2016/07/05 のログ
ご案内:「廊下」にセシルさんが現れました。
■セシル > 「………ふむ」
試験期間のため、いつもよりもスカスカになった時間割。
その休み時間…セシルは、廊下…もとい、廊下に隣接した中庭に佇んでいた。
セシルの目の前には、大きな笹。
「………願い事、なぁ………」
何でもない調子の言葉とは裏腹に、セシルの表情には若干の渋みが見える。
■セシル > 剣術や魔法剣の熟達はもちろん、学業だって、願うまでもなく自分で努力してどうにかするものだ。
昨今の気候には少々滅入っているので「涼しい夏が過ごせますように」とか書けないこともない。
…だが、それよりも、強く、こちらに来てからずっと願い続けていることは。
(………融和を願うこの島では、罰当たりに過ぎる願いか?)
セシルの表情が渋さを増す。
無論、式典委員会には一点の落ち度もない。
ご案内:「廊下」にメルル博士さんが現れました。
■メルル博士 > ただいま試験期間。メルル博士は天才を自称するだけあって、順調。
しかしメルル博士は頭は良いが馬鹿なので気付いていなかった……。
答案は全て正解で百点満点だろう。だが、一部名前を書き忘れている……。
メルル博士も笹の前にやってきた。
「七夕ですか。せっかくですので、メルル博士も何か願い事を書いてみてもいいかもしれませんね」
短冊を一枚取り、手で顎を掴んでどんな願い事がいいか考え始めるメルル博士。
■セシル > 『人を傷つける内容を書いてはいけません』と、ご丁寧に但し書きがしてある。
(…気にし過ぎかとは思うが…)
いっそこの催し自体を忘れ、なかったことにしてしまおうかと考えていると…近づいてくる、気配。
自分より頭二つ分くらい背が低いだろうかという、幼女だった。
早速短冊を手に取り、考え始める娘。
「1人一枚までなのと…
他の者を傷つける願いは書かんようにだけ、気をつけるのだぞ」
あくまで顔は笹の方に向けながら、近づいて来た幼女に声をかけた。
中性的な、太い胸声。
ただし、声の主であるセシルの喉仏は、ほとんど発達していない。
■メルル博士 > セシルの注意に、メルル博士は彼女に振り向いてからこくりと無感情に頷いてみせる。
「他者を傷つける願いに、メルル博士のメリットはありません。
もっと、メルル博士にとって意味のある願い事を書いた方が有意義ですね」
そう言いながら、メルル博士をこう書き記した。
『11次元で観測されたメルテニセツク現象が、コーレテウデネ管を通じて常世島で発生しませんように』
端から見れば、まるで意味が分からない単語かもしれない……。
「あなたは、どんな願い事にするのですか?」
メルル博士は首を傾げながら、傍らの男装少女に問うてみる。
ちなみに、メルル博士は現状、セシルを男だと思っている模様。
■セシル > 幼女の大人びた物言いに、意表を突かれたように目を瞬かせた後。
「…『メリットはない』か…
合理が他者の権利を侵さぬなら、それほど良いことはないな」
ははは、と、低くて暖かみのある、気持ちのいい笑い声を零した。
なお、相手の願い事は見ていない。それだけ大人びた娘であれば、願う内容のプライバシーは尊重に値すると考えたためである。
…が、自分の願いを尋ねられれば、少し笑顔を曇らせ。
「…そうだな…どうしようかと、迷っていたところだ」
そう答えた。
なお、娘の問いかけに性別誤解要素が含まれていなかったため、まだ訂正はしない。
■メルル博士 > 「はい。彦星と織姫もおそらくは、人を傷つける願い事なんて望んではいないでしょう。
この但し書きは、そういった意味でも有用なものだといえます」
メルル博士なりの冗談なのだが、いつもどおりの無表情で言ってのける。
セシルが笑顔を曇らせたところを見て、メルル博士は軽く頭を下げる。
「人の願いは聞くべき事ではありませんでしたね。
不躾でした、申し訳ありません」
「ただ、七夕はひとつのイベントです。短冊に書く願い事なんて、実際は深く考える事もないのかもしれません。
その場のノリで、面白い事を書こうとする人もいるぐらいですから」
そう言いながら、メルル博士は笹にぶら下がっている短冊の一枚に視線を移す。
そこに書かれていた事は──。
『スーパーマンになって、可愛い女の子とうっはうは。ハーレム王になってから、大金持ちになり、そのまま世界を征服してやるぜ』
なんて事が書いてあった。しかも字がいように汚い。
■セシル > 「ヒコボシにオリヒメ…確か、この行事の元となった伝説だったか?」
セシルは異世界の出身だし…そうでなくとも、七夕の風習は東アジアのものである。
伝説に疎くとも、それは自然なことだっただろう。
幼女が無表情なのもあって、セシルも真顔でその「冗談」を受けた。
「………いや、私も貴殿が願い事を書く場面自体は見ていたからな。
聞き返されるのも自然のやりとりのうちだ」
軽くとはいえ頭を下げられれば、「気にするな」と付け足して返した。苦笑いを浮かべながら、
(いくら大人びたとはいえ、こんな幼い娘に気を遣わせてしまっては、まだまだ私も修行が足らんな)
と、内心考えていたとか。
…が、幼女が言った言葉に、
「………その場のノリだと?」
と、まともに彼女の方を向き、そして彼女が見ていた短冊を「見てしまう」と…
「ふっ」
おもむろに、吹き出した。
■メルル博士 > セシルの問いに、メルル博士は頷く。
「そうです」
そして、そう簡潔に答えてみせた。
メルル博士としては、別に願い事を見られたとしても気にはしない。
だが、願い事を見られたくない人がいるであろう事も、メルル博士は理解していた。
『気にするな』と付け足されれば、メルル博士はまたもとの無表情でセシルを眺める。
「それぐらい、軽い気持ちで願い事を書ける行事であるとも言えます。
それ以外にも、ちょっと甘い乙女心を誰にも見られないように晒してみたり、はたまたストレートな欲望を書き記したり。
みんな、それぞれの楽しみ方をしています」
まるで、この行事を丁寧に説明するかのような口調でセシルに話した。
笹につるされた短冊には、様々な願い事が書かれている事だろう。
セシルが吹き出すところを見ると、メルル博士も無感情ながら、わずかに笑顔になった……ようにも見えた。