2015/06/30 - 20:50~01:30 のログ
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>
獅南蒼二 > 数日間、研究に没頭した。
食事もろくに取らず、ほとんど眠っていなかった。
「……………………。」
それはいつもの事だが、そんな無理が続くような歳でもない。
少しだけ休むつもりが、男は白衣を着たまま、ソファに仰向けに倒れ、死んだように眠っている。
暑かったのだろうか、それとも単に忘れただけか、扉を開けたままである。
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」にサリナさんが現れました。<補足:メガネに制服。長い髪は後ろで結っている。>
獅南蒼二 > 普段は決して空いていない扉だが、室内は特に何ということはない。
一般的な研究室と全く同じ間取りである。
ただ、この研究室の異質な部分は、壁の本棚にずらりと並んだ上級魔術書。
さらに、ところどころには禁書と呼ばれる類のものも含まれている。
また、彼自身が作成した写本もあり、その内容は多岐にわたる。
サリナ > 最近、獅南先生の調子が悪いような気がする。
試験期間だから、とかそういう理由は抜きにしても彼の体調は悪い気がする。
たまに廊下ですれ違って挨拶をしてみても、軽く頷くぐらいだったし。
その顔色を見れば一目で疲れているのがわかったぐらいだ。
余計な世話かもしれないが、先生に倒れられては私も困る。
今日の試験が全て終わると、一目様子を見ようと研究室に立ち寄ったのだった。
「一年のサリナです。先生、入ってもよろしいでしょうか?」
開け放たれた扉に向かって声を上げる。…そういえばいつもは扉は閉まっていたような気がする。
換気するにしても窓の方を開けないだろうか…、煙草の香りが漂っている気配もない。
獅南蒼二 > 普段なら扉が開いていることは無いし、ノックをすればほぼ間違いなく返事が返ってくる。
だが、今日は、開け放たれた扉から声を掛けても、返事は無かった。
入口から中を覗く限りでは、特に変わった様子は無い。
ソファに倒れ込んで寝ている獅南の姿も、見えない角度のようだ。
だが、垂れ下がり風に靡いた白衣の端が、ちらりと見えている。
サリナ > いつもなら大体返事がある。つまり不在という事なのか?
しかし、不在にするにしても扉を開けたままなのは不自然だ。
そういえば、今日は考古学試験を受けたばかりだ。
その試験はダンジョンを踏破する…というもので、私は部屋に入る前にしきりに通路から部屋の中の様子を伺うという行動をした。
それを思い出して出入り口の前から様子を伺った。
特に変わり映えがないように見えたが、こちらからは見えない位置の方に少し白衣が揺れているのに気付いた。
…白衣を脱いでいる?ソファーに白衣を置いたんだろうと思ったが、それ以上はわからなかった。
「…先生?入りますよ」
意を決して部屋の中に踏み込む。すると、入り口からは見えない角度に先生が寝ている事に気付いた。白衣も着たままだった。
「…先生」
ああ、疲れて眠っているのだろう。近づけば、寝息が少し聞こえた。
このまま起こすのも悪いし、そっとしておこう。
他に何か変わった事はないか、部屋の中を見回す事にした。
獅南蒼二 > 入口から得た情報は、あまり役に立たなかったかも知れない。
「…………………。」
サリナの声に、少しだけ反応したように見えた…かも知れない。
だが、すぐに目を覚ますことは無い。単純に、疲れているだけのようだ。
このソファで寝ることはそう珍しいことでないのか、肘掛の部分を枕にして、だいぶ上手い具合で眠っている。
周囲を見回せば、まず最初に目につくのは大量の魔導書。
そして、机の上に並べられた大量の紙と、そこに書き付けられた魔法陣や術式の数々。
サリナにとっては全く見たことも無いような術式から、単純な術式、それから、サリナの行使するレンズ魔法を真似たような術式も描かれていた。
さらに、テーブルの上には冷めてしまった珈琲が置いてある。
本当に、力尽きる形で眠りに落ちたようだ。
サリナ > 周囲を見回すといくつか気付いた事がある。
まずテーブルの上にあるコーヒー…これは湯気が立ち昇って居ない時点で幾分か放置されて冷めたものだとわかる。
ちなみに、このコーヒーが冷たいものだった場合、カップに結露が生じてテーブルを濡らしていただろう。その痕跡は見当たらない。もしかしたら結露が渇くほどに放置されたのかもしれないが…
テーブルには何もないので、元々温かかったものが冷めてしまったのだと推測した。
いや、そんな事はどうでもいい…私は探偵ではないのだから。
次に目が付いたのが問題だ。紙に術式が書かれている。それがいくつかあったが、その一つの内容に驚いた。
これは私の使っているレンズ魔法によく似ている。もしかしたら効果も同じものかもしれない。
「まさかこれは…」
以前獅南先生に披露した事がある。魔法のレンズで太陽の光を集めて収束させて石を溶かしたのだ。
きっと、これはその時の……
獅南蒼二 > 注意深く室内を見回せば、部屋の隅に置いてあるコーヒーメーカーに残された、保温中のコーヒーに気付くことができるだろう。
つまり、サリナの推測は正しい。
それは、それとして、
術式は完全とは言い難く、洗練されていない。
つまり、どうにか再現しようと努力した贋作のようなものである。
しかしそれでも、その構造は限りなく、サリナの行使したレンズ魔法の構造に近い。
他にも、未知の魔術を再現しようとしたのだろう術式のメモや、構造が描かれた紙が山のように置いてある。
もしかすると、貴方は、この研究こそが獅南の疲労の原因だと、気付くことができるかも知れない。
「………………。」
サリナ > 他の紙に書いてある術式も見てみた。知らないものが多かったが、知っているものがちらほらある。
自分のレンズ魔法を模した術式を思い出せば、あれも、これも、それも、その全てが模倣しているもののような気がしてきた。
そこで思い至った。普段こんなにメモや本を大量に散乱させていただろうか?
扉を開け放ったまま無防備に寝ていただろうか?
コーヒーを前に眠る程に忙しいのだろうか?
つまり、獅南先生がこのような状態になっているのはこの研究が原因、という事だ。
私の魔術を見ただけで模した事には賞賛を送りたいが、体調管理がなってないのは褒められた事ではない。
スクールバッグから先程買っておいた惣菜パンとカロリーメイト、あとスポーツドリンクをテーブルの端に静かに広げた。
起きたら食べてもらおう。しばらく待ってても起きなかったらメモ書きでも残して戸を閉めて立ち去ろう。
そのまま、先生の顔を眺めながら待つ事にした。
獅南蒼二 > コーヒーの状態からも、獅南がソファでそれなりの時間を過ごしたのは間違いない。
そして、普段は人の気配を人一倍、感じ取る人物だ。
……生徒に対して、気を許しているという部分はあるのだろうが。
いずれにせよ、サリナが部屋で行動を起こすたびに、獅南は徐々に、眠りから覚まされつつあった。
サリナが獅南の顔を眺め初めて、すぐに…と言っても、普段あまり近くで見られないこの男の顔を堪能する時間くらいは十分にあったが…男は、静かに、瞳を開いた。
「………何だ、もう朝か?」
違います。
サリナ > 先生の顔を眺めていると、この顔にメガネはさぞ似合うだろうな、と思った。
どういうのがいいだろうか、私と同じくウェリントンがいいのではないだろうか、落ち着いた雰囲気を演出する。
いや、元々彼は落ち着いている。ならばスクエアか…しかし、知的な印象の重ね掛けは嫌味な雰囲気が出る気がする。
ならばいっそラウンド型でお茶目な印象を……と考えていると先生が起き出した。
「先生、おはようございます。そろそろ暮れる頃です」
(獅南先生のぼけてる所、見ちゃった…)
真顔で言ったものの内心では獅南先生の人間味を感じられて嬉しくなった。
獅南蒼二 > そもそも、先に無精髭を剃るべきかも知れない。
この髭が、だいぶ印象を変えている…とは言え、無ければ無いで、違和感があるかもしれないが。
まさかメガネの脳内フィッティングをされているとは夢にも思わず、僅かに目を細めて…
「サリナか…おはよう。
暮れる頃なら、おそようございます。と言ったところか。」
この人はどうしてこうも冷静なのだろうか。そして、まだ少しぼんやりしているのか、冷静にボケている。
ゆっくりと起き上がり、もう一度、サリナへ視線を向けて…
「……で、どうしてお前がここに?」
切り替えた彼は、もういつも通りの彼だった。
サリナ > ようやくいつも通りの先生に戻ったような気がする。
勝手にこの部屋に侵入した事に対しては悪びれる事もなく受け答えする事にした。
「先生が最近お疲れだったので、一度様子を見に来ました。扉が開けっ放しで無用心ですよ」
まだ開け放たれたままの出入り口を指し示した。
「お腹、空いてませんか?食料を持ってきたのでよければ召し上がってください」
テーブルには焼きそばパンとカロリーメイト、スポーツドリンクとよく考えれば急ごしらえだと分かるものばかりだ。
獅南蒼二 > 特にそれを咎める素振りもなく、むしろ、僅かに笑んで頷いた。
手を軽く翳せば、サリナが指差した扉は静かに閉じられる。
「…そうか、心配を掛けてしまったかな。」
小さく肩を竦めつつ、並べられた食べ物たちを眺めた。
栄養補助食品、とはよく言ったもので、それはあくまでも補助のためのものである。
それらを見て、苦笑しつつ…
「腹は空いているが……これは、お前が買ってきたものだろう?」
サリナ > 扉の閉まる音を聞いて、そちらに視線を移す事もなく話を続けた。
「ええ、そうです。私が買ってきたものです。それも"先生の為"に、です」
そこはかとなく先生の為だと強調した。腹が空いていると聞けば、有無を言わさず食べさせるべきだろう。
「食べてください」
獅南蒼二 > 「まったく、気が利く生徒だ…点数はやらんぞ?
だが…そうだな。」
楽しげに笑いながら、焼きそばパンは半分に割り、カロリーメイトは4本入りを2本ずつ。
さらに、マグカップでスポーツドリンクも半分こ。
「寝起きで全部は厳しいのでな、半分手伝ってくれないか?」
サリナ > 私は何も点数稼ぎの為にこんな事をした訳ではない。訳ではないが…先生なりの冗談というのはわかった。
先生は割りと冗談を言う性質なのだ。
そんな事を思っていると、私の差し出した食料を半分に分け始めた。
「…わかりました。そういう事なら私も頂きましょう」
中身が半分になったスポーツドリンクで喉を潤しつつ、焼きそばパンに齧りついた。
「…別に毒とかは入っていませんよ?」
なんとなく、半分に分けた理由を考えてしまった。
先生は寝起きで無理だと言ってるが、私なりの冗談という事で許してもらおう。
獅南蒼二 > 毒見させるつもりだとすれば、分けた後、サリナを待たずにパンを頬張っているあたり、説明がつかない。
「それは残念だ、毒殺したいなら万に一つの機会だっただろうに。」
そんな風に、肩を竦めて、楽しげに笑った。
「誰かと食事をするのは久々だ…食事、というよりは軽食だろうがな。」
パンを食べ終われば、カロリーメイトの袋を開けて…
「…試験は、順調か?」
普段はなかなか話さないような、他愛ない話を。
サリナ > 確かに毒殺には絶好の機会だろう。毒殺どころか、寝込みを襲って抹殺できる程に無防備だったと言えば、
先生が馬鹿笑いをして今しがた胃に収めたものを噴出してしまうかもしれないのでそれを言うのはやめておいた。
「試験は…まあまあです。今日は考古学の試験を受けましたが、変わってましたね。ご存知ですか?」
そういえば獅南先生とこういう事を話す事はなかったなと感じた。いつも魔術の事ばかり話しているし…
獅南蒼二 > 自覚があるのか無いのか、獅南が自らを顧みる様子は無い。
サリナが指摘しなければ、居眠りをしている姿はサリナだけが知っている。
……王様の耳はロバの耳状態である。
「お前が勉強熱心なのは知っているが……考古学?
あぁ、あれか…実際に発掘作業をやると言っていた……本当に試験でやったのか?」
カロリーメイトも食べ終わり、マグカップのスポーツドリンクを飲む。
ゆっくりと、小さく息を吐いて……平穏な、静かな時間が流れている。
サリナ > パンが食べ終わり、スポーツドリンクで流し込んだ。
カロリーメイトに関しては…このままほっといてあとで獅南先生に食べてもらおう。
「いえ、考古学は発掘作業だけではなく、遺跡に潜った時の備えや危険への対処についても学ぶんです。
で、試験でやった事は『ダンジョンに潜って踏破しろ』というものでした。勿論、そのダンジョンは先生が用意したもので、
命の危険はないですが…色々と仕掛けがありましたね」
最後の最後で身の危険、というか本能に訴える恐怖を感じたが、恐らく命を危険に晒すものはなかっただろう。
獅南蒼二 > 「ははは、実践的と言うか…だいぶ特殊なシチュエーションを演習したのだな。」
トラップやモンスターが現存している“遺跡”など、世界中探しても殆ど存在しない。
仮に存在したとしても、多くは国家の監視下にあり、侵入は不可能だ。
「……非常に良い授業だったのだろうが…恐らく、教員の趣味だぞ、それは。」
小さく肩をすくめて、楽しげに笑った。
サリナ > 「ええ、本当、悪趣味でした。まさか、まさかあんなものが……」
大量に蛇の居た部屋。あれは最初は心臓が飛び出たものだ。流石に人にこんな事は言えないけれども…
ふと、外を見ればもう暗くなってきた。先生に時間を頂くのも悪いし、この辺で終わろう。
「さて、私はそろそろお暇させていただきます。先生、研究に打ち込むのはよろしいとは思いますが、体調管理にも気を使ってくださいね。
後日、特講の論文について提出しますのでその時にまた…」
立ち上がって、扉の方へ歩いた。そして扉を開けてる時に振り向いて
「そうでした、興味がお有りなら先生も考古学の試験を受けてみてはいかがですか?」
「…勿論、冗談ですが。運動不足の解消にはなるかと」
間を置いて、一応冗談だという事を強調しておく。
獅南蒼二 > この生徒はあまり感情が顔に出ない。
そう思っていたのだが、どうやら遺跡の仕掛けにだいぶ堪えたらしい。
明らかに、表情に陰りがあった。
「運動不足はともかく、何がお前をそんなに驚かせたのか、には興味があるな。」
ククク、と楽しげに笑って、そう冗談で返した。
立ち去ろうとするサリナを、
「……あぁ、サリナ、少しだけ待て。」
立ち上がって呼び止めれば、こちらも立ち上がって…本棚を漁る。
それから、1冊の本を取り出した。
「礼、と言うわけではないが……勉強熱心な生徒に、ボーナスだ。」
差し出した魔術書は“光”を操る魔術系統を解説した上位魔術書。
光源を作り出す魔術はもちろん、光の向き、屈折率、その他…指向性や熱源の強さに関わりそうな内容には、丁寧なことに付箋も入れてあった。
「……案外と、他愛のない話も楽しかったよ。」
サリナ > 「なんでしょう?」
呼び止められて待ってみれば、ボーナスと言う名の本が手渡された。
軽くページを捲ってみると、興味深い事が色々書かれていた。
今ここで深く読む事はできなかったが、私にとって重要なものである事はすぐにわかった。
付箋も貼ってあって、この本を読む人の事が考えられている。
…つまるところ、先生が私の為に用意してくれたものだというのがわかってすごく嬉しかった。
「…まさか、獅南先生がこんなものを賞与してくださるとは思いませんでした。
…私も先生との世間話は楽しかったです。した事がなかったからかもしれませんが…」
嬉しさが表情筋に訴えているのを感じた。だから笑いかけてみる。
私は表情が硬いので、もしかしたら伝わらなかったかもしれないが……
「とにかく、これは大事にさせて頂きます。ありがとうございました。
先生、くれぐれもお体には気をつけて…さようなら」
最後に深く礼をすると、軽い足取りで去って行った。帰ったらこの本を読破しよう…
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」からサリナさんが去りました。<補足:メガネに制服。長い髪は後ろで結っている。>
獅南蒼二 > 今更ながら、分かったことがある。
サリナは感情が顔に出ないのではない…感情を表情に表すのが苦手なだけだ。
不器用ながら、サリナは確かに笑っていた。
「…………………。」
それを知ったことが、何というわけでもない。
だが、魔術書をサリナのために用意しておいた、その価値は十分にあった。
そんなことを思いながら、ソファに静かに腰を下ろし…
…残っているカロリーメイトに、手を伸ばした。
ご案内:「魔術学部棟・第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:無精髭を生やした白衣の男。ポケットに入った煙草の銘柄はペルメルの赤。>