2015/10/24 のログ
美澄 蘭 > 『でも美澄ちゃんも熱心だよねー。
こないだ応急処置の研修も受けたんでしょ?
魔術での治療も出来るのに頑張るよねー』

あたしは異能の診察と応急処置だけでもーいーやって感じなのにさー、と言って、からからと気楽に笑う先輩。

「…魔術だって、そこまでしっかり学べてるわけじゃないですよ…黒木さんには到底及びませんし」

蘭が苦笑しながら謙遜する。
女子学生の会話に参加出来ずに黙々と保健室の整理整頓をしていた、大柄な青髪の男子学生が一瞬ぴくりと反応する…が、そそくさと整理整頓に戻っていった。

「…ただ、後悔するのは嫌なんで…出来ることは増やしておきたいな、って。
魔術による治療が苦手な人もいますし」

そう言った蘭の表情は、苦笑いというよりははにかみ笑いの方が強かっただろうか。
その表情を見た香里が、にやりと笑う。

『なーんだ、美澄ちゃんも可愛い笑い方するじゃ—ん。
人に気ぃ遣ったような苦笑いばっか浮かべちゃってさー』

「…えっ…」

ちょっと顔を赤らめて俯く蘭。

『あはは、かわいーけどいつ患者さんが来るか分からないし落ち着きなよー』

けらけらと意地悪く笑う香里に対し、

「香里さんが変な事言うからじゃないですか…」

と、ため息をつく蘭。
それでも、深く深呼吸して気分を切り替えた。
顔色は徐々に通常の色を取り戻していく。

美澄 蘭 > 『…にしても、ヒマだねー…』

香里の気の抜けた声。こうして、話題はループする。

「他の保健室からの応援要請もないですしね…
平和なのは良いことですけど」

んー、と伸びながら相槌を打つ蘭。
医療とか、治安維持の仕事はないくらいが平和で良い…というのは一般論にして理想論ではある。
それでも、「不幸にも」それらが必要になってしまったときのために「仕事」というものは存在するし、暇な間の時間をどう使うかというのは、控えさせられている若人にとっては死活問題だったりするのだが。

美澄 蘭 > 『あー、ヒマ過ぎ!』

香里がついに椅子から立ち上がる。

『ヒマ過ぎるから黒木ちゃんの整理整頓手伝うわー。
どこやったらいい?』
『えっ………じゃあ、その冷蔵庫の中…』

黒木と呼ばれた大柄な男子学生が、戸惑いながらも冷蔵庫をさすと、香里は

『おっけーおっけー…ふんふん、経口補水液がこーで…あー、坐薬はポケットの方が見つけやすくていいかなー』

などと声に出しながら、意外とてきぱきと整理していく。
その様子を見て、蘭も立ち上がった。

「…あの、黒木さん、私も何かお手伝い出来ることないですか?」
『えっと…それじゃあ、美澄さんは、その本棚…』

黒木が、医学系の書物の他に、普段詰めている人の暇つぶし用であろう漫画等が、バラバラの順番に入れられた本棚を指差す。

「分かりました」

そう請け負って、蘭も本棚の整理整頓を始めた。

「〜♪」

今度の発表会で演奏する曲の、好きな部分を口ずさみながら、本棚の順序を整えていく蘭。

………結局、彼ら彼女らの当番時間は、穏やかに整理整頓をしながら終わったそうです。

ご案内:「保健室」から美澄 蘭さんが去りました。