2016/07/28 のログ
ご案内:「保健室」に世永明晴さんが現れました。
■世永明晴 > 布の擦れる音と、消毒液の匂いで目を覚ました。
横たわる体の感覚を久しぶりに思い乍ら、目を開ける。
「…………えー……と」
なんだったか。なぜここにいるのか。覚えはない。
保健室か。……けがをした覚えも何もない。
体にも、異常を感じない。
現状把握能力だけは、本当にうまくなったと思う。
あぁ、“アレ”か。と一人頷いた。
時折に起こる……らしい。らしいとつくのは、その記憶がないから。
記憶がないのは、眠っている時に起こるから。だから、人づてに聞いた情報しかない。
倒れた様に眠りにつくらしい。眠っているのに、眠りにつくとはまた摩訶不思議だが、そう表現するしかない。スイッチが切れた様に、電池が切れた様に。
大方、その眠りにつく場面を目撃されたか、もしくはどこぞで倒れたように眠っていたか。どちらにしても、今の時期ならば熱中症を疑われてもおかしくない。だからまぁ、大事を取って運ばれたのだろう。
……誰か、付近にいるだろうか。起きたことを伝えなければならない。
運んでもらうのも……一苦労だろうし。礼ぐらいは言いたい。
「……あの。……すいません。誰か、いるっスか?」
■世永明晴 > 「……いないスか」
まぁ、それもそうか。
熱中症かと思われる患者が、実際の様態を見るにただ寝ているだけとあれば保健室に放り込まれるだけだろう。
むしろ、保健室においてくれたことを感謝するべきだ。
しかし、誰もいないのか。
「んー……」
何も言わずに立ち去るというのは避けたい。
患者とは言えなくとも、勝手に消えていたら、まぁ。アレだろう。
誰か来るまで、少しばかり待ってみよう。暇、ではあるが。
それを表すように一つ欠伸をした。
仮病の生徒でも来たら、どちらが仮病か分かったものではない。
……礼は言っときたいのだ、こちらの心情としては。
まぁ、こなかったら。……それでいいのかわからないが、帰りがけ、生活委員会に寄って報告位はしよう。
上体を起こし、ベッドの端に腰かけ。少しだけ足を揺らした。
ご案内:「保健室」に化野千尋さんが現れました。
■化野千尋 > 「しつれいしまー……」
「保健室はあっちだから、一度先生と顔合わせをしておくといいよ」なんて
雑な説明の少しあと、化野千尋は学校内の教室を把握するためにうろうろと
校内を彷徨っていた。
「あっち」と言われてからはや30分、ようやっと保健室にたどり着いた。
「だいじょうぶですかあ。
んんん、みたかんじ先生もいらっしゃらないみたいですねえ。
お呼びしてまいりましょうかあ」
いかがでしょう、と自信満々に問いかける。
自分の来た道という遠い記憶に思いを馳せながら、ひとつ。
■世永明晴 > 「あら」
静かなものだと思っていた。音が遠くから聞こえていたので、隔離されている気分。
存外来ない物なのだなぁ、と一つ感慨深げになっていた。
そんな所に一つの物音……というより一つの人影。
そちらに顔を向けるのは至極自然の動作だろう。
「大丈夫スよ。もう」
……そうかぁ、自分で行くという選択肢もあったなぁ、なんて間抜けさ。顎に一つ手を当てた。
「えっと……アナタこそ、大丈夫ス? 急患?」
此処に来る用事と言えば、それか……もしくは仮病。保健の先生目当てもあったか。
見たところ……そんな様子は見られないが。そして、どうにも。自分が待ち望んだ人物でもなさそうだ。
はて、と。もうひとつ、顎を撫でた。
■化野千尋 > 「いいええ。あだしのはだいじょうぶですよう。
保健の先生に挨拶しておきなさいと言われたのですがお留守でしょうか。
ところで、もうだいじょうぶ、ってことはだいじょうぶじゃなかったってことですかねえ。
病人はしっかりおやすみしないといつ死んじゃうかわかりませんからねえ」
お大事にしてくださいねえ、とゆるり付け足した。
今日は暑い日だった。学園内はしっかりクーラーが効いていたが、屋外を歩くとなれば
それ相応に――目の前の彼のように熱中症(推測)になるのも仕方ないだろう。
「ええと、保健室の先生をお探しでしょうか。それともあなたが急患だったのでしょうか!
ああ、でももうだいじょうぶなのでしたっけ。
その、お大事にしてくださいねえ」
にこりと微笑んだ。
雑に整えられた黒髪から赤い瞳がちらりと覗く。
■世永明晴 > 「挨拶……?」
不思議な単語を聞き及び、少しだけ首を傾げた。
……なんだか、間延びしたような喋り方をする人だな、と感じた。
「えぇと……そう……スね。留守みたいっス」
残念ながら。と肩を少しだけすくめて、頭をかいた。
なんだか、自分が急患であったかのように話をされるとどうにも気まずい。
「最初から大丈夫ス。……安心してください」
あぁ、違う。これではまるで仮病だ。んん、少しだけ唸り声を上げて、彼女を眺めた。
赤い瞳に少しだけ、なんだか委縮する思いを抱いた。
■化野千尋 > 「ああ、忘れておりました。
あだしのは、あだしののちひろと申します。
昨日から編入で、夏休み明けからはいっしょにお勉強をさせていただくので、
なにとぞよろしくおねがいいたします。
……しつれーながらお伺いするのですが、お名前おしえてもらえたりしませんでしょうか。
あああああのわるいことにはつかいませんゆえ、はい、つかわないので」
困らせてしまったか、と申し訳ないような気持ちになりつつぽんと手を打つ。
保健室にくるということはなにかしらの理由があるのだろう。
きっと仮病――(夏休みに?)とか、きっと怪我をした――(これなら納得がいく)とか。
「ところでおにーさん。
おにいさんはなにゆえ保健室にいらしたのですかあ。
たいへんに不審人物ともうしますか、いえ、この学園では当たり前なのかもしれないですけれども。
消毒液の匂いがお好きとか、そーゆうやつでしょうか」
興味心に負けて、つらつらと言葉を並べ立てた。
■世永明晴 > 「編入でスか。……それは大変でスよね。色々と」
苦笑した。自分も、慣れるまでには多少時間がかかった。
ここはそんなところ。本来なら、自分は此処には似つかわしくない。
それに似た気持ちもある。
「あだしの……さんでスね。はい。俺は……」
何ゆえ二回繰り返した。眠そうな瞳を少しだけ細めて、彼女を見る。
一つ、ため息に似たものをついたあと。
「……世永明晴でス。悪い事には使わないでくださいね」
これで明日になったら身分剥奪なんてなってたら笑い事ではないが。
どんな世紀末だ。
理由を問われれば少し悩む。そうはいってもいつものこと。
上手い言い回しなど浮かばない物で、頭をかいてとつりと話した。
「消毒液の匂いは……んー。嫌いじゃないスけど……」
やめてくださいよ、通報は。とでも言いたげに片手を手の前で振る。
「そんな当たり前はないスよ。……あぁ、でも。外とは違った理由で来る人も結構いるでしょうけど」
「……えっと。その。……外で寝ちゃいまして」
■化野千尋 > 「だいじょーぶですよ。
あだしのはこわーい風紀委員さんとは違いますからねえ。
おぼえましたよ、きっとだいじょーぶです。よなが、よながさんですねえ」
つい昨日風紀委員に取り締まられたばかりの少女としては、
自分の個人情報というのがどれだけ大事なものであるのかは身を以て学んでいる。
正座をしながら反省文を書いたのは、人生で初めてのことだった。
「そとで、ですかあ。
もーすこし時期がはやければ素敵なお昼寝ではありますが、
この時期ではちょーっとだけ暑くないでしょうか。
熱中症とか危ないよに思いますので、きちんと屋内で寝るのがよろしーでしょう」
当たり前はない、と言われれば楽しげにはにかんだ。
これは外とは「同じ」ことなのですねえ、とゆるゆる表情を崩す。
■世永明晴 > 「風紀委員は、むしろ守ってくれそうなものでスけど……」
なにやったんスか。そう問いかけながら。
はい。世永でスよ。と、繰り返すように返事をした。
自らが規律を守っているうちは、味方であり、そこから外れれば強大にもなろうものだが。
存外、自分は真面目なのだ。態々それを破るつもりはない。
……不可抗力ともなれば話は別なのだが。
「そう……でスねぇ。
俺も昼寝なんかしたくなかったんでスけど……」
自分が眠いときには寝たい。それが叶うのであれば。
少しだけ、困ったように笑う。
「気を付けまスよ」
崩れた表情を見て、こちらも眠そうに薄く笑う。
「同じでスよ」
「ここではちょっと……当たり前と使うのが億劫になりまスけどね」
■化野千尋 > 「おっきな時計塔で街を眺めてたら反省文を書かされました。
なんとも、向こうじゃけーがい的なものでしたから、立ち入り禁止。
初日からにがいのをちゃあんと味わいましたよ」
昼寝なんかしたくなかったんですけど、という言葉に些か違和感を覚えた。
病気か何かでしょうか、と首を傾げながら彼に問う。
「ええと、ナルコレプシーだとか、そゆのでしょうか。
眠気にかてなくなっちゃう、みたいなびょーきだったように思うのですけれど。
たいへんですねえ、よながさん。
こゆときはなんと言えばよいのでしょうか。がんばってください?」
なんとも外の人間の「一般的」な考えの先だ。
そのくらいしか思い当たることはないし、思い当たったとしても生活リズム云々、
なんて退屈なことしか思い浮かばない。
「おんなじこともたくさんあれば、ちがうこともたくさんですからねえ。
あだしのは何がなんだかわからなくなりそですよ。
でも、おもしろいなあとはとってもおもいます」
■世永明晴 > けーがい的。……形骸的か。確かに、それはそうかもしれない。
「ここは、一つの国みたいなものでスからねぇ。校則に国家権力は働かない。……そっからの違いでスかね」
最も、それを取り締まるのも生徒だ。そういう意味では、多少気が緩む部分はある。というか自分も入ったし。
「……運が悪いんスね」
と、一応の慰めもかけておく。
ナルコレプシーかと問われれば、似たような物と内心頷く。
がんばってくださいはちょっと違うじゃないスかね。
そういって笑う。
「それだったなら、お医者様にかかってるんでスけどね」
「……まぁ、病気みたいなものでス。例えば、異能だって人に有利に働くものばかりではない、みたいな」
何度も言う様に、自分にとっては制御できない異能は病気と同じようなものだ。
人に害をなすようであれば、伝染病と同じように人から隔離される。治療法が見つかるまで。こんな事、大々的に嘯くなんてことは出来やしないが。
「慣れちゃうものでスよ。一つの国、みたいなものでスから」
「郷に入れば、郷に従え。でしたっけ」
まぁ、おもしろいのは……そうだな。同意してもいいと思う。
一つ、欠伸をした。
■化野千尋 > 国、と聞けばなるほど何度か頷いた。
「くに、くにですかあ。それは「同じ」ですねえ。
本土の学校も言われてみればくにかもしれません。
おうさまみたいな子がいて、それを取り巻く家来さんもたくさんいましたから。
だからそのおうさまみたいな子が「嫌だ」、っていったらそれは法律になっちゃうんです」
まあそんなことはさておき、と我慢していた興味心が噴出した。
「へへええ!
ならそれは、よながさんの異能、ってことでしょうか!
びょーきみたいな異能、そんなのもあるんですねえここ!」
わひゃー、と一人で興味津々に瞳を輝かせながらずずいと彼に顔を寄せた。
空間転移だとか、発火だとかそんな異能は初日から拝むことは出来たものの、
本人のデメリットになるような異能なんてものは聞いたことがなかった。
故に、彼の言葉には持ち前の好奇心が小型犬よろしく食いついた。
「あのあのあの、もし眠たくなったら速攻で寝てしまっても構わないのですが、
あだしのにくわしくお話おきかせもらえたりとかってしたりしませんでしょうか。
なんでしょう、よながさんはご自分の異能はお嫌いなのでしょうか!」
■世永明晴 > 「同じ……」
……あるんだろうなぁ、そういったものも。
自分は生憎と言っていいのか。幸運だったのか、それとも。
それを肌に感じることはなかったのだけれど。
流された、というより。大して深く言うつもりもなかったのだろう。
ならば特に、それ以上言う事もない。
「お、おぉう……」
顔を寄せられれば、少し身をそらせて遠ざかった。近い。
「あー……うん。ちょっと落ち着きましょう、っス」
ドードー、となだめすかせるように両手を動かした後。
「どう……でしょうね」
そういえば、あまり。……好きか嫌いかなんて考えたことがなかった。
整理するようにぽつりと話す。
「……そうでスね。好きか、嫌いかというより……怖いっていうのが正しいかもしれないでス」
自分が、自分の知らない所で動いてるのが怖い。
起きている自分が、必要なくなっていく今の状況が、少しだけ怖かった。
そんな言葉を言いながら、それでも困った様に笑った。
■化野千尋 > 「どうどう」
復唱。すうはあと深呼吸を繰り返して、てへへと楽しげに笑った。
そして彼の言葉を真剣に聞いてから、暫く考えこむようにして押し黙った。
数分経っただろうか。
およそ2、3分しっかり考えこんでから口を開く。
「こわい、ですかあ。
たしかにそういうものかもしれませんねえ。
でも、あだしのはようくよながさんの異能のことも、よながさんのことも
知らないですけど、こわいと思えるうちは、だいじょーぶでないでしょうか。
それが「当たり前」になってしまうほうがたいへん怖くないでしょーか。
だから、なんともうしましょうか。
あだしのは、いまのよながさんならだいじょーぶでないかとおもいます」
真剣そうな表情を緩めて、ゆるゆると笑った。
この少女特有の空気感をそのまま表情にしたらこうなるだろう、という表情だった。
そして続けた言葉は、なんとも「普通」な言葉だった。
「きっとその怖い、っておもえるのもその異能をお持ちのよながさんだけでしょうし、
そのきもちは紛れも無く、よながさんのものですよう。
なにがこわいのか、あだしのにはわかりませんけれど。
えーと、この場合は、「おだいじに」でだいじょーぶでしょう。きっと」
それからにへら、とまた表情を緩めて言葉を落とす。
「おだいじにしてくださいねえ、よながさん。
それから、もしまたお会いしたらどうぞよろしくおねがいします。
あだしのは、まだ行かなければいけない教室がたくさんあるものでして」
「それでは」、と踵を返す。
まだノルマは達成できていないし、他の先生には何時にここに、と約束をしてしまっている。
先生のいなかった保健室にそう長居をすることはできない。
大きく彼に手を振りながら、転入生特有の挨拶回りに慌ただしく駆け戻っていった。
ご案内:「保健室」から化野千尋さんが去りました。
■世永明晴 > 「ん」
沈黙。……こんな、偶然出会った事に対してそこまで考える彼女もなかなかだ。
真剣さのそれは、邪魔するのを憚れる。
だから、その間。眠そうな目を、彼女へと焦点を当てて少し待った。
「当たり前になってしまうこと……スか」
僅か乍らに、その言葉は。どことなく痛みを伴わせた。
困った様に。ひどく困った様に、「大丈夫」の言葉に笑みを浮かべる。
……。……恐怖と、焦りが少しですんでいるのは、自分が。
その異能によって発生する自分も、自分であるから、と捉えているからだ。
だから、そこに。多少の諦め……つまり。いつか、今の睡眠時間が増大し、すべてそれに代わってしまっても、仕方がない、しょうがない、別にいいさ。そう思えてしまっていることに他ならなかった。
それこそ、当たり前になってしまうという事だろう。
「そう……スかね。なら……、よかったっス」
余りにも普通な言葉は、ひどく普通に届く。
「えぇ。……ありがとうございまス。そちらこそ、お気を付けて。また会いましょう」
まだ、探している。何とかできる手段を。だからまだ大丈夫。
彼女の姿を見送った。慌ただしさに苦笑を浮かべる。
「……さて。……どうしたもんスかね」
ひとりごちりながら、頭をかいた。
これからの事と、そして……今日の後始末。
とりあえず……一つメモを取り出して「もう大丈夫です」と名前付きで書き残し机に置いておこう。
それから、保険医を探して……。
そうして、その場を立ち去る。今日は、いやに体が軽いのが、無性に煩わしかった。
ご案内:「保健室」から世永明晴さんが去りました。