2015/07/22 - 22:08~02:43 のログ
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>
獅南蒼二 > 仕事に依存し,まるで中毒のようにそれに没頭する様子を,欧米ではワーカホリックと呼称する。
社会的風潮や企業の体質,それから国民性など様々な要因が考えられるが,この男の場合は,
「…………………。」
そんな言葉では表現しきれないくらいに,己の研究に“のめり込んで”いた。
僅かに見えたひらめきを形にするまで,糸口が見えるまで……睡眠をとることさえ忘れてしまう。
しもはやそれが平常運転であった。
獅南蒼二 > 切っ掛けはある生徒が学期末試験で提出した論文であった。
内容は異世界の魔術体系に関する,概要と考察。
魔術とは魔力をエネルギーとして様々な形で事象を発現させる術である。
とするのなら,そこには魔力を事象に変換する過程が存在する。
現在主流となっているのは、魔力によって事象を“再現”する魔術である。
魔力の流れに術式と言う形で指向性を与え、属性を与え、出力する。
それによって魔力は“炎”“水”“雷”その他さまざまな事象を再現し,空間または対象に何らか作用を齎す。
獅南蒼二 > だが、その論文に書かれた魔術体系では、魔力を事象へと完全に変換してしまうのだという。
再現するのではなく、属性を与えられた魔力の出力ではなく、そこに「炎」という事象を創造するのだという。
結果としてもたらされる効果は変わらないのかもしれない。
だが、そこには天と地ほどの相違がある。
そしてこの研究者は,この「魔力」と「事象」との変換に着目した。
「魔力」から「事象」を創造することができるのだとしたら…
…「事象」から「魔力」を抽出することも、可能なのではないか。
獅南蒼二 > 研究室の床には,試作した術式や思考の助けとして使った大量のメモ書きが散乱している。
机の上には魔術書が大量に重ねられており,その生徒が書いた論文も置かれている。
机の真ん中にはついさっきまでペンを走らせていたのだろう、書きかけの術式と、今後実施する実験の概略図。
そしてこの白衣の男はというと、
「……………………。」
椅子に座ったまま、天を仰ぐように居眠りをしていた。
獅南蒼二 > 魔術学に精通する者でなければ、そのメモ書きには何が書いてあるのか僅かも理解できないだろう。
だか、魔術学を学んだもの…授業で言えば魔術学概論Ⅱくらいまで履修している者であれば、
もしくはそれと同程度の、高位魔術の概念くらいまで理解している者であれば、そこに描かれている術式の意図くらいは理解できるはずである。
この世界に存在する事象から魔力を抽出する。
彼の研究は、どうやらその方向に向かって進んでいるようだった。
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」にクローデットさんが現れました。<補足:やや暗めの銀髪に青い目、クラシカルな服装で人形のような美貌の女性。手にはやや小振りの羽根扇子>
クローデット > クローデットは、禁書指定された学術書から得たデータと、自ら集めてきた情報の整理・統合を行うために情報処理室を借りていた帰りだった。
禁書の内容とあっては、おおっぴらな場所で整理をするにも気が引けたし…情報の整理をするのに、高性能なコンピュータも使いたかったのだ。
獅南教員の研究室の前も、偶然通り過ぎただけだったのだが…どういうわけか、扉が開け放たれている。
「………獅南先生?」
禁書を勝手に持ち出している事が漏れたらどうする気なのか。
曲がりなりにも同志、気が気でないクローデットは、獅南の様子を伺いに部屋に足を踏み入れた。
無論、最低限の防御術式は身にまとったまま。
獅南蒼二 > 開け放たれた窓から風が吹き込む。
風は心地良い涼しさを運び,散乱した書類をさらに拡散させた。
「…………………。」
しかし白衣の男は,まだ目を覚ます気配も無い。
いや、部屋にクローテッドが足を踏み入れれば,彼はその掌を,ぴくりと動かした。
だが、そこまでである。
部屋に足を踏み入れた相手が害意を持った敵であれば目を覚ましたのかも知れない。
だが,少女からはそれを感じなかったようで…白衣の男は,まだ眠っている。
物音を立てるか、貴方がそこから声を掛ければ、目を覚ますだろう。
クローデット > 心地よい風に、ふわりと舞い上げられたメモ書きの1枚をそっとつまみ取る。
魔力の抽出について、興味深い事が書かれていたが…だからこそ、言わずにはいられなかった。
少しだけ、獅南の元に歩み寄り。
「………研究の盗用などに対して、不用心が過ぎるのではありませんか?」
慇懃に、しかしそこには呆れた声色が混じるだろう。
獅南蒼二 > 「ん……あぁ、クローデットか。
妙なところを見られてしまったな。」
その声に、白衣の男は静かに瞳を開いた。肩を軽く回して,視線を少女へと向ける。
床に散乱したメモ書きの枚数からも、彼が途方もない時間そこに居続けたことはすぐに分かるだろう。
その成果を盗用される危険に関しては、クローデットの言う通り用心すべきなのだろうが…
「確かにそうだな…
…だが、もし誰かがこれを実用化してくれるのなら、一式盗んでほしいくらいだ。」
男はそう言って、笑っていた。
クローデット > 「そうですわね…事象に関連する魔力を抽出するのであればそこまで難しくはありませんが、汎用的なものとなると、実用化には少々骨が折れるでしょう。
…術式の規模だけでも、「それなら普通に望む魔術を行使した方が早い」となるのが目に見えるようですわ。
あたくしでしたら、その術式を模索する時間があったら、魔具の効率化を追求しますわね」
「ホーム」のうちに入ると言って差し支えないだろう研究区の魔術学部棟ですら、魔術・物理・異能の防御術式を込めた魔具を欠かさず身に付けているのは、獅南には分かるだろうか。
…それが、どれだけ魔力を籠めて、どれだけ効力の高いものに仕上がっているかも。
特に異能を防御する術式は、地球出身の魔術師としては、優れた魔力容量を誇る部類に入るだろうクローデットですら、少なくない割合を消耗するであろう量の魔力が籠められている。
要は、
『そこまでして魔力の抽出にこだわっている暇など無い』
ということのようだ。獅南の鷹揚さも、あながち外れてはいないのかもしれない。
獅南蒼二 > クローデットの指摘は尤もで,それは獅南もよく理解しているところ。
「既存の魔術学を応用した試作品は十分な出力が得られなかった。
だからこそ異世界の魔術体系に可能性を求めているところだが……これで上手く行かなければ、全てが徒労だな。」
つまり,現状ではこの術式全てを盗まれたとしても,コストに見合わぬ術式でしかないのである。
だが、それでもこの男が“魔力の抽出”に拘るのは…クローデットとこの男の間にある雲泥万里の壁に起因しているのだろう。
「…残念だがいくら変換効率を上げたところで,魔力の全体量は変わらんからな。
お前のような才能溢れる魔術師には,必要のない術式だろう?」
魔力容量の低い者にとっては,魔力を確保することの重要性は非常に大きい。
この白衣の男自身のみではなく,この男が指導する生徒にも同じことが言える。
「…持たざる者の術式だよ、これは。」
言葉とは裏腹に、そこに自嘲的な響きは無かった。
そこにはあるのは、確かな信念と理想。クローデットにとっては、理解できるものであるかどうか、分からないが。
クローデット > 「出来ない事もありますし、向上心を忘れるつもりもありませんが…あたくし自身は、自分の魔力容量には概ね満足しておりますわ」
それは、
『大体の術式の行使に、魔力容量が障害となる事は無い』
ということだ。
平然とのたまう言葉に蔑みの色は無い。が、そう機能する事はあり得るし、受け取る者も多い事だろう。
「…知識「だけ」で言うのであれば、「持たざる者」を自覚し、弛まぬ探究と努力を重ねられる者は、中途半端に持っている者よりよほど大きな財産を得ていると思います。
………しかし、そこまでするのであれば、魔力をさほど使わずにすむ術式を中心に扱えば良いのではなくて?
知識に長けるのであれば、そこまで難しい事でもないかと思いますが」
獅南なりの信念を全く汲めないほどクローデットは愚かではなかったが、しかし、「持たざる者」が効率度外視で魔力の確保にこだわる事の理由がピンとこない程度には、クローデットは恵まれていた。
獅南蒼二 > 「お前のような優秀な魔術師は稀だ…お前自身も、自覚しているだろうが。」
小さく肩を竦めて笑う。白衣の男も研究者であり、事実を事実として認める器量は十分に備えている。
だからこそ、相手の言葉に嫌悪感を示すことも無い。
「そうだな、一般的な意見としてはお前の考え方が主流だろう。
私の戦闘術の考え方も同様にして、変換効率の重視と魔力消費量の抑制が大きなテーマだった。」
「だが……お前は蟻が自分の範疇で自己を高めたとして,人間に勝てると思うか?」
それは極端な例えだったかもしれない。
けれど、一騎当千の力を持つクローデットになら理解できるだろう。獅南は“生まれ持っての才能”ではなく“研究”によってそれを逆転することを目指しているのだと。
クローデット > 「あまり、多方面で実力を発揮する者は身内にも多くはありませんわね…
それでも、専門家として尊敬出来る方が多くおりますわ」
クローデットは、一族の中でも「逸材」の1人である事には違いなかった。
それでも、そうでない者が純粋に劣っているかというと、そうでもない。
「特化」することで、それぞれがそうそう替えのきかないような存在となっている…それが、ルナン家の魔術師だった。
しかし…次に出てきた獅南の言葉に、呆気にとられたように笑みが消える。
「………数の力、能力・戦術の相性。ひっくり返し方はゼロではない、と認識しておりますが………
安定して勝つための手段として、自身の範疇を超えた「強い牙」を欲していらっしゃるのですか?」
(この男…どこまで本気なのかしら?)
「ゼロ」ではない、とは言った。
しかし、それはあくまで「ゼロではない」というだけ。現実の力の差が厳しい事には変わりない。
魔力を使わずに行使出来る魔術は搦め手が多い。
それは、その現実を反映した結果だとクローデットは認識していたのだ。
付け焼き刃程度に抽出した魔力なら、その手の術式を極めた方がよほど役に立つ…と、クローデットは認識していた。
(「付け焼き刃」を、超えるつもり…?)
それこそ、正気の沙汰とは思えなかった。
獅南蒼二 > クローデットの表情から,真意が伝わったことを感じ取ったのだろう。
白衣の男は満足気に頷き,机の上のメモ書きを纏めて,引き出しの中へとしまい込んだ。
「ははは、安定して勝とうなどとは思っていないさ…だが、安定して負けるのは癪だろう?
尤も,今の時点でも,出力だけの魔術師に負けるとは思っていないがね。」
この男は強い牙をこそ持っていないが,クローテッドの言う“ゼロではない”部分を極めたと言っても過言では無い。
術式の模倣、改変、書き換え,まるでハッキングするかの如く他者の術式にまで干渉する。
……才能だけで努力を怠る魔術師がこの男と対峙すれば、自らの魔力によって滅ぼされる事となるだろう。
だが、この男の理想はさらに高い所にあった。
「私だけでない…私が育てた子らさえも、努力と研鑽によって“強い牙”を持てるとすれば…どうだね?」
この男は魔力の容量によらず,万人が平等に扱える大魔法を作り出そうとしている。
…もちろん、破壊だけではない。
防御、治癒、創造、全ての分野において、ただ、努力と研鑽によって己を高めることのみによって,力を得られる環境を、作ろうとしている。
それは確かに、レコンキスタの掲げる“純血者による支配”の真意に近いものであろう。
だが、この男の場合は組織の理念に則っているのではなく、この男自身の理想に、ひたすら邁進しているように見える。
クローデット > 「あれだけの術式を構想出来るあなたならば、魔力に乏しくともやりようはいくらでもありましょうね」
先ほどのメモ書きだけでも、術式の構築能力が飛び抜けて高いのはクローデットにも理解出来た。
さほど勉強していない魔術師ならば、たとえ魔力容量が膨大で、それを出力する事が出来てもまるで勝負にならないのだろう。
「魔術が「技術」たる所以を、極めるおつもりでいらっしゃるのね?」
それは、一代で成し遂げるには、あまりにも途方も無い偉業だ。
だが…達成されれば、それは大魔術よりも容易く、世界に変革を齎すだろう。
あり得ない…というのは簡単だ。
しかし…クローデットは、魔術を探究する者として、目の前の白衣の男のことが、嫌いではなくなっていた。
「疎ましい父と親交がある」という事実を踏まえてさえ。
獅南蒼二 > クローデットの言葉に、白衣の男は小さく笑んだ。
この男は魔術師としても、研究者としても異端児であり、理解者は少ない。
だからこそ、自分の研究への理解を得られたことは、喜ばしいことなのだろう。
「…少なくとも、我々は魔術学などと嘯いているが,学問としてはまだ黎明期を脱していない。
その発展に貢献しようなどとは考えていないが……電力と同じように魔力を使える時代が来たら、面白いだろう?」
かつて科学が産業革命をもたらしたように、魔術学が革命をもたらす日が訪れるのかも知れない。
それが、いつになるのか…彼の研究がそれを支えるのかどうかは定かではない。
それどころか、彼の研究は魔力の大量消費による“破壊”をも齎しかねない。
だが、それはかつての科学と同様である。科学者は想像し創造する者であり、全てはそれを“使う者”に委ねられる。
「妙な話をしてしまったな……まぁ、今はまだ、夢物語に過ぎないよ。」
クローデット > 「…電力と同じように魔力を生産するような事が出来たら…
危険な反面、世界も広がるでしょうね」
羽根扇子で顔の下半分を隠すが、くすくすという笑い声を聞き取る事は出来るだろう。
クローデットは一族の…とある女性の思想に侵されてはいるが、一方で魔術の探究を愛する者でもあるからだ。
可能性が広がる事は、クローデットにとっても「面白い」ことには違いなかった。
「あたくしとしては、興味深い話が聞けて嬉しく思いますわ」
羽根扇子を閉じて、花のように優美な笑顔を浮かべてみせた。
獅南蒼二 > 「あぁ…そして……」
獅南はいつになく真剣な表情を見せ、手のひらをふわりと動かして、研究室の扉を閉じた。
「…魔力を安定供給する環境が構築できれば,魔術学による世界秩序の形成に大きく貢献することができる。
そこに、大衆化・一般化が不可能だという,学問としての欠陥を内包する異能学が入り込む余地は無い。」
それはレコンキスタという組織にとっても、そして、ある意味ではルナン家にとっても、有益な研究となるはずだ。
「……いつか、私の教え子がお前を越える日が来るかも知れんぞ?」
だが、あくまでこの男はそんな打算ではなく、理想のために研究を続ける。
いつの時代も、歴史を動かすような発明は理想を追った研究者の軌跡に過ぎない。
花のように優雅、とはいかないが、白衣の男もまた、穏やかな笑みを浮かべた。
クローデット > 獅南の口から「異能の排除」を示唆する言葉が漏れれば、羽根扇子で表情を隠す。
…もっとも、その羽根扇子の下がどんな表情を浮かべているか。獅南には予想するまでもない事だろう。
「うふふ…素敵な響きですわね、魔術学による世界秩序の形成…
そこに、異能者(バケモノ)の入る余地などありませんわ」
その悠然とした態度は、「教え子がお前を超えるかもしれない」と言われてなお、揺らぐ事が無い。
「あら、大変…そうならないように、精進を続けなければいけませんわね」
有能な魔術師である事は、クローデットにとっては出自に勝るとも劣らない誇りだ。
獅南蒼二 > クローデットの反応は、予想した通りのものだった。
獅南にとって異能者の排除という天命は優先度の低いものではあったが…
「…お前が味方で良かったと、心からそう思う。」
この少女にとっては違う。羽根扇子の下に隠した表情が、その声が、全てを物語っている。
「方法も立場も違うが…互いにそうするとしよう。
お前も、自己の研鑽のために必要なものがあれば遠慮なく言ってくれ。」
才能だけではない、クローデットが努力を積み重ねていることは十分に理解している。
だからこそ、この少女もまた、愛すべき優秀な生徒の1人なのだ。
クローデット > 「あら、「今のところは」大人しくしていましてよ?
公安委員会としての役目を忠実に担っておりますわ」
もっとも、大人しくしている理由は「公安委員会という組織での信頼を確保するため」なのだが。
彼女の「企み」からすれば、煽動に乗ってくれる程度に信じてくれる成員は多いに越した事は無い。
「こうして安定して高めあえるのも、異能者(バケモノ)共にはない、魔術師(あたくしたち)の強みかもしれませんわね。
…それでは、早速ですが錬金術の上級のテキストを何かお借り出来るかしら?禁書でなくて構いませんので。
面白い「素材」が手に入りましたので、少々試してみたい事がありますの」
と、申し出があれば、早速乗る。
獅南蒼二 > 高め合うこと…確かに、異能学は制御し活用することに特化している。
開発し,強化し,そしてそれを一般化することができるのは魔術学だけである。
「錬金術か…また、妙なところに手を出すのだな。」
この時代、この世界においても、錬金術師と呼ばれる魔術師は非常に数が少ない。
それは物質の生成という魔術が非常に高度なものであることに起因しているのだろう。
「………そうだな、この辺りでどうだ?」
指先を動かして本棚から2冊の本を引き抜く…本はふわりと宙を舞って、クローデットの手元へと移動した。
1冊目は魔術学的なアプローチにより,魔力を対価にして物質を生成するという錬金術の概念と,その反作用についての研究書。
…様々な素材による実験の結果が事細かに記載されている。
2冊目は非常に古いテキストであり,パラケルススによる「賢者の石」と「ホムンクルス」の生成について書かれたものである。
表紙が非常に痛んでおり何も読み取れないが…恐らく写本だろう。
内容は荒削りなものだが、幾人もの魔術学者が追記した痕があり、テキストの記述そのものより追記に価値がありそうである。
クローデット > 「お母様が得意としておりますの…伝統的な手法であれば、そこまで魔力を必要としませんので」
どうやら、クローデットの母はクローデットほどの魔力容量は持たないらしい。
「そうですわね…こちら(2冊目)の方があたくしが普段用いている手法で参考に出来る内容が多そうですが、こちら(1冊目)も、新しい手法が学べそうで興味深いですわね。
…どちらか1つ、ということでしたらこちら(2冊目)を希望致しますが…可能でしたら、2冊ともお借りしてもよろしいでしょうか?」
ぱらぱらと検分してから、そう尋ねた。
獅南蒼二 > クローデットの言葉に、獅南は納得したように頷いた。
「…そうだったな。彼女ほど優秀な錬金術師は他に居ない。
無論両方持って行ってくれて構わんが,パラケルススの写本は大事に扱ってくれ。」
見ての通り、ボロボロだからな、と肩を竦めて笑う。
魔術学的にも価値のある資料だろう。
クローデット > 母を知るかのような言葉には、人形めいた愛らしさで目を瞬かせる。
「…お母様の事までご存知でしたの?
あまり、表には出ない方ですのに。
…ええ。あたくしの錬金術も、魔具作成術も、お母様から教えて頂いたものですから」
師匠は獅南も太鼓判を押すほどの存在、ということらしい。
「それでは、お言葉に甘えて両方お借りしますわ。
写本は、丁重に扱わせて頂きますわね」
花が綻ぶような満面の笑みを浮かべて、2冊の本を手に取った。
獅南蒼二 > 「残念ながら、実際に会ったことは無いがね。
身近に優れた師が居るというのは、素晴らしいことだな。」
手のひらをもう一度くるりと回せば、研究室の扉が開いた。
同時に防音・防諜魔術も解除される。
「あぁ、何をするのか知らんが…成果が出たら教えてくれ。」
こちらも優しく笑んで…立ち上がった。
流石にそろそろ、この部屋を片付けなくては。
クローデット > 「………ああ、なるほど。」
獅南が「どのように」彼女の母親の事を知ったのかを想像して、声のトーンが露骨に落ちる。
それでも、以前のように、獅南へ蔑みの目を向ける事は無かった。
「魔法生物に興味が湧いているところです…何か、面白いものが出来たらご報告致しますわね」
こちらも笑み返す。
そして、魔術書2冊を大事そうに抱えて、獅南の研究室を後にした。
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」からクローデットさんが去りました。<補足:やや暗めの銀髪に青い目、クラシカルな服装で人形のような美貌の女性。手にはやや小振りの羽根扇子>
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>