2015/08/06 - 21:13~22:03 のログ
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>
獅南蒼二 > 最近、獅南先生は機嫌が良い。そんな噂を耳にしたことは無いだろうか。
授業は相変わらずの難解な内容で、試験や実技指導の厳しさは普段通り。
傍から見れば普段の獅南と何も変わらないが、分かる人には分かるらしい。
だが、機嫌が良い、というのは誤りだ。
正確には“体調が良い”とするのが正確な表現である。
獅南蒼二 > そもそも彼の体調不良の原因は、100%研究にあると言っても過言では無い。
3徹だろうが4徹だろうが、満足のいく成果が出るまで彼は考える事をやめないのだ。
現在進めている研究に関しては、サリナの存在もあってさほど酷い状況には至っていないのだが・・・それでも徹夜は当たり前の世界である。
そんな状況でご機嫌に生活できるはずが無い。
だが現在、資金不足によって研究は中断されている。
財団と生徒会に資金援助を依頼したが一向に返事は来ない。
小実験や実証実験では一定の成果を上げており、次のステップは実用化である。
サリナの意見を聞きながら、机上や演習室ではなく、実際に自然の中で術式の発動試験を行いたい。
それも、想定しているものに近い規模で、だ。
獅南蒼二 > もちろんそれには相応の資金が必要となる。
実験場となる土地、実験に必要な資材、研究用の計器、触媒となる大量の水晶、ルビー、サファイアその他様々な宝石。
だが残念ながら、それらの資金援助がまだ得られていない。
普段は財団がバックアップしてくれる事が多いのだが、今回は・・・もしかすると、財団の意図にそぐわぬ研究だったのだろうか。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
何はともあれ、それによってこの男は久々に、のんびりとした時間を過ごしていた。
獅南蒼二 > 静かに煙草を吹かして・・・ソファに深くもたれかかる。
前方は窓、左右は魔術所、後ろは魔導具の積み重ねられたデスク、隅には入り口への通路。
どう考えてもリラックスできる環境では無いような気がする。
けれどこの男にとって、ここは自室のようなものだ。
こうしている時間も悪くは無い・・・テーブルの上に置いてある珈琲はもう冷めてしまったが。
獅南蒼二 > 突然だが・・・・・・この男には、家族が居ない。配偶者もなく、両親も兄弟も、親戚すらもいない。
研究室には写真などの痕跡すら見つけることは出来ず、生徒が質問をしても苦笑するだけである。
明言する事がなかったためか、今はどうか知らないが、嘗ては噂になった事もあった。
曰く、獅南は異世界から来た異邦人らしい。
曰く、獅南は魔術で作られた人形らしい。
曰く、獅南は研究に没頭しすぎて奥さんに逃げられたらしい。
曰く、獅南は異能者だった両親や妻、子どもを殺したらしい。
獅南蒼二 > これだけ変わり者なのだから、異邦人説には説得力がある。
魔導人形ならもう少し可愛らしく、もしくはイケメンに作るだろうから第2の説は否定的だ。
・・・・・・そして最強の説得力を有する奥さんに逃げられた説。
獅南蒼二 > だが、一番長く語り継がれたのは4番目の説だった。
噂はすこしくらい誇張が過ぎるくらいの方が、面白いものだ。
異能者嫌いであり、徹底的に異能者を遠ざける彼の姿勢も相俟って、この説は不思議な説得力と背筋の凍る魅力をもって生徒に受け入れられた。
誰一人としてそれを口に出す者は居なかったが、今も、この噂は語り継がれているのかもしれない。
いつしか誰も、獅南の前で家族の話を持ち出す者は居なくなった。
獅南蒼二 > 机の一番上の引き出しの、書類のさらに奥。
誰にも見られる心配の無い場所に、彼の“過去”は封印されている。
獅南蒼二 > いや、封印したわけではない。決して忘れないために、いつも、そこに置いてあるだけだ。
彼は、決して研究をやめることは無いだろう。例えどんな事があろうとも。
それこそが彼の生きる希望であり、生きる理由である。
今か、未来が、彼を変えない限り。
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>