2015/07/27 - 21:08~00:02 のログ
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>
獅南蒼二 > 研究とは生活の一部である。もとい、生活とは研究の一部である。
そう言っても過言ではないくらいに、ここ数日間の彼の生活は、研究一色に染まっていた。

部屋じゅうに散らばっていたメモ書きは一か所にまとめられ、結果的に1ヶ月分の新聞紙よりも高く積み上がっている。
机上の実験装置での小さな実証実験に使った魔石や鉱石の欠片が、机の横の箱に山積みになっている。

愛煙家であるこの男だが、灰皿には殆ど煙草が残されていない。
煙草を吸うことさえ忘れて、没頭しているのだろう。

小さな魔法陣に、火をつけたマッチを落とす。
火が魔法陣に近付けば、火はまるで空間にかき消されるように失われ…魔法陣が光り輝いた。
……が、魔法陣の一角、複雑に描き込まれた文様の一部が紅く発光し…
「………これでも干渉を引き起こすか。」
……バシュッ…と音を立てて、小さな小さな爆発を引き起こした。

獅南蒼二 > 扉が開いている理由は簡単だった。
まるで小さな子供が遊ぶ花火のような爆発だが、それでもこの狭い部屋では耐え難い量の煙を上げる。
吹き抜ける風にそれを排除してもらわなければ、続けて実験を繰り返すことはできないだろう。

「…圧縮率が高すぎるのか、それとも根本から間違っているのか。
 触媒も水晶では耐えられないのかもしれないな……代用品を探さなければ。」

手元の紙にメモを書き加え、それから魔法陣の上に手を翳す。
爆発を起こした部分を中心にして、魔法陣がまるで生きているように動き、形を変えていく。

獅南蒼二 > 実証実験を繰り返して、幾つか分かったことがある。
事象を魔力へ完全に変換する術式は、このように非常に不安定だ。
炎を魔力に変換するとしても、そこには他の要素が幾多にも絡み合う。
例えば、燃焼に必要な酸素と、燃焼に伴い発生する熱や二酸化炭素。燃焼する素材によっても事象は“細分化”されてしまう。
それらの事象に対して、いかにそれを選別し、変換するか。

魔法陣に意志は無い。
故に、魔力化するという属性と指向性を与えれば無制限に全てを魔力化しようとする。
制限を設定しようにも、この世の事象全てを描き込むのは不可能だ。
逆に“許可”を設定することも可能だが、それでは限定され過ぎてしまい、結果的に出力不足を招く。

獅南蒼二 > 1つ1つ可能性を潰していき、可能性を探していき、
結果的にこの馬鹿げた枚数のメモ書きが出来上がったわけだ。
小さな実証の積み重ね、その中で発見を手探りで求めていく。

研究とはこういうものなのかもしれない。

獅南蒼二 > 勿論、この男は何があろうと、授業に支障を出すような男ではない。
だが、それ以外の部分は大いに犠牲になっていた。

…食事を取るのも忘れ、睡眠も研究室のソファで済ます。
眠っている間にも、何かひらめきが降ってくればすぐに飛び起きてメモを残す。
そしてそれを実証すべく実験を重ねるが、満足のいく結果には至らない。
ならば何が問題だったのかと思考を巡らして…

「……………。」

だいぶ、煮詰まってきていた。

ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」にサリナさんが現れました。<補足:メガネに制服。長い髪は後ろで結っている。スクールバッグを所持。>
獅南蒼二 > 実証実験のために想定している規模は、机上に描かれた魔法陣の1000000倍である。
ひゃくまんばい、と言えばまるで冗談のような数字だが、冗談ではない。
300m四方の空間を利用した魔力生成術式を展開、変換効率や効果的な蓄積法を検証することを目的としている。

つまり、今のような小爆発が1000000倍に膨れ上がる。と言うことだ。
それこそ、冗談では済まない。

まだ、前途は多難、ということか。

サリナ > 最近の私は研究区に通う事がある。
それは獅南先生との共同研究の為ではあるのだが、ここ数日彼を見てきて思った事がある。
彼はとてつもなく酷い生活を送っている事に気付いた。私は研究の傍ら、彼の世話もしなければならないという使命感に駆られた。

不精過ぎるのをなんとかしていただきたい所だが、今日も購買で食料を買ってからこちらに来た。

ビニール袋をひっさげて研究室に差し掛かれば…何か焦げ臭い。よく見れば開け放たれた扉から煙が吹き抜けている。
ああ、また研究室で実験したのだろう…煙草ぐらいなら私も文句は言わないけれど、

「先生、火気のある実験は外でするようにとあれほど…」

扉から顔を出しつつ言ったが、魔法陣と近くにあったマッチ箱を見て背筋がぞくりとした。
煙草は吸っていた訳ではないようだし、火を使ったのだろう…でなければこれ程焦げ臭くならない。
いや、むしろ問題はその魔方陣にあった。魔力汚染の可能性を残しているものを室内で使うのは私は大反対だったからだ。

「先生、室内でそれをするのは本当にやめてください。火ほど安定しないものもないんですから…」

獅南蒼二 > サリナが研究室へ足を踏み入れれば、そこにはきちんと重ねられたメモ束。
それから、ちゃんと箱にまとめられた実験廃材。

これでも環境は、当初に比べてだいぶマシになった。
研究に関することでなければ、この男が回りに目を向けられることであれば、サリナの言ったことは、きちんと守っている。

「……サリナか、今度の術式は上手くいくと思ったんだがな。
 安定しないのは確かだ…火は酸素と水素や炭素が結びついて……待てよ…。」

が、こと、魔術に関すること、研究に関することとなると、この男は本当に、周囲が目に入らない。
……そうでなくては、魔力もろくに持たない人間が、こんな次元にまで上り詰めることはできなかったのだろう。

「サリナ、お前たちの考える“火”とはどんなものだ?」

その瞳は、何かを掴みかけているような、発見と迷いの狭間にあった。

サリナ > ああ、またそんな考えですぐに実験をした訳だ。思い立ったらなんとやら、獅南先生はすぐに行動する。
それが悪い訳ではないのだが…とりあえず机に食料とスポーツドリンクの入った袋を置きつつ、
旧体系の魔術の危険性を改めて説明しようと思えば質問される。

火とはどんなものか…?

それは先生が今言ったように酸素やら何やらを指すものだと思うが…
しかし、獅南先生は私の意見を聞いているのだろう。いや、『お前たち』?確かそう言った。
それはつまるところ、私達の世界の住人の常識を聞いているのだろう。

私はこの世界に来るまで酸素やら何やらという言葉も知らなかった。だから彼が聞いているのはもっと直接的というか、感情的なものだろう。

「端的に言えば、"熱"…でしょうか。熱いもの、延焼するもの、恐ろしいもの……」

獅南蒼二 > サリナの言葉が、男の仮説に確信を与えた。
「熱……そう、熱だ……そうだ、何故それに気付かなかった。」
その声にはまるで少年のような、素直な喜びがにじみ出る。

旧体系魔術、それはこの世界の魔術ではない。
それを忘れ、この世界の基準で事象を細分化して認識していた。それこそが間違いだ。
炎とは熱である。どのような過程を経て生成されるにせよ、それは熱でしかない。
二酸化炭素や水はもちろん、生み出される光でさえ、副産物に過ぎないではないか。

男が机上の魔法陣に手を翳せば、術式は大きく書き換えられていく。
魔法陣に意志は無い。だが、魔法陣の中に“概念”を描き込むことはできる。
火を、燃焼現象そのものの化学変化や副産物ではなく“熱”という概念で捉える。

「サリナ、お前の考える“火”のイメージを貸してくれ。」

ある程度のところまで魔法陣を構成してから、サリナを呼び寄せる。

サリナ > 先生は私の言葉を反芻し、その顔からは喜びが滲み出ている。
きっと、また何か考えついたのだろう。その閃きが消えないうちにすぐに作業に取り掛かったようだ。
色々言いたい事があったのに、先生の勢いに気勢が削がれてしまった。

全く…

「仕方ないですね……どうされます?」

彼の隣に並ぶと、魔方陣に目を向けた。…本当、ここまでよくやるもんだと感心する。

獅南蒼二 > 勿論、言いたいことは聞こう。
けれどそれは研究、実感が終わってからだ。
まさにそんな雰囲気を地で行くこの男は、きっと、今何を言っても覚えていないだろう。

サリナが隣に来れば、小さく頷いて、
「何のことは無い、お前がイメージする炎を、お前の魔術で作ってみてくれ。」

サリナ > なるほど、もっと視覚的な意味合いでの炎にしろという事か…
魔方陣に手を翳してその構成を読み取る。…まだ要素が色々ある。効率がいいとは思うが、しかし求めているのはこれじゃないのだろう。

「そうですね…もっと簡略してみてはいかがでしょう。見た所、この部分はちょっと複雑過ぎます。効率が悪くなりますが…こんな感じに」

魔方陣の構成に手を加える。なるべく自分の世界でのイメージを盛り込んだ。
それは抽象的だったり、感情的だったりで、魔術としてはそんなに良いものではなかった。

この世界の魔術と私の世界の魔術を比べると、やはり術式の構成からして全く違う。
そう言った意味で私達の世界の魔術は、効率が悪かった。火ならば、火以外の要素を考えないのだ。
酸素や、そういうものを抜きにした…そんな単純で明快なもの。

獅南蒼二 > サリナが描き出した術式を見れば、獅南は肩を竦めた。

「なるほど…一晩悩んだ自分が間抜けに見えてくる。」

小さく呟いて、頷く。
目の前の術式を、魔術を知らない者にもわかりやすく伝えるのなら、数式の中に、突然言葉で説明と感想が書かれているような、そんなイメージだ。

確かに個々の事象を指定するのに比べて効率は落ちるだろう。火以外を見ていない以上、燃焼のエネルギー全てを変換することはできない。
…だが、この術式なら、許容範囲は大きく広がり、魔力のループも発生しない。

「…サリナ、お前が完成させたこの術式を、試してみたくはないか?」
この男、ここでやるつもりだ。
許可を求めただけでも成長しているととらえるべきだろうか。

サリナ > きっと、一晩中この魔方陣について考えたのだろう。
私が研究に携わってからというものの、先生はその都度私に意見を聞いてくる。
一緒に研究しているんだな、という実感が持てて私としては嬉しい事でもあった。

研究者として、実験、実証は楽しい出来事の一つだろう。そして獅南先生は私にもその機会をくれる。

「先生………」

だから、私はその言葉に真摯な思いで答えた。
そっと、先生の肩に手を置いて……



「" 外 で や り ま し ょ う "」

肩に置いた手には些か力が篭っていたかもしれない。否、力を篭めた。

獅南蒼二 > 残念ながら、サリナは陥落しなかった。
否、これはどう見ても難攻不落どころの話ではない。

けれど獅南も、それを見て…楽しげに笑った。
先ほどまでの、術式と睨み合っていた、強ばった表情が、崩れる。
……この男がこの表情で笑った時は、もう実証実験の必要が無い時だ。
絶対の自信があり、術式が完成した満足感を感じている時だ。

「残念だ…、まぁ、お前がそこまで言うのなら、そうしようか。」

サリナを共同研究に誘った理由は、もちろん、彼女の故郷の魔術体系を取り入れるためだった。
本人の能力も並以上だったが、それを頼りにしていたわけではない。
だが、実際に研究を進めていくうちに、サリナのちょっとした助言から、このように大きな前進を見ることが、何度もあった。

「お前は本当に優秀な生徒だ。
 これで、もう少し、口うるさくなければなぁ。」

肩を竦めて、楽しげに笑う。テーブルに置かれた袋から、スポーツドリンクを取り出しつつ。

サリナ > とりあえずはこの場で実験をするのは諦めたようなので安心する。
この場でやろうものなら旧形態魔術の危険性を一から説明し、日が暮れるまで講義する所存だったのだが…その機会はなくなったようだ。

「ふふ…口煩くてすみません、でも先生ももう少し実験の時は環境を考慮していただければ、と思います。
 …それじゃ、準備をしますのでお待ちください。ああ、食事も摂っておいてくださいね」

見ればもうスポーツドリンクを取り出している。私が言わなくても食料の方にも手をつけていただろうが…

早速、魔方陣に関係ありそうなメモ書きを探して集める。それと、新しく何か書く用に色々用意した。
…今にして思えばこの部屋もちょっと前に見た時より大分整然とされてきたなと思う。

私の言う事は忘れていなければ、だがちゃんと聞いてくれる。あれこれ言ってきた甲斐があるというものだ。

獅南蒼二 > この男の事だ、旧体系魔術の危険性は十分に認識しているはずである。
だがこの男は自らの命を対価にしかねない破壊魔法にも手を出す研究者。
それを承知の上で実験をしているに相違ない。つまり、恐らく、講義は徒労に終わると言うことだ。

「お前の言うことは正しいよ…炎の実験は室内でやらないと約束しよう。
 だが、光や風ならば、室内でも問題無いだろう?」

そんな風に笑いながら、水分補給。
思った以上に、身体は水分を求めていた……そう言えば、水を飲んだのも、いつだったか。
そして喉の渇きが癒されれば、ふと、思い出したように襲い掛かる、疲労感と、眠気。
デスクの椅子から、ソファへと移動して…どさりと、座り込む。

「……すまん、5分だけ眠らせてくれ。
 触媒の水晶はいつもの棚に…それと、火との親和性を考慮して、ルビーも……。」

言い切らないうちに、男は力尽きて眠りに落ちた。
実験の成否を分ける準備を、他人に任せる、などと、この男にとっては珍しいことだ。
それもきっと、サリナを信頼してのことだろう。

サリナ > 「光…光ですか?熱のあるものはダメですよ?それでいいのなら問題が起こるまでは了承しておきます」

あくまで室内でやる事に拘っている…確かに材料もここにあるから手軽といえば手軽ではある。
…よくよく考えたら風も駄目だ。暴発したら書類が吹っ飛ぶ。
しかしこれ以上何か言うのもなんだし、それは実際に先生自身が身をもって経験して痛い目を見てもらおう。

「…わかりました。おやすみなさい。ああ、触媒はガーネットの方がよろしいのでは…?一応それも用意しておきますが…」

…? 返事が返ってこない。不審に思って振り返れば…

「…もう寝てる」

よほど疲れていたのだろう…20分か30分余分に寝かせておこう。
起きた時の言い訳は何かと理由をつけてればいいだろう。深くは考えない、彼には休息が必要だ。

色々と準備を進めていき、それが終わればざっと魔方陣についてのメモを読み漁りつつ、その時を待ったのだった。

ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」からサリナさんが去りました。<補足:メガネに制服。長い髪は後ろで結っている。スクールバッグを所持。>
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>