2016/01/16 - 21:06~00:07 のログ
ご案内:「食堂」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > 昼。ランチを取る学生らで賑わう食堂の一角。
複数人用のテーブル席に、ヨキが一人で座っている。
目の前には、水の入ったコップとカツ丼(特盛)の食券。

注文待ちのヨキが何をしているかというと、難しい顔をして本を読んでいた。
本。それも漫画である。先週発売されたばかりの、少女漫画の新刊だ。
淡い色合いの少女がリリカルに微笑む表紙には、丁重にビニルカバーが掛けられ、
油性ペンで『金工研究室』と書かれていた。どうやら、学級文庫のような扱いらしい。

異能も魔術もない世界で、高校を舞台に繰り広げられる青春と恋愛の群像劇。
国内で毎年行われている人気ランキングで常に上位にランクインするその漫画を、
ヨキは難解な人文書とでも向き合うような面持ちで読み耽っているのだった。

ヨキ > 「何故だ……」

地獄の底から這い出るかのような声で呻く。

「何故そこで……言わんのだ……!」

もどかしく、なかなか進展することのない恋愛模様に、ひどく焦れて顔を顰める。
この獣人が惚れた腫れたの機微を理解するには、もう十年ほど必要であるらしい。
唇を結んで一旦ページを閉じ、渋い顔で深い溜め息をつく。

周囲の雑然とした話し声も意に介さない様子で、再び読み出す。

何だかんだ言いながら、満喫しているようだ。

ヨキ > 食券番号32番の方あ、と声が飛んでくると、漫画から顔を上げて徐に立ち上がる。
この世の終わりも斯くやと思われる表情でよろよろとカウンタに向かい、
これでもかという量が盛られたカツ丼のトレイを受け取って戻ってくる。

漫画をテーブルの傍らへ避けて、割り箸を手に取る。

「いただきます」

若い学生や、大食らいの異邦人向けらしいどんぶり。
大きな口で一口頬張って、しみじみとする。

「うまい……」

慣れない恋に逸る少年少女らは得てして口が重いものだが、カツ丼は正直だ。

ヨキ > 空腹に煽られるまま、カツ丼をむしゃむしゃと口へ運ぶ。
子どもみたいに頬張って、カウントでも取っているかのような正確さで同じ回数だけ咀嚼して呑み込む。
それこそ漫画のように山と盛られていたはずの中身が、見る見るうちに減ってゆく。
貪るでもなく、途中に水を飲み、よく噛んでいるにも関わらずとにかく早い。

「ごちそうさまでした」

その薄い腹のどこにそれだけの米と脂とを収める容量が隠されているというのか、
とにかく早々と完食して、空のどんぶりを前に行儀よく合掌した。

――ぐう、と、腹が鳴る。

ヨキ > 普段ならば追加のデザートを注文するところで、大人しく席を立つ。
読み掛けの漫画を読み進めたい気持ちの方が勝ったのだ。
空腹が紛れるほど胸が重たくなるくらいには、漫画に心を奪われているらしい。
周囲の『うら若き肉』たちに涎を垂らすよりはよほど健康的でさえある。

空の食器と漫画を手に、食堂を後にする。
のちに趣味人の巣窟たる金工研究室が盛り上がることは、言うまでもなかった。

ご案内:「食堂」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>