2015/08/08 のログ
ご案内:「廊下」に惨月白露さんが現れました。
惨月白露 > 教室の入り口のドアについた小窓からこっそりと教室を覗き込む。
ぴょこぴょこと揺れる耳、振られる尻尾、そして、真新しい風紀委員の制服。

『サボるわけねぇだろって、確かに兄様には言ったけどな』

廊下から、特別授業が行われている教室を覗き込みながら、
どうしたもんかなと頬を掻く。

『いやいや、常識的に考えて入りにくいだろ。
 今更どんな顔して他の奴らに顔合わせりゃいいんだっつの!!』

夏だというのに、冷や汗が頬を伝う。

惨月白露 > 二級学生から一般学生への引き上げを受け、
以前の偽造学生証ではなく、正規の学生証で、
『惨月白露』として学校に通う事になったわけだが、

結局、一度も教室には入れていない。

『無理無理、いやだって今まで散々騙してたんだぞ。
 ちはやみたいな天使としか思えないような考え方の生き物は、
 この世には数人もいねぇんだよ。
 
 ……死刑対象だろ、どう考えても。』

そんな予感に、ぶるっと震える。

惨月白露 > ―――そっと目を閉じる。
ふぅ、とため息をつくと、ぐっと手を握りこむ。

『―――明日からにしよう。』

そう硬く決心すると、覗き込んでた小窓から身を離して、
くるりと教室に背を向ける。

惨月白露 > 『女子生徒である事を利用して男子に奢らせた事も数知れず、
 今更、実は男でしたとか言ったら確実に殺されるだろうし。

 裁判を受けた事とか、元二級学生って事を知ってたら、
 体育倉庫とかに呼び出されて―――とかもあるかもしれねぇし。
 
 そもそも騙してたって事で怒るやつもいるかもしれねぇし。
 
 そうじゃなくても、元二級学生って知ったら、
 皆、一緒の教室で授業受けるの嫌だろ。
 こえぇだろうし、きたねぇって思う奴も居るだろうし。
 
 ………そう考えると、正直入れねぇよな。』

振り向いて、横目で扉を見る。
数日前まで気軽に開けていた扉が、やけに重たそうに見えた。

『ごめんな兄様、罪人として生活するって覚悟決めたのに、
 
 ―――やっぱり俺、こえぇよ。』

受け取った数珠を見て、唇を噛んだ。

惨月白露 > その扉から逃げるように、目を伏せて足早に歩き出す。
このまま家に帰るわけにも行かない、どこに行くわけにもいかない。

息を荒くして階段を駆け上がると、屋上に出た。

ご案内:「廊下」から惨月白露さんが去りました。
ご案内:「屋上」に惨月白露さんが現れました。
惨月白露 > 屋上に出ると、夏の激しい日差しが肌を刺す。
眩い光に目を細めると、自動販売機で水を買って、
フェンスから校庭を見下ろす。
部活動に精を出す生徒が、小さく、遠く、視界にうつる。

『……いつまでも、逃げ続けるわけにはいかねぇよな』

ガシャン、と音を立ててフェンスに寄りかかると、
水を飲んで、口元を拭った。
手袋を外して、おでこに手を乗せ、空を見る。

「―――――。」

小さく呟いて、瞳を閉じた。

惨月白露 > 「とりあえず、このままここに居たら焼けちまうな。」

夏の日差しは、容赦なく白露を突き刺し続けている。
日陰のベンチに腰掛けると、小さく息をつく。

『授業、出なかったのは俺が悪いんだし、
 ……置いてかれるわけにはいかねぇよな。』

そして、今日受けるはずだった授業の教科書とノートを取り出すと、
そのノートにシャーペンを走らせはじめた。

惨月白露 > 一区切りついたところで、
取り出した携帯端末に視線を向ける。
時刻は、授業が終わる時間を刺していた。

『……結局、今日も授業には出れなかったな。』

瞳を伏せると、ゆっくりと立ち上がる。

―――夏の日は長い、まだ傾いていない太陽を横目にみると、
それに背を向けるように、暗い階段を下りて行った。

ご案内:「屋上」から惨月白露さんが去りました。
ご案内:「廊下」に片翼・茜さんが現れました。
片翼・茜 > 日も落ち、電気も消えた夜の廊下を歩く影。真夏だというのにスーツにマフラー、手袋まではめたその影は、片翼・茜。常世学園の教師である。
懐中電灯を頭の横で逆手に構えている。こうすれば視界と光の範囲が一致するし、何かあればそのまま振り下ろして攻撃に転じれる。
夏休み中だが、夜間の見回りは行われているのである。むしろ、人の目がなくなるこの時期こそ見回りは重要だろう。

片翼・茜 > コツ、コツ、と革靴が地面を叩く音のみが夜の校舎に響く。無数にある教室も、中を隈なくライトで照らし、確認する。
同じ作業を繰り返していると、とりとめのないことを考えてしまう。
例えば先日の風紀委員本部の襲撃。火災があったらしいが、詳しい情報は上がってこなかった。
懇意にしている風紀委員が居るわけでもなく、独自の情報ルートがあるわけでもない。
風紀委員の権限は強い、構成員は主に学園の生徒だが、教師に対しても逮捕権限がある。故に教師に対しても報告義務も無い。
それが歯がゆい。まるで自分たちは不要なのだと言われているように思える。
子供の喧嘩ならばそうかもしれないが、怪我人が出るような事態に何も干渉出来ないのは辛かった。

片翼・茜 > 「……カハァー。」ため息めいて、喉の奥から息を吐く。
やめよう、組織の仕組みを嘆いても仕方ない。今自分が出来ることに集中すべきだ。
今自分に出来るのは、しっかりと見回りをして、危険があれば排除することだ。不法侵入者や、不審物が無いか確認することだ。
ライトで隅々まで照らしながら、廊下を歩く。

片翼・茜 > 夜間の見回りは怖くないか、と聞かれたことがある。
確かに敵意ある人間が居たとして、暗闇に紛れて襲われるかもしれないから怖いとは答えたが、そうではないらしい。オバケが怖くないかという意味だった。
目の前にゾンビが居るのに何を言っているかと思った。

別に幽霊が夜の学校に居たとして、無害なら後で報告して、有害なら排除を試みるだけだ。不審者と何も変わらない。物理攻撃が効かない場合があるのが厄介だが、不審者だって異能を持っているかもしれない。結局脅威度としてはあまり変わらない。

片翼・茜 > 今のところ異常無し。立ち止まって鞄から水筒を取り出すと、蓋を開けて直接中身を飲んだ。
ホットのブラックコーヒーが胃の中で流れこむ。
「………カハァー。」
趣味は無いのか、と蓋盛先生に聞かれたのを思い出す。その時は散歩を兼ねた見回りと、ボードゲームとでも答えたと思う。
見回りはまだしも、ボードゲームはもう随分やっていない。また幼老院に顔を出そうか。せっかくの夏休みだ、たまには遊んでもいいだろう。

片翼・茜 > 「でもあいつら普通にイカサマすっからなぁ……。」幼老院のメンバーは全員が百年以上生きている人外の存在だ。だから生きた年月相応の分別を身につけているものと思っていたが。
とんでもない、ヘタすると見た目の年齢より精神的に幼いかもしれない、不利になれば駄々をこねるし、いつもズルして勝てないか隙を伺っている。途中でトイレになど行こうものなら盤面が引っ掻き回されること確実である。

一度など茜がアドバンスドショーギの対局中、飲み物を取りに席を立ち、戻ってきたら王将以外全員が敵に回っていたこともある。

片翼・茜 > まぁ、いい。今は見回りに集中しよう。また一口コーヒーを飲んで蓋を閉めてから鞄にしまう。
コツ、コツ、と足音を立てながら、廊下を歩いて行った。

ご案内:「廊下」から片翼・茜さんが去りました。