2015/09/16 のログ
蓋盛 椎月 > 「どうも。ついさっき体調崩した生徒を病院まで送ってきたところです。
 これから提出用の書類作製ですよ」
まったく気が重い、と苦笑いを零す。
お茶菓子、という言葉に、へえ! と歓声を上げて。
揺らしていた椅子のバランスが崩れそうになり、慌てて体勢を直した。

「いつもみたいに保健室のベッドでダラダラしなくてよかった。
 先生みたいな美人にお茶とお茶菓子を振る舞っていただけるなんてねー。
 生徒や同僚に自慢しちゃおっと」
大仰な身振りでそう言って、うれしそうに何度も首を縦に振る。

朝宮 小春 > 「あら………この学園だと、体調不良を起こす生徒も多い…んですよね、きっと。
 私も、カリキュラムの関係で、次の講義で2時間分進めなくちゃいけなくなってしまって。その準備が残っているんですけどね。
 お互い、気が重いですね………」
こちらもとほほ、と苦笑いを零しつつ。
お茶をことん、っと目の前に置いて、隣によいしょ、と腰掛け。


「何言ってるんですか………お世辞を言っても、お茶菓子は等分ですよ?」
なんて、片目だけを閉じて笑いながら、鞄からお饅頭を3つ取り出し、ひとまずお互い一つづつ。どうぞ? と差し出し。


「……もう、本当。
 ことあるごとに甘いものに手が伸びちゃって、少し困ってるんですよね。」
苦笑交じりに話をしながら、お茶を一口、ほう……っと吐息が胸の奥から吐き出され。

蓋盛 椎月 > 「そーですねえ。異能や魔術の実習中に起こる事故はもちろん……
 ここの風土が合わない異邦人の生徒なんかもいて。
 なかなか気が抜けませんよ」
姿勢を正す。
目の前に差し出された湯のみとまんじゅうにニコリと笑う。

「へへ、いただきます。
 そんな、お世辞だなんて。これは礼儀ですよ、礼儀」

ウィンクをひとつ。
両手で湯のみを持って、一口啜る。

「教師業は頭も身体も使う仕事ですからねえ。
 そりゃあ糖分もほしくなるでしょう。
 ……あれですか、ゆとりある肉体になってきました?」
婉曲的表現。

朝宮 小春 > 「………………なるほどー。」
小さく吐息をついて、目を閉じる。
きっとこの人は、私よりも何倍も辛いものを見てきたのだろう。
目を開けば、お饅頭とお茶の前で笑顔を見せる姿に、こちらも少しほっとしたように微笑んで。
この人なら、いろいろなことを知っているのだろうな、という当たりもつける。


「ふふ、まあ確かにほめられると嬉しくなってしまうかも?
 ………えーっと、まだ、まだ大丈夫です。
 確かに多少……多少は、ええ、はい。」
まだ大丈夫だけれど、確実にちょっと増えたらしい。
言葉を発しながら、かくん、と肩が落ちる。
柔らかそう、とか言われて突き刺さるお年ごろ。


「夜とかも遅くなりがちですしね。
 蓋盛先生は、いつも何時頃に帰られているんです?」
業務が違えば当然として、始業も終業も時間はズレる。
全く知らなかったな、そういえば……と思い当たって、横を向いて尋ねてみて。 

蓋盛 椎月 > 「まあほら、多少ふくよかなほうが好印象を持たれやすいとのことですし。
 前向きに考えてみてはどうでしょう。
 なんというかほら……母性? みたいな? そういうのが上がるし」
フォローになってるのかなっていないのかわからない台詞。
まんじゅうを一口食む。

「んー、日によってまちまちなんですけど……
 書類は作らないといけないし、生徒は放課後も保健室に来るしで。
 八時より前には帰れないし、十時まで居残ることもザラですね」
まあずっとまじめに仕事してるわけじゃなくて
適度に手は抜いてますけどねー、と首筋を掻いた。

朝宮 小春 > 「………いやもう、十分身体は重いのでいいです。
 まあ、母性があるって言ってもらえるのは嫌、ってわけじゃないですけどね。」
お饅頭を一口食べて、お茶を飲んで。
穏やかに吐息が漏れ、緩やかな時間が流れる。


「やっぱり、遅くなりますよね。
 私はまだ、何かの部活動の顧問というわけでも、委員会に所属しているわけでもないですから、マシな方だとは思うんですけど。
 まあ………程々に手を抜かないと、生徒より先にこちらが磨り減ってしまいます、しね。」
うん、と頷きながら………………視線を少し宙に浮かせて。


「その、………なんだかんだでそこそこの期間、講義をさせてもらっているんです、けど。
 生徒や先生の不思議な力、を……‥そこまで、目の当たりにしたことが、無いんですよね。
 だから、どんなことが起こるのか………毎日、ビクビクしているというか。
 おこん先生と、………透明になる力を持った子、くらい……ですか。」
お茶を口にしながら、世間話……というよりは、若干の相談へと話題をシフトする。
何の能力も、魔力も、異世界とも関連が無い一般人。
世の中の動き、流れも知っているし、映像では確認したことも多いけれども……結局、ここでは直接見ていない。

蓋盛 椎月 > 「朝宮先生は一回ぐらい生徒にお母さんって呼ばれてたりしません?
 ……ん? そういうシチュエーションが起こるのって幼稚園だっけ?」
首を捻る。

「生徒主導で運営している島とはいえ、
 教師が楽ってことにもなりませんよね。
 適当にサボ……ペース配分するのも能力のうちというわけ」

まんじゅうの餡の甘さに目を細めて。
異能についての相談事を振られれば、ふむ、と相槌を打つ。

「なあに、普通に日常を送っている限りは
 そうおっかない目には遭いませんよ。
 まあでも……慣れておくに越したことはありませんね。
 あたしの異能はご存知でしたっけ、朝宮先生は」

食べかけのまんじゅうを置いて。
よく見えるように右手をかざして、手首をくるくると回す。
すると――何もなかったはずの手から、白色に輝く小さな砂糖細工のような物体が
いくつかテーブルの上に音もなく落ちて、朝宮先生のほうへと転がった。

「触ってみても大丈夫ですよ」

重さも温度も感触も感じられないが、触れて持つことはできる。
観察すればそれが銃弾の形状をしているとわかるだろう。

朝宮 小春 > 「呼ばれてます。……3回くらい。」
とほほ、と肩を落とす。
子供どころか、結婚も何も無いんですけどね、なんて、頬をぽりぽりとかいて苦笑をして。

「学園、として形がある以上は……その。
主導が生徒であっても、生徒以上には動いていないといけないとは思いますしね。」
ふんす、と気合をもう一度入れながら、お茶にまた口をつけて。


「ええ、そうだと思いますし、あまり遠くに行かなければ大丈夫だとも言われました。
 ………そうなんです、よね。 慣れておかないと。
 いざ、生徒の力を見た時に怯えてしまいそうで…………」
不安を吐露しながら、目を閉じる。
生徒から目を背けて逃げ出すような自分を想像すると、どうしても背筋が寒くなるのだ。


「………あ、ら。………その、何かお持ちだということは伺ってましたけど、どんなものか、までは。
………………銃弾ですか?」
それに触れれば、少しだけ喉が、こくり、と鳴って。……結構早い段階で、すぐに銃弾だと見抜いて口にする。
少しだけ緊張した様子で………「それ」を指で撫ぜて。


「……どのような…?」
小さな言葉で尋ねる。 頭のなかで様々な想像が暴れているのだろう、真剣な表情になってしまっていて。

蓋盛 椎月 > 「あっ、結構呼ばれてた」
冗談のつもりで口にした言葉はどうやら真実だったと知り真顔に。
……確かに、彼女の放つオーラは一般にそう呼びたくなってしまうものがあるが。

「《イクイリブリウム》と、あたしは呼んでいます。
 その銃弾で撃てば、どんなに重い怪我でもたちどころに治すことができます。
 撃たないと効果は出ないんで、触ったり舐めたりするぶんには何も起こりません。
 お望みなら、実演してみせても構いませんが」

深刻な表情を作る朝宮先生に、安心させるように微笑んで。

「治った傷に纏わる記憶が薄れたり消えたりって副作用があるんで、
 あんまり気軽には使えませんけどね」

朝宮 小春 > 「うう、寝ている子を起こした後とかに、結構………」
 苦笑を浮かべながら頬をかく。怒っているとか、嫌だとか、そういう感情は然程無いようで。


「………つまり、怪我をしたことを忘れてしまう、と…?
 無かったことに、なってしまうような感じなんですね。
 い、いえいえ、大丈夫、大丈夫です!」
実演、という言葉に小さく首を横に振って。


「この学園だと、………怪我をする子の数も、その怪我の質も。
他の学園よりもよっぽど、大変だと思いますし。
先生のそのお力って、きっと皆さんの役に立っているんだと思います。」
未だにその銃弾を眺めながら、……手の中でころころと転がすよう。


「やっぱり、使う機会は多いんですか?」
もう少しだけ踏み込む。
怪我にしろ、病にしろ。………そういった力を使わねばならぬ状況に、どれだけ追い込まれているのだろう?

蓋盛 椎月 > 「そうですね……“なかったことになる”、その認識で正しいです」
理解に、満足そうにうなずいてみせて。
重ねられた問には、逆に首を横に振った。

「喜ばしいことに――使わざるを得ない機会、というのはそんなにないですね。
 もっと取り回しの効く治療の技術や異能、魔術は他にいくらでもありますし。
 それなのに、わざわざこんな記憶喪失のリスクのある異能を頼る必要はないでしょう?
 みなさん優秀で……仕事が少なくて、助かります」

つまり、蓋盛の《イクイリブリウム》が頼みとされる状況というのは、
緊急時――他に誰も手が空いてない、手が足りない――といった場合なのだ。

「恐れを知らない子には絆創膏代わりに気軽に使わされることもあるんで、
 全く使わない、ってこともないんですけど。

 この特殊な異能がなければ回らない状況というのは、
 すなわちこの学園のシステムの破綻を示すことになります。
 だから、そんなことにはならないでしょう。多分」

そこまで言い終えて一息ついて、お茶をすする。
そろそろ、《イクイリブリウム》の期限は切れて、夢幻のように手の中で消えていることだろう。

ふいに、「ああ」と手を叩く。

「“傷”があったこと自体を、記憶から消したい――
 そういう子が、あたしを頼りに来ることも、稀にあります。稀に、ですけど」

静かな笑みを湛えたままそう口にした。

 

朝宮 小春 > 「ふふふ、………それなのに、十時までも帰ることができない。
 不思議なものですね、先生っていうのも。」
つまるところ、………彼女以外にも治療法を持つ人間……人間その他が複数いて。
その複数が治療に当たるくらいには、怪我は多いということできっと間違いは無いのだろう。


「記憶が無くなる、っていう感覚がイマイチ分からないんですけど……
 まあ、実際に実感したところで、忘れてしまっているから実感できないんでしょうね。」
 そこまで言いながら、相手の言葉を聞いて………………。
 掻き消えてしまうその銃弾を、じっと見下ろす。
 傷があったことを忘れたい………うすぼんやりとその感覚、その希望が分からないでもないけれども。………それでも、雲を掴むような話で。


「いろんな相談を受けたり、されてるんですね。
 その、………昔先生方の紹介を受けた際に、蓋盛先生は………私よりも随分お若かったと思うんですけど。
 随分と、落ち着いていて………ちょっと恥ずかしくなります。」
頬を押さえて、少しだけ苦笑い。
何も見たことがない、なんていう理由で不安になりながら毎日を過ごしている自分が、なんとなくちっちゃいように感じられてしまって。

蓋盛 椎月 > 「ああ、自分の仕事の説明に終始しちゃいましたけど。
 実際、怪我は多いですね。
 現代は、異能や魔術、異邦人といった『異質なもの』の過渡期ですから。
 いわば、交通ルールが整備されてない状況と言いますか……
 だからこれはまあ、仕方ないことなんですね」
そう説明を補足する。

「はは、老成してるだのなんだのよく言われます。
 自分じゃぜんぜん青二才のつもりなんですけどね。
 割り切れないことも多いし」

こちらも照れたように前髪を押さえて。

「まあ――こちとら十年近く異能とは向き合ってますから。
 そういう意味じゃ、朝宮先生よりは年季はあります。

 なんだって初めて触れるものにはおっかなびっくりになって当然ですよ。
 ですから、恥ずかしがらずに頼っていただければ嬉しいです。
 こっちも何か困ったことあったら、遠慮無く頼りますんで」

悪戯っぽく笑った。

朝宮 小春 > 「………そうですよね。……うん。
……いつもお疲れ様です。」
ぺこり、と頭を下げることにする。きっと、先生のような人がいるからこの学園は動いているのだろう、と思う。
異質なものが濁流のように、それでいて血液のように流れ続けるこの学園の中、その被害そのものに対処せねばならない人は、大変だろうと思う。


「私も、有名な能力とか細々とした情報なら数年前から耳にしていたんですけどね。
十年も……触れ合っているなら、青二才どころか。
そういう意味でも、蓋盛先輩って呼んだほうがいいです?」
なんて、ちょっとだけくすくすと笑って。


「………じゃあ、頼っちゃいますね。
私が頼るとなったら、結構頼っちゃうんで、覚悟を一つをば。」
なんて、笑いながら舌をちょっとだけ出して。


「早速、ですけど。 困ってることって何か、ありますか?
 部活も、委員会もしていないから………何か出来ることないかなって、いつも思ってるんです。」
言葉を続ける。子供のように笑う彼女の姿を見て………やっぱり微笑みがこぼれてしまう。
可愛くて、それでいて優しい先生が多くて、有り難いもの。


「それじゃあ、残りの一個は………半分に。」
残ったお饅頭を半分に分ければ、一つは自分の口に咥えて。
もう一つを、はい、どうぞとばかりに指でつまんで差し出してみる。んー、っと自分の分は咥えたまま、にこにこ。

蓋盛 椎月 > 「あえて頭を下げられるほどの働きぶりではありませんよ。
 でも――ありがとうございます。
 そちらこそ、いつもお疲れ様です」
手にしていたまんじゅうの最後の一欠片を頬張って、
小さく頭を下げ返す。

「先輩呼びはさすがに恐縮ですね。
 あたしなんてもっと適当に扱うぐらいがちょうどいいですよ」
目元を覆って、くつくつと笑い声を漏らした。

「困ってることですか。
 そーですねえ――……」
んー、と上を向いて唸って。

「目の前の先生が、実に一生懸命で、魅力的に過ぎる、
 ――とかかな」

冗談めかした口調と笑み。
気取った所作で、差し出された手ごと包み込むようにして
まんじゅうを受け取って齧った。

朝宮 小春 > 「私は頑丈なのが売りですし。
 ちょっと足が攣ったり階段から落ちたりとかしますけど、でも次の日はちゃんとピンピンしてますし。
 だから、私は大丈夫なんです。」
えへん、と胸を張る26歳。どうだ、とばかりに胸を張るも、自虐ネタなのは言うまでもない。


「そういうわけにはいきません。
 先輩を敬うのも文化、といえば聞こえはいいんですけど。
 ここは可愛らしい先輩がたくさんいて、大事にしないとバチが当たります。」
笑い声を漏らす相手にぱち、っと片目を閉じて。
おこん先生がしきりに蓋盛先生のことをしゃべっていたことを思い出す。
ああ、二人揃ったらきっと可愛らしいんだろうな、なんてぼんやり。


「………褒めてもなーんにも出ませんよ。
ちょっと、照れちゃうじゃないですか。
それに、困ってること、教えてくれてませんしー。」
 お饅頭を受け取ってもらえれば、指先で鼻をつん、っと押してしまおう。
 失礼な後輩である。ふふふ、っと目の前で笑って。
 ちょっとだけ頬が赤いのは照れてる証拠。

蓋盛 椎月 > 「それは……身に余るお言葉です。
 あたしは結構、可愛げもないひねくれものですよ」
苦笑して。ほんの少し――バツが悪そうに、目をそらした。

鼻を押されれば、おう、と小さくうめいて身じろぎする。

「照れた顔もかわいいですよ、なんて。

 はは……。単に思いつかなかっただけですよ、相談事が。
 ……じゃあ、そのうち恋愛相談でもされてくださいよ。
 色事には疎くて。
 男心も、女心もわからないんです」

受け取ったまんじゅうを、掌で口に押し込んで、目をつむって咀嚼した。

朝宮 小春 > 「そうです?
そんなことを言ったら、皆さん一捻りも二捻りもありそうな人が多いですけどねー
………なんて言うと、皆さんに失礼か。」
目を逸らす仕草も、己と同じ照れからかと勘違いをして。
気にせずに、ころころと笑う。


「…私だって、頭が固いだけだとかよく言われますし。
……れんあいそうだん。」
もはや、言葉の響きからしてぎこちなかった。ギギギ、と横を向いて、頬をぽりぽり。


「私も………分かりません。」
自白した。


「うう、役に立たない年上でした………。」
とほほ、ともう一度隣に座り直して、お茶を静かに、口につける。

蓋盛 椎月 > 「言われてみればそうかもしれませんね。
 ……これは一本取られたかな?」
邪気のない笑いかたに、毒気を抜かれたような表情で
自分の額をぺちんと叩いた。

「ふふ……!
 実はそんなこったろうと思ってました」
油を挿し忘れたロボットのような動きを示す様子に、破顔一笑する。
そうして、湯のみを傾けて、まんじゅうを茶で流し込んで――立ち上がる。

「さて、そろそろ業務のほうをやっつけてきます。
 お茶とおまんじゅうご馳走様でした。
 朝宮先生に相談する困りごとは――宿題、ということで」

朝宮 小春 > 「……ぐぬっ、失礼な。
 本当のことだし当たってるから何も言い返せませんけど!」
笑顔を見せられれば、こちらもくすくすと笑いながら怒った素振りだけを見せて。


「……そうですね。私も少しばかり、ゆっくりし過ぎちゃいました。
 …ふふ、相談を宿題っていうのも変ですけど、そういうことなら、どーんと待ってますから、何でも言って下さいね。
 ……あ、でも男心と女心以外で………」
 どーん、と自分の胸を叩いて。その上で、ちょっとそれだけは……と泣きを一つ入れておこう。


「今日はありがとうございました。……お疲れ様です。」
 それじゃあ、と柔らかく手を振って見送る。



「………女心?」
 はて、とその違和感に気がついたのは、20分後だったけど。

ご案内:「職員室」から蓋盛 椎月さんが去りました。
ご案内:「職員室」から朝宮 小春さんが去りました。
ご案内:「ロビー」に加賀背 雄さんが現れました。
加賀背 雄 > はー…あ…
(なんとなくため息。授業の休み時間に、ロビーの端っこのベンチに収まってぼんやりとした表情。
 SNS<ドリームランド>の管理はしっかりやっている。
 コスプレ喫茶の手伝いだってやっている。 
 それに、時々…呼びだされて、ひとに言えないこともしている。
 そのせいなのだろうか、なんだか落ち着かない。
 なんとなく自分に異変が起こっている気がするけど、
 それに気づくことが出来ないのがもどかしい。)

ご案内:「ロビー」にビアトリクスさんが現れました。
加賀背 雄 > ん…? あ、まずいかも。
(ポケットの中で端末が震える。 この振動は、普段なら起こらないもの…
 管理するSNS<ドリームランド>になにかトラブルがあった時のものだ。
 慌ててポケットからひっぱりだした端末を覗き込む。 どこかからかは知らないが、
 仕掛けてきているものがいるようだ。 時計をちらりと見る。まだ授業まで時間はある。)

よしよし…
(折りたたみのキーボードをかばんから取り出し、端末に接続。
 予め備えておいた、侵入用の防護壁を起動させる。
 まだ表層にしか食い込んではいないものの、放っておけば大変なことになる。
 そうなる前に芽を摘む必要があるのだ。 侵入者の経路を弄り回し、
 表層から奥に食い込めないようにする。 相手は簡単に引っかかったようだ。)

なんだ、これくらいか…じゃあ、どーん。
(いくら相手が奥に進もうとしても、くるくるとその場を回るようにしてやる。
 この時点で大した相手ではないことがわかった。おしまいとばかりに、
 相手のネットワークを逆に食い破るようにしてやれば終わりである。
 キーボードを戻して端末をしまう。 小さく息を吐いた。)

ビアトリクス > 「やあ」
ベンチにひとりぶんの影が落ちる。
端末をしまった雄の前にビアトリクスが立っていた。

「今なにしてたの?
 ネットゲームか何か?」

そんなことを言いながら隣りに座る。
手にはフレーバーティーのペットボトル。

自分で言ってなんとなく違和感があるのを感じたが、
ビアトリクスとてネットゲームやソーシャルゲームの類に詳しいわけではないために
実はそうでした、と言われても信じてしまうだろうが。

加賀背 雄 > あ、こんにちは!
(一段落、と気をぬいたところに、目の前に人。
 顔をあげると、ビアトリクスさんだった。
 ぱっと表情をほころばせて、問いかけには頷く。)

はい。だいたいそんな感じのやつです。 今回の対戦相手は
あんまり強くないみたいで、すぐに終わっちゃいましたけど。
(侵入者を潰していましたとはいえないから、当たらずとも遠からずな回答。
 簡単でした、って屈託のない笑みを浮かべて。)

これから授業ですか?それとも休憩?
(そそくさと動いてソファのスペースを開ける。 座ってくれるのかな、って
 ちょっぴり期待した目を向けて。)

ビアトリクス > 空けられた、雄の隣のスペースに腰を下ろす。
「ふーん……そうなんだ。
 ぼくは母親の言いつけでそういうゲームを禁じられててね。
 ……やっぱり、楽しいの?」
穏やかな口調に好奇心を乗せた。

「うん、授業が終わって休憩に来たところ。
 ……あんまり調子よくなさそうだけど、
 コスプレ喫茶のアルバイトって大変?」
何食わぬ顔でそんなことを尋ねた。

加賀背 雄 > うん、楽しいといえば楽しいかな…負けるとちょっと大変なことになるから、
なるべく戦わないようにしているけど、いつものんびりしていられないし。
(ふにゃふにゃと笑顔になりながら、相手の言葉にお返事。
 実際のところ、SNSのデータベースなんていくらでも使いみちがあるのだ。
 狙わないヤツなんていない。 もっとも、そういうヤツが来てもいいように
 対策をきちんとしているのだけれど。)

なんだか、最近環境が色々変わって調子が悪いっていうか…
ううん、先輩たちも優しいし、お客さんも……ん…?
(ぴたりと口が止まる。 自分はコスプレ喫茶のことを話しただろうか?
 それとも、なにか知っていての言葉なのだろうか。ブラフなのか?
 様々な憶測が頭の中をめぐる。 どこか縋るような視線で、
 隣に座る相手を見た。)

ビアトリクス > 「へえ、思いの外厳しい世界なんだね……」
その昔、アイドルの衣装を奪い合う人気ソーシャルゲームがあったらしい。
そういうことが起こっているのだろうか?
ビアトリクスはそう解釈することにした。

向けられた視線に目を背けながら、
彼は隠し事が苦手なのだな……と胸中でひとりごちた。
「いや、なんとなく似た雰囲気の店員がいたからさ……。
 確認しておきたくて。よく似合ってたよ。感心した。
 ……知らないふりしておいたほうがよかった?」

加賀背 雄 > そうなんですよ。 だから僕もムキになっちゃうというか…いや、まあゲームですしね。
(えへへ、と気の抜けた感じに笑う。 なんとなく話しがまとまった気がする。
 よかった…と思ったけど、よくなかった。)

あ、う…その、あの…はい、ありがとうございます。
いえ、バレてしまうというのは、あの…精進がたりないっていうか…
(そこまで言ってはっと気づく。 たしか、ハロウィンの準備として、
 お客さんにコスプレを推奨している時にビアトリクスさんは来たはずだ。
 たしか、吸血鬼の格好をしていたはず。 それで、自分は女学生の格好をしていた。 それで、首に……
 思わず自分の首筋に手をやり、頬を赤らめる。 視線を彷徨わせながら、
 申し訳無さとバレてしまったことに、なんとなく頭を下げた。)

ビアトリクス > 雄が女装をしている、ないしは興味あるということがわかっていなければ
ビアトリクスでもきっと見逃していただろう。

「あー、いや。あの時は悪かったね、なんというか」
赤面する雄の様子に、ビアトリクスもその時自分が何をしたのかを思い出して
少しばかり気まずい表情で頬を掻いた。
いくらノせられたからといって同罪である。

「まあ、むやみに言いふらしたりはしないよ。
 ……雄はさ、どうして女の子の格好をするの?
 よかったら教えてほしいな」
控えめな調子でそう尋ねる。
身近にいる、異性装を行う人間の心理については少し興味があった。

加賀背 雄 > あ、いえいえ、全然そういうのじゃなくて…むしろ嬉しかったです。
その…楽しんでもらうために、あそこはコスプレをお客さんもできるようになってるんです。
敷居を下げて、新しい楽しみを開拓してもらいたいっていう…。
(でも恥ずかしかったし、なんといっても吸血鬼の格好をした、
 ベアトリクスさんはとっても魅力的だった。 よく吸血鬼はチャームを使うというけれど、
 はたから見たらまさにそんな感じだった。一番近くいた自分だから断言できることだ。)

ありがとうございます。 恥ずかしいは恥ずかしいんですよね…
理由、ですか。 ええと…可愛い格好をしたいから、っていうのが1つと…
もう一つは、皆が喜んでくれるから、ですね。
例えばこう、少し際どい格好をしたりするじゃないですか。
そうするとすごく喜んでくれるじゃないですか。そういうのが嬉しくて。
(手をもにょもにょと動かしながら、質問に頑張って答えようとする。
 はたしてまともな回答なのかはわからないけれど、一生懸命変じして。)