胸があるな。
 発言者が多い講義というのは、盛り上がるものさ。
 ……なあに、ヨキの仕事は裏切られることだ、いい意味でも、悪い意味でも。
 いちいち一喜一憂などしては居られんよ」

(不意に向けた横目で、テーブルの隅に立てられた小さなメニューが目に入る。
 イチゴのタルト。美味そうだな……としばし目を奪われて、ヤエに目を戻す)

「あくまでマイペースを貫くか。
 君の流儀ならばそれもまた結構、としか言えんな。
 ヨキは学園と君ら生徒の忠犬であるからして……待つよ、君が来るのを。

 ……何?ふふ。籍を置かなくなったら?
 さあ、君が生徒としてきちんと卒業を果たしてくれたなら、そのときは諸手を挙げて喜んでやろう。
 だが除籍に退学に放校ときたら……そのときは保証しない。
 ヨキはプロアマ問わず、『イイコ』の味方であるから」

(言い切って、にっこりと笑った)

鏑木 ヤエ > 「ははあん」

(何時もと変わらぬぼんやりとした紫を向けた。
 ゆうらり視線の揺らぐ曖昧な紫色は君の金を避ける)

「なあにを保証しない心算ですかね、ダーリンは。
 やえは別に除籍に退学に放校、どれが起きてもやえであることには変わりないですよ。
 ……、はあん。 さてはダーリンはやえじゃなくて生徒が好きなだけでしょう。
 裏切ったわね、法廷で続きは話をするのよ」

(軽口に織り交ぜた言葉は少しばかりナイフの先に毒を塗った。
 わかりきったことを今更知ったかのような子芝居)

「忠犬忠犬って大昔にいましたよね、そんな犬。
 なんでしたっけ、ハチだかパトラッシュだか。
 それと比べるとダーリンはぜえんぜん忠犬には見えないんですよねえ。
 どちらかといえば猟犬ですね」

(笑顔は真正面から受け取った。
 代わりに仏頂面が君に向くことになった)

ヨキ > 「判った?」

(細めた金の瞳は、瞼の陰が落ちてその光が目立った。
 頭蓋の奥でロウソクが揺れているかのような眼差し)

「そう。ヨキは誰より『生徒』を愛しているんだ。
 だから実際のところ、ダーリンと呼ばれても刺されてもあまりピンと来ない。

 ……ただ、今はその姿勢を直そうとしている最中」

(目を伏せて、アイスの陰に潜り込んだ白玉を拾い上げて口に含む。
 咀嚼しながら考える。空にした口で、続きを話す)

「色々あってな。
 そういう姿勢はよくないと言われた」

(ヤエの仏頂面を構成する顔のパーツを、ひとつひとつ見分するような目。
 小さく笑う)

「ヨキほど学園に忠実な犬は居ないと思うがね。
 ……そうだな、『猟犬として忠実』と言った方が正しいか。
 シュッとしたフォルムの猟犬よりも、コロコロと君に懐く忠犬の方が好みかね?」

鏑木 ヤエ > 「おや、ダーリンは言い出したら聞かないタイプかと思ってましたよ。
 さあて、どんな色女にそんなこと咎められたんです?
 それともやえより大事で愛している生徒?
 さてはわかりました、学園のエライヒトですか」

(両手を組んで薄く笑った。
 君が自分の姿勢を曲げるというのが想像できなくて、どうにも可笑しかった)

「まあ恋愛沙汰になった時に困りましょうて。
 あ、職場恋愛のセンもありますね。
 新聞部も面白いゴシップはさっさと見つけてきてほしいモンですよ」

(一拍)

「でも、間違ってるとは思いませんよ。
 寧ろ、それが一番カンタンで考えなくていいですから。
 やえだって誰とも寝るようなクソビッチですからね。
 自分の"好き"に文句言われたら速く死なないかなー、って思いますし」

(つらつら台詞を暗唱するような言葉。
 一息で吐ききる言葉は実に正直で、実に薄汚れている)

「やえはポリッシュ・ローランド・シープドッグが好きですよ。
 あの愛らしいフォルムに目つき。
 昔よく見ましたしねえ、猟犬はそこまで好きじゃないんですよ。
 愛玩動物万歳、ってヤツです。 もっと好きなのは頭のいい牧羊犬」

ヨキ > 「君より大事な生徒なんて居ないさ」

(みんな平等。)

「ただもう少し、『人間らしく』なろうと思った。
 なってみよう、で一朝一夕になれるものとは思わないが。

 犬だって、たまには反省くらいする。
 もう女性に刺されるのは御免なのでね」

(多くは言わずに、ふっと柔らかく笑った。
 クソビッチ、という呼称に、わざとらしく眉を顰めて)

「何だ。金に困っておるからと、売春はいかんぞ。
 そうでなくば、君は夢魔の類であったか?
 まだ若いのだから、性病はやめておきたまえ」

(下世話な話はパフェの味に何ら影響を及ぼさなかった。
 すっかり少なくなったパフェの、溶けかけたアイスを掬う)

「君の母国の犬か。
 ……ふうん、君のふわふわの髪さながらに、牧羊犬が好きなのだな。
 頭の良さは到底叶わないが、頭の隅に留めておこう」

(尨毛めいた黒髪を揺らして、スプーンを口へ運んだ)

「男も頭の良いのが好きか?」

鏑木 ヤエ > 「ええ」

(問いにはすぐさま首肯を。
 これ以上なく明確な回答だった)

「勿論頭が好いのと悪いのどちらかと言われれば前者でしょうて。
 やえはね、やえの回答にペケを付けられる人が好きですよ。
 何故やえの回答が間違っていて、何故君はやえを否定するのか。
 そんな人が好きですよ。
 考えねーで頷くだけの阿呆ならこけしに向かって話していたほうが幾分もマシです」

(ふう、と一息つくように温くなった水を呷った)

「ははあん、女性に刺されたと。
 まあ当然といえば当然というか。なるほど、ってトコですかね」

(無感動に、溢した)

ヨキ > 「こけしに向かって呟く鏑木君……なかなかに可愛いな。
 いや、ともかく君らしい話で安心した。
 誰とでも寝るクソビッチなどと宣うから、てっきり向こう見ずな男でも好んでいるのかと。
 ますます君が労働ばかりに精を出しているのは勿体ないな」

(女性に刺された話については、平然として背凭れに寄りかかる)

「……昔の話だがね。
 刺されて去られて、それきりだ。今やヨキもぴんぴんしている。
 それに比べれば、君の言葉の方が随分と直截で好ましい」

(水を飲み干す。
 フロアを立ち回る女生徒が水差し片手にやってくる。
 水のお代わりを注ぐのを呼び止めて、)

「イチゴのタルトをひとつ。
 それから紅茶をストレートで……、君は?」

(ヤエに向けて、首を傾げた)

鏑木 ヤエ > 「節穴にも程がありますね。
 石に向かって話掛けるやえなんて七不思議でもなければあり得ませんよ。
 だからやえは、誰と話すときだって意味を探します」

(瞼を下ろして肩を竦めた。
 何やら余計なことまで言った気がするけれど気にしちゃいけないのだろう)

「……お冷のおかわり。
 借りを作りすぎても返済の目処が立たねーのは困りますから。
 外に放られたときに取り立てに来られても困るんですよ」

(先刻の言葉を思い出しながら、意地悪く笑う)

ヨキ > 「君は言葉を、会話を好いているのだな。
 ……だからヨキも、金属に向き合うのと同じほどに生徒と話すのが好きさ。
 『愛している』というのは、何も嘘ではない。
 本当は、」

(首をこきりと動かす)

「『鏑木ヤエ』と話すことが好ましいと――言い切れればよかったが。
 この心地よさが教師としてのヨキが感じているのか、それとも一人の『ヨキ』という男が感じているものなのか、
 今は見当がつかなくてな」

(注文を済ませた生徒が去ってゆく。
 新しく注がれた水を飲んで、笑い返す)

「ケーキのひとつやふたつ、いちいち取り立てに回ってなるものか。
 ヨキが牙を剥くのは、『悪い子』相手にだけさ。
 常世島に集まる子羊たちを、学園へ追い込む牧羊犬でもあるのでな」

鏑木 ヤエ > 「…………、」

(言葉を手繰った。
 上手い『鏑木彌重』らしい台詞が出てこない。
 数瞬考えを巡らせている最中に同僚からの恨めしそうな視線が刺さるが、
 ひらりと右手を振っておいた。
 休憩を満喫しているのだから黙っておけ、と言外に込めて)

「会話はその人となりがわかりますからね。
 語彙に、表現に、その場その場で選ぶ類義同義の山。
 その一人一人が選んだ理由と選ばれた言葉をきっとやえは愛しています」

(君の囁いた言葉は、彼女であれど暫く思案を要するものだった。
 意味深な言葉。掘り下げるべきか、それとも聞かなかった振りをするのか)

(されど浮かんだのは疑問。
 多重人格でいやがりますか――そんな言葉を飲みこむのは当然不可能。
 彼女が抱えた異能は『堕落論』。嘘がつけない、それだけの異能。
 それは当然のように作用する。相手にどんな葛藤を与えるのか、傷つけるかも知っているのに。
 愛した言葉を自分が一番凶器にしているのを知っているけれども、
 吐き出さずにはいられない)

「タジュージンカクか何かですか、ダーリンは。
 もう一人の僕とでもいう訳ではないでしょうて」

ヨキ > (ヤエと同僚のアイコンタクトが目に付く。
 言外に含まれたものは読めずして、生徒へ微笑みかけるに留めた)

「……“人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける”。
 犬から人間に転じて言葉と共に生きてきたヨキの、その話が君に愛してもらえるのは幸せだな。
 君の豊かの、腐葉土の一部になれるとしたら」

(相手の目を真っ直ぐに見る。多重人格か、という問い。
 傷ついたとも心動かされたとも知れず、燃えていながらにして冷たい瞳。
 ヤエから向けられた言の葉の、刃先を呑み込むように和やかな微笑み)

「……いや。ヨキが長いあいだ、『人間』になり損なっていただけの話だ。
 ヨキは教師として、正しく生きることのほかにはないと思っていた。
 それが随分と――『獣』に寄った姿勢だとは気付かずに。

 今はその、人らしさを得ようとしている最中だ。
 律ではなく、自分の心に身を任せることの実感が未だ湧かない」

鏑木 ヤエ > 「どおしてそんなに"人間"に固執するんだか。
 やえには皆目見当つきませんね。
 やえはやえ。"ヨキ"は"ヨキ"。
 それがどうして気に入らないんだか、やえにはわかんねーですよ」

(ゆるく頭を振って、じろりと君を睨んで)

「獣でもニンゲンでも変わらないでしょうて。
 あなたがあなたであることに変わりはないのにどうしてそんなに区別したがるんだか。
 人らしさ?獣らしさ?
 そんなツマンネー柵の中に閉じこもってちゃダメですよ、きっと。
 羊ですら外に出ようとするのに学園に追い込む牧羊犬が柵に囚われるとは滑稽な」

(つらつら並べる口の悪い言葉は先刻と違って迷いがない。
 君の思想を、思考を否定するためだけの言葉)

「知らなかったものを最近にして知ったのならそうもなるでしょうて。
 なにをそんな素っ頓狂な。
 それが"人間らしい"葛藤であり、"人間らしい"違和感でしょう」

(皮肉なモンですね、と付け足した)

ヨキ > (ヤエの目線を見返す眼差しの柔らかさは変わらない。
 ガールフレンドと映画の感想でも話し合うような顔をして、テーブルに肘を突く)

「ヨキが人の子らを、愛しているからさ。
 こう見えて『自分は自分』という清濁併せ呑む態度をヨキは愛しているし、
 今までもこれからも『ヨキはヨキである』という自認に変わりはない。

 ここでの『人間』とは、子どもが『サッカー選手になりたい』と夢見ることと同じだよ。
 ヨキは君らと同じ『人間になりたい』」

(両の指を組み合わせてテーブルに置く)

「白黒ハッキリ断じて黒を白に塗り替えようとしてきたが、灰色をも愛せよと諭された。
 『獣』というのは、実にピーキーなものでね」

(運ばれてくるイチゴのタルトと紅茶。
 新しいカトラリで切り分けて、一口掬う)

「だから君にも、システマチックな貸し借りを作ろうとは思わない。
 『菓子を頬張る君の顔が可愛い』そう言ったら食べてくれるか?」

(どうだね、と、フォークの先のつやつやのタルトが小さく揺れた)

鏑木 ヤエ > (溜息ひとつ)

「人の子ら、なあんて言ってるうちはきっと『人間にはなれない』。
 だあって自分で線引きしているように、やえには見えますよ。
 ニンゲン同士なら『人の子』なんて面倒な呼び方をしないでしょうて。
 自分で線を引いて、人を高いところに追いやっているようにも見えますね」

(トントントン、と机を叩く。
 軽い音と共にゆるく、テンポを合わせるようにして首を振った)

「ああ、違う。 ――――、言葉が見つからない。
 獣というのはヤッパリわかんねーモンですね。
 やえは改めて、自分が骨の髄までニンゲンなんだと実感しましたよ」

(艶やかな赤色がこちらを向く。
 赤と紫が交差すれば、また溜息をついてぱくり口にした)

「狡いモンですねえ。それが獣とやらですか。
 ホントにダーリンはやえに刺されることなんて考えてないでしょう」

(遠くから、鏑木、と呼ぶ声がした)

(無視)

ヨキ > 「人間の姿になって、真っ新な心持で人間になれると思っていたが……
 生憎と、言葉でものを考えぬ獣のうちから心は固く強張っていたらしい」

(指先で、テーブルに見えない三角形を描く)

「純然たるヒエラルキーの――真ん中。ここがヨキ。
 その上が、君ら生徒。そうしてその更に上が、常世財団。
 …………、

 ヨキの中に引かれた線は、恐らくはそれのことだ。
 ヨキは決して上層には行かんし、高いところへやられた『飼い主』たちとは並べないという意識」

(ヤエへ寄越したより幾分か大きく切り分ける。
 今度は自分で頬張って、もむもむと頬を膨らませる)

「君が喋りたいように喋るのと同じで、ヨキは自分でしたいと思ったことをするだけだ。
 ……君に、ヨキを刺す心算などあるのかね?それは考えてもみなかったな」

(あっけらかんとして紅茶を啜った。猫舌。
 フロアの奥から相手を呼ぶ声に、目線だけで反応する。
 ちらとヤエを見る)

「いいのか」

鏑木 ヤエ > (犬なのに猫舌とはこれいかに)

「……、自分で自分の限界を決めるというのは。
 自分で自分の区切り線を引くのは大層ツマンネーとやえは思います。
 あくまで、やえは」

(見えない三角形をジイと睨んだ。
 自分も自己評価は低い方だが、人が自分を低く言っているのを見るのは不快だと知った。
 人前では慎もう。 そんなぼんやりとした思考が渦巻く)

「やえは中々嫉妬深いですからね。
 ダーリンが他の女といい空気になっていたらすかさず刺し殺すかもしれません」

(これは嘘なんかじゃなく、)

「やえのダーリンに触れんじゃねーですよ、って。
 相手の女を――女以外でも刺すかもしれねーじゃねーですか。
 確率はゼロではないですよ。気まぐれでニンゲンは人を殺します」

(獣も殺せるかはしらないですけど、と薄く笑った)

「行きますよ、随分と休憩以上にサボっちゃいました。
 それじゃあまたね、ダーリン。
 またパフェ、食べに来てくれなきゃやえ許さないんだからねっ!」

(裏声駆使して甘ったるい声色)

(無表情なウインクを君に飛ばして、駆けた)

ご案内:「委員会街」から鏑木 ヤエさんが去りました。<補足:腰まで伸ばしたミルクティ色の髪。 鮮やかな紫の瞳。エプロンスカート。>
ヨキ > 「うん」

(テーブルから手を放す。真っ白なクロスの上から、まぼろしの三角形が消える)

「君につまらないと思われるのが嫌でな。
 だから余計に、こうすることは辞めようと思える」

(ヤエの不穏な言葉に、口元で微笑む)

「流血沙汰は止めてほしいところだがね。
 何てったってヨキは教師で、猟犬だ」

(見えないヒエラルキのいちばん下――『犯罪者』)

「このヨキひとりが刺されるならばまだしも、ほかの女性に害が及ぶのは困るな。
 ヨキは君に牙を剥くようなことはしたくない。
 自分勝手なものだろう?刺されたくないからではなく、君を噛みたくないから自制するなんて」

(可笑しげに笑う)

「また君が居る日に食べに来る。
 君のお給金が減らない程度に、付き合ってくれよ」

(耳に残る甘い声に、手を振り返す。
 テーブルにひとり残されて、タルトの続きを口へ入れる。
 薄い頬を膨らませて、舌鼓を打つ)

「癖になりそうだ」

ご案内:「委員会街」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>